ぼくとバカと迷い猫   作:友狩

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第6話です。

不定期とか言っておきながら定期更新してます。

とりあえず本編へ


第6話 編入

 下の階でガサゴソいっている音で目が覚めた。時間は、午前5時半。

 泥棒?でもウチには取れるものなんかないし。でも念のため、抜き足で下に降りる。

 そして戸を開けた。

「あれ~? ないなぁ~」

 あの音の正体は姉さんが何かを探している音だった。いつもならこんな時間に起きてないはずなのに。

「こんな朝早くから何探してるの、乙女姉さん」

「あ、巧おはよ~」

 乙女姉さんはそう言うや否や俺に抱き着いてきた。ち、窒息する。

 何とか引き離して、もう一度同じ問いをかけた。

「判子探してるの。借金の保証書とかに使うやつ」

「ああ、実印ね」

 そう言ってから乙女姉さんの言葉を反芻した。

 借金の保証書?

「乙女姉さん、それ何に使うの?」

 この借金の保証書というのが物の例えであることを強く願った。

「お役所に提出する書類に使うの」

 探しながら俺の質問に答えた。どうやら危ないものではなさそうだ。

 俺はほっとして、実印のしまってある金庫を開けた。

「使い終わったら戻しておいてよ」

「おお、そんなところにあったのか~」

 出してから気づいたんだけど、役所に出す書類ってなんだ?

「…おはよう」

「おはよう希。悪いな、姉さんが起こしたみたいで」

「…平気」

 希はそう答えるとテレビをつけた。俺もつられて画面を見る。

 ニュースでちょうど天気予報をしていた。

「台風が来てるみたいだな」

「でも、上陸前に熱帯低気圧に変わる。大雨洪水警報が出ると思う」

 天気にも詳しいのか、希って。

「巧~、書類出しにいくから出かけるね~」

 そんな姉さんの声が聞こえた。出かけるってまだ5時40分くらいだぞ。こんな時間にどこに。

「出かけるってどこに?」

「ちょっと東京に、お昼までには戻ると思うけど」

 俺がどうこう言うことでもなさそうだしな。

「了解、いってらっしゃい姉さん」

「そうそう、希ちゃん。ケーキ作りお願いしちゃってもいいかな?」

 俺の言葉に微笑むと、後ろに座っている希にそうお願いした。

 まあ、俺が作るより希が作った方がいいのはわかるけど、なんか…

「ん」

 こくん、と頷く希。

「巧も手伝ってあげてね」

「学校行くまでなら」

 出来る限りはフォローするつもりだからね。

「全然OK~。それじゃあ」

 そう言って姉さんは出て行った。

「じゃあ朝飯食べて、ケーキ作るか」

「うん」

 

 

 

 

 その後希とケーキを作ってから学校に向かった。着いてから一つ問題が起きた。

「今日、武井休みらしい」

 先に来ていた家康がそう言った。

 困った。

 一昨日の時点で電話で聞いておけばいい、とかあるかもしれないけど、あの場にいた人間全員武井の電話番号を知らなかったのだ。直接訪ねるにしても住所も知らないという、ね…

「なあ、木下。武井休みの理由とか知らない?」

 彼と一番仲のいい友達である木下秀吉に理由を尋ねてみた。

「理由は何か知らないのじゃが、3,4日休むという連絡は受けたぞ。その間は自宅にいないらしいのじゃ」

「電話で?」

「メールじゃ。そのあと電話したのじゃが出なかったのじゃ」

 自宅にいなくて電話もつながらないって、メールをしても返ってくるかは微妙。

 これ明らかに積んでないか?

「今メールできるか?」

「奏に何か用でもあるのか?」

 木下がそう疑問に思うのも仕方がないのかもしれない。俺や家康、大吾郎、もちろん文乃もそこまで仲がいいわけでもないし、滅多に話もしないしな。

「聞きたいことが一つ」

 俺がそういうと木下は少し考える。

 そして顔を上げた。

「急ぎの用ではあるのか?」

「まあ、一応は」

 出来る限り早めに聞きたいというのは事実だ。

 もし希の言っていた奏が彼ならばいろいろ話を聞きたい。可能性はとても低いけど…

 木下は何か紙を取り出すとそこに何かを書き始めた。

「何書いてるんだ?」

 そして書き終わったのか、俺に渡してきた。紙にはアドレスらしきものと電話番号が書かれていた。

「これは…?」

「奏のメールアドレスと電話番号じゃ。お主たちが聞きたいことをワシが聞いて中継することは出来んからの」

 要するにこれを使って直接聞けということらしい。

「サンキューな、木下」

 とりあえず早速メールをしてみることにした。

 

 

 

 

 

 

 昼休みになり、俺は携帯を開いた。

「巧、返信きた?」

 すぐに文乃が近づいてきた。

「いや、来てない」

 一応電話もかけてみるが、電源が入っていないらしく繋がらなかった。この感じだとメールも見てなさそうだな。

「ダメかー」

「ねえ、巧」

 文乃が俺の肩をたたいて、廊下を指さした。

「廊下がどうかしたのか?」

「さっき乙女さんと希が歩いてた」

 姉さんと希が!?なんで学校に?

「どっちに向かって歩いてた?」

「向こうの方に―――って巧!!」

 向こうの方、おそらく職員室の方だ。

 俺はそのまま教室を飛び出した。

 廊下を注意されるギリギリの速度で駆け、職員室に着いた。奥の方から乙女姉さんの声が聞こえる。

「そこを何とかお願いできませんか」

 両手を合わせて何かをお願いしている。その後ろでぼーっとしている希。それで姉さんがお願いしてるあの人は確か――

「あのタコヤキは、あんたの姉さんの恩師で、今は教頭よ」

 突然後ろから梅ノ森が現れた。

 編入って?

「梅ノ森は姉さんが何をお願いしてるのか知ってるのか?」

「お手」

 いつものようにお手を要求してきた。これ従わなかったら教えてくれなさそうなんだよな…

「はい」

 俺は彼女のだした手の上に自分の手を乗せた。

「よろしい。あんたの姉さんはあの子、霧谷希をうちに編入させようとしているのよ」

 …ちょっと待て。

 姉さんが希を編入させようとしてるのはまずおいておこう。

 なんで梅ノ森は希の名前を知ってるんだ?梅ノ森には話していない、というか隠していたのに。

 それが顔に出ていたらしい、ふふん、と言って梅ノ森は、

「なんで知ってるのかって? あたし相手に隠し事なんてできるわけないでしょ」

と。

 うん、そうだね。梅ノ森相手には無理らしい。

「で、なんで姉さんはわざわざこんなこと頼みに来てるんだ?」

 うちの学校は普通に編入を受け付けている。まあ、その編入試験が超難関でこれに合格する人は確実にAクラスと言われるほどらしい。

「うちの情報部が調べたところ、彼女の戸籍や通学記録すら見つからなかったから、その辺が関係してるんじゃない?」

 梅ノ森が言ったことに少なからず俺は驚いた。梅ノ森のことだ、あらゆる手段を使って調べたのだろう。それで何も見つからないとなると本当にないということだ。でも何もないというのも変な話だ。

「でもさ、普通の学校じゃ無理かもしれないけどこの学校なら大丈夫なんじゃないか?」

 希を見ていたらなぜかそんなことを言っていた。

「どういうことよ?」

「梅ノ森がOKしてくれれば――って俺は何を言ってるんだ」

 俺ははっと我に返った。

 無意識のうち何を言ってるんだ俺は…

「確かにあたしがお爺様に頼めばOKかもしれないけど」

「本当かっ!」

「でも、これは都築の態度次第だけど」

 梅ノ森はこっちを向いてニヤリ、と笑った。

 あ、なんか弱みを握られたような…

「あんたがあたしの計画に全面協力するなら、頼んであげる」

 いつのまにか希や乙女姉さん、先生がこっちを向いていた。姉さんの顔がキラキラしてるよ。どう考えても断れる雰囲気じゃないし…

 希の方を見てから俺は――

「わかった。全面協力するよ、ご主人様」

「その返事が聞きたかったのよ。タコヤキ、これ理事長決裁書」

 梅ノ森から紙を渡されたタコヤキ先生(仮)は慌ただしく動き出した。って試験は?

「なあ、試験って受けなくて大丈夫なのか?」

「大丈夫なんじゃない。あたしの子分になるんだから」

 あれ、もう希って子分になるの決まってるの?

 当の本人は何が何だかといった感じで首を傾けてるけど。

 

 

 

 

 

 




今回はここまでです。

迷い猫原作では編入は受け付けていませんが改変しました。
出ないと愛子が出てこれませんし(最初からいたってことにしちゃえばっていうのはなしで)

それでは次回。
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