光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
時系列はカケル達が来る前のお話です。
巨人。
光の巨人。
目の前で立ち上がった2人の巨人を見たマガタノゾーアは忌々しくも自身の内にある記憶からある出来事を思い出す。
かつて自身が生まれた時、まるで自分が生まれてくる事を予め分かっていたかのようなタイミングで現れたこの2体の巨人とは違う光の巨人。紫、赤、銀とカラフルな体色をした巨人だったがその強さは計り知れなかった。
触手で攻撃すれば全身が紫色に染め上がったと思えば急激にスピードが上がり、縦横無尽に動いて触手を全て切り落としたり今度は持ち前の鋏を持つ腕で攻撃すれば赤く染まり自身の腕を全て腕力だけで跳ね除けた。
切り札たる闇の瘴気…マガ冥暗で攻撃してもびくともせず、その圧倒的な強さで自身を封印せしめたのだ。
忌々しくも思い出したくない記憶……しかし我はこの憤怒と憎悪を決して忘れなかった。
封印されて果てしない時間を無為に過ごす中、我に声が聞こえたのだ。
闇をより強力な物にせよ、と。
そして突然溢れ出した我が経験したことのない記憶。
我の姿に酷似したその者の記憶。
かつて、星1つを全て闇に覆い尽くし文明を滅ぼした記憶。
もう1つは発展した文明をもう一度滅ぼそうとしたが、星を再び闇で覆い尽くすも幾つもの小さな光が集まり巨人の姿となってその者を滅ぼした記憶。
我は歓喜と絶望を同時に理解した。
1つは闇で文明を滅ぼせると明確に分かった事。
もう1つは最後にはあの光の巨人が現れ、自身を滅ぼしうる事になる事。
認めてなるものか。
光の巨人―――そう光の巨人だ。
奴らさえいなければ我は思う存分に力を振るう事が出来るのだ。
ならばこそ先程聞こえた声に従うとしよう。
どれほど強大な光でもそれがちっぽけに思えるくらい巨大な闇となって奴らを滅ぼさん。
手始めに我は封印を解いた後、自身の力で闇の力をより強力にするため擬似生命体を作り出しとある能力を備える事にした。
それは文明人が持つ負の感情を強引に引き出し、そのエネルギーを我に吸収させる事だ。
確かに文明人が持つ「光」とやらは大きいのだろう。
不本意だがそれは認めよう。
だがその逆は?
文明人は光の巨人とは違い小さく吹けば飛ぶような生命体であり、その情動も行動も混沌そのものだ。
奴らが内に眠る光を呼び起こすなら我はその真逆の事を為し、強くあろう。
地上世界には1体の我の擬似生命体を送り出した。
その場にいるだけで文明人の負の感情を引き出しそれをその擬似生命体に集中するように細工してあり、それを我に還元させるのだ。
擬似生命体には言語能力と記憶を封じてある。
擬似生命体とはいえ我から作り出された物、それは我ではないが我である。記憶を封じる事で我という存在を認識させず、言語能力を封じる事で他者より異質さを出させる事でより不気味な存在となるだろう。
擬似生命体の姿は文明人の雌の姿が良いだろう。文明人は相手を自分より下の人間と認識するとより残虐性が増す。
我の計画は静かに実行されていったのだ。
擬似生命体を地上世界に送り出してから数年の時が経った。
数年だ。たった数年だけでここまで闇の力が増大した。
やはり彼の者の声は正しかったのだろう。今の我ならば文明どころか星1つ、容易く滅ぼせる。
だが我はまだ動かない。かつて我を封印した光の巨人は既にこの地にはいなかったのだ。
だが奴らとて馬鹿ではない、我が封印を解いたと察知して来る筈だ。
それまでゆっくりと闇をより強力な物にしておけば良い。ここ数年で気づいたが、文明人の感情と言うのは底が知れない。これだけ負の感情を引き出しているというのにも関わらずその勢いは止まる事はなかった。
お陰で我の闇がより強力になったのはいいが…やはり文明人というのも侮れないな。
光の巨人と相対する時、手始めに文明人から滅ぼす事にしよう。
今は我の贄となっているがこれが逆転する恐れもある。彼の者の記憶にあったあの輝きに文明人が転じてしまえば今の我でもどうなるか分からない。
遂に時は来た。
光の巨人が遂にこの地に現れたのだ。
今は小さき者としてこの地に根付いているようだが我には誤魔化せぬ。しかも光の巨人は我が存在する位置の地上にある文明人の集落に来たではないか。
奴らも我が狙いなのだろうがそれは我とて同じこと。
物のついでだ。擬似生命体を光の巨人がいる集落に向かわせ最後にそこの文明人の負の感情を吸い取った時、我は姿を現そう。
復讐の時は近い。奴らの光を我の闇で徹底的に潰し、全てを滅ぼそう。