光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある   作:ウルトラネオン

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カケルの過去:ウルトラマンになるまでの道のり9

あの日から俺はただ無機質な日々を過ごしていた。

せっかく行っていた高校にも行かず、ご飯を食べては何もすることのない日が毎日進んでいく。

 

傍から見ればニート以外の何物でもないだろう。

けれども俺にはもう何かしようだなんて考えはなかった。

何かしようにも体に力が入らない、つまりやる気が起きないのだ。

 

以前ならやる気なんて体中から湧き出るような覚えがあったなという考えが思いつくくらいでそれ以降は何もしなかった。

起きて、飯を食べて、時間がすぎてまた食べてそして寝る。

 

この行動だけが俺の毎日のルーティンとなり気がつけば時期はもう冬だった。

この時期になれば学生の皆はそろそろ受験や就活が忙しくなる時期だろう。少し前に先生が俺の家を訪ねてきたが、やはり心配していたらしく俺が学校に来ない事情も先生は分かっていたようだった。

 

先生はせめて卒業はしておいたほうがいいと、今は苦しい時かもしれないが留年してそのままだと将来にも関わるから学校に来たほうがいいと言っていた。

確かに先生の言っている事は正しく、そして俺の事を心配してくれているというのも話を聞いていてよく分かった。

 

けれども俺はそんな先生の話を聞くだけ聞いて後は曖昧な返事をして帰って貰った。

 

将来…将来か…。

そんなもの何処にあるんだよ。

母さんを失った。

それ以上に俺は何も出来なかった。そんな俺に何かあるのか?

 

口だけは言ったものの何も出来ずに膝をつくだけ。今にしてもそうだ。先生は本当に心配してくれているのにも関わらず俺はただ早く帰ってくれとしか思えなかった。

これが他人から見ればウジウジしてる奴に見えなくもないだろう。

 

知った事ではない、俺はもう何も出来ない。

 

結局、俺はそのまま学校に行かずずっと家に籠りっぱなしだった。そんな生活を続けて年が越えようとする日が近づいていった頃、家にチャイム音がなり響いた。

 

誰かが家に来た証拠だ。

時間は夜中の8時を過ぎていた。

こんな日に…こんな時間に一体誰が来たのだろう?

体に気だるさを感じつつも出ない訳にはいかないので俺は玄関前に着いてるモニターで誰か来たのかを確認もせずに玄関へと赴く。

玄関に向かう前に窓から外を見ると雪が降っていた。

暖房を付けていた部屋から出れば一気に寒さを感じ少し体が身震いする。

 

のっそのっそと歩き玄関にたどり着くと近くにあったサンダルを履いて、閉めていた鍵を回し扉を開ける。

そして俺は扉の前に立っていた人物に対して驚いたのだ。開けた扉から冷気が入り込みさらに寒さが増したが、そんなことはどうでもよくなるくらい予想もしていなかった人物がそこに居たのだ。

 

「少しぶりだね、カケル君」

 

「佐…奈…?」

 

こんな真夜中に、学校に行っていなくてもう会ってすらなかった友達がそこにいたのだ。

俺の姿を見た佐奈は少し驚くととても悲しそうな顔をしていた。

 

「カケル君…」

 

「あ…いやその…」

 

久しぶりの再会だと言うのに俺は言葉を表せずにいた。

雪が降っている真夜中の…それももう少しで年を越すまで残り数時間というこのタイミングで来るとは思わなかったからだ。

ましてや、家の正確な位置は教えていなかったのでまずここに来るなんてあり得なかった。

けれどもそのあり得ないは今ここに存在しない。

 

「なんでここが…」

 

「先生に聞いたから」

 

「あ、そう…」

 

「……」

 

「えと、その…」

 

言葉が出ない。何を言えばいいのか、佐奈に対して何を伝えればいいのか頭に浮かばなかった。

俺がなんで学校に来なくなったのかとか今のこの姿とかそんな事ではなくもっと何かある筈なのだが…。

 

「ねえ、カケル君」

 

「うん…」

 

「一緒に神社行こ」

 

「え…神社…?」

 

神社。

この時期に神社と言えば年を越すために願掛けしに行く…いわゆる年末詣だった。

そんな事を言う為にここまで来たのか…?

ゴクリと唾を飲む。

ここで断るのは簡単だ。何かに理由を付けて断ればいい。

けれども何故か俺は断る事が出来ずにいた。

こんなにも体が重く何も考えたくない状態なのに何故か断れなかった。

俺の返答を待っているのか佐奈は少し困惑顔になる。

 

「やっぱりめいわ―――」

 

「…行こう」

 

「!」

 

断られると思っていたのか佐奈はまた驚いた顔を浮かべる。けれどもそんな顔をすぐ引っ込めると「待ってる」と一言だけ言ったのだ。

そう決めた俺は急いで身支度を整える。ボサッとしていた髪は直していると時間がかかるのでそのままにし、来ていた服を外出する用の服に着替えて寒くならないようにジャンバーを着る。

少し柄の入った手袋とマフラーを着飾って再び玄関に戻って外に出る。

外に出るのは久しぶりだった。壁に持たれながら待っていた佐奈は俺が来たことに気がつくと少し微笑んで歩き出す。

俺もそれに続いて佐奈の後を歩くのだった。

 

「………」

 

「………」

 

特に会話はなかった。

前までならウルトラマンの話とか沢山できた筈なのだが状況が状況だ。神社に着くまでに歩いてもそれ程時間はかからないがこの沈黙の空間は続いていった。

年末の雪が降る夜に男女2人というのは普通ならばいいシチュエーションなのかもしれないがお互い黙りきってるせいか雰囲気は喧嘩した後のソレだった。

 

そんなこんなで神社にたどり着いたのだが肝心の神社には人一人としていなかった。

というのも俺達が来たこの神社は小さな規模の神社であり、大半の人ならば電車に乗ってもっと大きな神社の方へと行くのが普通だ。

そこならば屋台とか色んな店が出ているし何より人混みが多いからかテンションも上がるのだろう。

 

正直な話、今の俺の状態だと人混みは避けたかった。

それを察してくれたかは分からないが佐奈は敢えてこの場所を選んだのだろう。

俺達は神社の祠の前に立ち、神棚に向かって手を合わせてて目を閉じる。

 

俺が神様に願う事なんて何もなかった。

願う夢なんてなんにもないし思いつかない。だからこんな事をする意味なんてないのだが…隣にいる佐奈はどうなのだろうか?

 

俺とは違って願う事とかきっとあるのかもしれない。

少しだけ目を開けて横目に見てみるとまだ手を合わせていたのだった。

少しして俺は離れると佐奈は手を合わせるのを止めてこちらに向き直った。

 

「カケル君は何か願ったの?」

 

「俺は…」

 

何も言えずにいた。

 

「私は…願う事はあったよ」

 

「……どんな?」

 

「カケル君がまた立ち上がれるようにって」

 

「…ならそれは叶わないかもな」

 

暗くなっている空を見上げる。

空には少しの星の光と落ちてくる雪しか存在せず息を吐くと白い靄が出るばかりだ。

そして、改めて佐奈に顔を向けたのだ。

 

「俺は母さんを助ける事が出来なかった」

 

「うん」

 

「口だけだった。何も出来ずにいた」

 

「うん」

 

「…俺には誰かを助ける事なんて出来なかったんだよ」

 

吐き捨てるように俺は言葉を紡いだ。

けれどそれに対し、佐奈は首を横に振った。

 

「確かにカケル君にとってはそうかもしれない。けどね―――」

 

 

 

 

 

「カケル君は私を助けてくれたよ」

 

 

ニコッと佐奈は笑顔を作った。

 

俺が佐奈を助けた。恐らくそれは入学式のあの事を言っているのだろう。けれどそれは…

 

「入学式の時の事じゃないよ」

 

「……なら」

 

「私が怪獣のストラップを自販機の下から取ろうとした時の事だよ」

 

「……」

 

「……普通ならね、あんな状況なら誰も助けないよ。けれどカケル君は助けてくれた」

 

佐奈はそう言うと俺に近寄って来る。

 

「あのストラップはとっても大切なものだったんだ。亡くなったおじいちゃんの最後のプレゼントだったの。だから服が汚れようがどうなろうが関係なかったんだ。けれど、カケル君は違ったよね」

 

「とっても嬉しかったんだ。ストラップを取ってくれた事や何よりカケル君のその優しい所が」

 

「たったあれだけの事だけで…」

 

「カケル君にとってはそんな大したことじゃなくても私にとっては違った。それだけだよ」

 

俺は言葉を失った。

あんな…あんななんにもないただの出来事だけで救っただななんて到底思えなかった。だから佐奈のその言葉に何も言えなかった。

 

「それにほら、前に話してくれた小学生の時に助けた友達の事だってそう。その子もきっと私と同じなんじゃないかな?」

 

「俺は…」

 

「お母さんの事はとても残念だと思う。私になんかが掛ける言葉なんて軽い物だってことも」

 

「それは…」

 

「けれどこれだけは間違いなく言えるよ。カケル君は誰かを助けれる人だって」

 

「そう…なのかな…」

 

俺にとっては大した事じゃなくてもその人からすればそうでもない、それを佐奈は俺に伝えてくれた。

俺は…。

 

「……長く引き留めてごめんね。こんなの、私の我が儘でしかないのに」

 

「いや…。でも俺は…」

 

「勿論今すぐなんて言わないよ。だから待ってるね。また、カケル君とウルトラマンの話する事をさ」

 

「佐奈……ごめん…」

 

「謝らないでよ。…それじゃそろそろ帰ろうか。これからもっと冷えるだろうし、送ってくよ私」

 

「いいよ。1人で帰れる」

 

「ううん、今のカケル君見てたらなんか危なっかしいから付いてく」

 

「…そんなにか?」

 

「うん。とっても危なっかしい」

 

俺に人差し指でツンツン突いてくる佐奈はジト目でそう言った。そんな俺は降参ポーズをして佐奈の言う通りにする。

帰り道は来た道を戻るだけなのだが何故だか少しだけ足取りが軽く感じられたのだった。

 

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