SW「ヒドラジンの魔女」   作:ムロ913

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そう言えば、前回出てきた魔法力感知水晶の話ですが、補足しておくと

アニメなどの媒体で各ウィッチが与えられたユニットを扱うことを理由付けしてます。じゃあ戦地で急遽ユニットの割り振りがあった場合は?っての答えは、水晶を自前で持って交換している場合が多いといった感じです。

また、少し高価になりますが、増幅する魔法力の地力が強い場合(JFW所属クラスのウィッチ)は、魔法陣が描かれていない無地のような増幅水晶が載っています。

なので、それ以外は基本的に自国のユニットを使用し、黒江さんのマスタングみたいなのは整備の過程で自国にあう水晶を載せてます。

え?アニメRtB序盤の宮藤?あれは規格外だから・・・

てかこうでも設定しとかないと、国ごとに使うユニットを分けている理由がつけられない・・・(秋水はコメートの概念図程度しか手に入らなかったが、スト魔女世界の場合、ノイエからの海路は安全なので、途中で紛失したという話に出来ない)


part.3「二人の初陣」

 滑空で指定された方角に急行。目標のレーダー反応は普段と同じ戦略攻撃型。

 鈍い色のネウロイではないが舞鶴に近づいている。

 栗大尉が話したネウロイの成長についての思考が過る。

 現に、こうして撃墜したものと同じ形状のネウロイが、迎撃を避ける行動を取り防空網を掻い潜る。

 ネウロイは何らかの指揮系統を持つと認識するべき。

 

「秋水2番、聞こえるかな」

「はっ、はい!」

 

 緊張の糸が張ったサエちゃんの声。少しでも和らげる言葉を紡いで外に出す。アタシは上官。大尉が言っていた言葉が分かった気がした。

 部下を持つ。昇進したら当たり前。部下が僚機につけば、一人や僚機だった頃の軽さはない。

 誰かを長機に持てば、指示に従うだけ。逆に言えば指示をこなすせないことが失敗で、長機のミスも補う。

 単機の場合はもっと気軽。それはつまるところ補ってくれる人がどこにも居ない。

 誰かに指示を出すには、思考し、指示を出し、互いに補い合う。

 言葉では簡単だけど、実際は難しい。自分と全く違う僚機の動き、ちょっとした旋回の遅さすら気になる。

 

「カールスラントは、共同撃墜を重視してるんだよね?」

「はい」

 

 部下の能力を計算に入れて如何に動くか、どんなふうに攻撃をしてどのように離脱するか。全てから無駄を省き、結果を頭に入れておく必要がある。

 

「コアはアタシが仕留める。その代わり、ロケットで決めた場所だけを狙い撃って」

 

 カールスラントは厳密な撃墜判定を取っている。

 陸上部隊から確認できるなら、報告を集め、ロッテやシュバルムの隊員に互いを確認させる。

 厳密な戦果確認を行うのは、カールスラント人の規律に厳しい性格らしいというか、なんというか。

 それでスーパーエースを何人も輩出するのが、カールスラントの恐ろしいところ。ユニットの基本性能が高い上、技量に裏打ちされていなければ出来ない芸当。

 

「了解、です」

 

 彼女が使うロケット発射器は、コアの破壊に弾道の精密性が向いていない。

 シュツルムファウストを開発した博士が手掛けたフリーガーハマーは、カールスラントとオラーシャのウィッチ達が愛用し戦果も残っているが、ロケット弾では撃墜することの方が難しい。

 デッドコピーとも言える、アタシの使った9連発射器では、固有魔法を持たないサエちゃんでは狙い撃てないと判断した。

 

「9割」

「え?」

「撃墜の割合は貴方が9割、アタシが1割でいいよ」

 

 戦略攻撃型は堅牢なボディが象徴。下面の対地光線パネルはもちろん、対空攻撃を掻い潜ることも決して簡単ではない。強敵の外皮をロケット弾で削り、狙撃でとどめを済ますのが最も簡単で確実。

 

「そんな鯖勘定!」

「いいから、行くよ!狙いは上面前部、赤パネル2段目!」

「了解!」

 

 斜め前から左脚、右脚、と脚を振ってバンク。

 

「秋水編隊、攻撃開始!」

 

 高度5千で時速はおよそ6百。エンジンを2段階に戻して正面に上昇し、交差の瞬間にロケット弾が着弾する。

 

「2番、行け!」

「ヤボール!」

 

 一緒に上昇するサエちゃんが背面ロールを取って、急降下。ロケット弾の斉射はあと2回。

 後方上空に遷移したこちらに向かって、ネウロイが赤から光線を飛ばす。降下しながら迫るサエちゃんを迎撃。

 彼女は器用に身体を捻り軽いロールで、機首上面に狙いを澄ます。

 アタシはそれを見てロールの最頂点でFG42をベルトで滑らせ、両手で持つ。

 

「2番は攻撃後再上昇、前面で捻って斉射!」

「ヤボール!」

 

 秋水2番、サエちゃんの影がネウロイと交差する瞬間、アタシは高度6千から降下。

 コアが上面からありありとわかった。禍々しくも、命の鼓動のように見える深紅のコア。

 これなら。

 

「2番!攻撃切り替え、単射!目標、コア!」

 

 降下で加速した速度を上昇エネルギーに変える彼女が、破壊できる。

 

「っヤボール!」

 

 全身を捻った体勢変換、身体の前面に敵を見た彼女がコアを狙う。

 アタシはネウロイの気を逸らすため突貫。コアではなく周囲を適度に痛めつけた。

 3連続の狙いを澄ました単射の内、2発は左右にはずれた。隙間を縫いかって一気に突っ込めば。

 

「コア、破壊!」

 

 残る1発が、コアを破壊した。ガラスを割った心地よい破壊音が空中に鳴り響き、光の結晶が落ちる。

 

「任務終了。長良1番、他に反応は?」

「ない。帰投せよ」

 

 アタシ「達」の初陣は終わった。

 

「秋水1番、了解。帰投します」

 

 交信を終え、編隊内に絞った魔法無線インカムのスイッチを押す。

 

「サエちゃん、お疲れ様。とりあえず、帰ろう」

「了解、です」

 

 2番機の定位置、左斜め後方のサエちゃんは緊張した糸が緩んで、気分があやふや。

 こっちも、気を抜いたのが良くなかった。

 

「サエ軍曹」

「は、はい!」

 

 キッと言葉尻を上げると返事がすぐに返ってくる。

 

「帰るまでが任務!帰ったら反省会!」

「っヤボール!」

 

 帰るまでが任務。撃墜をしようが、していまいが、帰投するまでが任務。地面に足をつけて立った瞬間まで気を抜けない。

 自分もそれが出来ているとは言いがたい。

 前回はあのざまだ。部下に同じ轍を踏ませるわけにはいかない。

 空は秋の色。夕焼けが始まる。

 舞鶴の港はすぐそこ。燃料が尽きて、滑空するだけ、高度は4千。滑走場が見えた。

 フラップを下げ、減速と降下。

 狭い滑走場を正面に見据え、ユニット胴体下部の橇式着陸装置を展開。

 地面と着陸装置が触れて、前に動く身体を抑える。

 2番機も同じく滑走。

 徐々に削れる速度。指定された十字の着陸指標から滑走場一杯を使った着陸。

 

「まぁまぁ、かな」




あと1話で、9話も完結。予定では全12話の予定です。
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