お気に入りと評価をしていただいたので、嬉しくなってなんとか今日中にあげようとしただけです。
レスポンスがあると、書くモチベにつながりますし、ありがたいことです。
あ、入浴は次回に持ち越しになりました。すまぬ・・・すまぬ・・・
狭い浴場の手前にある簡易的な脱衣所。
金属の壁があるはずの壁面に竹細工の壁掛けが掛けられて、床には民芸品のような薄い敷物が用意されている。
敷物を取り外せば掃除が簡単な上、使う間は足の裏が汚れない、という配慮。
ここまで案内した山軍曹は、警備をすると立ち番をしている。
「軍艦のお風呂、か」
何気に、初めてだ。
着替えを棚に置き、竹桶に石鹸とタオルのセット、今まで着ていた水練着を一緒に入れる。
栗中尉は畳んだ新しい詰襟と普通のズボンを用意して、同じ竹桶のセットを棚に置く。待っていたアタシに視線をやる。
「・・・あの、あんまり見ないでください」
「あ、すまん」
アタシの太ももの痕は確かに目立つかもしれない。
気にしていないわけではないけど、それが自分の楔になっているとも思わない。
周りからの一歩引かれた視線は慣れっこ。
「ただ、肌が綺麗だな、って。すまん」
「うぇっ」
肌が、綺麗?
そりゃそうだ。こっちは五年間も、文字通り日の目を見れなかった身。
ウィッチとして正式に訓練をするようになってから外に出るようになったが、病的にも青白い肌を周囲から心配された。
綺麗だなんて言われるとは思わなかった。
不健康とか、外に出て運動しなさいと言われることはあっても、綺麗なんて褒められることなかった。
栗中尉のその言葉がたとえお世辞でも、今まで掛けられたこともない言葉を掛けられると、思いもせず顔が熱くなる。赤くなる。
「入り方は、俺が教えるしかないか」
ちょっと待ってろ、と言った中尉は水練着を脱ぎ始める。
アタシよりも頭は二つほど上で背丈も当然、二回りは大きい。
ぼんやりと視線を横に振ると、水練着の圧から放られた大きな瓜が二つ。ブルンと揺れる。
「・・・大きい。いいなぁ」
パッと見たときは山軍曹の方が大きかったけど、直に見てみると、栗中尉はかなり着痩せするようだ。
「よし、行くか」
「は、はい!」
バルンバルンと揺れる大きなお椀形の山に視線が行くのを抑えて、浴場に入る。
むわっとした湿気が顔をなぞり、木でできた簀の子の床をしっかりと踏みしめて、三人分の身体を洗うスペースに来た。
「竹桶に入れていいのは真水と、そこの湯船の海水」
真水はコックを一度ひねると定量が出る、中尉は自分の座った椅子の前にあるコックを捻って竹桶に水を入れる実践をしてくれた。
アタシは湯船を指さして続けられた言葉を復唱する。
「海水?」
長良に改装で新設された大きくない大浴場の中身が海水を温めたもので出来ていると知った。
見よう見まね、おっかなびっくり丸出しで竹桶を蛇口の下に入れて、コックを捻る。
竹桶の七割を満たした後、水は止まった。整備で潮を落とすのにも大慌てだったから、これだけ用意するのも大変だろう。
「んで、まずは髪を洗う。潮は髪にダメージ与えるからな。湯船でも浸かっちゃだめだから最初に洗って、塩分を落とせ」
「はい!」
竹桶の中から両手で水を掬い、短く切りそろえる藍色がかった黒髪に水をかける。
隣では、あまり長くない一纏めの黒髪を降ろした栗中尉が濡らした手の手櫛を通していた。
スルスルと通るのは、どこか宇野部少佐を彷彿とさせる。
「いいなぁ」と思う。
アタシの癖毛は、あれを真似して手櫛を通そうとすると引っ掛かる。
丹念に、けれど手早く髪を洗い終えた。
すぐ横でペースを見せてくれるから、真似するだけ。
髪の毛の量だって、短く切りそろえているアタシの方が少ない。
「次、水練着を真水洗いする。ここじゃ、山が居るから野郎どもも洗濯とか乾かしてある水練着やズボンをギンバエするやつは居ねぇけどな」
逆に言えば、ウィッチの数が少なかったらそんな大騒動が起きるのか。
「俺が空母乗ってた時は、一人の助平が盗んで大騒ぎ。お縄についたら速攻軍法会議行きだったよ」
予科練の初等教育でも、ウィッチは男子兵との接触は最小限。
物が盗られる可能性もあるって習った。
そういうやつらは同じ水兵からも白い目で見られるし干されるとも聞いた。
アタシたちは、そうやって守ってもらっている。山軍曹にだって、今こうやって守ってもらっている。
「山はな、扶桑海事変が終わった後のウィッチ募集で海軍を受けて、ユニット適正がなかったから兵士としての教練を受けたんだ」
「前の所属も鎮守府の特別陸戦隊とか、そっち」
水練着を水洗いする。
「んで、こっちに来て。長良の改装作業中に俺が寝ぼけててよ、変なやつに絡まれたことがあってさ」
「絡んできたやつ、そのまんま柔術で担いで、乾ドックのコンクリにぶん投げよったよ」
「予科練でも習ったろ。大抵の軍人共は、俺らの重要性が分かってるけどって」
アタシたちは、怪異やネウロイに対しての攻撃力を持つ。優遇されているし、周りの兵士たちは守らんとしてくれる。
事実を、甘く見てはだめだし、厳しく見てもだめ。現実を見て、男性兵士との距離感を常に保て。
そんなことも分からない、ヒドイ一部のバカも居ないわけじゃない。
故に、アタシたちには山軍曹が居て、ユニット適正がなかったウィッチは護衛として働いている。
「俺たちは、沢山の人に助けられてる。守ってもらっている。なんでかは、分かるよな」
「・・・アタシたちが、戦うから」
ウィッチは、性的な身体接触を行うと魔法力を失う可能性がある。
予科練でも口酸っぱく言われること。
二十歳ほどになると減衰が始まるが、それ以外でも純潔を失うと使い魔との契約が続かなくなるというのが、一般的な見解。
「そうだ。俺たちが、たまたま、敵と戦う能力を持ってるから。ただ、それだけだ」
ぽつり、栗中尉が言葉をこぼす。
「俺も、ウィッチとしてはそう長くない」
洗い終わった水練着を置き、石鹸で身体を洗い始めながら、中尉はそう呟いた。
「栗中尉が電探ユニットを履かれるのはそれが理由だったんですか」
ウィッチとしては長くない、魔法力の減衰が始まっている。
「上がり」ということ。
電探ストライカーユニットは魔法力や魔法圧が低くても使うことができることが特徴。
経験豊富で丁度いい塩梅に魔法力の減衰が進んだ中尉が割り当てられたのだろうか。
隣の女性は大人びている。眠そうな様子だった顔つきは少しだけ、凛々しく引き締まって目の前にある鏡を睨んでいた。
「いや、アレを使うのはまた違う事情だ」
自分自身を責めるかのような口調。昔を思い出すような口調。栗中尉は鏡の中の自分を睨んでいるようにみえるが、その視界はどこか、遠く・・・昔のことを見ているようだった。
「すみません」
「いいんだ。ただ、伝えておいた方がいいな・・・」
アタシは起伏の少ない体を洗いながら、続きの言葉を待つ。
「俺は、飛ぶことを拒否してるんだ」
実際、現実でも一部の人が同類項の人たちのイメージをがっつり傷つけてることってありますよね。
SWの世界観でも、一般的な価値観をしてる人は「戦闘でもない限り守らなきゃ」って思ってるだろうし、だけど、変なごく一部のせいで、極度に距離を置くように教育されてんのかな・・・とか思いつつ。
まぁ、アフ魔女の総集編(同人版)見てると、SWの男性陣、めっちゃ男気あるよなぁって(そういう描写とはいえ)
でも、やーなやつが居ることもあるんだろうな、的な話でした。
あとは、山軍曹の心持とか、栗中尉が飛ばない理由、ここらへんは今後とも描いていく予定です。
ただ、栗中尉、結構隠す感じしません?
何かがトリガーになるんでしょうね、ここらへんのエピソードはね。(他人事)
次回はみんなお待ちかね浴槽回です。・・・描写できるかなぁ。