光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある   作:ウルトラネオン

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1人失って

「嘘…よね…?」

 

「そ、そんなことないって!カケルの兄貴がそんな簡単に死ぬ筈ないよ!ほら、カケルの兄貴!いつもみたいにパッて起きてくれよ!」

 

戦いを終えた俺はトーアを引き連れてダーナとショーティーが待つ丘へと赴いていた。

背にはカケルの遺体を背負っていてショーティーがカケルを揺さぶったり叩いたりしているが何の反応も示さなかった。

 

隣にいるトーアもまだ涙を流し、ダーナも信じられないような顔をしている。

仲が良ければ良い程、別れは悲しくなる。だが、これは余りにも―――

 

「(何故―――何故なんだジャグラー)」

 

 

 

 

 

 

 

カケルが斬られた時、偶然そのタイミングで出くわした俺は激しい怒りが身を包んでいた。倒れるカケル、泣き叫んでいるトーア、驚愕の顔を浮かべたビランキ、そして………倒れたカケルを見つめていたジャグラー。

 

『カケル…カケル…』

 

トーアが倒れているカケルに呼びかけていた。

あの喋れなかった子が…涙を流しながらカケルを何度も何度も呼んでいた。

 

それを見た時、俺はジャグラーに殴りかかっていた。

俺は何度もジャグラーを殴り続けたがアイツは一切の抵抗もしなかった。

 

『何故カケルを殺したっ!!』

 

『俺は…俺は……』

 

『お前をあれだけ慕っていたカケルを!どうしてそんな簡単に切り捨てられるんだ!!!』

 

『違う…!カケルを殺す訳じゃ……!その小娘は…マガタノ―――』

 

『だから何なんだ』

 

『…ッ!』

 

グイッとジャグラーの胸倉を掴んでカケルに縋るように泣いているトーアを見せる。

カケルを何度も揺さぶっているが何も起きない。

そして……喋れない筈のあの子が「カケルぅ…カケルぅ…」と声を出して名前を呼んでいたのだ。

 

何がきっかけになったのかは明白だった。

カケルの死がトーアの声を出すきっかけとなっていたんだ。

 

『あんなに涙を流している子が本当にマガタノゾーアみたいな邪悪な存在だと思うのか!?』

 

『俺達はもうあんな悲しみを見たくないから互いに競い合って来た筈だ!それがなんでお前が―――よりによってお前が悲しみを生む側になったんだ!!答えろジャグラァァ!!!』

 

最後に大きく腕を振りかぶりジャグラーの頬に拳を叩きこんだ。

俺達を超える…そう言っていたジャグラーはより強い力を求めていた。

ジャグラーの言っている事にも確かに一理ある。

声だけではどうしても届かない事もあって、けれども力だけで届かない事だってある。俺達と離別したからと言っても目指す場所は同じだと信じていた。

だけどこれは違う。

 

カケルだって守りたい物があった。街の人達もそうだが何よりトーアを守りたかった筈だ。

どうしてそれが分からなかったんだ……。

 

『ぐっ………!』

 

『!?待てジャグラー!!』

 

俺が静止させようとするもののジャグラーは魔人の姿となってここから飛び立った。

追いかけたい―――追いかけたいがそれ以上にカケルとトーアを放って置く訳にはいかなかった。

 

『カケルぅ……!カケルぅ………!』

 

俺の中で感情がぐちゃぐちゃになる。

ジャグラーがしたこと、トーアが悲しんでいる所、カケルを失ったこと。ここにはいないショーティーやダーナの事。

何をどうすればいいか考えても纏まらずただカケルの側に寄ることだけしか出来なかった。

 

近づいた俺にトーアは気づき涙を貯めて俺に視線を合わせた。

 

『ガイ…さん…。カケル…動かない……助けて……』

 

縋るようにトーアは言った。

だけど…俺は………。

 

『ごめんなトーア……俺には……失った命を取り戻す力なんて……ないんだ…だから…』

 

言葉を紡ぐだけだというのに俺はやっとの思いで言うのが精一杯だった。言えば言う程言葉が詰まり震えてくる。

それはトーアがこれ以上傷つく所を見たくないと思ったからか―――はたまた俺自身が何も出来ないのを直視したくなかったからかどちらかは定かではない。

 

俺がウルトラマンになってすぐに出来た後輩。

最初こそは同じオーブの光から力を授けられたというものの何処か不思議な感覚があった。

そして、接して行く内に段々と分かってくる事や時には頼りになる部分も持ち合わせていた。

 

ジャグラーの事を1番気にかけて、何度も関係を崩さず何処までも深入りしようとするその姿に俺は助けられた所もあった。言い方を変えれば…ジャグラーを真っ直ぐ信じられていたのもある意味カケルがいたからっていうのもあった。

だけど…今はもう…。

 

ふと、オーブリングが輝き始めた。

 

『これは…』

 

オーブリングを取り出すとカケルの遺体から少しだけ光が放たれ始めた。その光はオーブリングの輪の中に流れていき、1枚のカードとなっていく。そこに映し出されたのはカケル―――ウルトラマンフィフティの姿だった。

 

『カケル……』

 

カードを取るとそこから色んな感情が俺の中に流れ込んで来た。

これは…カケルが最後に抱いた感情。

申し訳ない気持ち。

心配する気持ち。

そして…託された想いだった。

 

カケルは最後の最後まで俺やトーアの事、そしてジャグラーの事を想っていた事がこのカードから感じ取れた。

 

『カケル…お前って奴は……!』

 

ジャグラーの事を信じられなくなってしまった俺に託すというのか。お前は……本当に…。

俺は…どうしようもなく涙が溢れていた。

 

 

 

そして、場所は変わって今はダーナとショーティーがいる丘にいる。ビランキはというと…あいつも何処かに行ってしまったのだ。ジャグラーを追いかけたのかは分からないが…。

 

そして俺はここに来て尚、迷っていた。

俺はカケルを殺したアイツを許す事など出来ない。

けれども、カケルはそんなことは望んでいない。

相反する意思の狭間で俺は悩まざるを得なかった。

 

皆が悲しむ顔をしている中、俺は複雑な顔をしていたのだ。

と、そこでダーナが「ガイさん」と俺に話しかけてきた。

 

「ガイさんは…これからどうするの?」

 

「俺は……魔王獣を討伐する。元々ここに来たのもそれが理由だからだ」

 

「なら、私も―――」

 

「駄目だ。お前を危険な目に合わせる訳にはいかない。ショーティーもだ」

 

「待ってくれよ兄貴!?俺もなの!?」

 

「ああ、そうだ」

 

魔王獣は強い。もしマガタノゾーア並の力を持つのだとしたら相手の能力が不明な状態で戦うには危険すぎる。今回は本当に偶々ダーナとショーティーは無事だったがこれが何回も続くとは思えない。

それに今の俺の…この状態で2人を守りながら戦うなんて俺には出来なかった。

 

「何ならショーティー、今からお前の故郷に連れ帰ってもいい。そこで平和に暮らした方がいい」

 

「何言ってんだよ兄貴!俺達はずっと一緒だろ!?」

 

「お前も見ただろあの魔王獣を。そしてどんなに過酷な戦いになるのかを」

 

俺がそう言うとショーティーはグッと黙り込んでしまう。

被害の大きさを言えば文明そのものが滅びたも同然で、誰が見ても明らかだった。それを理解しているショーティーはそれでもと喰い付いてくるが俺はその言葉を遮った。

 

「正直な話、俺も怖いんだ。自分が戦って負けたり傷つく事でなんかじゃない。お前達を失うのを恐れているんだ」

 

膝をついて俺は心の内に秘めたものを2人に告白した。

俺は決して万能でも何でもない。万能ならば街は滅びず大勢の人達を助ける事が出来てカケルが死ぬ事もなかった。

けれどそのどれもこれもが最悪の結果となってしまった。

 

それでいざその状況になった時、果たして俺は今までのように戦う事ができるのだろうか?大切な物を…取り零してしまうような事になってしまったら俺は―――

 

「俺のこの手を見てくれ。……震えているんだ。失った事がこんなにも辛い事なんだ。俺は…お前達を守りながら戦う事なんて出来ない」

 

「兄貴……」

 

「ガイさん…」

 

…こんなにも弱々しい俺を見て2人はどう思っているのだろうか?情けないとか、弱いとか…だがそれでも俺は2人に危険な目にあって欲しくなかったのだ。

死んで欲しくない、消えて欲しくない。俺と一緒に入れば必ず危険な事になってしまう。だからせめて2人だけでも。

 

「分かったよ兄貴。俺も、これ以上は我儘を言わない」

 

「ショーティー…」

 

「兄貴が戦う事で俺達が邪魔になるって言うんなら仕方ないよ。……正直、もっと一緒に旅したかったけども」

 

「…すまない」

 

「兄貴が謝る事じゃないよ。けど、これだけは絶対に約束してくれよ」

 

ショーティーが俺と同じ視線になるように腰を降ろしてくる。その目は悲しみとかそういうのではなくて確かな希望が灯っているように見えた。

 

「兄貴は何処に行っても1人じゃない。例え離ればなれでも俺達は心の何処かで繋がってるんだ。それを忘れてないでくれよな」

 

「……ああ、そうだな」

 

「あ、それと時々会いに来てくれよな。離ればなれでも寂しいもんは寂しいし。ね?ダーナ姉ちゃん」

 

「そうね。ガイさんともう会えない、じゃなくていつかまた会いたいよ」

 

「お前達…」

 

離ればなれでも心は繋がっている、その言葉だけで俺はどこか気が安らぐように思えた。

そういえば、初めてカケルとミッションを終えた時もこんな感じだったな…。別れたとしても道は続いていく、けれど今の俺はその道も暗く見えないように思えた。

この想いはきっと簡単に解決するとは思っていない。けれどそれでもこの足を進めなきゃならないじゃないと大切なものを守る事なんて無理なんだから。

 

「でもカケルの兄貴をこのままにはしておくのは不味いよねどうすれば…」

 

「あ、それならお墓を作ればいいんじゃないかな?」

 

「墓…か…」

 

ショーティーの言った通りカケルの遺体をこのままにしておく訳にはいかない。ダーナが提案したカケルの墓を作るという事には俺もショーティーも賛成したが戦いで荒れ果てたこの地に作るというのは俺達は少し想う所があった。

 

「あ、それならカケルの兄貴が言っていた故郷に墓を建てればいいんじゃない?日本って所」

 

「確かにこことは違うとはいえ故郷ならカケルも落ち着くだろうな。そうと決まればすぐに向かいたいが…君達はどうする?」

 

俺は別の方に顔を向ける。そこには俺達が救った少年と少女、そしてトーアの様子を伺った。

この少年と少女は俺達と共に着いて行くと同意を示してくれたが…トーアはまだ顔を俯けたままだった。

 

「私…は…」

 

ふとトーアが言葉を紡いできた。

 

「カケルと…一緒にいたい。もう…離れたく…ない」

 

カケルといる―――それが意味するものとは。

 

「しかしトーア、お前には…その…」

 

「カケルに…生きろって言われた。だから、1人で…やります。やらなきゃ…いけない。そうじゃないと…カケルが安心して…眠れない」

 

確固たる意思だった。トーアはこの先起こるであろう巨大な闇の力の事や生きていく事を1人ですると、ある種の覚悟を決めていたのだ。

目を見るとそこには意地でも譲らなさそうにも思えた。

 

「だから…ガイさんは、行って。カケルが守ろうとしたもの…守って」

 

「…………分かった。なら、これを覚えておくんだ」

 

「…?」

 

トーアは恐らくだが念話とかは分からないだろう、だがその身体に眠る力は何処にいようとも分かる。

困った時があればいつでも話せるように念話のやり方を光の力と一緒にトーアに送る。かつてカケルがメビウスさんにウルトラサインのやり方を教えて貰ったという話を聞いた事があったのでそれをトーアにもした。トーアならばすぐにでも出来るだろう。

 

カケルが守ろうとしたものは人だけじゃない。当然トーアも守りたいものなんだ。だからカケルが残した意志は俺が継ぐ。

 

そして俺達は、カケルの墓を作る為に日本の地を訪れた。と言ってもまだ国と呼べるまでの文明も栄えておらず辿り着いた時は惑星ギレルモを彷彿させるような緑豊かな所だった。

 

墓を立てるのはこの地で最も森が広がっている所を選び、ここで俺達全員は墓を立てる事にした。土を人間1人が入るだけの穴を作ってカケルの遺体が傷つかないように光の力でカケルを保護し、埋葬した。

 

埋葬する時は俺やショーティー、ダーナにトーアは涙を流しながらも…その手を止める事はなかった。

 

 

 

流石にショーティー達をこのままにはしておけないので人がいるであろう村や町を探し続け、カケルの墓から少し遠くはなるが近くに村を見つけたのでそこの住人達にショーティー達を任せておく事にした。

 

トーアはというと村の場所だけ確認すると再びカケルの墓の所へ戻ると言っていた。

自分がいたら迷惑になると、また自分のせいで人々が争ってはいけないからと言った。ダーナやショーティーは反対を言おうとしていたがトーアの気持ちや覚悟を悟ったのか2人は言うのは野暮だと思い、言わなかった。

 

「けれど忘れないでねトーアちゃん。私達は家族のようなもの、だから困ったらすぐに頼ってね?」

 

「それに時々会いに行くからさ。1人になんて絶対させねえから」

 

「…ありがとう。ダーナお姉ちゃん、ショーティー…」

 

「俺は呼び捨てなのな…。まあいいけど」

 

俺の方からもトーアに伝えておいた。

困ったら頼る事、そして制御を失敗してしまいそうになったらすぐに駆けつけると。

そして…何処にいても俺達はずっと一緒だと。

それを聞いたトーアは安心したように頷いた。

 

最後の確認を終えると、俺は立ち上がる。

魔王獣を討伐する為、そして何より自分がこれからどうすればいいのか、その答えを探しに行こう。

5人に別れを告げると同時に「また会おう」と一言だけ残す。

懐からいつも持ち歩いていたハーモニカを取り出し、生まれた故郷の歌を奏でる。

俺はここから再び旅を初める。

 

ガイの姿が見えなくなるまでショーティー達は手を振っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャグラー様…」

 

この荒野で私は愛しの人の名前を呟いた。けどここには誰もいない。

あの時、カケルを殺してしまったジャグラー様の顔はとても見ていられなかった。多分それは私も同じなのかもしれない。

 

「少し…寂しいわね。あのうるさい声が聞こえなくなるなんて…。でも私は振り返らないわカケル。多分今1番傷ついているのはガイでもなければトーアでもない。ジャグラー様なのよ」

 

そうでなければあんな顔をしない。本当に鬱陶しく邪魔になるならあそこで殺した所で大した感情を持たないだろう。

だけどジャグラー様は違った。

 

だから…出来るなら彼の側にいてあげたい。

これは自分で決めた道なのよ。

 

だから……さよならカケル。

案外、アンタ達と居た時間は…楽しかったわよ。

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