あれから3年が経った。
この悪夢から目が覚めることはなかった。
もうこの3年間は散々と悲観にくれた。
もう元の世界に戻れない事、ハリポタのような世界に転生したことはもちろん親が死んでることも追い打ちをかけたのかもしれない。
赤子さながらに実際に赤子だが、わめき散らしたり、わめき散らしたり、死のうとしたり、わめき散らしたり、色々と面倒もかけたのだ。
だけど三年もたった今、もうそろそろ悪夢だと言うのはやめようと決意した。
三年かかったけれど、認めよう。
俺はハリーポッターの世界に転生した。
魔法があって、簡単に人を殺せるヴォルデモートやらディメンターやら……そういった闇もあるぶっ飛んだファンタジーの素敵な世界に。
良い面もあるはずなんだ。
人が、両親が殺されるなんて光景を僕は覚えているから、悪い面しかこの3年間考えてこれなかったのだ。原作の方々に未だに会えてないし。
不死鳥の騎士団員の誰かとでも会っていたら死のうとはしなかったかもしれないし、こうなんというか、ポジティブに向き合えるのがもう少し早かったかもしれない。あの人たちいい人達なわけで……ダンブルドア校長とかの開心術が怖いけど。そもそも俺の知っている原作知識はこの世界に当てにならなそうだし。両親の使ってた魔法なんか原作になかったし……。
まぁ結論として、この三年で俺は現状を楽観的に見る事ができるようになった。
俺が何しようがハリーの勝利は揺らがないし、もし闇の帝王が勝って俺も殺されてもまぁいいかと、二度目の人生だしこんなこと考えて生きて行けねぇし。
そう腹をくくってからは好き放題生きてやるとすぐさま行動に移せるようになった。
さぁ行動開始だ!
俺はなんとかふらふらとゆっくり立ち上がり、この3年間ずっと一人で面倒を見てくれた屋敷しもべ妖精に声をかけた。
修繕が何度も繰り返された黒の燕尾服を着ていてそこまで不潔な感じはしないしもべ妖精だ。
「おはよう、それとはじめましてかな。せばす?」
散々彼は、俺に語りかけてきたものだ。
俺の両親は日本の魔法界から結婚を機にイギリス魔法界にやってきたとか、そのあと色々あったのちに不死鳥の騎士団入りしたとか、イギリスにやってきたばかりの頃にセバス自身が助けられた時のこととか、俺が生まれたときの大変さとか、ここがイギリスにある家だとか、新しいご主人である俺に自分の名前をつけていただきたいとか、他にもハリーポッターで聞いたような話とか。
この三年間ひたすら彼の話を聞いていた気がする。
そのおかげで初めは英語とかさっぱりわけわかめだったのも、自然に理解できるようになったわけだ。
赤ん坊の脳はすごいな。
あと、絶望して死のうとした時は彼には何度それを防がれたものか。
そういう意味ではセバスは命の恩人かもしれない。
「おお、ぼっちゃまが立たれた! それに喋った! おお!ワタクシは信じておりました!! それにこのワタクシめに名前まで!!こんな! 幸福な日が突然に! しもべ妖精としてこんなに嬉しいことはありません!ご夫婦が死んでからと言うものワタクシはぼっちゃまのことをぉぉぉぉ」
ちなみに僕はもう4歳なのに喋りもせず立ちもしないというひどい状況なのにそんなに違和感を感じないみたいなのが魔法界クオリティだ。
なんか魔法で健康の確認はされてたけど。
それからしばらく経ってセバスが落ち着いてから、僕は頼んだ。
セバスと会話した時、自分は今はもう子供なのだから俺という一人称はしばらく使わないようにしようと思った。
「(あ、あー、レロレロレロ、話そうとすると舌の動きが難しい。英語を聞いていたから無意識で動くけど違和感がすごいなぁ日本語と大違いだ)セバス、当時の新聞とか親の記録とかある? 読みたい」
「驚いてみっともない姿を見せてしまい申し訳ありません。かしこまりました」
セバスが頷き、指をパチンとならすと、新聞記事や写真、本、巻物などの山が一瞬で出てきた。
「ぼっちゃま、これらはワタクシが大事に大事に保管しておりました」
「う、うん。ありがとう、早いね」
魔法だ。
それも杖を使わない魔法。
しもべ妖精だけが使える魔法。
すごいものだと改めて感動した。
お世話や健康チェックされてる時の魔法には感動しなかったんだが決心がついたからか、この三年間で死んでいた心が蘇るようだな。
「一瞬で現れるなんてなんだかすごいね!セバス」
「おお! おお! そんなっ! 滅相も!ございません!」
セバスはしもべ妖精らしく謙遜した。
本心からそう思ってそうではいるけど、しもべ妖精の価値観は人間とは違うということはこの三年話しかけられ続けて理解しているのであまりしつこく言わないことにした。
新聞を手にとって読もうとするが、まだ英語を読めない。
「セバス、音読して?」
「かしこまりました!」
そういうとまた指をパチンと鳴らした。
もう一セットの本の山ができた。
「それは?」
「こちらは保管用です。私が触れるものでございます。万が一坊っちゃまのご両親が残した大切な資料を破損させてはいけませんからね。写本できるものは私自ら書き写し、保管しているのです。保管の保管用はいま書いているところなのですよ!」
「そ、そうなんだ」
すごく大事にしてくれているのだと自然と笑みがこぼれ、心が温かくなるのを感じた。
まずは当時の新聞である。
新聞のわからない言葉をセバスに聞きながら読んでもらえば、僕は両親が殺され、僕とハリー・ポッターだけが生き残った男の子ということを知った。
確かネビル・ロングボトムも狙われていたわけで生き残った男の子と言えるのだけど、新聞にはのっていなかった。
あの時、僕を引き寄せ救ってくれた人物も僕を安全な場所に移動させたあと殺されたらしい。
ハリーが死の呪文を跳ね返した英雄なら、僕は不幸の象徴のように書かれていた。
僕を助ける為に不死鳥の騎士団の団員が何人も死んだから。
不幸な男の子ダイスケ・ジエイ、 それが僕だった。
なお、そう書かれていたのは日刊預言者新聞である。
な〜にが不幸な男の子じゃい。
セバスも嫌々煽情的な文を読んでくれた。
あと僕の体のどこかにキズがついてないかと確認してもらった。
傷はどこにもついていなくて、稲妻的な変な印もなくて安心した。
次は親の記録を読むことにした。
父の名前はシノブ・ジエイ、名前のまんまの日本生まれの魔法忍者の家系らしい。
はて、魔法忍者とは……ハリーポッターの世界は杖の魔法しかない気がしたのだが……魔法の道具とかがあったし、杖を使わなくても魔法は使えるらしいという話は聞いた事があったし、使えてもおかしくはないのだろうか。
母の名前はキョウコ・ジエイ、陰陽師だったそうな。
両親揃ってイギリスに来ていたのは駆け落ち……忍術と陰陽術という秘術を扱う家に生まれた2人が家のしきたりを破りに破った大冒険があったようだ。
ジャパニーズ忍術の追っ手から逃れる意味で閉鎖的な魔法界があるこのイギリスにやって来たらしいが、次第に悪くなるイギリス魔法界の状況をみてヴォルデモートと戦う事を決意したようだ。
そこまでで両親の死に辛くなってきたから途中で読むのをやめてもらった。
セバスと僕で大泣きした。
こうして僕はこのハリーポッターの世界を生きることを始めた。