SW「ヒドラジンの魔女」   作:ムロ913

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・・・デキちゃった(原稿が)

そんなわけで本日二本目です。


part.3「戦爆連合」

 舞鶴航空隊の飛行艇と水上機が集まり、小松の航空隊と直掩を交代したアタシは帰途につく。頭に浮かぶ事柄はもっぱら銀色のネウロイ。

 

「最初は」

 

 弾道弾を発射して石川の海岸線に着弾した。

 

「二度目も」

 

 取り逃した時は、アタシを襲った蜘蛛ネウロイを舞鶴に空挺させた。

 銀のネウロイが一体だけだと考えていた。

 最初のネウロイが発射した弾道弾でネウロイを輸送した、と。

 それは間違っている。

 最初と二回目の弾道弾の形状は明らかに違う。鈍い色をしたネウロイは弾道弾を付け替えられる、あるいは、弾道弾の違う個体が居る。

 

「今度は」

 

 電波を阻害した。レーダーから逃れる方法としてアルミシートを細かく刻んだ「チャフ」を空中に撒く方法がある。

 もう一つ机上の空論で、方法が浮かぶ。

 電波に対し、同じ周波数を発生させ通信を混乱、電探に機影を見つけられなくする方法。

 ネウロイが電探に対抗する方法を使うとすれば、これしか考えられない。

 チャフの攪乱幕は簡単に出来るけど、電探にはピンポイントでしか使えない。

 多数機の戦爆連合を探知を阻害することは出来ない。

 電波を誤魔化すなら、範囲を広げられる。

 レーダーには霞のようにも、霧のようにも見えた。

 それは扶桑の通常の電探でよくある不具合。

 電探ユニットを使っても、広い範囲で電波が攪乱されたら意味が無い。

 銀のネウロイは腹に抱える弾道弾の代わりに対電探装備を抱えた、と想像するしかなかった。

 

「ならば、相手は」

 

 大尉含めた長良上層部に持論を上申したアタシが言葉を切ると、司令がゆっくりと続ける。

 

「弾道弾ネウロイは、規模を隠すことが出来たから、本土も多勢で侵攻できると考えるだろうな」

「少数精鋭による突破で中心部を攻撃するかもしれません」

 

 大尉が続ける。

 

「あるいは、最も邀撃を行う本艦」

 

 上層部の士官たちの顔色が悪くなり始めた。ようやく現状に気づいた人もいる。

 ネウロイの思考回路は分からないが、動物なら最も脅威に思う敵を相手にする。ネウロイがそう言った考え方をするなら、邪魔をしてきた長良や秋水を相手にするだろう。

 

「手詰まり、だな」

 

 単艦で戦爆連合を相手には出来ない。

 精鋭揃いの第一航空戦隊「一航戦」の護衛でも撃沈されるぐらいだ。ネウロイにとって軍艦は、簡単に攻撃出来る。

 いくら防空能力を向上させても、単艦では限界がある。

 敵が何体居るかも分からない中、次々迫るであろう戦爆連合相手に、滑空戦闘機の秋水と旧態依然の52型の零式脚。

 無理がある。

 司令が作戦室である士官食堂を見回す。顔色を一通り見終わった彼は、ゆっくりと呼吸を取り結論を出そうとした時。

 

「電探に感あり!詳細不明なれど大規模、本艦から北西4海里、高度1万、速度500、方角は本艦!」

 

 電探ユニットは通常の探査も可能だが、魔法力が無ければ鳥の大群でも飛行機のように見えてしまう。

 時速500キロで飛ぶ鳥も、高度1万を飛ぶ鳥も居ない。

 報告を受けた艦長が無電を命じるが、案の定通じなかった。

 

「秋水隊発進!栗田大尉は零戦ユニットで救援を」

 

 吉沼司令が命じるまで1分間経った。その間に敵機は猛烈に近づいている。高度を下げ、長良を目標と見つめて。

 大尉が司令に反論するのに脇目も振らず、アタシは走り出して格納庫に向かうサエちゃんと合流した。

 

「秋水1番、発進します!」

 

 空は、西の空は、茜色に染まっている。

 

「秋水2番用意、よし!」

 

 格納庫の耐熱ハッチの外、二人で並ぶ。こんな急速発進なんて、状況が状況。

 

「秋水1番、発艦用意よし!」

 

 魔法力を注ぎ、燃焼段階を最大。

 加速力で後ろに引っ張られて、感覚が無くなったら機首を上げる。急速上昇、北東に斜めに上昇した。背後を見なくても、サエちゃんはうまく発艦できた。

 

「1番より2番。栗大尉が発艦するから、それまでは高度を上げすぎず直掩!」

「ヤボール!」

 

 敵影が見えた。高度は明らかに不利。ぽつぽつと見える小型のネウロイは明らかに多い。多勢無勢にも過ぎたものがある。

 

「長良管制!長良1番の発艦は!」

「まだですっ!栗大尉が自分も戦うと言って聞かないんです!」

 

 戦闘中、無線を切ると言ったきり、航海艦橋からの通信は切れたまま。

 

「長良1番!栗大尉!無線に出てください!」

 

 進路を変えて、少しでも高度を取る間に何度も呼び掛ける。

 魔法無線の返答はない。雑音が入るだけ。大尉は魔法無線のスイッチを押したまま固まっている。

 

「大尉っ!貴方は!また、もう一度仲間を喪うつもりですか!」

 

 昔のことをほじくり返したくはなかった。こうなったらどんな手段を使っても、救援を呼んできてもらわないといけない。

 ここで反抗の狼煙を消すわけにはいかない。

 

「あーっもう!早く救援を呼んで!そうしないと!」

 

 思いっきりに叫ぶと、返答がようやく零れ落ちた。

 

「また、あの時みたいになる、ってことか」

 

 ようやく分かってくれた。

 今は一人でも戦力が欲しい。借りれるなら猫の手だって借りたい。

 これから数分しかアタシたちの燃料は持たない。滑空して、十数分が限界。

 

「長良1番、出る!援護は無用!」

「えっ」

 

 カタパルトから発射された機影が高速で飛んでいく。

 普通の速度じゃない。最高速を超えてる。

 

「伊達にウィッチを5年やってるわけじゃない!」

 

 ユニットの後部から煙が伸びる。

 長良に常備される発進促成ロケットを数珠繋ぎで大量に搭載し、一気に使った。

 軽いユニットだから、速度は出る。ユニットの寿命は一気に燃やし尽くすが、今は出し惜しみする隙間はない。

 

「秋水2番はデカいやつを倒して!」

 

 高度を一気に上げて、サエちゃんには戦略攻撃型の撃墜を命じる。

 今回の襲撃は双胴型ネウロイ二十体とこいつ一体、電波阻害にもう一体。

 アタシの目標は。

 

「秋水1番、突貫!」

 

 最も上から俯瞰して眺めている、銀のネウロイ!

 高度は1万、燃料はギリギリ。絶対に仕留めなければならない。

 茜色の空、暖色の陽の灯りに呂式魔導エンジンの燃焼煙が照らされる。




次回!第11話「帰る場所」
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