光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
◇カケル
あの聞いただけで頭を掻きむしりたくなるような声を背に、俺は少年少女2人を抱えて丘に急行する。
すると、背後から大きな光が出現していた。
恐らくガイさんがウルトラマンに変身したのだろう。
ガイさん―――ウルトラマンオーブの背中を少しだけ見て再び前を向く。
(すぐ戻ります…待ってて下さいガイさん!)
そうこう移動している間、俺はスレ民の皆に何か少しでも打開策がないかどうか聞いていた。
魔王獣の生態、マガタノゾーアの原種たるガタノゾーアの事に攻撃方法に備わっている能力…その他諸々ありとあらゆる情報を聞き出すかつ何か役立つような事をスレ民の皆に調べて貰っていた。
そしてスレ民の話を聞く限りではマガタノゾーアが出した被害の規模が超全集に書かれている事よりも大きいらしい。
まず出現した時に闇の瘴気が街全体に溢れ出てくる事はなく、崩壊する前に起こっていた街の人達の突然の豹変もなければマガタノゾーア討伐後まで見ても街の人達が死ぬような記述は書かれてない事だった。
そっちのガイさんは守りきれたんだな、なんて感傷は抑えつつスレ民の皆に聞く限りやはり今回のマガタノゾーアは強さレベルが異常すぎるとの事。
原種でもあるガタノゾーアにも迫りそうな勢い、とスレ民の皆は言うが魔王獣って名乗るくらいだからそれくらいあってもおかしくないとは思うが…。
その上弱点らしい事も描かれている訳でもなく原種であるガタノゾーアも弱点らしい弱点もないとは…。
まあ弱点なんてあったらそもそもティガ先輩や地球の人達があそこまで苦戦することはなかったとスレ民が言うがどれくらいの規模をやらかしたのかとスレ民の皆に聞くと古代文明を一度滅ぼしてる実績があるかつティガ先輩が活躍していた現代でも滅ぶ一歩手前、勝てたのも文字通り奇跡が起こったから勝てたのものとの事だ。
それに迫りそうな勢いだというのだから尚更マガタノゾーアがやばい奴だと再認識する。
けれども、スレ民の皆はこうも言った。
ティガ先輩の最強の姿、グリッターティガになる前はほぼ1人でガタノゾーアを相手にしていた。けれど、俺の場合は違う。
今この星にはウルトラマンが2人もいる、それが決定的な違いだと。
そうこうしている内に俺は丘にダーナちゃん達がいる丘に辿り着いた。
「カケルさん!あの怪獣って」
「ごめんダーナちゃん今説明している暇がない!この子達を!」
「もしかして生存者!?…分かったわ預かります」
俺は抱えていた少年少女をダーナちゃんに預けるとふと誰か欠けているように思えた。
ダーナちゃんとショーティー君、それにトーア……トーア?
少し周りを見るとトーアだけこの場からいなくなっていた。
「2人共、トーアは!?」
「え…?あれトーアちゃん!?」
「おかしい!?さっきまで一緒に居た筈なのに!」
…この開けた丘で人が動こう物なら気づかない筈がない。
2人の様子を見るにさっきまでは居たようだが……今はトーアを探せるような時間も余裕も俺にはなかった。
「2人共、絶対にここから動いちゃいけないよ。トーアの事は後で探そう」
「兄貴!俺ならトーアを探せ―――」
「駄目だ。ただでさえマガタノゾーアがどれだけの規模で災害をもたらすのか分からないのにショーティー君まで危険な目に合わせる訳にはいかない」
「で、でも!」
恐らくだがショーティー君は後ろめたい事を考えているのだろう。何せすぐ側にいたのにいなくなった事を気づけなかった自分に対して罪悪感とか色んな想いを抱いていると思う。
けれど俺はショーティー君の頭に手を置いて落ち着かせるように呟く。
「ショーティー君、君まで危ない目にあってしまったら…俺達は戦いに集中出来なくなってしまう。だから危険な事はしないで欲しい。大丈夫、トーアも絶対に見つけてくるから」
「……ッ。ごめん…カケルの兄貴…」
歯がゆい顔をしたショーティー君は俺の言葉に同意を示した。
……トーアの事は気にならないと言えば嘘になる。何処に行ったのかも何をしに行ったのかも分からないけど…きっとトーアは生きている。ただの直感だけど……きっと。
俺は振り返る。
今まさにガイさんがマガタノゾーアと戦っている。
無数の触手の攻撃に晒され、オーブカリバーで何度も何度も切り捨ててる。
今行きます、ガイさん!
◇ガイ
「ハァッ!!」
地面から這い出てくる無数の触手をオーブカリバーで何度も切り払う。
オーブはマガタノゾーアに接近しようとすればする程、この触手によって進行を阻まれていた。
どこからこれ程の触手が出てくるのだろうと思ったが相手は魔王獣、これくらいの事は訳はないと悟るとオーブはマガタノゾーアから距離を置いてオーブカリバーに宿る土のエレメントを起動させた。
「オーブグランドカリバー!」
剣先を地面に突き刺し純粋な土のエレメントのエネルギーを地中に流し込む。普段のオーブグランドカリバーならばそのエネルギーを相手の足元にまで伝わらせて攻撃するのだが今回は違う。
地中から触手が出てくるというのならばその触手の発生源に攻撃すればいい。
オーブの目論見はどうやら当たったようでエネルギーがマガタノゾーアの触手に当たった事が感覚で分かった。
これを好機と見て、オーブはマガタノゾーアに接近した。
「シェアァァッ!!」
「オァァァァァン!!」
オーブカリバーで、マガクリスタルが露出したその顔を切り裂こうとするも触手とは違いマガタノゾーアの体から伸びていた大きな鋏1つだけでオーブカリバーを受け止めた。
オーブとてそれを分からなかった訳ではない。オーブカリバーはあくまで囮として使い、受け止められるや否や即座にオーブカリバーから手を離しマガタノゾーアの顔に拳を叩き込む。
そして顔を殴れた事でオーブカリバーを掴んでいた鋏が一瞬緩んだ事を見逃さず、オーブカリバーを鋏から引っこ抜くと今度はオーブカリバーでマガタノゾーアを切り裂いた。
が……。
「グッ!?」
「オァァァァァァン!」
「グアッ!?」
オーブカリバーで斬られたのにも関わらず、口から紫色の光線をオーブに放った。
間一髪で避ける事が出来たオーブ。その紫色の光線は遠くに放たれイシュタールの半壊した街に当たるとその光線が当たった部分だけ石化現象が起こっていた。
それに少し驚いたオーブだがその避けた隙を狙ったかのように大きな鋏でオーブの首を挟んだ。
苦しそうに藻掻くオーブだがマガタノゾーアは残りの空いている鋏でオーブに強烈な打撃を与えていく。
決して安くはないその痛みは、しかしながら避ける事など出来ずにいた。そしてマガタノゾーアは地中から再び触手を出すとオーブの両腕両足をしばり上げ空中で身動きが取れないようにされたのだ。
「グッ…クソッ……!」
マガタノゾーアは再び口にエネルギーを溜め込み今度こそ仕留めんとオーブに狙いを定める。
マガタノゾーアが放つあの石化光線に当たればほぼ死に等しい。
なんとか藻掻こうとするオーブだが四肢を縛り上げているこの触手を振りほどくにはどうしても時間がいる。
まさに光線が放たれようとした時、別の方向にからX字の斬撃がマガタノゾーアに飛来した。
斬撃が命中したマガタノゾーアは発射しようとしていた光線を途中で止めてしまう形になっていた。
マガタノゾーアは斬撃が飛来してきた方向に向くと青い光がオーブの元へと駆けつけて縛っていた触手を目にも留まらぬ早さで切り落としていった。
これには流石に驚くマガタノゾーアだが次の瞬間、その青い光はオーブと同じく巨人の姿へと変貌してマガタノゾーアに対してエネルギーを纏った拳で殴りつけた。
「オァァァァァァァン!?」
しかし殴られたマガタノゾーアは対してダメージもなければ少し後ろに後退した程度に収まったが、自身に攻撃を加えた者に対して忌々しくも思える目で睨む。
「ガイさん!遅れました!」
「来てくれたか、カケル」
青い巨人―――ウルトラマンフィフティはオーブに手を差し伸べ、再び立ち上がらせた。
邪神は吠えて、ウルトラマン達は再び邪神と相見えるのだった。