SW「ヒドラジンの魔女」   作:ムロ913

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前回更新後、評価や感想などを頂き本当にありがとうございました。

特に、評価を頂いて、黄色ゲージにこそなりましたが。まだまだ未熟だな、と実感するばかりでございます。

長く更新を続けられている憧れの作者様に感想を頂きまして、「まいぺーす」に頑張って更新していきたいと思います。どうか応援のほど、よろしくお願いいたします。

あ、それはそれとして。二宮君の苗字については、割と偶然です。自分はキャラの命名が苦手なので、ぼんやり見ていたものとかで決めるんですが、地元の名前だと被ってしまうと一付け足しただけなんです(言い訳になってない)


part.4「勲章」

「勲章かぁ」

 

 銃後の人にとって、戦時の今は遠いもの。平和な本来であれば、文民が受けるもの。

 扶桑海事変以降、扶桑は戦時。実際の戦禍を受けていないから、扶桑本土や南洋島といった主要な土地は平穏に、変わりなく暮らしている。

 もしネウロイが水という弱点を克服すれば、扶桑は孤立する。

 ネウロイの弱点、水。大量にある扶桑海や太平洋を周りに望む扶桑は、土着の怪異とは戦った。

 ネウロイ戦争における戦時体制でも、一年と少し前は最前線のブリタニアや復興途中のガリアほど苦しんでいない。

 軍部も欧州派遣を東西両戦線に行っていても、規模は大きくない。

 皇国にとって、国際協調の派遣で投入した部隊には十全な最新装備や訓練を施した。

 それは半面。頻繁に受勲する遣欧部隊が多いとして、旧態依然の本国部隊にも受勲する真似が上層部で横行しているのも事実。

 

「うん。複雑だ」

 

 今回だってそう。見栄を張ろうとする上層部は、カールスラントの鉄十字勲章の授与に合わせて、受勲を打診した軍部は薄っぺらい。

 皇国民は扶桑の勲章は簡単に出るもので、軍人が牛耳っていると白んだ目で見ている。

 アタシたち軍人は本来、身内の感状を貰うことはあっても、目が痛くなるほど勲章がついた軍服は忌避してしかるべき。

 前線に出る兵士やウィッチは勲章を嫌う。

 国民のためではなく、自分たちの職務が果たされていないと感じている。

 

「桧少佐の言う通りだよね」

 

 百里原飛行場で秋水の慣熟していた頃、秋水とメッサーシャルフのシュバルベをライセンス購入し改良した、火龍を運用する「特兵隊」の陸軍ウィッチとよく語った。

 彼女たちは、速度が速く運動性もそこそこで、特性の良く似た三式戦闘脚「飛燕」を履いていた。

 この飛燕戦闘脚は凄まじく堅牢らしく。突っ込み速度はどのユニットよりも耐えるこどができ、各務ヶ原工場で行われた強度試験では設計試算以上に強度を誇ったと陸海両方に知られている。

 それを扱ったウィッチでも特に有名なのが、桧少佐。

 彼女は、南西方面で混乱に陥ったガリア領、ブリタニア領の戦闘において、片足の膝から下を失った隻脚のウィッチ。

 鋭い顔つきに、研ぎ澄まされたカミソリのような性格。それでいて、部下想いの素晴らしい方。彼女の元で飛燕を履いたウィッチは皆、桧少佐を慕う。

 その少佐は扶桑本土の防空に縛り付けられて、武勇を果たす機会が無い。

 片足を失っても、彼女は飛び続ける。自身の仕事を果たすためにどこまでも愚直。

 そんな少佐は、勲章嫌い。感状の類を焼き芋の燃料にしたのはいつもの尾ひれ。

 

「気楽に、なんて無理」

 

 空を見上げ、ぼやく。

 

「正直、今回はどうしようもないけれど」

 

 今回はカールスラント皇帝が直々に命じたもの。

 まして鉄十字勲章とは、武勇に優れたものに受勲するカールスラント軍人やルフトバッフェのウィッチにとって、名誉のもの。

 世界に名をはせる数多くのエースウィッチが、鉄十字勲章を受け、更に上の勲章を手に入れた。

 これを拒否することは、できなかった。

 カールスラントにとっては痛くも痒くもないし、扶桑にとっては万々歳。

 一ウィッチのアタシを差しおいた外交面のうぃん・うぃんな受勲。

 

「同感だよ。俺も勲章、嫌いだわ。階級上がるし」

 

 栗大尉は、リバウに居た遣欧艦隊所属。下士官から始まり、あっという間に少尉になったらしい。

 

「お二人とも、そんなに勲章がお嫌なのですか」

「扶桑人はな、元々、栄誉は消耗品に変わる方がいいんだよ」

 

 戦国の世の武士たちは米などの禄が増える方が嬉しかっただろう。

 欧州においては肩書が増えることで土地や領が増えたが、扶桑は肩書が後からついて来る方が多い。

 

「でーも!受勲式はしっかりしてください!こっちはカールスラントの駐在武官の目にも掛けられているんですから」

「そりゃ、サエはそーかもしれねぇけどなぁ」

「アタシたち、昇進とか勲章とか興味ないですし」

 

 正面で仁王立つサエちゃんから目を逸らし、隣の大尉と視線を合わせ頷く。

 アタシたちは典型的な前線の兵士。

 

「なんでお二人はそんなに考え方がそっくりなんですかーっ!」

 

 仕方ない。一人で飛ぶ術を一から十まで教わった方が、実務一辺倒な歴戦のウィッチだから。

 舞鶴鎮守府のグラウンドに設営された式典会場に真っ黒のワーゲン車が止まる。

 カールスラント駐扶桑大使館大使に、駐在武官。お次に到着したくろがね四駆からは扶桑の秋水計画を推し進める大本営の誰かが降りて、鎮守府のお偉いさんと話す。

 全員が椅子に座り、しっかりと整えた。

 今日はいつものワンピース型上衣ではなく、皇国海軍下士官制式のセーラー服に、試験的なベルト。思い出せば、最初の一歩はこの服装。秋水の初飛行は盛大に躓いたが、あれから随分と経った気がした。

 たった2か月、あっという間。

 

「犬宮豊飛行曹長!」

「はい!」

 

 一度目を伏し、ゆっくり立ち上がる。上空を一つの機影が飛び去った。

 エンジンは双発。機影は、扶桑がライセンスを取ったDC-3、零式輸送機か。紙袋が落下傘で落ちてくる。

 上空を進入した予想外の輸送機と落下物に会場は騒然。

 落下傘は、秋水ユニット用の減速傘。

 紙袋には、「勇敢なる鳥、犬宮飛曹長に送る。特兵隊より」と達筆に書かれていたらしく、アタシの目の前で開封された。

 

「これは・・・」

「うん」大尉は察してくれた。

「どうしたんです?」

 

 サエちゃんが分からないのは当然。

 

「オレンジの、あのマフラーだ!」

 

 アタシにとっては代えがたい、一生ものの勲章と思い出。




ちなみに、ヒドラジンの魔女のテーマ曲は、ブレ魔女のEDにもなったリンドバーグの「little wing」です。アネハヅル(豊の使い魔)は小さい鶴なので、その小さな翼で見たことのない景色を見てほしいと思います。

次回・・・ようやく、サエちゃんの納豆問題が解決します。
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