SW「ヒドラジンの魔女」   作:ムロ913

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お気に入りとかありがとうございます!もうすぐ5千UA!あと8パート!頑張ります!


第十話「戦爆連合会敵」
part.1「夢見」


 アタシたちは、昨日起きた渡洋ネウロイ迎撃で思わぬ形の初陣を果たした。

 海軍はもとより、国内防空を担う陸軍の航空ウィッチ向け「秋水甲型」や、武装の変更と魔導エンジンの改良がおこなわれた乙型が採用され、既に陸軍の特殊ウィッチ飛行隊「特兵隊」が試験を行っているそうだ。

 試験には合格して、懐疑的で予算を出し渋った上層部を納得させる戦果を残したと評価していただけた。

 

「ふへへ・・・」

 

 海軍が先行配備した局地防空の秋水も制式に採用され、電探ユニットも、生産が加速化された。

 ウィッチ養成も完了して、長良が投錨する間にも内地から浦塩等へと急ピッチで輸送されている。

 栗大尉も、本来は昇進した時点で教育部隊に移る話だったのに、統合軍とルフトバッフェの誘いで戦術教育の面から隊長に納まった。

 

 いつか、この生活は終わる。

 

 ベルリンが解放されたら、この部隊は解散かカールスラントへの派遣。コメートウィッチ達を吸収して、という話も聞く。

 長良はやや落ち着かない雰囲気のまま出港した。

 出港が早い時間だったから見送りは鎮守府の一部で、長良側の甲板にも最低限の人員。

 不規則な生活で一日の流れがおかしくなったアタシは、甲板掃除を終わらせてすぐに寝た。さっきまで仮眠を取ったのに。

 

「曹長、また寝てる」

 

 サエちゃんにも呆れられた。階級の差がある以前に同い年なので、任務中以外は砕けてやり取りをしている。

 アタシが軍人気質じゃないのもあるし、階級の差なんて大した差でもないと思っているし。

 そりゃ兵士は上下関係が厳しいかもしれないけど、ウィッチで上下関係が厳しいのは予科練ぐらい。

 部隊配属されたら、勤務中は上下関係を守っているけど、現役となれば大きくても5、6歳も離れない。

 そんなに離れてたら階級も飛曹と佐官ぐらいに離れる。

 たたき上げの飛曹長や特任尉官も居るけど、あの人たち相手に砕けた態度を取れるのは勇者。

 

「あー。布団気持ちいー」

 

 近い階級の同い年は一番気楽。強く見せなくても弱く見せても、構わないんだから。

 堅苦しい関係というのが嫌い。思った意見を言えなくなるし、もし失敗した方向に進んでいる時に上申出来なくなる。

 栗大尉は部下を持ちたくなくて夜戦部隊を転々としたらしい。

 リバウの後は助っ人に行ったりぶらついた結果「空技廠」で電探ユニットのテストウィッチとして招集された。

 

「曹長、ご飯です」

 

 ほっぺをプ二っと押しつぶされて意識がすっきりした。

 眠さをこらえながら、艦内士官食堂に向かう。

 

「昨日もぐっすり眠れなかったんだよね」

「昨日の朝も同じことを言ってましたよ」

 

 気軽に接しているとは言っても、サエちゃんは素が敬語。誰にでも敬語。山軍曹にだってそう。

 昨日みたいに飛び出すときもあるけど、普段から戦闘中まで基本的に冷静なのはとても好感が持てる。

 秋水やコメートのような、高速故に失速が早いグライダー機を扱うには瞬時に冷静な判断を下す。

 普通のユニットを高練度のウィッチが扱えばホバリング出来るし、ホバリング出来ない練度でも、首から身体を上げて進むことは出来る。

 しかし、秋水に関しては常に前進する。魔法力を推進力に変えているが、燃料を燃焼させるだけで滑空する物理の動きだからどうしようも出来ない。

 常に動いていて失速速度が速いことは、判断を素早く出来なければ即座に事故につながる。

 アタシの傷跡みたいに、なる子は出るんだ。

 物事には。現実には「たら・れば」がない。

 

「おせぇぞ豊、サエ」

「すみません、寝つき悪くて」

「お前の寝起きが悪いときは、何かが起きる時だから怖いよ」

 

 言われてみればそうだ。最初の試飛行も、銀のネウロイを見つけた時も。アタシは寝つきが悪かった。

 最近はそれが顕著になった。

 鈍い色をしたネウロイを見つけて以来、夢の中で実の家族があの頃のまま現れる。

 どうして助けてくれなかったの、とも言わない。物言わない、蝋人形のような能面で、ずっと、家族がアタシを見る。

 そんな夢が過ぎ去っても、次がやってくる。

 家族を喪った瞬間、燃え盛った屋敷を走り瓦礫を崩したアタシを遠くから見る、村人たち。

 固有魔法で朱角が2つ。まるで昔話の鬼で、扶桑刀のようなテーパーがかかって。

 そんな目でアタシを見ないで。アタシが殺したわけじゃない。アタシだって死ぬ寸前だった。

 

「いい、夢を見たいです」

 

 血縁のある親戚も、母方の祖父母も。腫れ物扱いした。厄災をもたらした原因だと決めつけてきた。

 夢は続く。

 薄暗い、地下の蔵に閉じ込められ。燃え尽きた屋敷に、村人たちは常に視線を張っていた。

 夜にならないと、学校で教鞭を振るう恩師もこれなかった。

 夜にはハイキングに連れていってくれる。猟じゃないけど、深夜の山を恐れることなく歩く術を学んだ。

 何故だろう。夢はいつもそこまでで終わる。

 予科練に入った日は夢の中で訪れない。

 毎日、毎日、何度も、何度も。同じ夢、過去を思い出す。それは苦しかった日だからか。

 それとも、何かに取りつかれたように執着しているのか。

 分からない。アタシには何も分からない。

 

「どうした、豊」

「あ、いや、なんでもないです」

 

 他の三人からの視線を振り切ってアタシは両手を合わせ、二水謹製の野菜のスープとバゲットを食べ始める。

 今は、こんな昔のことを考えている場合じゃない。

 心に言い聞かせていた時、艦内放送で雑音交じりに音が入る。

 

「入電!輸送船団がネウロイに襲撃を受けた!距離12海里!戦闘配置!」




そんなわけで10話です。あと2話含めて各3パート(分量的には2話を3つに分けた展開)でやります。頑張るぞい。
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