光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
それからというもの、俺達2人はそこそこ仲良くなっていった。
あの日に帰宅してから母さんにそんな事件があったよって言うと母さんは「カケルに…友達…!?」と驚いていたのはまだ記憶に新しかった。
ま、まあ俺も友人がいなかった訳じゃないよ?ただ少しばかり問題を起こしたせいで離れていったっていうか…。
…あれは小学生の時の授業参観の日だったか。
小学生の時にも虐めがあってそれを見た時初めてキレた俺は虐めてた奴らをそれはまあボッコボコに殴ってやった。
……まあその分俺もかなり殴られて怪我や痣がついてたりしたが。
そのせいか俺は暴力的な存在として噂されて怖がられて避けられていたんだが…。まあ虐められていた子とは仲良くしていたけどな。
まあそんな事もあってか噂は小学校から広まり、中学校に上がった時も噂が広まり遂にその子を除いた友人は1人も出来なかった。話しかけてもなんかすぐに会話終わるんでどうしようもなかったけど…。
まあそんな話は置いといて、そんな俺に友人が…しかも女の子と友人になれたと聞いた母さんはそれはもう我が身の事かのように喜んでいた。
う、うん…喜んでくれるのは嬉しいけど少しオーバーじゃない…?
まあそんなこんなで俺は日々勉学に勤しみ、傍らに佐奈と交流を深めていった。
ああ、そうそう。お互いに下の名前呼びになったんだけど仲良くなった証拠だからな。
それであれからそれなりの時間が経った頃に佐奈がどうして虐められていたのか聞いてみたのだ。
何でも、前の中学校ではあの4人も同期らしく今と同じような虐めを何度も受けてきたとか。それを聞いた時は親や他の皆に相談しなかったのかと聞くと「他の人に迷惑かけられない」との事だった。
だから相手もつけ上がるんだよって言ったら、ごめんとしか返答がなかった。他人の為ならともかく、自分の事となるとてんで駄目になるのは治らなかったようだった。
あれからあの4人…確か…女の方が上島、佐川、男の方が森白、上代だったか?性懲りもなく佐奈に虐めをしてきたが要所で俺が居た為そこまで大きな事にはならなかった。
というかなってたら再び大声で人呼ぶ事になるからな、そこはアイツらも分かってるんだろう。佐奈自身も以前に比べて大分マシになったと言っていたから興味本位でどんな虐めをされていたのか聞いてみるとまあ酷い。
思いつく限りの虐めをしていたらしく、テレビやアニメで見るような事や表面的にでなさそうな陰湿なやり方等様々な虐めをされていたのだ。
何が原因でそうなったのか―――それはただウルトラマンが好きだからという理由だった。
俺もウルトラマンは全く見たことないし興味もないけれども…何を好きになるかは人それぞれだろ。
うちの母さんだってまだ帰ってこない父さんの事いつまでも思っているんだしぶっちゃけ人の害にならないのならばそっとしてやれとは思う。
ただ、佐奈はウルトラマンの話になるとどうしてもオタク気質が弾けてしまうのだ。それが虐められている最もとも言える理由らしいがそんな理由で虐めていい筈が無い。
けれども佐奈のウルトラマン好きには本当に凄かった。
ウルトラマンの話は勿論の事、怪獣や設定…果てはスーツアクターや監督の話等それはまあ何処で調べてきたのかって思うくらいは博識だった。しかも少し興奮気味に話すもんだからいかに熱量があるのかが見ているだけで分かった。
でも佐奈は最後にいつもこう話すのだ。
「ウルトラマンは私にとっても大切なメッセージを伝えてくれる。諦めない心と前に向かう勇気…それをどのウルトラマンも私に教えてくれるの」
「へえー…でもさ。それって他のヒーローにも言える事じゃない?何もウルトラマンだけじゃないでしょ」
「そこはあれ…最初に見たのがウルトラマンだったから。ただそれだけだよ」
諦めない心と前に向かう勇気……か。前者はともかく後者は俺の耳も痛いな…。何せ俺の父さんに関してでは一度も前に進んだ事がない。
……ほんとは聞いた方がいいのかもしれない。時々俺が夜中に起きた時、母さんはいつも父さんがくれたペンダントを握り締めて泣いていたんだ。恐らく母さんだけしか知らない事があるのかもしれないが俺はそれをずっと聞き出せずにいるのだ。
「しっかしそれが虐められる理由っていうのもまた変な話だな。どう考えても理由にはならないだろ」
「多分…あの人達からしたら気持ち悪いんだと思う。他の人とは違う事をしていると人って変に見たりするでしょ?」
「いや、少なくとも俺はそんな風に見ないな。仮にそんなんだとしても見なければいいだけだし」
「カケル君はそういう所凄いね…」
「凄いって言ったら佐奈のウルトラマンに対しての熱量は凄いって。流石にタジタジになったよ俺も」
「………あれはその…、ウルトラマンの良い所を知ってもらいたいと言いますか…」
少し顔を赤らめながら佐奈はもじもじ言っている。
自分でも自覚はしているんだろうが、好きな事を好きって言うだけなんで俺は対して気にしてないがそうでない奴らもいる。
かくいう俺も、佐奈と交流を深めて行っている内に何故かウルトラマンとウルトラセブンの事をある程度知っていったのだから佐奈のウルトラ好きには時々敬意すら持つ程だ。
特に佐奈が話してくれた……メトロン星人だっけ?あれのナレーションの話を聞いた時は本当に凄いなぁとは俺も感じていたしそんな話を作るウルトラマンに少し興味を持ったのも事実だ。
フィクションだけども現実に当てはまる事があり、それはそれとして大切な事を教えて言ってくれるのだから佐奈がハマるのも頷ける。
「まあでも佐奈のそういう所、いいと思うよ。これからも自分の好きは伝えて言った方がいいと思う。俺もそれなりに影響受けてるし」
「そう…言ってくれると…嬉しいな…」
またある日の事。
「おい日空。ちょっと顔貸しなよ」
毎日勉学に忙しい俺だが、3時間目の授業が終わり休憩時間の最中に佐奈の虐めグループの1人、上島が俺を呼び出してきたのだ。
何やら後ろを見てみると他の3人も一緒にいるみたいだった。
丁度、佐奈は別の授業を受けに行っていて今はこの場にいない。どうやら佐奈には聞かれたくないような話を俺に持ちかけて来た様子だったので取り敢えず俺は上島に付いていく事にした。
俺がいた教室は三階のほぼ左端にあり、そこから廊下を歩いて階段を降りて二階に着く。丁度俺のいた教室が真上にある場所まで連れて来られ、俺はあの4人に囲まれたのだった。
こいつら囲む事しか脳がないのか?とは思うがまあそれは置いといてこいつらが話す内容を静かに聞く事にしたのだった。
「日空さ、お前空島のなんなの?」
そう聞いてきたのはここに連れてきた張本人の上島だった。
見た目的には清楚で華蓮と似合いそうだがまあ虐めをしてる時点で性格はアレなので猫被ってたら騙される奴は多い事だろう。
いかにも不愉快、といった顔で聞いてきたが俺はなんてことはなくただ事実を言う。
「いや友達だけど?」
「へぇーホントに?その割には結構イチャイチャしてるよねぇ〜?」
「いやーあいつと関わるのやめといた方がいいよ?あいつウルトラマンオタクだし」
そう言ってきたのはもう片方の佐川だった。ごてごてとした装飾が入ったシュシュを着けてツインテールのような髪型の少しギャル味が入った顔をしている奴だった。なんで虐めを起こすような奴ってこうなのかは分からないがそれは置いておこう。
「知ってるけど?だからなんなの?」
「は…?お前まさかあいつの事オタクって知った上で付き合ってんの!?」
「いや付き合ってないよ友達だよ…。ていうかなんでお前らそんなにオタクとか嫌いなの?俺からしたら意味が分からないんだが」
「そりゃキモいからだろ」
隣にいた男の方の森白は吐き捨てるようにそう言ったのだ。
森白はまあ顔はイケメンの部類に入るし何だったら隣にいる上代もイケメンの部類だ。
お互い、本当に気持ち悪そうな顔をしているが何故こんな性格の悪いイケメンなんだ。こう…もう少し性格良かったらハーレム作れそうなくらいにはイケメンなのだが初日のアレのせいかそこまで近寄る奴はいなかったのだ。
遠目から見ても割と避けられていたから自業自得なんだがな…。
「アイツ、女の癖してウルトラマンなんて見てるんだぜ?おかしいとは思わないか?」
「まあそんな事言ったら入学初日から1人の女の子虐めてるお前らも大概だけどな」
「あ?お前、少し調子乗り過ぎてないか?」
「お前は知らないだろうが俺らはここに特別待遇で入って来てるんだぜ?あまり舐めてる事言ってるとお前なんか即座に退学決定だからな?」
「私のパパ、この学校の理事長兼校長よ?これどういう意味がわかるよね?」
凄く悪そうな顔をしながら佐川が言ったのだ。
えー…漫画とかで起きるような事ってホントに実在するの?
なんだこのいかにもなやつ…。
「この前だって誰が声を上げたのか知らないけど先生達が来ても私達を見た途端すぐに顔色変えてたしね。ここで何しようが軽いものならすぐに揉み消す事だって出来る訳なのよ」
「だからさ、私達達に逆らわない方がいいわよ?退学にされたくなかったらね」
そうか、だからこいつらに誰も関わろうとしないのか。
自分勝手な癖して悪い事を悪いと思っていない、歯向かえば下手をすれば退学させられるかもしれないかそりゃ関わりたくないよな。
…もしかするとこいつらが言ってるだけで親の方は意外とまともといった場合もあるかもしれないが何せ相手は理事長と校長を兼任してるのだ。何かあれば指導として罰せられる事も出来れば都合よく退学する事だって可能な立場の人間である。
目に見える地雷に関わろうとしないし、それに通ずる人とも関わりたくない。つまり虐めがあっても見てみぬ振りをせざるを得ないという事になる。
そう、佐奈が虐められてもだ。
「で?だから何?」
「はい?話聞いてた?」
「私達に逆らったらどうなるか―――」
「殴るぞ」
「え?」
俺は息を静かに吸って腹に力を込め、少し強めに言葉を放つ。こいつらの話を聞いててイライラするがコイツらは俺に対してまだ何もしてない。過去に佐奈を虐めていたが俺が現れてからは目立った行動もしてない。
だからこっちから手を出してしまえばそれは相手にとって好都合な事になる。だから今は警告ぐらいに済ませておく事にした。
「この先、佐奈を虐めてもお前らを殴る。俺に危害を加えるようでも殴る。退学にでも何でもすればいい。けれどそうしても殴る。俺の夢を奪うくらいの事はするんだ、当然の話だろ」
「…は?お前何を」
「色々失ったら最後、もう怖いものはないってことだよ。つまり無敵の人って奴だな。俺がそうなったらお前ら覚悟しとけよ」
俺は俺以外の人達が傷つくのが嫌いだ。
俺だけならまだいい、けれども俺じゃなく他人が傷ついて悲しんでる所を見てると俺の心の奥がギュウッと締め付けられるような感覚になる。
これは同情してるのか、俺自身が心を痛めてるのかは分からないけど…それでもそんな光景を見るのはとても嫌なのだ。
そう思ったのは母さんを見ていたからだ。
俺といるときはいつも元気そうにしているが俺に隠れて1人で悲しむような声をしてるのだ。そして勘がいいのか俺が近くにいるとその悲しそうな声はしなくなり何度聞いても「何もないよ」一点張りなのだ。
小学生の時の虐められている子の時も同じで、だからこそ俺は悲しい事を起こすような奴らには人一倍腹が立つのだ。
「…話は終わり?それじゃもう行くぞ」
4人を置いて俺は教室に戻る。
あいつらはそれぞれ苦虫を噛み潰したような顔をしていたがこれで少なくとも馬鹿な真似はしなくなるだろうと、そう思っていたのだ。
…この時までは。