光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある   作:ウルトラネオン

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カケルの過去:ウルトラマンになるまでの道のり6

「でさ、そこでセブンがこう言うのよ。それは血を吐きながら続ける悲しいマラソンですよって」

 

「へぇ〜…ウルトラセブンってそんな言い得て妙な例え方するんだな。まあ俺からすればそもそも争い仕掛けてきた奴が悪いとは思うけどな」

 

「それもそうなんだよね〜。そもそも侵略者が地球を狙いにくるから対抗策として武力も持たないといけないのは当然の事。けれどもそれが行き過ぎてしまえばギエロン星獣のような必要のない犠牲が出てしまうんだよね」

 

「難しい話だよな。何処までが良くて何処からが悪いのか、俺には精々身の回りの人を気にかける事で精一杯だわ」

 

「そういう所、カケル君らしいよね」

 

学校帰りの俺と佐奈は道中ウルトラセブンの話をしていたのだ。

あれから特に何も起こらず順調に学校生活を送くる事が出来ていて佐奈ほどではないが少しくらいなら話せるような人も増えて、あの4人が問題を起こす事も無くなった。

 

佐奈とは勿論友達同士で仲良くやっている。

佐奈は元々成績が良いおかげか、俺が授業で分からない事とか教えてくれたり休日に佐奈と出掛けたりもしていた。

 

よく周りから「え!?付き合ってないの!?それで!?」なんて言われるが佐奈とは決してそんな関係ではない。

ていうかあれだ、男と男の友情的なあれだ。

 

ようはそういう風には見れないのだ。気が合うといえば合うがそれ以上でもそれ以下でもなくただ気が合う友達としての関係。俺と佐奈にはそんな関係が1番合っていたのだ。

 

「それでカケル君、そろそろウルトラマンを見ようとは思いませぬか」

 

「んー…まあ興味があるがまあ今はいいかな」

 

と言うと、佐奈はいかにもガーンと擬音が付きそうなくらいには落ち込む。もうこのやり取りを何度かしているが相変わらずの反応なので見てるこっちも少し面白がっていた。

 

「そうですか…そうですか…」

 

「でもあまり見てないのにウルトラマンの知識が少し入ってるのはある意味佐奈の成果じゃないか?」

 

「見ないと意味がないよ…」

 

「それはそう」

 

しかしなぁ…こちらも目指す目標があるのでそうそう回り道をする訳にはいかないのだ。

その理由も佐奈には伝えてる為、佐奈自身もそこまで言う事はないがそれはそれとして布教は続けているのだ。

目標が達成したらその時は見てみようとは思うがまだまだ等分先の話だ。

 

「それはそうと佐奈、今度また分からない所が出てきてさ。また勉強に付き合ってくれね?」

 

「それはいいけど…ここ最近大丈夫?結構根詰めて勉強してるようだけど…」

 

「ああ…うん…目標の為にはまだまだ頑張らないとな」

 

「お母さんの事、大切なんだね」

 

「ああ、俺の唯一の肉親だからな」

 

あれから、母さんの容態がまた徐々に悪くなっていった。

母さんは大丈夫だと言っているが時々少しばかり辛そうな顔をしている所を見ているので痩せ我慢しているのだが、俺からすればバレバレだった。俺に心配を掛けさせたくないと思っているがもう既に心配掛けまくってる。

けれどもそんな母さんの姿を見て言うのも違うかなと感じたのでフォローするような形に収まっているのだった。

 

母さんの病気は本当に不可思議な物で定期的に近くの病院に通院しているが体力の低下と衰弱以外は分からないらしく、家で安静しているようにと言われている程度だった。

 

命に別状が無いとはいえ辛そうにしている母さんを見たくなかった俺はこうして日々医療関係の勉強をして、いつかは母さんの患いっている病気の原因や解決方法を模索しようとしていたのだ。

 

 

「そういえば佐奈の所は?俺あんまり聞かなかったけど」

 

「私?私の方は…うん仲良いよ。お母さんもお父さんも、妹も」

 

「妹…?えっ!?妹いるの!?」

 

「そうだよ、無論私と同じでウルトラマン好き」

 

「はぇ〜…この姉にして妹ありってか…」

 

「あ、あはは…」

 

姉妹揃ってウルトラマン好きとは中々いないんじゃないのか?まあでも家族との仲は良いみたいだしそれはいいことだ。

 

少し歩くと分かれ道が出てくる。前に進む方向には俺の家があり、佐奈とはここで分かれる事になる。「また明日」とだけ佐奈に伝えて佐奈に別れの挨拶を言うと俺は自分の家がある道を進んでいった。

 

今は入学式の頃とは違いあれたけ満開だった桜の木も今や散って木の葉が芽生えていて季節の変わり目を感じさせる。いつものように俺はゆっくりと歩いていると近所の小さい子供達がボールを使って遊んでいて、一生懸命蹴飛ばしたり等していたのだ。

 

そんないつもの変わらない風景を見ながら俺はようやく家に辿り着く。ポケットから家の鍵を取り出して開けると「ただいまー」の一言だけ言って家に入った。

 

まだ日は登っているので家の中はそれ程暗くなく、俺は鞄や荷物を置くためにいつもご飯を食べている部屋に入っていったのだが、そこで信じられない光景を見た。

 

テーブルや椅子は倒れ、上に置いていた花瓶や物は落ちている。何事かと思い慌てて見るが、ふと台所に何かが視界に入った。

 

手だった。

 

誰かが倒れている―――いや誰かなんかじゃない家にいるのは母さんだけだ。つまりこの手は………

 

「母さん!?」

 

俺は台所で倒れて意識を失っている母さんにすぐさま駆け寄ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれからというもの、倒れていた母さんを見つけた俺はすぐさま病院へ連絡し救急搬送されると入院という形に収まったのだ。

入院の手続きを済ませ、母さんの容態を聞く為に今は医務室で担当の先生から聞いているがあまり良くない状況だった。

 

「はっきり言いますと…我々としてもこの状態は全く分かりません」

 

「どういう…事ですか?」

 

「日空綾香さんの容態は急激な体力の消費と極度の疲れです。通常ならば少し休めばある程度は回復しますが…兆候が全く見られないのです。それにこれを見てください」

 

と言って渡されたのは母さんのレントゲンだった。母さんは持病等持ってないから普通ならば何も映る事はないのだが心臓の部分だけ異変が起きていたのだ。

 

他の部位とは違い心臓部分だけ真っ白に映っているのだ。

カメラが故障したとか光の加減とかそういった物ではないらしく、何度も検査してみたのたがここだけ他と異質になっているという事だった。

 

「こう言った事は医療業界でも見たことがありません。誰も知らない全く未知の病気だと私は思っています」

 

「そんな…治療法とかは…」

 

「我々も出来る限りの事は尽くします。ですがそれだけでとうにかなるのかは保証できません」

 

はっきりとそう伝えられた。

目眩がしたかのように思えた。

 

何故母さんがこんな目に合わなきゃならないんだ。

母さんは何も…何も悪い事なんかしてないじゃないか。

母さんはいつだって前を向いていた。辛い事だって何も言わずにいつも元気でいたのだ。

 

なのに……なのに……。

 

 

 

 

医務室から離れ母さんがいる部屋へと向かった俺は母さんをどうすれば助けられるか歩きながらも考えていたが、幾ら考えた所で思い浮かぶ案なんてこれっぽっちもなかった。

 

こんなにも俺って無力なのか―――そう思いながらも気づけば母さんがいる部屋へと辿り着いていた。

 

扉を開くとそこには病室のベッドで寝ている母さんがいた。

この部屋は4人の患者を収容できるが今の所入院者は母さんだけだったので何処か殺風景にも思えた。

部屋に入ると、母さんはこちらに気づいたのか顔をこちらへ向ける。

 

「カケル…?」

 

「母さん…」

 

母さんの声はとても弱々しくなっていた。

もうあの頃の元気な声も出なくなってしまう程の病気なのかと思うと心苦しくなる。

けれども母さんは俺を見た後、優しい顔ををして手招きをして俺を迎い入れてくれると俺は備え付けられていた椅子に座り母さんをジッと見ていた。

 

「ごめんね…心配かけて…」

 

「母さん…俺…」

 

「いいよ。言わなくても分かってるから」

 

母さんは続けて言葉をかけてくる。

 

「ほんとに優しい所は父さん譲りね」

 

「今は…そんな事言ってる場合じゃないだろ」

 

「ううん、そうじゃないのよ。……実はね母さん前からこんなだったんだ」

 

その言葉を聞いた時、俺はどんな顔をしていたのか。

驚いた顔なのか…あるいはそれ以外の顔か。

 

「母さんね、体の中に銀色の何かを入れられて…それからなのよ。こんな風になったのも」

 

「銀色……!?」

 

前の検査結果でもあったすぐに消えた銀色の何か、それを母さんはあの時から知っていたのだ。

しかも母さんの話の感じだと恐らくその銀色の何かを入れた奴がいる。

 

「誰なんだよそんな事した奴…!」

 

「分からないわ。でもこの際誰かなんていいのよ、カケルさえ無事なら」

 

「なんでだよ!?母さんの体だろ!?」

 

「私の体だからこそ、なんだよカケル」

 

母さんはそう言うと手を俺の頭に乗せて母さんの方に引き寄せられた。それはなんの変哲もないただ頭を撫でているだけだったが不思議と何故か気持ちが落ち着くようにも思えた。

 

「いいカケル、あなたはずっと平和に暮らしなさい。私の事なんかいいから自分の夢に向かって未来に歩いて行きなさい」

 

「……なんでだよ。なんで母さんはいつも自分ばっかり辛い目に合うんだよ。母さんは何も悪い事なんかしてないだろ」

 

「…そうね。でも、何も悪い事ばかりじゃないわ」

 

俺の頭を優しく撫でて、子供をあやすように言葉を続ける。

 

「カケルがこうやって成長してくれてるだけでもとっても嬉しいんだから。……欲を言えば今の姿をお父さんにも見せてあげたかったけれども」

 

「母さん……」

 

「ねえカケル。あなたの…夢は何?」

 

「俺は…」

 

俺の向かう目標。もし見える範囲で悲しんでる人がいるなら…何かしら手を貸してあげたい。誰かが悲しんでる所なんて見たくはないからだ。

だけどそれ以上に―――

 

「俺は母さんを助けたい。だって…俺の母さんだから」

 

「もう…母さんはいいって言ってるのに」

 

「俺の唯一の母さんなんだ。困ってたら助けるのは当たり前だろ」

 

引き寄せられていた頭はもう母さんの元から離れ、いつの間にか溢れていた涙は既に止まっている。

ならやるべき事は1つ。

 

「母さんの事は俺が助けるから!」

 

この時はまだ知らなかった。

これからどんな結末が訪れるのかを。

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