光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある   作:ウルトラネオン

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カケルの過去:ウルトラマンになるまでの道のり11

「さて…と」

 

俺は今自分の部屋で着替えていた。

休み続けて着なくなっていた学校の制服を引っ張り出すとシャツを着て、ブレザーを袖に通す。

 

期間的には短い間だったが少し着ていなかっただけなのに何故か長いこと着ていなかったような錯覚に捕らわれたのは、きっと色々な事が起こっていたからだろう。

 

部屋から出て階段を降りて広間のテーブルの側に持ってきていた鞄を置くと俺は朝食の準備を始める。

 

時間にして6時20分。

家を出るにはまだ時間に余裕がある為、少し凝った朝食を作っていく。

 

といってもおかずを目玉焼きにベーコン、白ご飯に味噌汁といったものだが、今までは食パン一枚くらいの朝食だったので少しはまともな朝食を久しぶりに食べる事にしたのだ。

 

フライパンに火をつけて油を引き、冷蔵庫にあった卵とベーコンを取り出し同時に焼いていく。

少しするとパチパチと油が弾ける音が出てきて、ベーコン特有の香ばしい匂いが漂ってくる。

 

卵の方も液状だった物が焼けていく事で段々と目玉焼きらしくなっていった。いい感じに焼き上がったのでそれを皿に盛り付ける。

 

棚に置いてある茶碗を2つ取り出すと片方にらは白ご飯を、もう片方には昨日の残りの味噌汁を注いでいく。

そうして出来上がった朝食をトレーに置いてテーブルに持っていく。

 

「まともに作ったの久々だな…。―――いただきます」

 

そうして俺は作った朝食をゆっくりと噛みしめて食べていく。学校を行かなくなってからまともな食生活をしていなかったのでこうした物は本当に久しぶりだった。

 

時間をかけてゆっくりと食べていきしっかりと胃の中に入れていく。今日は休み続けていた学校に再び登校するのだ。だからこそ朝の食生活から変える事で気合いを入れ直す。

 

そうしてゆっくり食べていた朝食も食べ終わり、後片付けを始めて、そんなこんなで時計を見ると今は7時20分だった。まだ時間には少しだけ余裕があるが今日は早めに出ようと決意し、俺は鞄を持って家を出た。

 

正月も明けたが、まだまだ寒い時期には変わりないので事前に厚着で出たがどうやら正解だったようだ。住宅街を抜け、商店街を抜けた俺は一目散に駅へと足を運ぶ。

 

ふと、駅に入る前にすぐ側にあった自販機が視界に入った。

何の変哲もない自販機。けれどもここは初めて佐奈と出会った場所でもあり、ある意味俺にとって特別な場所だった。ここで佐奈が落とした怪獣のストラップを俺が拾って上げた事で出来た不思議な縁。

 

思い返せば少し運命的な物なのかなと思いつつもここは忘れられない思い出の場所だった。

少し早めに出たせいか電車はまだ来ていない。特にすることもないのでホームのベンチに座ってゆっくりと電車を待つ事にしたのだが、唐突にある考えがよぎった。

 

学校で佐奈に会った時なんて言おうか。

 

感謝の言葉は勿論の事だけどもっと他に言うことあるだろう。

俺に会いに来てくれた事とか…そもそも俺を立ち直らせてくれる切っ掛けを作ったのは佐奈のおかげだ。

 

何かお礼的な物でもすれば…いや物に頼るにしたって何をしたらいいんだ?佐奈がしてくれた事はとても大きかった。

だから安易にプレゼントとかそう言うので表そうとするのはどうなんだろう…?

 

あーでもないこーでもないと考えている内に電車が到着した。

俺は考えつつも電車に乗りゆらりゆらりと電車に揺らされながらも考えていたがいい案がそうそう浮かぶ筈もなく、気がつけば学校がある駅に到着する。

 

電車を降りて駅を通ると、周りにはちらほらと同じ制服の人間がいたのだがその中に佐奈がいるかと少しだけ期待したが流石にいなかった。

 

 

 

そうして学校に到着して自分のクラスがある教室に入ると、まだ少ないがクラスメイトが驚いたような顔で俺を見ていた。

どうやら俺が来たのが意外だったらしく俺はなんとなく挨拶だけ済ますと席に着席した。

 

するとクラスメイトが「大丈夫か」とか「なんかあったら相談していいよ」なんて心配の言葉を掛けてきてくれた。なんでも俺の家庭事情を少しだが知っていたらしく担任の先生が皆に教えていたようだ。

 

正直ここまで心配されてるとは俺自身も思っていなかったので少し驚いたが大丈夫とだけ伝えておいた。少しすると教室に先生もやって来るや否や、俺が来ている事に驚いていた。

クラスメイトと同じように心配してくれていたし何よりこの先生は俺が塞ぎ込んだいる時も家に来てくれてた先生だ。

 

あの時の事を感謝し、俺の事は大丈夫だと伝えると先生も安心したようで、

 

「後少しの期間だが君なら来ていなかった時間もすぐに取り戻せるさ。応援してるからな」

 

と言ってくれた。

俺はもう一度先生に感謝の言葉を告げると、学校のチャイムが鳴り響いた。そろそろ授業が始まる時間だが、1つだけ空いている席があった。

先生の朝の挨拶が聞こえてくる。

 

「え〜…新年早々ですが…皆さんには残念なお知らせがあります。同じクラスの空島佐奈さんがこの休みの期間中に事故にあってしまい現在入院中との事です。もしかすると君達とは一緒に卒業出来ないかもしれない状態のようです」

 

クラスがざわつく。

ある人は驚いたり、ある人は悲痛そうな声を上げていた。

 

 

その中で俺は段々とクラスメイトの声や先生の声が遠く離れたかのように聞こえなくなっていったのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「先生、あの佐奈の…空島さんの事なんですけど…」

 

1日の授業が終わり、俺は放課後に職員室にすぐ駆け込んで佐奈の状況を聞きに来た。

朝の…突然の事実にあまり頭が働かず授業もろくに集中出来なかったが、今はそんな事はどうだってよかった。

 

そんな俺を見た先生も少し悩んで俺に佐奈の状況を教えてくれたのだった。

 

「確か…日空は空島君と仲が良かったよな。なら心配しても仕方がないだろう」

 

「それで…佐奈は…」

 

「ああ、確か3日の日だったか。その日に空島君は車に跳ねられたらしくまともに受けたのか今や植物人間の状態になったらしくてね」

 

残念そうに先生はため息をついた。

 

「せっかく日空が帰ってきたというのに今度は空島が残念な結果に…先生としても悔しい想いでいっぱいだよ」

 

「植物…人間…」

 

植物人間。

意識や心拍、呼吸、目の瞬きなど人として最低限の行動しか出来ない状態。そんな状態だと動く事も…会話する事すらままならない。

 

俺の心の中でとある言葉が思い浮かんでくる。

3日の日、透が来ていた時なんて言っていたか。

 

『さっきそこで事故があってさ。道歩く時には気をつけなよ?』

 

俺の家から佐奈の家はそう遠くない。透が通ってきた道に偶々佐奈がいて…そして佐奈はその時………

 

「日空?どうかしたか?」

 

「あ…いえ…なんでも」

 

「顔色悪いぞ?やはりまだ…」

 

「いえ大丈夫です。本当に……」

 

「ならいいんだが…。正直な話、日空にとっても辛い話だろう。もし会いに行くというならここに書いている病院に行くといい」

 

そう言って先生は俺に1枚の紙を渡してくれた。そこには佐奈が入院しているであろう病院名とその住所が書かれていた。

俺はいても立ってもいられずに職員室から駆け出し佐奈の入院している病院へと向かう。

学校の門をくぐり抜ける寸前、俺は門前に思いも寄らない人物達がいる事に気づいた。

 

佐奈の事を虐めていた上島、佐川、森白、上代の4人が群がっていたのだ。

アイツらもう学校を来なくなった筈なんだがと思っていたが今は佐奈の方が優先事項だ。気にせずに学校を出ようとすると「おい」と4人組の1人、上代に声を掛けられ早めていた足を急ブレーキさせてアイツらの方に顔を向ける。

 

「なんだよ。今忙しいんだよ」

 

「いやいや、この度は日空君に復学おめでとうと言いたくってさ」

 

ニタニタと笑う4人は少し気味が悪かった。

 

「…呼び止めた理由はそれだけか?もう行くぞ」

 

「いや〜清々するよな。うっとおしいウルトラマンオタクもいなくなってさ」

 

「あんたさ、あの子の彼女でもなんでもないんでしょ?なんでそんなに必死なのさぁ?」

 

鬱陶しい声が俺の耳に入る度に不快感が増してくる。一刻も早く行かなきゃならないのにいつまでコイツらの話を聞かなきゃならないのか。

 

「日空もさぁ、もういなくなった奴の事なんて気にすんなよ。同じ友達だろ?」

 

「は?お前らと友達になった事なんて一度もねえよ。…もういいか?俺は行くからな」

 

そう言って俺は走り出す。

もしこの時、アイツらの方に振り返ったら俺はこう思っただろう。

 

何でこんなにも邪悪な笑い方するのだろうか、と。

 

 

 

 

病院にたどり着いた俺は急いで受付に向かい、そこに面会の手続きを行った。

流石に親族じゃないのもあってか面会の手続きを終えるのに多少の時間が掛かったが、受付員の人から許可が下りると病室と階層だけ聞いて俺は階段で駆け上っていった。

 

佐奈が入院してる病室は5階の500号室。流石に運動すらせず毎日寝込んでいるだけだった俺が階段を駆け上がるにはかなりの体力を消費したがそれでも必死だった。

 

ようやく佐奈のいる病室に辿り着き、扉を開けたがそこには点滴や包帯に巻かれていた佐奈がベッドに寝ていた。

 

そんな佐奈の姿に俺は思わず息を呑んでしまった。

植物人間とは聞いていたがここまで酷い状態だったとは思えず驚くばかりだった。

近づいて見ると今は眠っているのだろうか佐奈は目を閉じていた。

俺は…あまりの事に言葉を失った。訳も分からず俺は逃げるようにこの場を去っていった。

 

途中、通行人の女の子にぶつかりそうになったがその後は何もなく家に帰っていったのだった。

 

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