ぼくとバカと迷い猫   作:友狩

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第3話です。

この話から暫く巧視点になります。
時々変わりますが

それでは本編へ



第3話 喧嘩を止めるのは大変

「「あんたは黙ってて!!」」

 文乃呟きから始まった言い争い止めようと間に割り入ろうとしたら、この一喝。

 その迫力に思わずたじろいでしまった。

 俺、都築巧はこの2人を止める手段を求めて周りを見回した。

「良いよなぁ、都築はあの2人に好かれて」

「………妬ましい」

「でもあの2人がいると手が出せないよね」

「そうだな」

「というかどうやったらあの2人と会話できるんだ? この間話しかけようとしたらSPに捕まったしさ」

「俺なんか入学式の時に芹沢さんラブレター渡したらその場でシュレッダーにかけたみたいに破かれたぜ」

 駄目だ…誰も止めてくれそうな人がいない。

 この気楽なクラスメイト達はわかっているのだ。

 この2人の争いは俺以外に波及しないことを…というか話の中に不穏なものが混ざっていたような?

 妬むならいくらでも代わってやるから、これを止めてくれ!

「そこの2人、喧嘩はその辺でやめて。そろそろ鐘鳴るし」

「奏の言う通りじゃ、その辺でやめておくのじゃ」

 俺の心の声が聞こえたのか誰かが止めに入ってくれた。教室の隅、扉の向こう側から聞こえた。

 言い争っている2人も予想外だったのだろう、2人そろって廊下の方を見ている。

 そしてその声の人、武井奏は俺に目配せをしてきた。一時中断させたからあとは自力でどうにかしろ、と。

 2人に見つめられて、大体の人はあの視線に耐えられなくなって目を逸らすか逃げ出してしまうくらいの物だというのに、全く動じもしていない。

 せっかく作ってくれた時間だし無駄には出来ない。

「武井さんもああ言ってるし2人とも席に戻ろう」

 俺の言葉を聞いて2人とも一度お互いの方を向いたけど、同時にフンと目を背けて席に戻った。

 2人が席に戻ったところで、廊下にいた2人が入ってきた。

 俺の横を通り過ぎるところで何故か脛を蹴られた。見た目より力が入っていたらしい、すごく痛い。

 どうして?

 訳を聞こうと振り向いたところで鐘が鳴った。

 あとで聞いたところ、止めに入ったのは通行の邪魔だったからで、蹴った理由は自分で考えろ、だった。

 全くわからん。

 

 

 

 

「さて、ミスター巧。そろそろ聞かせてもらえんか?」

 帰り支度が終えた家康が、俺の側に来てそう言った。

「聞かせるって何を?」

「またまたとぼけちゃって。今朝話してたことだよ。面倒なトラブル発生中だとか」

 ああ、あれの事か。

「乙女さんが関わっていることだろう? 俺にも聞かせてほしい」

 大吾郎まで側に来た。

 ここで話してもいいけど、1つ問題があった。俺たちのことを興味深そうに見つめる女子、梅ノ森千世がいるからだ。

「この話はあとにしよう。2人ともうちに来るだろ?」

 俺は立ち上がりながらそう言った。彼女に聞かれるといろいろ面倒なことになるから慌てて話題を変えた。

「文乃、先に帰るな」

 まだ席に座っている文乃に一声かけて教室を出た。

 

 

 

 

 この学園で一番見晴らしがいい場所、屋上。

 そこから眼下を見下ろしながら、梅ノ森千世は鼻を鳴らした。その視線の先には、4人の男女――都築巧、菊池家康、幸谷大吾郎、少し離れたところに芹沢文乃――が歩いている。

 あの4人…というより都築巧は何かを隠している。

 あたしの下僕だというのに主人に言わないことが気に入らなかった。

「…で? 都築たちは何を話してたの?」

 視線は都築たちから離さず、まるで独り言のように呟いた。

 そしてどこともなく2人の少女が現れ、恭しく頭を下げた。

 この2人は、梅ノ森家に仕える使用人の子女たちで、千世の私的なメイドだった。都築たちが教室を出たのをただ見ていただけではない、さりげなくつけさせていたのだ。

「断片的にしか聞こえませんでしたが、あの続き乙女が何かトラブルを持ち込んだようです。何かを拾ってきたとか、そう話していました」

「前にも聞いたことがある話の気がするけど、猫を拾ってきたとか」

「今回は事情が違うと、そうも言っていました」

「ふうん…」

 毎度毎度よくもまあそこまでトラブルを持ち込む女だ、と思った。

 都築乙女には過去に何度も会っているが、こっちがいくら威圧的に攻めても柳のように受け流されてしまう。まさに、暖簾に腕押し、糠に釘。いつのまにか相手のペースに巻き込まれてしまう。

「引き続き4人の後をつけて詳しく調べておいて」

 都築巧はあたしの下僕であって、芹沢文乃のペットじゃない。

 …芹沢文乃、で一つ思い出した。

 今朝の言い争いを止めた人物、えっと名前なんだっけ?

 彼はあたしと芹沢の視線を受けても全く動じなかった。その時の顔どこかで見たような気がする。もちろん教室以外の場所で。

「佐藤」

 後ろに待機しているメイドの片方を呼んだ。

「はい、お嬢様」

「今朝の…黒髪の方名前なんだっけ?」

「武井奏ですが、それがどうかしました?」

「その、武井奏の事調べておいて。どこかここじゃない場所で見た気がするのよ」

「わかりました」

 そう指示を出すと、背後の気配が消えた。

 そしてあたしも屋上を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 




少し短いですが今回はここまで。

大吾郎の説明は省略しました。
いつかどこかで書きます。
ここからしばらく主人公が主人公(笑)になってします。
理由は後々明かされます。

では次回。
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