感想は前回の前書き通り、ログインなしでも書けるのでお気軽にどうぞ。
評価は・・・あと1件で色付きゲージになるぐらい?
パッと目に見える評価や感想はありがたいですが、無理してでも欲しいものではないので、ご気分が向いたらお願いします。
それと最近気づいたんですが、僕は文章をアウトプットしてないと体調を崩すみたいです。なんだこの体質。
そんなわけでしばらく体調崩してました。
今後もボチボチと更新していきます。
楽しみにしていた作品が更新再開されたので、復帰するなら今やるしかないと思ってたりラジバンダリ。
「うみ~の乙女だ、艦隊勤務」
バケツいっぱいの水にモップを浸し、押しつぶして軽く絞ると潮を被り薄っすら白いデッキの鉄板をこすった。
「げつげつかーすいもくきーんきん!」
軍歌を口ずさんでいると、呆れかえった栗大尉のため息が艦橋から聞こえてきた。
長良は出港用意の真っ只中。
弾薬補給はなく、生活用品と生鮮品を中心にした食品を積み込んでいる。
これからまた三週間出港し、扶桑海で半島を正面に扶桑の防空任務にあたる。艦橋の作戦室では、今頃、航海長を筆頭に航海計画を練っている。
出港は明朝早い。
最後の休息を取って、警戒任務にあたる。
アタシはこれから戦闘隊長。編隊の長機は実際に務めるわけで。
「あ~さだ~よあけ~だ~」
サエちゃんは自室でぐっすり。宇野部少佐の猫時間をしみこませるため、昼間に寝てもらっている。
部屋割りも、山軍曹が常々見張る警戒態勢での2部屋になった。
下士官で、ウィッチといっても、豪華な待遇。
部屋にはまだ何にもないけど、これから生活感に乱れていくと思うと、心地よい空間になりそう。
前は、あまりにも物がないし、栗大尉自身が物を持たないので、部屋が綺麗すぎた。
自分はちょっと生活感があるぐらいが好きで、昔からだと思う。村の皆に軟禁されて、部屋が雑然としていた。
おとぎ話の本や、貢物で渡されてくる流行の本が散乱するぐらい読んで教養高くなったわけじゃないけど、文章を読むのが好きになった。
「うしおのい~ぶ~き~」
一通りモップ掛けを終え、バケツの水をチェーンの手すりごしに放る。
これが海水だったら、甲板洗いの意味がないから昨日の真水。
甲板掃除を終えて気分のいい気持で青空を見上げた。
今日は勲章授与の日。
気分が良くないと言えばウソになる。アタシだって勲章がすごいことぐらいは知ってる。
「とーよー、いい加減その音痴な歌やめて飯食いにこーい。サエも呼んで来い」
甲板の上でモップを片付けていると、大尉が艦橋横から顔を出してきた。
「はい!」
歌、へたっぴって言われたのはちょっとショック。
寝起き、低血圧でぼんやりするサエちゃんを起こし服の着替えを取り出した。
寝起きが猛烈に悪いのか、それとも睡眠の質自体が悪いのか。毛布を蹴飛ばしていたサエちゃんは乱れた服装のままアタシに両手を伸ばして、「着替えさせて」と一言。
猛烈に可愛い。
ズボンと制服を手渡し、着替える間におさげ髪の櫛を通して結んであげる。
こういうのは7年以上前だからへたっぴかもしれないけど、自然と楽しかった。
「んにゃ、あ、お姉ちゃん」
髪を結んでいる前の方から聞こえる小さな声にアタシはお道化て答えてみた。
「はぁ~い、お姉ちゃんだよ~」
同い年だが。
「・・・そ」
「そ?」
恐る恐ると言った具合でサエちゃんが金髪を振る。
「曹長?」
絶望に染まった顔色。やってしまったという後悔が透けてみえる顔の色。
「はぁ~い、お姉ちゃんだよ~」
もう一度お道化て、手を軽く振る。
「・・・す」
「す?」
すさまじい声量の謝罪。ついで扶桑の伝統的謝罪の五体投地を決めようとするのを宥めた。
アタシにそういう経験はないけど。家族を早いうちに喪って、家族を思い出すこともない。銀のネウロイを見るまでは、すっかり記憶の端に追いやられた。追いやっていた。
思い出したら、悲しくなって、涙が出て。止まらなくなってしまうから。
「遅いぞ」
ピークの時間を過ぎた士官食堂。いつもの席に座ってお茶を飲む栗大尉は髪の毛がぼさぼさ。出港前の打ち合わせを終えて軽く水浴びしたみたい。ボイラーの火を落としている今は入浴が出来ない代わりに海水が出る。
「大尉こそ髪の毛ぼさぼさじゃないですか」
「これから寝るからいいんだよ」
4膳並んだ食事の席に座ると、サエちゃんの顔がすごいことになってる。
並んだ食事は、焼き魚にほうれん草のおひたしと味噌汁に納豆。銀シャリ。
整ったメニューは、二宮二水が朝から張り切ってくれたんだろうな、と思う。
「サエちゃん、納豆は食べなきゃダメだよ」
納豆は秋水ウィッチに必須。消化によく、腸内ガスの発生を抑えてくれる万能食で、航空兵が高空に上がるときにも重用される。
発酵食品は身体にいい働きをするし、実家が酒蔵で恩恵に肖っている。
サエちゃんは扶桑に居た頃から、カールスラント人の母が作る洋食中心の食生活だったそう。
扶桑人以外には好まれない納豆の味は、サエちゃんのお口に合わなくても仕方ない。
「どうしても、ですか」
「どうしても。それとも、ずーっとあのポリッジスープにする」
「それは嫌です」
仲良さげなアタシたちを不思議そうに見ていた大尉は、遅れてきた山軍曹のお咎めを受けていた。
離席の許しをもらい、ちょうど片づけをしていた二水にこっそりお願いをする。彼ほどの料理人なら何か解決方法があるハズ。
「サエ軍曹の納豆嫌いを治したい、ですか」
「甘納豆にするなら、どうでしょう」
「試しました」
甘納豆、砂糖を入れてあまじょっぱくするのは失敗済み。あのねばねば感が残ってしまい、サエちゃんはどうしても嫌がった。
「んん、そうだ、サエ軍曹」
二水が、納豆以外を手早く食べたサエちゃんに声を掛ける。以前なら軍曹が間に入ってきたけど、そういうこともない。
「なんでしょうか」
「ネバネバがお気に召さないんですよね」
「そうです。子どもっぽいって笑ってください」
サエちゃんに優しく笑いかける二宮二水の様子が違う。
アタシと話した時とその前後。他の人にはあんなに自然に笑いかけるのに、どこか引きつった表情をアタシには見せる。
「誰も笑いませんよ。食事ってのは、人が居る数だけあるんですから。昼食に美味しいものをご用意します」
あの時教えてくれなかった答えが原因だろうか。
豊ちゃんが概念的お姉ちゃんと重い女スキルを手に入れてしまった気がする。