光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある   作:ウルトラネオン

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カケルの過去:ウルトラマンになるまでの道のり10

大晦日が終わり、正月なってからはや3日目。

俺は相変わらず家に籠っていたが、その心は前とは違い少しばかり変わっていた。

 

あの日佐奈に言われた言葉。

俺は誰かを助けれる人だと。

その言葉をもう一度自分の頭の中で考えていた。

俺のやって来た事はなんだったのか。何故俺は誰かを助けるなんて事を言っていたのだろうか。

 

今一度己を見返して考えるばかりだったその時、家のチャイムがなり響いた。

 

大晦日よ時といいまた佐奈が来たのかと思って俺は一度思考を止めて玄関に歩いていく。

扉を開くとそこには佐奈―――ではなく違う人物が立っていた。

 

「透…?」

 

「久しぶり。小学生以来だよねカケル」

 

小学生の時、虐められている所を助けてその後に佐奈と並ぶくらいに深い関係の友達となった人物、陸井 透が俺の所に来ていたのだった。

 

本当に久しぶりだった。

小学生の時はよく遊んでいたが中学生の頃になる前に転校していった為、離ればれになってしまってから随分と会っていなかった。

 

旧友の来訪に俺は驚きを隠せずにいた。

まさかこんな日に来るなんて誰が予想出来るのだろうか。

 

「お前なんで…」

 

「実は今日、家族と一緒にこの近くまで来ていてさ。両親が少しの間用事があるから待っていてくれって言ってさ。時間も余ってるしどうしようと思ってた時にカケルの事を思い出してさ。という事で来てみたんだよ」

 

「そうか…」

 

「ていうか…カケル……」

 

透がジロジロと俺の姿を見てくる。

それ程ジロジロ見られる、という事はやはり今の俺の現状が透には不思議に思えたのだろうか。少しすると透は最期に俺の目を見る。

 

「何があったの…?そんなボロボロなカケル初めて見たけど…」

 

「まあ…色々あったんだよ。…本当に色々」

 

「そうなんだ…。もしかして僕が来たのって迷惑だったり…?」

 

気まずそうに透が言ったが俺は首を横に振る。

 

「いやいや、全然大丈夫。よかったら家に上がるか?」

 

「それじゃ、お言葉に甘えようかな」

 

俺は透を家に案内すると、ひとまず広間に案内した。

ここなら気兼ねなく話せると思うので取り敢えず透を座らせて、俺は冷蔵庫の流してからお茶を取り出す。棚からカップ2つ取るとそこにお茶を注いでテーブルに置いて、透の真反対に俺は座ったのだ。

 

「ありがとう。……そういえばカケルのお母さんは?何処か出掛けてるの?」

 

「母さん…は…」

 

少し言葉が詰まったが透にこれまでの事を話した。それを聞いた透はバツが悪そうに「ごめん」と謝ってきたのだ。

 

「そんな事になってるなんて…。カケルが辛いのにこんな事聞いてしまって」

 

「いや…俺は大丈夫だから」

 

「そう言って貰えたなら…。けれど、カケルのお母さんが…」

 

母さんの死を聞いた透もショックを受けていた。

透はよく俺が家に招いたりして遊んだ事もあった。その時、よく母さんからお菓子を貰っていたり時には話し相手になって貰ったりしていて透も母さんの世話になっていたのだ。

 

だからこそ、母さんの死を知った透も思うところはあったのだろう。

 

「カケルのお母さん、ホントに元気だったのにね。今でも思い出すよ、昔の事」

 

「…そうだな。あの時は本当に楽しかった。透とトランプで遊んでいた時、透が負けすぎて泣いていた所を母さんに慰め貰ってた時もあったよな」

 

「あっ!?今それ思い出す!?それだったらカケルがジュース溢してカケルのお母さんに怒られてた時あったよねぇ!?」

 

「あー……確かにあったな。恥ずかしかったなー……まあ透が家のすぐ前ですっ転んで泣いてた所を慰められてた所も思い出すなぁー」

 

「カケル……本っ当に変な事覚えてるよね?なんなの、怒らせたいの?」

 

「冗談だよ冗談」

 

「今そんな雰囲気だったかなぁ!?」

 

フフッと俺は少し笑った。

懐かしいなぁ…。こういう所、全く変わってないな。

 

「そういえば透、お前友達できた?俺がいなくても上手くやれてる?」

 

「ご心配無用、しっかり作ってるよ。カケルこそ友達出来てるかなぁ?」

 

「と、当然。俺なんかもうクラスメイト全員は友達だぜ?」

 

「…本当は?」

 

「う、嘘ついてないからな?」

 

「カケルって昔からだけど嘘つくの下手だよね?バレてるよ?で、何人出来たの?」

 

ぐぐっ!?ば、バレてやがる!?

 

「…………1人です」

 

「ハッ!1人とは情けない!こちとら10人だぞ!」

 

「但しその1人は女の子です」

 

「はぁ!?」

 

透がオーバーに驚いた。

友達の数で競うつもりだったのだろうが、数ではなく質で勝負しようじゃないか。

 

「う、嘘だ!」

 

「今の俺、嘘ついてる?」

 

「…マジだね。マジかぁ〜…、カケルに女友達がねぇ〜…」

 

「…意外だったか?」

 

「まあね。カケルってそういうのあんまり縁が無さそうだったし」

 

「ホント、縁が無いと思ったけどなぁ」

 

ふいに、3日前の事を思い出す。

俺に救われたと言った友人。また立ち上がってと願った友人。俺なんかもったいないくらいとても良い友人だ。

 

あの自販機での出来事がなければ今頃どうなってたのだろうか。佐奈ほど関係が良い友人なんて作れなかっただろうし、楽しかった思い出が少し楽しいだけの思い出になるだろうし…あの年末詣の出来事もなかった。

 

少しずつ思い出していくと、気がつけば俺にとって佐奈はとても…本当にとても良い友人だったらしい。

佐奈との思い出を思い返していると隣でお茶を啜っている透がニヤニヤし始めた。

 

「はは〜ん、さてはその子彼女だね?」

 

「いや?違うよ?」

 

「え…?違うの…?」

 

不思議そうに透は顔を傾ける。

なんだ、そんなに変だったか?

 

「いやだってカケルが今まで見たことないくらい顔が変だったから」

 

「人の顔を変とか言うなよ」

 

「鏡見てきなよ…」

 

えぇ…。

呆れるような顔で見てくる透だが、そんな顔を見た俺は不思議と顔から微笑みが出てきた。

 

「…少しはマシになった?」

 

「…ああ、マシになった。ホントにいい友人だよ透は」

 

「誉めても何も出ないよ」

 

どうやら、今の俺の有り様に気を使われていたようだ。前までの俺には考えられないくらいには笑顔が出来るようになった。

それは多分透が面白おかしくしてくれたお陰だろう。

…少し気分が晴れたような気がした。

 

「随分と慣れてれるな。そんなに成長していて友達として鼻が高いぞ?」

 

「久しぶりに会って前とは違う有り様だったし、そこまで酷くなる理由も分かった。けれど、もしかすると僕の助けが無くてもカケルは大丈夫だったのかもしれないね」

 

「なんでそう思う?」

 

「見た目はボロボロ、中身はぐちゃぐちゃ。けれどまだ眼は死んでなかった」

 

そう言われて、心当たりがある俺は微かに笑ったのだ。

 

「という事は、多分その女の子のお陰かもな」

 

「…そっか」

 

すると透は、広間にある時計を見ると席を立ち上がった。

 

「そろそろ行くよ。久しぶりに会えてよかったよカケル」

 

「ああ、こっちもだよ透」

 

俺も席から立ち上がり、透を見送ろうと玄関まで付いていく。再会と言うには少し短い時間だったかもしれないが、それでもこの再会は俺にとってとても大切な時間になった。

 

扉を開けようとした透だったが俺に再び振り向く。

 

「今更だけどさ、本当にありがとねカケル」

 

「…というと?」

 

「昔の事だよ。僕が虐められている時に助けてくれただろ?」

 

あぁ…あの時の事か。

透が虐められている所を俺が助けて、それから築いた友人関係。その時の感謝の言葉を今、透は俺に伝えてくれたのだ。

 

「もしあの時、カケルが助けてくれなかったら僕は今頃どうなってたかは分からない。不登校になったり…もしかすると自殺していたかもしれない。だから、今の僕があるのはカケルのお陰だよ。カケルが、僕を救ってくれたんだ」

 

「そう、かなぁ」

 

「そうだよ。本当に、ほんっとうにありがとう」

 

「そりゃどうも」

 

「あ、それとさっきそこで事故があってさ。道歩く時は気をつけなよ?」

 

「ご忠告ありがとう。ほら、さっさと行った行った」

 

「うん、また会おう」

 

そう言って透は扉を開けてこの家から去っていった。

 

 

…どうやら佐奈が言っていた事は当たっていた。

俺にとってそんな大した事じゃなくても他は違う。

そんな、なんてことない事実が今の俺にとっては特別な物にも思えた。

 

俺は、きっと誰かを助ける事が出来る。

 

佐奈はそんな俺を見抜いていたのだろうか?

いや…きっとそうなんだろう。

全く、本当に凄いな俺の友人は。

 

なんだか妙に気分が優れている気もする。きっと透が来た事だけじゃなく今の俺に出来る事が見えたと思えたからだ。

取り敢えず、俺にやるべき事と言えば―――

 

 

「もう一回、学校行ってみるか」

 

 

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