光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
最後に投稿してからもう少しで1年が経ちそうでしたが色々と事情があり、再び投稿する事が出来ました!
いつも読んでくださり時には感想を送ってくださってありがとうございますm(_ _)m
今更期間を空けて言うのもなんですがよろしければご愛読よろしくお願いしますm(_ _)m
今回はカケルが刑務所惑星に着くまでの間のジャグラーさん視点です!小説パートですか何卒お願いします
◇ジャグラー
惑星ギレルモでカケルとガイと別れたジャグラーは星間連盟によって刑務所惑星484へと移送される事になり、ジャグラーは様々な拘束具を体中に装着させられ宇宙移送母艦の内部の牢屋に投獄される事になった。
母艦内には母艦を操縦するクルー達のスペースや警備兵が常駐するスペースと囚人を投獄する牢獄スペースがある。牢獄スペースに行くにはクルー達のスペースから監査所と呼ばれるいわば持ち物検査や体中に危険な物がないかを見るための場所を通り抜ける必要があり、無論ジャグラーも例外ではなかった。
手持ちだった蛇心剣も押収され、手枷をはめられたジャグラーは抵抗をする事も素振りすら見せる事はなく、何かしら仕掛けてくるであろうと勘ぐっていた星間連盟の兵士たちは拍子抜けしていたのだ。
「しっかしあの大悪党のジャグラス・ジャグラーがこんなに安々と捕まるとは思っても見なかったな」
「ああ、しかも何の抵抗もないときた。噂も信用ならんな」
ジャグラーを牢獄へと連行している2人の警備兵は嘲笑いながら牢獄スペースに繋がる廊下を歩く。
しばらく歩いてるとここまで来る間に埃すら落ちていなかった綺麗な艦内とは一変して、最早手入れすらされていないであろう場所に変化していった。
長い廊下に続く道には幾つもの牢屋がズラリと並んび照明や部屋を明るくする蛍光灯は一部点滅している箇所もあり、錆と埃が溜まった不衛生な場所だった。
牢屋は鉄格子で出来たオーソドックスな物だが高圧電流が流れている為簡単には逃げ出せないような物だが、少し歩くとそんな風景とは似合わない一回り分厚い鉄の扉が現れた。
「おい、あれは何だ」
「あぁ?看守に向かってそんな口の利き方―――」
「おいやめとけ。どうせ何も出来ないんだ、教えても問題ないだろう。……そこはとある王国の王女が収監されている」
1人の看守が静かにそう言い放つとジャグラーは疑問を浮かべた。こんな悪党ぐらいしか用が無いような場所に王国の王女が収監されているのか、もしかすればその王国の王女とやらが極悪人ならば話は別だが…。
怪訝そうな顔をしていると看守がため息をつき、続きの話を聞いた事でジャグラーは漸く理解をした。
この分厚い鉄扉に収監されているのも、全てはその王女の能力が原因だったようだ。
王女は生まれついて特異な能力……つまり脳から発せられる特殊な脳波が次元の歪みを作り出し怪獣を呼び出すという能力があるからだそうだ。
しかもコントロールも出来ていないらしいのでいつ何時怪獣が現れるか恐れていた王女の両親……その国の王と王妃が星間連盟に引き渡したという話だ。
この部屋も王女の脳波を抑え込むための物であり更には王女自身にも特殊な装置を施され完全に脳波を遮断しているらしい。
(要は自分達の命欲しさに星間連盟に売ったって訳か…)
己の娘だろうと脅威になるのならば星間連盟へ差し出す王と王妃に苛立ちを覚えていた。何か対策するのでもなければ娘を星間連盟に差し出す事に躊躇いすらない……その己の恐怖心によってついに娘の事について考える事を放棄したのだ。苛つかない訳がない。だが……
(その能力……使えるな)
自分が今以上に……ガイよりも強くなる為にはその能力はうってつけだった。その王女が要らないのならば…俺が貰おう。
(だが事を起こすには早い…。この船が行き着く先である刑務所惑星までは精々大人しくしてやるさ)
密かに笑みを作る。これから起こるであろう事を考えると武者震いが止まらないのだ。
だがその考えの中で1つだけ引っかかる物があった。
(そういや、アイツの答えはまだ聞いてなかったな)
ギレルモで再会したガイともう一人…カケルの事だった。
ジャグラーは一度カケルに問いていた。
お前の正義とは何なのかと。
ガイの答え…というのも少し違うが奴なりの覚悟は聞いた。だがカケルのものだけはまだ聞いていなかったのだ。
途中邪魔が入ったり色々な事が起こって結局聞けず終いだった。
(なら…もう一度お前に問おう。お前の正義とは何なのかをな)
刑務所惑星にアイツを引き寄せる。奴なら声を掛ければすぐに来そうだが……保険もかけておくべきだろう。その保険は機能するかどうかは完全に運だが…もしこれが機能するなら例えミッション中だろうが奴はこちらに来る筈だ。
牢屋に放り込まれたジャグラーは再び薄ら笑いを顔に浮かばせたのだった。
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「着いたぞ、出ろ」
それなり長かった宇宙船の航行もようやく刑務所惑星に辿り着いた。船を惑星に着陸させると中に収容されていた囚人たちが全員外へ放り出される。例外なくジャグラーも外へと連れ出されるのだが、無論釈放などではなく刑務所惑星484の牢獄へと移送する為だ。ジャグラーは大人しく看守の指示に従い船を降りる為に来た道を逆戻りする。
少し歩いていると、ここに来る途中にあった王女の牢獄がすっぽりなくなっていた。比喩などではなくそこにあった鉄の扉ごとごっそりとくり抜かれたかのように。
恐らくあの部屋自体が特注だったのだろう。部屋ごと移送出来るようにしていたのだとジャグラーは考え、すぐに視線を逸した。
ようやく船から降りるとそこに広がった光景を見たジャグラーは殺風景な場所だな、と感じていた。
本当に何かあるわけでなく険しい岩山がぐるりと刑務所を囲むようにそびえ立ち、1つだけバカでかい塔を除けば至って普通な石の建造物が乱雑に並んでいる程度のものだった。
ジャグラーの場合、かなりの犯罪を犯した(星間連盟基準)のであの塔へと収監されるのだった。塔まではそれなりの距離があり、一本道なのでただひたすらに歩くだけなのだが、乱雑に並んでいる石の建造物を通る事になる。なので少し見れば建造物の様子が伺えるのだが、やはりこの建造物も牢獄だった。
(殺気立っているな)
牢獄に入っているのは全員なにかしらの罪を問われた宇宙人達だった。塔に連れて行かれるのが珍しい事なのだろうか、あらゆる場所から視線と殺気がジャグラーに送られていた。
そうしてジャグラーは囚人達に殺気を放たれながらも塔へと連れられるが、頭上から大きな機械音と共に巨大な作業用アームが1つのコンテナを掴んで塔の最上階に運ぶ作業が行われていた。
恐らく例の王女とやらが移送されているのだろう、ジャグラーは少しコンテナを見つめるとすぐに視線を外し塔の中へと連れられていった。
ジャグラーの牢屋はどうやら塔の中層階に当たる場所であり、塔の全ての階層を行き来するリフトに乗せられるとすぐにリフトは起動した。
「おい看守。俺の蛇心剣は何処に置いている?」
その言葉を聞いた看守は何を言っているんだ?という顔でジャグラーを見つめる。
今から収監されるという人間が言うようなセリフではない、要は脱獄する事を考えているだろうがそれは無駄な事だと看守は鼻で笑った。
「なんだ脱獄でもする気か?」
「あれは俺の大事な物でな。どこにしまってあるのか気が気じゃなくてね、粗末に扱われたら困るだろ?」
「まあ脱獄しようと無駄だ。この塔内には複数の自律型ガーディアンが何機も徘徊している、お前の剣一本如きでどうにかなるものではない」
「ほう…」
「お前の剣もこの中層階に保管しておく。まあ場所を知られた所でお前にはどうにも出来ないがな」
「大した自信だな?」
「牢屋から出た時点で警報がなるしガーディアンもすぐに察知する。そうなればお前とて一溜りもないだろう」
看守が煽るように笑う。相手が何もできないと見て大きく見栄をはってはいるが、こういう奴程すぐ後悔する日がくるとジャグラーは内心思いつつ黙っておく事にした。
そうこうしている内にリフトが中階層に到着し、看守とジャグラーはリフトを降りて牢屋に歩みを進める。
塔内は道もそこまで複雑な物ではなく比較的すぐに牢屋に辿り着いた。
「ここがお前の牢屋だ。さっさと入れ」
「なあ看守。最後に1つだけいいか?」
ジャグラーは看守を試すように見る。看守はジャグラーの視線を特に気にすることもなく「なんだ」と一言だけ呟いた。
「牢屋を破れば即座に察知されるんだよな?」
「ああそうだ。だから逃げる事など無駄な―――」
瞬間、ジャグラーは魔人態へと変貌し着けられていた枷を力づくで外すと即座に看守の背後へと回り込み首筋に手刀を強く叩き込んだ。看守は強い衝撃のせいで膝の力が入らなくなりそのまま崩れるように倒れ、最後には意識すらも手放してしまったのだ。
「油断してるからそうなる。いい教訓になったな」
煽るように言うとジャグラーは看守を持ち上げそのまま人が通らないであろう場所へと運び込む。そして看守の服装や武器、セキュリティカード等をすべて剥ぎ取ると魔人態を解いたジャグラーがその服装に着替えた。
「さて、行動するか」
不敵な笑みを浮かべながらジャグラーは塔内を歩き始めた。
自身の目的を果たすために。
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「ここにあったか、蛇心剣よ」
塔内の中階層をあらかた調べた結果、蛇心剣の居場所も判明してことやついでにこの塔の警備システムやガーディアンの仕組みについても分かった事があった。
ここに来るまでに何度かガーディアンに遭遇しかけたが潜入も得意なジャグラーにとって見つからずに行動するというのは造作もない事だった。
ここのガーディアンは塔の最上階にある電子パネル室のデバイスによって管理されている。ガーディアンの徘徊ルート、行動パターンに索敵範囲の設定…それに武器管理や起動停止の操作もだ。
おまけに警備システムもそこに集約されてると来た。
絶対にたどり着けないと自負しているのか……あるいは相当な馬鹿なのかどちらかだろう。
それにご丁寧にこの塔の案内地図までここにあったものだからこれで容易に最上階に行く事ができる。
「まずは警備システムからだ。その後にあの王女だな」
邪心剣を片手にジャグラーは塔内を走る。この中階層から最上階まではかなりの高さがあり先程通ってきたリフトに乗り込み上層階、最上階へと進んで行く。
最上階までには時間が掛かりつかの間の休息が取れたがしばらくするとこのリフトに警報が響く。
『塔内に告ぐ!囚人ジャグラス・ジャグラーが逃走した!各員は至急拿捕に迎え!』
「流石に星間連盟もそこまで馬鹿じゃないか」
ジャグラーはほくそ笑む。
だがもう遅い。
既にリフトは上層階を抜け最上階へと辿り着く。このままバレずに行うのも悪くはなかったがバレたならば仕方ない。
やがてリフトは最上階へ到着し、ジャグラーは案内地図に記載されていた電子パネル室へと向かい出す。
と言ってもそこまで複雑な道のりでもなくリフトから走って1つ目の角を曲がると電子パネル室の扉がある。
扉を蹴飛ばす様に勢いよく開けると恐らく電子パネル室の管理者であろう人物が2人。
突然開いた扉に大きく驚いた2人だが、その隙にジャグラーが蛇心剣で斬り伏せる。
「ま、こんなもんか」
部屋には数々の電子モニターや、コンソールパネルが設置されてここから各システムや塔内の状況を確認することが出来る。ジャグラーはパネルを操作すると塔内のセキュリティやロック、防衛機能システムを除いた全てのシステムをシャットダウンさせる。
「囚人や星間連盟の諸君、今起きた現状にさぞ混乱していることだろう」
アナウンスマイクに声を掛けるジャグラー。ここから刑務所全ての場所に設置されたスピーカーからジャグラーの言葉が通して伝わる。
「これはお前達の処刑が決まった訳でも、そして助けが来た訳でもない!お前達はここで俺の―――」
この言葉を言った数分後にはここが地獄と化す事を想像することすらしなかった囚人達はスピーカーから放たれる音声に息を呑んだ。
「力の生贄となれ」