光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある   作:ウルトラネオン

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皆さん、3ヶ月の間お待たせしました。

少しショッキングな描写が入っています。ご注意を



激突!マガタノゾーア!5

◇ガイ

 

「ぐふっ…がふっ…」

 

マガタノゾーアが最後の最後で自爆に走った事で大きく吹き飛ばされた俺はぶつかった瓦礫の中からかき分けて起き上がる。まさかマガタノゾーアが最後に自爆じみた事をするとは思ってもみなかった。

 

かなりの痛手を貰った上に疲労困憊、立ち上がるだけでいっぱいいっぱいだったがともかくこれでようやくマガタノゾーアを倒せた。

そして………周囲を見回すと最早街の痕跡は存在せず瓦礫と光線の熱でガラス状になった箇所が数か所残るばかりのだった。

 

「くっ………」

 

 

マガタノゾーアを倒せたのはいい。だけど守るべき街の姿はもうない。惑星単位で考えればたかだか街1つかもしれないがそれとこれとは別である。

ウルトラマンにとって大きいも小さいも関係ない、全て等しく同じなのだ。だからこそ星は救えても街を救えなかった俺はどうしようもないくらいに悔しかった。

 

守りたかった。

 

でも守りきれなかった。

 

考えれば考える程あの時こうすれば、なんて考えがよぎる。

本当に数少ない命を救えたが、本当ならばもっと多勢の人達を守りたかった。

拳を瓦礫に叩きつけて八つ当たりをする。けれども返ってくるのは瓦礫が砕ける音しかこなかった。

 

ふと、何か光ったような気がした。

 

「何だ…?」

 

少し先に何か赤く光る物があった。俺はフラフラしながらもその赤く光る何かに近づくとそれは巨大なクリスタルだった。

魔王獣の証―――マガクリスタルが煌々と赤く輝いていた。

するとオーブリングが反応している事に気がついたので取り出すと、目の前のマガクリスタルが粉々に砕け散りオーブリングの輪の中に吸いこまれていくとある1枚のカードが出現したのだ。

 

「これは…ウルトラマン…ティガさん…」

 

現れたのは光のカード、ウルトラマンティガの力を内包したカードだった。

元々、魔王獣とは俺達が来る遥か前からこの地球に降り立ったとされるがそこで生まれた魔王獣達を封印したのは先輩方のウルトラマン達だ。

その封印した際に残った光のエネルギーがオーブリングを通してカードと化したのだろう。

 

「世話になります…ティガさん」

 

カードホルダーにティガのカードを仕舞こんで俺は前を向いた。共に戦った後輩……カケルとひょんな事から一緒に行動するようになったトーアの元へ足を動かした。

まだ傷も疲労も治ってないせいか歩く度に倒れそうになってしまうがなんとか踏ん張り、前へ前へと足を進めていったのだった。

 

 

 

 

 

 

◇トーア

 

 

「……っ」

 

とてつもない爆風に巻き込まれた私はなんとかその場に踏みとどまっていた。カケル達の戦いで恐らく倒された筈だろう、邪悪な者は既に存在しなくなっていた。けれどもそれと同様にカケルとガイさんもいなくなっていた。

 

「…?…?」

 

辺りを見回しても何処にもいない。

恐らくさっきの爆発の余波で2人共吹き飛ばされたのだろうか、巨人の姿は見当たらず私はこの瓦礫とガラスと成り果てた穴ぼこだらけのこの街で2人を探し始める。

 

暫く歩いてると1人クレーターの中心で倒れている人影が見えた。ガイさんやカケルがいつも着ている様な服装からして間違いなく2人のどちらかだと思い、脇目も振らず駆け寄るとそこに倒れていたのはカケルだった。

 

「…!……!」

 

倒れているカケルを揺さぶってみるが起き上がらない。息はしているから死んでいる訳ではないのたがそれでもかなり衰弱している為危険な状態な事には変わりなかった。

 

「………!……………!」

 

 

嫌だ嫌だ、死んで欲しくない…!

やっと…やっと初めて楽しいと思えたんだ。カケルといること…ガイさんやショーティー、ダーナお姉ちゃん、ビランキお姉ちゃん。

あの人達がいたお陰なのかは分からないけれども、街の人達も私に優しかった。最後は……私が知っている様な人達になっていたかもしれないけど、それでもカケル達がいればなんとかなるって思っていた。

 

けれども、あの邪悪な者が全てを無に返していた。

あの邪悪な者はカケル達の様な存在をとても憎んでいた…だからあの闇で人を滅ぼし、カケル達も滅ぼそうとしていた。

実際な話、カケル達ではあの邪悪な者には勝てる見込みは無かったのだ。

あの闇はカケル達が来るまでの間にとんでもない程に人の負の感情を私から経由して闇を取り込んでいた。

 

かつてあの邪悪な者を封印したあの光の巨人の力でもないと邪悪な者は倒せない…だから私の持つ負の感情を取り込む能力を逆手にとってカケル達を―――あれ?

 

なんで私は負の感情を取り込む能力を持っているなんて考えているの…?

そんなもの知らない。光の巨人を憎んでいるとか私を経由して負の感情を取り込むとか意識も自覚もしたことないし知らないのに…?

なんで?なんで私は私の知らない事が分かるの?

 

記憶に自覚を持った瞬間、ざわざわした感覚が私に襲いかかってきた。

 

「…!?」

 

知らない記憶。

邪悪な者―――マガタノゾーアの力で生み出され、地上で幾つもの街を、人を巡って負の感情を引き出して回収する役目。

光の巨人達を倒す為の下準備として生み出されただけの存在。マガタノゾーアの一端の存在。

 

人が私にあんなにも痛い事をしてきたのは全て私が持つ能力が原因でそれが巡り巡ってマガタノゾーアの力となった……つまり街を破壊していったのにも原因は私にも―――

 

「よう、小娘」

 

私の首元に1つの刃が突き出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

◇ジャグラー

 

「よう、小娘」

 

蛇心剣を突き出した俺はジッと小娘を見つめる。

小娘の顔は焦燥と絶望で歪んでいた。恐らく自覚したのであろう、自分の存在がどういう物なのか…小娘の身体から闇のエネルギーが溢れ出していた。

 

「その顔、ようやく自覚したようだな。自分が何者なのか」

 

「………ッ」

 

「そうだ、一端とはいえお前はマガタノゾーアそのものだ。ならば俺の剣がお前に突き立てている理由も分かるよな?」

 

小娘が蛇心剣を見て少しだけ頷いた。

 

「今までのお前ならばただ他者の闇を引き出すだけの存在だった、だが今は違う。マガタノゾーアの闇をその身に取り込んだ事で今はお前が第2のマガタノゾーアと成りかねない」

 

「…………」

 

「自覚しているんだろう?見ろ、この惨状を。カケルの状態を」

 

そう促すと小娘は少し周囲を見渡し、最後にカケルに目を向ける。小娘の顔は次第に段々と悲しげな顔になるが俺は淡々と事実を伝える。

 

「これがまた起こるんだ。今度はお前自身の手で」

 

「……ッ!」

 

「そんなことは無いってか?おいおい面白い冗談だな、今にもマガタノゾーアの闇に押し潰されそうなお前にどんな説得力がある?」

 

「…………」

 

「そしてお前は最も凶悪な姿になる。他者の絶望を引き出し力に変えて、自我もないまま魔王獣としての本能のみで暴れだし星の生命を全て闇に還す存在と成るだろう。それが今すぐなのか遥か未来になるかは知らんがな」

 

と、言った所で俺は懐からある1枚のカードを取り出す。

そのカードには先程カケルとガイが倒したマガタノゾーアの姿が映しだされていた。

 

「…!?」

 

「あいつらのお陰で手に入ったお前の力だ。よく見ていろ」

 

俺は自らの身体にカードを勢いよく挿し込んだ。

マガタノゾーアのカードはやがて俺の体内に入っていき、その闇の力が瞬く間に身体に循環する。

闇の力は俺自身の持つ闇の力と融合を果たし自身の力となってより強くなるのだ。

 

「…!」

 

「お前がマガタノゾーアを強くしたお陰でより俺も強くなれた…ぐっ!?」

 

だがそう簡単には行く筈もなく俺はマガタノゾーアの闇に苦痛を強いられた。もし強くなっていない元来のマガタノゾーアならばここまでの苦痛はない。それだけマガタノゾーアがこの小娘によって強くなっていたという証でもある。

 

これに慣れるのには時間がいるが、俺にはもう1つ目的がある。

 

「!?」

 

「ふぅ…そう驚くな、今はまだ慣れていないがいずれ慣らす。

それより他人の心配をしている場合か?次にお前がどうなるのか」

 

「…ッ!?」

 

小娘の闇の力がより溢れ出てきている。苦しいのか小娘は膝を付き、かなり疲れているにも見える。

だが、そんな姿を見ようが俺は剣を引くことはしなかった。

 

「そら見ろ、よりその力に押しつぶされかけてるぞ?この様子だとマガタノゾーアになるのも早そうだな」

 

「…………ッ」

 

「小娘、覚悟しろ。俺がお前を殺してやる」

 

「!?」

 

「何故驚く?当然の話だ」

 

「………ッ!」

 

「俺から見てもその闇はお前に制御できない。お前は必死に生きようと足掻いてるかもしれないがお前が藻掻いた所でマガタノゾーアになるのは避けられない」

 

小娘が大きく目を開いた。

事実だ、今この瞬間すら闇を制御しきれず苦しんでいる。

それを制御できるかどうかは己次第だが余りにも黒い闇がその身から溢れ出ている時点で自明だ。

こいつにマガタノゾーアの闇は制御できない。だからこそ俺の手で殺す。それに―――

 

「お前がマガタノゾーアになってしまえばどうなるか……今度こそカケルとガイは死ぬ。何故だか分かるか?」

 

「………」

 

「アイツらは甘い。お前に仲間意識を持っている時点でアイツらはお前に攻撃することを躊躇ってしまう。ましてや今回のマガタノゾーアの戦いでかなりの重症を負ったんだ、激戦は必至。そしてお前はマガタノゾーアに飲み込まれ自我を無くし本能のままにアイツらを攻撃して…最後はその手で殺すんだ。そうはなりたくないだろう?」

 

「……………ッ」

 

小娘の顔が更に弱々しくなる。

あの2人は本当に甘い。離別した俺にすらまだ仲間意識を持ち関係を絶たないようにしてくるのだ。小娘とて例外ではない、だからこそそこに隙ができてしまう。

戦場とはシビアな場所だ。

生半可な覚悟や感情で出てきてしまえば一気に足元を掬われて命を落とすなてザラにある。

 

だからこそここで小娘を殺す必要がある。

 

「…」

 

「覚悟を決めたか」

 

俺は蛇心剣を上げて構える。

涙を少し流しながら意識が戻らず倒れているカケルの方に寂しそうに小娘は微笑んだ後、俺に目を向けて受け入れるかのように両腕を広げた。

……小娘を殺してしまえば、もうアイツらとは完全に決別するだろう。

これでいい、これでこの惨い戦いは終わる。

 

「ジャグラー様っ!待ってください!」

 

後ろから声がする。あれだけ神殿に隠れて身の安全を確保しろと言っていたビランキもどうやらここに来てしまったようだがもう遅い。

 

 

 

俺は蛇心剣を小娘に目掛けて勢いよく振り下ろした―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処からか声がする。

聞いたことがある声だ。

俺の事を邪険に思いつつも心配してくれる人、ジャグラーさんの声だった。

あの人がここにいるという事はマガタノゾーアを倒せたって事だ。

身体を動かそうにもあちこちに痛みが有りすぎてまともに動かせない。

ジャグラーさんの声も俺の視界も朧気ににしか聞こえないし見えない。何を話してるかも誰と話しているかも分からなかった。

スレ民の皆のコメントも完全には認識できずどうやら本当にボロボロの状態らしい。

 

ガイさんは…きっと無事だろう。俺の先輩だしもしかしたら俺よりもっと傷ついてるかもしれないがガイさんならきっと立ってるって思えてくる。

後は…トーアか。

トーアは………考えたくもないけど、きっとマガタノゾーアに連なる者なんだったんだろうなぁ…。

闇の力を吸い取ってたんだしまあそうなんだろう。

 

そういえばトーアは大丈夫なのだろうか?あれだけの爆風だから無事だといいけど…。

 

少し視界がよくなったか?ジャグラーさんの声をする方に顔を向けるとそこには………あのマガタノゾーアの闇の力を放出させていたトーアがいた。

そして、そのトーアに目掛けてジャグラーさんの剣が振り上げられていた。

 

待って、待ってください!?

ジャグラーさんそんな事をしたら駄目です、それだけは…それだけは…!!

ふと、トーアがこちらに顔を向けていた。

涙を流している。

寂しそうに…微笑んでいる。

 

俺はフラッシュバックする。

今生の別れとなった友人―――佐奈があの日見せた笑顔とトーアの顔が重なった。

 

「―――」

 

気づいた時には既に体が動いていた。

動けない筈の体が無意識の内に動き出し超スピードでジャグラーさんの前に立ちはだかった。そして、ジャグラーさんの振り下ろした剣は俺に当たる。

 

 

斬られた感覚があった。

肩から下にかけて引き裂かれるような感覚。

血の代わりに出てくる光の粒子。

 

ただでさえボロボロだった体は今完全に力を無くし、両膝をついた。あぁ……これは死ぬな…俺。

 

ジャグラーさんが驚愕の顔を見せる。

多分…俺が立ちはだかるなんて思っていなかったんだろう。

それにこの死に方は…ジャグラーさんの心に何か残すかもしれない…。俺だってこんなのされたら心にくる。

 

けれどもそれ以上にトーアを殺させる訳にはいかなかった。

後ろにいるトーアが俺の肩を揺さぶってくる。

振り返ると今にも泣きそうな…いや、もう泣いてるな…。

 

トーアから放たれてる闇の力もさっきよりもより大きくなってる。

俺は最後の力を振り絞り、光の力でトーアの闇の力を強引に抑え込む。これで暫くは持つ筈だけど…後はガイさんが上手くやってくれるだろう。

 

トーアが泣きじゃくりながら俺に縋りよってきた。

もう…やばいな…意識が飛びそうになる…。

けれど…けれども最後にこれだけは言わないと………。

 

 

 

 

「生き…ろ…トー…ア……」

 

トーアの頭を撫でて完全に意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

トーアの隣に横たわるように倒れるカケル。

その場に居た者達の抱いた感情が渦巻いていた。

 

トーアは大切な人を失い届かない場所などないと思わせるかのよう泣き叫び、ビランキは自分が愛している人がカケルを斬り裂いた事に言葉に表せないような感情を覚え、ジャグラーは信じられない物を見たかのように倒れたカケルを震えながら見つめ、手に持っていた蛇心剣を思わず取り落としてしまっていた。

そして―――

 

 

「ジャグラァァァァァァァァ!!!」

 

 

この場で最も激情に駆られたのはカケルを斬った所を見てしまったガイだった。

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