光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
時系列はカケル達と別れた直後の話です。
ジャグラーさんはトーアに対して何か気づいた様子でしたが果たして…。
◇ビランキ
「ジャグラー様、今から行きますね」
カケル達と別れた私はこのイシュタールの街の大通りを歩いていた。理由は勿論ジャグラー様を見つける為だ。
普段は大勢の人で賑わうこの大通りも怪獣の出現によって無人となっていた。
どこもかしこも開いていた店は閉じていたり、さっきの戦闘によって崩れた家が荒れ果てた街を想起させる物だったがここはあくまで街の端も端。中心部にでも行けばまだ賑わっているだろう。
「神殿って言ってたわよね…。この街の近くにある神殿と言えばあの場所しかない筈」
昨日の夜の出来事だ。
カケルと共にジャグラー様を見つけ出した時、ジャグラー様は確かに神殿に戻って祈ると言っていたのだ。その時は同行を拒否されたし、カケルも一度撤退すると言って渋々ながらも帰ったのだけれども今回はそうはいかない。
ジャグラー様の言う神殿とは恐らくこの街から少し離れた所にあるポツンと建てられていた石造りの建造物の事だろう。
森林の中に存在するその神殿は私が興味本意で探索していた所、偶々見つけた物だ。
その時は特に気にもしなかったし何より神殿とは言ったものの、実態は5m前後のピラミッド型の建物の頂上にポツンと小さな祭壇のような物があっただけだ。
意味も無さそうだったのでその神殿の存在を誰かに言うこともなかったのだがもしかするとそこにジャグラー様がいるかもしれない。
そして街の外にでて神殿がある森に入り、少し歩くと例の神殿が見えた。
神殿にたどり着いた私は階段を登り祭壇の前に来たが前に来たときとは違った光景がそこにあったのだ。
「あれ…祭壇の場所がズレてる…」
前に来たときは中心にその祭壇があったもののそれがズレて隠し通路が存在していた。どうやらこの隠し通路は神殿の建物の中に続いているようで梯子で降りれる様になっていた。
もしかするとこの下にジャグラー様がいるかも…。
そう思った私は警戒する事もなく梯子を降りていったが違和感に気づく。
5m前後の建物だというのに何故か床が見えない。神殿の外の階段を登った感覚で考えると梯子を降りていったらすぐ床が見える筈なのだが一向に見えない。
それどころかまだまだ地下深くまで続いていそうなこの隠し通路は下が何も見えない暗闇になっているからか何処までも果てしなく続いているように思えたのだ。
足を次の所に掛けようとした瞬間、その掛けようとした所が外れて私はバランスを崩し体を支えていた手を梯子から離してしまったのだ。
「きゃぁぁぁぁぁ!?」
このまま落ちてしまう―――と思われたがすぐ床に激突した。
「いたた…。やっと辿りついたの…?」
この真っ暗な空間で床なんて見えもしなかったので死を覚悟したが実はもう少しで梯子を降りきる事が出来たのだと分かるとすぐに立ち上がって服についた砂を取り払った。
前を向くとそこには1人分の人間が入れるような通路があり、少し奥には松明に火が灯っているのか灯りがあった。
不気味ながらも前へ進むと徐々にボソボソと声が聞こえたのだ。
誰かがいるのか…もしかするとジャグラー様なのかもしれない。
そう思った私は急いで灯がある方へ走り出したが、そこには誰もいなかった。
あるとすれば長方形で大きく、天然ものとは思えない綺麗な石の上に鏡のような物が1つあるくらいだった。
「あれ…?おかしい…さっきまで声が聞こえた―――」
「こんな所まで何しにきた」
背後から声がした。
急いで振り返るとそこには壁に寄りかかりながら腕を組んでいた愛しのジャグラー様がいたのだ。
「ジャグラー様!」
「フン」
「痛っ」
愛しのジャグラー様の方へ抱きつこうとしたものの、避けられてそのまま壁に激突した私は小さなうめき声を上げた。
当たった額に手を当てつつジャグラー様の方に視線を向ける。
「どうして避けるんです…?」
「逆に避けられないと思ったのか?それに言った筈だ、金輪際関わるなと」
明確な拒絶。
しかし臆することなく私は声を上げる。
「嫌です!私の中にはジャグラー様が常にいます!だから離れたくありません!」
「その割にはアイツらと仲良く暮らしてたな?俺を追いかけるなら1人でも出来た筈だ」
「確かに1人でも出来たかもしれません。けれどカケルとならば効率は段違いに上がります。つまり利害の一致です」
「はぁ…。つくづく厄介に思えるなカケルは」
ため息をつくジャグラー様。
そうよ、確かにこの1年間仲良し小好しそうにやってたけれどもジャグラー様を見つけた今はそれらから離れてでもジャグラー様を追いかける。ジャグラー様は私の中で他の何よりも優先されるのだ。
「で、お前は何をしにきた?俺の邪魔でもしにきたのか?」
「ジャグラー様の側に居たいだけです!」
「…………邪魔をしないというならそこで見てろ」
そう言うとジャグラー様は鬱陶しそうに手を払うがそこは私。意地でも離れないわ。
ジャグラー様が鏡の前に立つとどこからともなく黒いリングを取り出した。
あのリング……ガイのと似てる…。
「ジャグラー様、それは?」
「…後で説明してやる。黙って見てろ」
そう言うとジャグラー様はリングを地中に向けて掲げると周囲から禍々しい闇のエネルギーがリングに収束されていく。そしてそのエネルギーは1枚のカードとなって現れるがジャグラー様が手に取った途端に粒子となって霧散していった。
「これが何か分かるか?」
黒いリングを私に見せびらかしたジャグラー様。
今のを見る限りだと……ガイのとは違いエネルギーをカードに変換する物だろうか?ジャグラー様にそう言うと「少し違う」と返答されたのだ。
「コイツは怪獣の力を宿したカードを実体にする事が出来るが本質は違う。コイツは持ち主の力を増幅させる事が出来るんだ」
持ち主の力を増幅させる。
確かにジャグラー様はそう言ったのだ。
そして私はある事に気づく。
「もしかしてそれは他者にも分け与える事ができる?」
「鋭いじゃないか。そうだ、何も増幅させる事が出来るのは持ち主だけじゃない。持ち主の意思で他者にも力を与える事が出来る」
それが行き着く先―――つまりジャグラー様がいましている事とは。
「マガタノゾーアの…復活…?」
「と、思っていたんだがな」
「え?」
ジャグラー様の帰ってきた言葉は予想と反する物だった。
ジャグラー様の狙いは恐らくマガタノゾーアだ。それを復活させて何をするのかは分からないけれど…今のジャグラー様の雰囲気を見るにジャグラー様にとっても意図していない事が起こっているようだった。
「今から半年前。お前らの後にこの地球に降り立った俺はマガタノゾーアを復活させようと、マガタノゾーアに力を最も効率よく与える場所を探したが俺が降り立った頃には既に闇の力がこの地に充満していてな。ここも闇の力が最も濃いから使っているだけだがそうじゃない」
「えと…つまり」
「俺の手伝いがなくとも闇の魔王獣マガタノゾーアは既に自力で封印を解いていたのさ。だが奴はまだ現れない、何故だか分かるか?」
マガタノゾーアが封印を解いているのにも関わらずまだ出現する気配もない。魔王獣とはそこにはいるだけで惑星に多大な影響をもたらす。ましてや本能でしか行動出来ない魔王獣が何故出てこないのか。私は頭に疑問を浮かべるとジャグラー様はせせら笑った。
「奴は自身の力を強くしているのさ。闇の魔王獣が好むのは怒りや恨み、負の感情こそが奴のエネルギーになる。だから奴は1つ手を打ったのさ。奴の端末とも言える擬似的な生命体を作り出し地上に送って人間共の負の感情を強引に引き出し、そのエネルギーをマガタノゾーア自身に還元させる事で力をより増幅させるのが目的だ」
「擬似的な…生命体…?」
「カケルの側にいた小娘、それが奴の正体だ。まあ小娘自身にその自覚はないだろうが、俺からすればどうでもいい」
ひょんな所から現れたあの小さな娘がマガタノゾーアの端末…?そんな…それじゃあの子は…。
「俺の目的は魔王獣の力をこの身に取り込み奴らの力を得ることで光の戦士を越える。今なら俺の事を止められるかもしれないぞビランキ?」
様々な事実と出来事が浮かび上がる中、私はただたじろぐだけだった。
というわけで既にダークリングはジャグラーの元に渡っていました。
そもそも魔王獣を復活させようとしている時点で中々に邪な心の持ち主ですしある意味運命力もあったのでしょう。