ぼくとバカと迷い猫   作:友狩

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第7話です。

ここに書くことがないので、本編へ


第7話 学校

「学校…?」

 帰宅後にさっきの話を話したら希はそう言って首を傾けただけだった。というか姉さんと一緒に来てたのにこの反応って、何も知らずにつれてこられたのか。

 さっき梅ノ森から連絡があって明日から希は桜ヶ丘学園の生徒になるらしい。仕事が早すぎる…

「そそ、巧や文乃ちゃんたちと一緒のね」

 姉さん、その説明じゃ全く伝わらないよ。

 希は「なぜ?」とか「どうして?」って聞いているんだから…たぶん。

「家にずっといるのも退屈だろうから一緒に学校に行ったら楽しいだろうって、姉さんが学園に頼んでくれたんだ」

「………」

 無言のまま俺のことを見つめてくる希。

 その瞳は、「わたしはどうすればいいの?」と問いかけているようだった。

「別に断ってもいいんだ。その時は俺から梅ノ森に話すから。でもひとつだけ」

 そこで俺は一度言葉を切った。

「姉さんは希のために、と思って頼んだ。そこだけは知っておいてくれ」

 希は俺の言葉を聞いて姉さんの方を向いた。

 姉さんはそれに対し微笑んだだけだったけど、それを見た希は確かに頷いた。

「…わかった」

 ぶっちゃけ、これって俺と姉さんで希が断れないように逃げ道をふさいで頷かせた気がするけど、気のせいだよね?

「それで、制服の方は?」

 姉さんの方を向いて聞いた。

 俺の問いに対して姉さんは、フフフ、と不敵に笑い後ろに置いてあった紙袋の中に手を突っ込んだ。

「じゃ~ん♪ ちゃんと用意してあるよ~桜ヶ丘学園の制服。文乃ちゃんに借りたからね♪」

 紙袋の中からは桜ヶ丘学園の女子制服が現れた。

 文乃に借りたってそれはまた準備がいいことで。というか断られたらどうするつもりだったんだ?

 まさか断るはずがないと思っていたとか?

「桜ヶ丘学園…」

 制服を受け取った希はなぜか学園の名前を呟いた。

 でもその表情からは何を思っているのか全く分からなかった。

「それじゃあ、希ちゃんの編入祝いしましょー♪ 美味しいものを食べに行くとか」

 そんな姉さんの言葉に俺は大きなため息をついた。

「姉さん、うちの家計は火の車だよ。そんな贅沢なんてできないって」

「だいじょーぶ。こんな時のためにヘソクリを用意してあったのです」

 そう言ってどこともなく取り出した弐千円札。

 折り曲がってもいないところを見るとヘソクリじゃなくてただ珍しいからとってあっただけなんじゃ…

「これ使って蓬萊軒でラーメンなら大丈夫でしょ?」

 確かにあの中華料理店なら安くて美味い。家で自炊した方が安いのには変わらないけど。

「文乃ちゃんも誘って行こうよ~。希ちゃんはその制服に着替えてね」

 学割で100円引きにしてくれるから、と。ここだけ見るとちゃんとしているように見えるんだけどなぁ。

「ん」

 希は小さく頷いた。ってなんかいつの間にか行くことが決定事項になってるし。

 

 

 

 

 家を出てしばらく。姉さんが商店街の人たちに捕まってしまった。

 あ、別に捕縛されたというのではなくて話しかけられてそのまま井戸端会議になってしまったということだ。

 その間俺たちは待ちぼうけを受けているのである。

 最初は精肉店の主人だけだったのにいつの間にかいろんな人が集まってきてしまったのだ。

「呆れるしかないわね、ホントに…」

 その様子を見ていた文乃がそう言った。

 ホント、文乃の言うとおり姉さんには呆れることしかできない。

 無茶苦茶の一言。だって希の身元引受人になるために署長にお願いしたり市長を説得したりしてるんだから。

「希ってどこから来たのかしら…」

 文乃がポツリと呟いた。

 希には戸籍や一切の記録がない。

 たまたまの偶然なのか、何かの事情があってそうなったのか。

「やめようぜ。俺達だって似たようなもんなんだし」

「うっさい…」

 俺の言葉を聞いた文乃はそう吐き捨てた。

 まるで、それ以上言うな、とそう言っているような気がした。

 それから俺は自然と希の方を向いた。

 希は後ろの方をじーっと見つめていた。相変わらずの無表情なのだが、少し驚きといったものが混ざっているような気がする。

「希?」

 俺が声をかけても反応がない。だから希の視線をたどるように後ろを向いた。

 そこには八百屋の主人と談笑する女の子の姿があった。

 もう一度希の方を向き、確認する。そして確信した、希はあの人のことを見ていると。

 もう一度その人の方を見て少し観察する。

 見たところ俺達とさほど変わらない年齢、雰囲気からは少し上に見える。なんというかここにいるのが場違いのような、梅ノ森とはまた違ったお嬢様という感じの人だ。

 俺と希に(もしかしたら文乃にも)見られているのに気が付いたのか、その少女は話をするのをやめてこっちを向いた。

 そして希を見つけると驚いたのか口に手を当てた。

 こっちに来るのかと思ったら俺を見て微笑んで、八百屋の主人に頭を下げるとその場を離れていった。

 もしかしたらあの人が希の言っていた『かなで』なのでは、俺はそう思った。

 でも、希は俺の予想とは違う名前を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか希がこの町にいるなんて…」

 私は彼らから遠ざかりながらそう呟いていた。

 彼らと一緒にいた少女、霧谷希。彼女は私たちがここにいるのは知らないはず。だから自力で私たちがいるこの町にたどり着けるはずがない。

 誰かがこの町に連れてきた?

 誰かというよりあの都築巧と一緒にいるのだから彼の家族が連れてきたというので間違いないと思う。

 でも、こんな偶然があるのだろうか。

「何にせよ、彼にあとで教えてあげないと」

 それにあの制服。希は桜ヶ丘学園の生徒になったということなのだろう。

 私も編入しようかしら…と思っても無理な話なのだ。『今の私』では。

 でも、いつかあなたと一緒に―――

 




今回はここまでです。(決まり文句)
こっちも特にはないですね。
感想などお持ちしています。
それでは次回。
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