では本編へ
ぼくが桜ヶ丘学園に通い始めて3か月くらい過ぎた。
最近は遠回りなんかをしながら登校している。ずっと同じ道を通って通ってもつまらないし。遠回りをすると時々面白いものを見つけたりする。
今日は何となくスズノネ商店街を通っていくことにしたのだけど…
「―――」
道の真ん中に人が倒れていた。仰向けに見るからにぶっ飛ばされたといった感じで。
その倒れている人はうちの学校の制服を着ていたから、近づいて顔を見るとクラスメートの都築巧だった。
とにかく生死を確認すると、息はあった。とりあえず気絶しているだけらしい。
顎が少し腫れているところを見ると、誰かに一発殴られて気絶したみたいだ。都築が被害者なら相手は1人しか思い当たらないけど。
「今日塗り薬持ってたかな?」
とりあえず治療をしようと鞄の中を探す。一応いつも持ち歩いているから入っているはず。
やっとのことで薬を見つけて顎の所に塗った。
塗り終えたところで時計を確認すると、7時50分。流石に起さないと遅刻しそうな時間だった。
「でも、どうやって起こそう…」
ぼくは今までの人生で他人を起こすということをしたことがなかった。
とりあえず頬をぺちぺち叩くことにした。
「……はっ!?」
叩き続けること5分、ようやく都築は目を覚ました。
叩き続けたことで頬が腫れてしまったけど。それはもう殴られた場所が目立たなくなるくらいまで。
「あれ武井さん?」
…都築、君もぼくをさん付けで呼ぶ人だったのか。
ここで説明しておくけどぼくはれっきとした男だ。顔や体格が男っぽくないのか、名前が奏と女子とも取れるためかよく女と間違われる。
確かに施設にいたときは施設長、四摩子さんに女装させられたりしていたけど…
あれはあれで違うことがあったりしたけど、それは後々。
「教室で何度も言ってるけどぼくは男だよ。クラスメートになってから3か月以上経ってるんだからそろそろ覚えてよね。それと起きないと遅刻するけど」
遅刻という言葉に反応したのか半分しか開いていなかった目が一気に開いた。
「今、何時!?」
「い、今は7時57分」
少しびっくりしたせいで声が上ずってしまった。
時間を確認したはいいけど、今ここから学校まではおそらく15分ちょっとかかるはず。本当にギリギリの時間だった。
「まだギリギリ間に合う時間だ。よかった」
「間に合うにしてもそろそろ行かないと」
座ったまま動かない都築を急かして学校に向かい始める。
道中で都築に感謝されたりと色々あったけど学校に遅刻せずに着いた。
ここでぼく達が通う私立桜ヶ丘学園について説明しておくよ。
この学校は、元は梅ノ森喜三郎理事長が趣味で経営していた梅ノ森学園という中高一貫校だった。それがどういうわけか全く表に出ていないけど、去年突然文月学園と統合した。
その文月学園には1つ、他の学校にはない特徴があった。
それが試験召喚システムというもの。
噂ではそのシステムに理事長が興味を持ったからではないかと言われたりする。元より梅ノ森財閥は、文月学園のスポンサーだったらしい。
と、まあよくわからない感じで統合して試験召喚システムに対応するために校舎を建て替え、その際に校名も変更したらしい。
自分で説明していてよくわからないから要約すると、理事長の気まぐれで誕生した学校、でいいと思う。
まあ、ぼくは試験召喚システムというのに興味を持ってここに来たんだけどね。
このシステムの方は後々。
ちなみにこの学校、一切学費というのをとらない。さすがは梅ノ森財閥と言ったところかな。
「そういえば、都築君。さっきの誰にやられたの?」
時間的にさっきは聞く暇がなかったけどとりあえず聞いてみる。予想はついているけど。
「ああ、文乃にy」
グッ、ワッシャーン!!
『二回死ね――――ッ!』
都築の言葉に合わせるようにぼく達の教室の方から何かが壁にぶつかる音とここ3か月で何度聞いたかわからない叫び声が聞こえてきた。
これを言うのは1人しかぼくは知らない。クラスメートの芹沢文乃だけ。
「都築君、その彼女はまだご乱心のようだけど…」
「これはおそらく俺のせいじゃない」
文乃を怒らせるやつならもう一人いる、とそう言いながら教室の扉を開ける。
「やめろ、文乃! 人に当たるぞ!」
都築が開けた扉の隙間から教室内を見ると、壁際に机が転がっていた。
さっきの音はこの机が壁に当たった音らしい。
壊れてはいないようだけど、よく机なんて投げられるね。
「避けるな、菊池!」
「俺は本当のことを言っただけだろ!」
「まあまあ」
そう言って2人の間に入る都築。
言い争っている2人、片方はさっきの机を投げた張本人芹沢文乃。 見た目なら校内トップ5に入るくらいの美少女なのに、出てくる言葉は2回死ねだの馬鹿だので、いろいろもったいない人。
もう片方は、菊池家康。オタクの青年、このひと言に限る。
この二人とりあえず相性が悪い、とことん悪い。
この辺りはいつもの事だからそのままにしておくことにする。たぶん都築がどうにかするかKOされるかだし。
だからぼくはそのまま脇を通過して自分の席に座った。
「おはようじゃ、奏」
「おはよう、秀吉」
彼は木下秀吉、ぼくがこの学校で唯一名前で呼ぶ人。
彼は双子のお姉さんに似たらしく見た目は美少女にしか見えない。そういうわけでいつも女子扱いされている。
そういうぼくも最初は間違えたんだけど。秀吉もぼくを最初は女子だと思ったらしい。
要するに似た者同士仲良くなったということ。
他にも入学式にセーラー服を着てきた男子生徒とかその入学式で新入生全員に喧嘩を売った生徒とかいるけど今日はまだ来ていないみたい。
そして授業の準備とかを済ませていると、
「百回死ね――――――――ッ!」
芹沢さんの叫び声が響いた。
今日もいつも通り都築がKOされたらしい。
「相変わらずじゃの、あの2人は」
「だね。もう少し穏便にしてほしいけど、無理…だよね」
「そうじゃな」
そこに突然僕の携帯にメールが入った。
そしてそのメールはぼくの日常を変えかねない内容だった。
今回はここまでです。
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それでは、次回。