ぼくとバカと迷い猫   作:友狩

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第8話です。
では本編へ。


第8話 サークル?

 美少女編入生が来ると朝から大騒ぎだった。

 その状況は昼休みになっても変わらなかった。

「これは恐るべき集客率。他学年の奴まで来てるな」

 家康が言うとおり教室の扉の向こうにはすごい数の人がいた。ちなみに教室内には入ってこない。

 まあ教室内はうちのクラスの人が希の席を囲ってるんだけどな。

 希の席は窓側から二番目の一番後ろ。その窓側の隣は今日も空席だった。

「巧、何とかしてあげたら?」

 希のことをずっと眺めていた文乃が突然そんなことを言い出した。

 俺に言うくらいなら自分でやればいい、と言ってやろうかと思ったがやめた。

 そんなことを言った時にはまあ俺はぶっ飛ばされるだろうし、このオオカミ少女は俺に言われたらまず反対の事、助けないという方向に意地になってしまうだろうから。

「俺が行ったらさらにややこしくなるだろ」

 それだけが理由じゃない。

 ただでさえクラスの男子には文乃や梅ノ森と一緒にいるというだけで命を狙われかねないというのに、さらに希まで一緒に住んでるなんてことが知られたら冗談抜きで殺される。

「……ん?」

「……む?」

 文乃と大吾郎が何かの気配を察したらしい、人がひしめき合っている扉の方を向いた。

「どうした?」

 俺の問いに文乃は嫌悪感を隠そうともしないため息をついた。

 それだけでわかってしまう俺もどうかしてると思うが。というのも文乃がこういう反応をするのは1人しかいないからだ。

「……梅ノ森だ」

 俺の予想通りだというのを大吾郎が教えてくれた。

「野次馬ども散れーっ!」

 叫び声が人垣の向こうから聞こえ、その声に合わせるように人垣が一直線に空いた。

 開いた向こう側から歩いてくる梅ノ森。この学園の人ってなんかの訓練でも受けてるのか、というかサクラ?

 そして希の所にたどり着いた。

「あんたが霧谷希ね」

「…にゃあ」

 梅ノ森の問いに頷く希。

 ただし希はなぜか、にゃあ。普通に頷くだけでいいんじゃ…

「あんたは、あたしのこと知ってる?」

「…昨日巧と話してた人」

 希の答えは間違っていないんだけど、おそらく梅ノ森が要求している答えじゃないと思うぞ。

 案の定梅ノ森は俺のことを睨み付けてきた。おそらくこの睨み付けはなんであたしのこと話してないのかってことだろう。

 確かに話しておくべきだったかもな。

 でもそれだけだった。

 文句の一つでも言われるかと思ったんだが。

「まあ、下僕の失態を許すくらい寛大であることも支配者の器だし」

 いや俺の失態というより機転の悪さかと。

 その言葉を聞いてる希は首を傾げてるだけだけど。

「あたし直々に説明してあげるわ。あんたの編入を実現させたのは、都築乙女ではなくこのあたし、梅ノ森千世よ!」

「…千世」

「そう。だからあんたはあたしに借りがある。これは理解できる?」

「…にゃあ」

 だからなんで返事が、にゃあ、なんだ?

「それじゃあ、あんたもあたしの子分になりなさい」

「了解」

「「「「えっ?」」」」

 話が早すぎてついていけない。

「希、お手」

「にゃ」

 梅ノ森のお手に何の抵抗もなく手を乗せる希。

 素直すぎるのもなんか考え物な気がしてきた。まあ、そんな希に梅ノ森はご満悦なんだが。

「付き合ってらんないわ…」

 横にいた文乃はそう呟いて自分の席に戻っていった。どこか寂しそうな感じがしたけど気のせい、だよな?

 そして希も梅ノ森を撫でながらも少しだけ隣の空席を気にしていた。

 

 

 

 

 

 

 放課後になり、突然校内放送で屋上に呼び出された。呼び出したのはおそらく梅ノ森だろう。昨日言っていた計画とやらのことだと思うけど。

「なんで私まで呼び出されなきゃいけないのよ」

 屋上に向かう途中、後ろで文乃がぶつぶつと文句を言っていた。というか踵蹴るのやめてくれ、危ないから。

 階段を上がりきり屋上の扉を開けた。

「来るのがおそーいっ!! 呼び出しを受けたら速攻で来なさいよっ!!」

 そんな無茶な…

 これでも結構速く来た方なんだけど。

「……」

 なんか後ろですごい殺気が…

 これ絶対文乃だよなぁ…

 すごい形相で睨んでるんだろうな…

 訳もわからず呼び出されてこの言葉、キレても仕方がないか。

「あんたたちをよんだのは他でもないわ」

 昨日の計画の事なのはわかってるけど、何をするつもりなんだ?

「こっちは忙しいんだから、要件をさっさと言いなさいっ!!」

「サークルを作ることにしたわ」

 サークル?円?円を作るってどういうこと?

「あんたたち全員、そのメンバーにしてあげるわ」

 ああ、部活とか同好会とかの方のサークルか。

 で、なんで?

 おそらくこのことは全員が思っていることだろう。

「最近、あたしの人徳のおかげで下僕と子分が増えたことだし」

 いや梅ノ森の人徳ではなく借りがあるからなんじゃ、と言ったらどこからともなく空き缶が飛んできて吹っ飛ばされた。痛い。

「下僕から奴隷に格下げするわよ!!」

 それだけは勘弁してほしい。

 俺は飛び起き土下座した。というかあの空き缶、誰が投げたんだ?

 梅ノ森は投げる動作をしてなかったし、ここ屋上だし、それに人が吹っ飛ぶってどんな威力だよ。

「なんで私までここに呼ばれなきゃいけないのよ」

「別にあたしだって呼びたくなかったけど、都築と希が参加するんだし、一応その関係者にもチャンスを上げようと考えなおしたのよ」

 やっぱり俺と希は強制参加なんだな。

 希はまたぼーっとしてるけど。

 ぼーっとしてるんじゃなくて何か考えてるのか?

 わからん…

「チャンスって、1人でも多く巻き込もうとしてるの間違えじゃないの。私帰る」

 そう言って文乃は帰ろうとする。

「去る者は追わないがあたしの信条だけど、もうメンバー登録して提出済みなのよね」

「はぁっ!? なに人の名前を勝手に」

「こんないい話断るはずがないと思ったから。まあ、都築と希は強制参加だけど、残りの3人は選んでいいわよ」

 あ、ちゃんと選ばせはするんだ。

「質問。具体的に何する集まりなんだ?」

「そうだな。何が目的なのかがわからないとこちらも考えようがないからな」

 家康と大吾郎が一番重要なことを聞いてくれた。

 強制参加とはいえそれがわからなきゃ何とも言えないし。

「………」

 あれ?なんか固まってるんだけど。

 まさか何も考えてなかった、とか?

「おーい、梅ノ森~」

 顔の前で手を振ってみるが反応がない。

 まさかほんとにノープラン?

「まあ、活動内容はあとにしよう。活動拠点は確保してあるのか?」

 家康がとりあえず話を進めてくれた。

「それは大丈夫よ。このペントハウス、ここが活動拠点よ」

 フリーズから回復した梅ノ森は自信満々に後ろにあるペントハウス、というか小屋を指した。

 あの建物って確か倉庫だったはずじゃ。倉庫で何するんだ?

「あそこからあたしたちの戦いは始まるのよ!」

 始まる前に終わりそうなセリフを自信満々に言うな。どう考えても打ち切りエンドしか聞こえないんだが。

「梅ノ森、サークルの方は参加するから、次回までにやりたいことを考えてきてくれないか。そろそろ店番の時間だし帰ってもいいか?」

「なんでよっ!?」

「今日傘持ってきてないから降り出す前に帰りたいんだ」

 さっきから雲行きが怪しくなってきている。

 俺の言葉を聞いて全員が上を向いた。

「確かにそろそろ降り出しそうだな」

「そういえばオレも傘持ってきてねぇ」

「うーーーーっ。わかったわよ。今日はこれでいいわ」

 泣く泣くといった感じで俺たちの帰宅をオーケーしてくれた。

 

 

 

 




今回はここまでです。

では次回。
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