光の国に飛ばされた筈なんだけど目の前に輪っかがある 作:ウルトラネオン
これにてカケルの過去の1つは終わりです。
もう1つの立ち上がれたお話についてはまだ先の事となります。
これが終わり次第ちょこっと番外スレをやった後、本編に以降します。
卒業間近になるこの頃、俺はというと家には引きこもらず卒業して進学する為に毎日居残りと自主勉強をこなしていった。
これがきっと佐奈が願っていた事だから。
だから俺はまだ立ち上がっていられたのだ。
けれどそうしていく内にいつも考える。何故佐奈があんな目に会わなければならないのか。
母さんと同じだ。
あんな目に会っていい人なんかじゃない。
俺にとって佐奈は、ある種の支えになった人だ。
だからこそなんで事故にあったなのかなんて考えても答えなんて浮かび上がる筈もなくただひたすら友達の願いに応える為、俺は頑張り続けたいた。
そしてある日の事。
「久しぶり。元気にしてた?」
「透…。また来てくれたんだな」
またもや家に透が来てくれたのだ。今度は偶々用事があったから来たではなく文字通り俺の心配をしていたらしく、個人的に来てくれたのだ。
立ち話もどうかと思うので一先ず家に入らせてまた広間に案内した。
「なんだか前より元気になった?」
「まあ、な。お前や俺の友達のお陰だよ」
「友達っていうと例の女の子?」
「うん。あの時、透は俺に感謝してたけど今回は俺も透に助けられた。本当にありがとう」
そんな言葉を聞いた透は少し驚いた顔をするとすぐに微笑んだ。
「そうか…僕ってカケルの事、ちゃんと助けられてたんだね」
「ああ、本当にだよ」
「にしては、何か後ろめたい事隠してない?」
「え?」
透の言葉に今度は俺が驚いた。後ろめたい事ではないのだがやはり顔に出ていてのだろうか。
「なんで分かるんだ?」
「カケルすぐに顔に出るし」
「敵わないなぁ…うん、確かにある。実はさ、その友人がさつい最近事故に合ってさ。…ちょうど透が来てくれたあの日に」
「…まさか」
「確証はないけど、その子は家からそれなりに近いし多分確実だと思う」
「そう…」
重たい空気が部屋を包み込む。透も何か言うわけでなくただ黙っているだけだった。
「でさ、その子に会いに行ったんだよ。でもとても酷い状態だった。全身包帯だらけで…当たりどころが悪かったのか植物人間状態だってさ。……なんであの子があんな目に会わなきゃならないんだよ」
俺は頭を抱えた。
透に全て話して尚、心に残った靄は晴れる事はなくただ何も出来ずにいた。
そんな俺を見ていた透は俺の肩に優しく手を置いて「大丈夫?」と聞いてきた。
「…まあ、まだ立ち止まれないのは確かだよ。それが…佐奈が願っている事だと思うから」
「女の子、佐奈って言うんだね」
「あれ、言ってなかったか」
「言ってないよ。まあ、深く聞くつもりもなかったんだけどね」
「そうか…。なあ、その事故があった場所って何処か分かるか?」
「分かるけど…何で?」
「いや、何か引っかかるような…ないような…」
「何だよそれ」
苦笑いしながら透は俺を見つめる。
ほぼ勘に近いものだが何か引っかかるような…気がする。ともかく、事故現場に行ってみて何か踏ん切りがつくような気がしてならなかったのだ。
「まあ分かるけど…辛いだけだよ?」
「それでもいい。連れてってくれ」
「…はぁ。分かったよ」
そうして連れて来られたのは俺の家からそこまで離れていない交差点だった。
ここは車が通る事が少なく、そして人もあまり来ない場所であり静かだった。
そんな静かな場所で事故が起こったのだ。
「…思ったより何もないな」
「それはそうだよ。もう事故は終わった事なんだから」
透も言っているが、事故という以上ここには来る必要なんてなかった。それなのに何故俺がここに来たがったのかなんて、ある種の納得が欲しかったからだ。
佐奈がここで事故に合った事。それがどうしても現実として受け入れ難かった。だから直接現場に来る事で自分の気持ちに踏ん切りを着けたかったのだ。
そうして少し辺りを見回していると、奇妙な物があった。
俺達がいる背後にある電柱、その下に生えている雑草の陰から何やら草の色とは異なる物がそこにあったのだ。
何のか興味を持った俺はそこに近寄り、腰を下ろしてその異物を手に取った。
「これって…」
「どうしたのカケル?…それってシュシュ?なんでこんな所に?」
透が言った通り、こんな所に
けれど
これの持ち主も大体予想はつく。そして、もしその予想が正しければアイツらが何であんなにも不愉快な声を出していたのか、繋がったような気がした。
「カケル?どうしたの顔が怖いよ?」
「ん?ああ、ごめん」
「…もしかして何か分かったの?」
「うん、なんか点と点が繋がったような感覚だよ。ごめん透、俺予定出来たから申し訳ないけどまた今度でいい?」
そう言うと透は少しため息をつくと俺に改めて振り向いた。
「無理だけはしないでね。何かあったら相談に乗るから」
「…ありがとう」
そう言って俺は自分の家に帰宅し、自分の部屋にあるベッドにダイブした。
今までの事を思い返す。
透の事、佐奈の事。そして母さんの事。
今まで起こってきた事を思い返し、そしてあの4人の顔を思い返す。
憎い。
憎くて憎くて頭がどうかしそうになる。
何故考えなかったのか、何故佐奈の虐めが終わったなんて考えていたのだろうか。俺がいない時に…よりによって俺が塞ぎ混んでいた時にアイツらがやっていた事。
憎くて憎くて顔が歪むが、それと同じくらいに俺は自分自身に怒りを覚えていた。
何があんな目に合っていい人じゃない、だ。
そんな原因を作ったのはアイツらだけじゃなく俺にもあったんだ。
もし塞ぎ混まずに佐奈と前みたいにウルトラマンの話なんかで楽しんでいたら事故になんて合わなかったんだ。
もし―――もし塞ぎ込まずに佐奈の側に居ていたらあんな事なんて起こる筈もなかったんだ。
佐奈をあんな風にしたのは俺だ。
俺が道を見失ってたから佐奈はあんな目にあったんだ。
俺は…何処まで行っても無力だった。
結局あの日から何も変わってない。
確かに救えてたのかもしれない。けれど今はどうだ。
佐奈の事を…助ける事が出来なかった。
憎い。憎くて仕方がない。
けれどここでやった所で何も始まらない。だから俺は卒業まで待つ事にした。
もし…万が一にアイツらが何かしらの反省や謝罪の言葉があったのならこの憎しみも少しは和らぐだろう。けれどそれがなかったらその時は―――
それからは俺は学校に来る目的が勉強ではなくアイツら4人になった。
見た目は何もないように、しかし中身はどす黒い感情を昂らせながら俺は日々を過ごした。
無論卒業できるように勉強も同時にやっているがこの憎しみは消える事はなかった。
そして―――遂に卒業式を迎え、無事俺は卒業出来たがアイツらは最後まで何もなかった。
そう、何もなかったのだ。これだけ待ったんだ、もう見逃してやるのは終わりだ。
卒業式が終わり、俺はあの4人がワイワイと仲良く話している所に割って入っていった。
「な、なんだよ日空。急に割り込んで…」
「なあ、少し話があるんだ。今までの事とか…よく考えたんだけどお前達の話が間違ってなかったんじゃないかってさ。こんな所じゃあれだしちょっと場所変えないか?」
そうやって丸見えの嘘をついて話したが思った以上に食いついたので俺は4人を連れて学校から遠く離れた場所…佐奈が事故に合ったあの人気のない場所まで連れてきたのだった。
「なあ日空、なんでこんな所まで」
「…記憶にないのか?お前らならよく知ってるだろ?」
「…何が言いたいのよ、ハッキリ言いなさいよ。言っとくけどあのオタクちゃんとは関係ないからね」
…何も言ってないのに佐奈の名前が出てくる当たり、もう確定したような物だった。
俺はポケットにあったシュシュを取り出し目の前に見せつけた。
すると佐川が「それ私の…」と言うや否や、ハッとした顔で口を抑える。そんなコイツらにため息をつくと上代が少し焦ったのか俺に近づいて来る。
「い、いやさ日空これには訳―――」
ノータイムで俺は上代の顔に拳を叩き込んだ。
上代は俺が思った以上に吹き飛んで転がっていった。
転がった後には血がへばりつきまっすぐな線が出来上がっていた。
「ヒッ…!?」
「日空おま―――」
続けて森白の腹を爪先で蹴ると、続け様に隣にいた佐川の頭を掴んでアスファルトの地面に叩きつけた。
そして怯んでいる森白の顔に思いっきりアッパーを繰り出して佐川と同じように地面に叩きつける。
突然の出来事に小さな悲鳴しか出せなかった上島だが有無を言わさずそのまま殴った。
人間の構造上、頭に攻撃を与えると無視出来ないダメージが現れてくる。体を鍛えてるなら話も違ってくるが目の前にいるのは俺と同い年の人間だ。
頭部を殴られても怯まないような人間でもなかったので俺は躊躇わずに、集中的に頭部を殴る。
女性だろうと男性だろうと関係なく平等に殴って、何度も何度も殴った。殴る度に相手の顔がボコボコになって膨れ上がりさっきまで綺麗だった顔の面影すら見えない。
本当に怒りのまま殴りつけた。それと同時に自分の拳にも傷がついていった。
殴り続け、血は飛び散っていたがそれは殴り続けている自分の拳の傷なのかさえ分からなかったが今はそんなのはどうでも良かった。
殴って殴って殴り続けて、気がつけばここにいた4人は殴られすぎて気絶したのかピクリとも動かなくなった。
ゼェ…ゼェ…と息を切らしながらも恨みや憎しみを晴らすかのように殴り続けたのに…何故か心がスッとすることもなかった。
もう…何もかもが疲れた。何かする気も起きない。