SW「ヒドラジンの魔女」   作:ムロ913

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本日2本目です。


第十二話「決戦」
part.1「作戦会議」


 

 飛行隊全員に吉沼司令、専属烹炊員の二宮二水を含め計7名で一路、対長良ネウロイの本拠地たる小松飛行場に向かった。

 

「すごい量のユニット・・・」

 

 小松飛行場には、一昨日の戦闘で救援に来てくれた特兵隊の火龍ユニットに、空技廠所属で実戦試験を行った橘花。偵察機やウィッチ部隊の増援が次々と集結している。

 火龍と橘花は、カールスラントから技術提供を受けて完成したジェットユニットで、火龍は陸軍の次期主力戦闘脚として、海軍では打撃を加える戦闘爆撃脚、橘花として開発。大きな違いはサイズで、橘花は一回り小柄。

 

「小松がここまで繁盛してんのは俺も初めて見たな」

 

 これらに加えて、愛知の小牧で防空を担う5式戦ユニットや明野に所属する3式戦ユニットの教官部隊、精鋭揃いのプロペラユニット部隊も集結して、扶桑海の防空を行っている。

 沿岸部には電探ユニットが張り巡らされ、長良ネウロイを探知し次第撃破する手筈となっていた。

 

「まだ、打撃力が足りない」

 

 長良をまるごと吸収した敵は排水量が5500トンもある。

 大型のネウロイは防空能力に優れ、相手の迎撃能力を飽和できる量の攻撃を加えなければならない。

 相手は双胴ネウロイが大量に護衛で付いてくる。あいつらは高速で重武装。零戦では速度が追い付かない。

 

「どう、するんだろう」

 

 栗大尉は小松に到着するなりサエちゃんを連れ作戦会議に向かった。

 サエちゃんと一緒に来た武装を利用し大打撃を与える、と。滑走路を眺めると、南東の方角から轟音を響き渡らせる4発の輸送機が1機、と小柄な双発機が1機。

 4発の輸送機は見たこともない。太い葉巻に大きな主翼、2つの垂直尾翼。小柄な双発機は一式陸攻でも、陸軍の呑龍でもない。

 

「犬宮飛曹長、司令部がお呼びです」

「あ、はい!」

 

 暇を持て余し、宛がわれた天幕の横から立ち上がって司令部のある方向に向かって駆け足。

 司令部では張りつめた空気がこもっている。

 

「犬宮飛曹長、入ります!」

 

 全員の視線が一瞬向かうが、すぐに逸らされた。

 

「大尉」

「どした」

 

 大尉は折り畳み椅子にドカッと座って眼鏡に息を吹きかけている。

 サエちゃんは無電の横に立ち、どこかに連絡をかけていた。

 

「隊長、と飛曹長!駐留武官より許可が降りました!」

「許可?」

 

 首を傾げると、大尉が指で滑走路脇のエプロンを指さす。そこには先ほどの4発機が爆弾槽から何かを降ろす様子が見えた。

 

「カールスラントの誇る誘導技術によって開発されました誘導ミサイルX-4!を基礎として開発した扶桑の対大型ネウロイ誘導弾です」

 

 呆気にとられているとサエちゃんが胸を張って応えてくれた。

 80番爆弾のように見える大きさの弾頭。

 それを飛ばすロケット部分、形はまるでネウロイの弾道弾のようにも見える。

 巨大な誘導弾は、ドーリーと呼ばれる爆弾の台車に乗せられ、もう一機の双発機に載せ替えられる。

 双発機の機首は風防で、八木アンテナが取り付けられている。

 双発機から飛行服姿の女性が降りて、姿を見るなり大尉が立ち上がる。

 

「おせぇぞ!」

「仕方ないだろ。深山はどんくせぇんだ!銀河単体ならすぐ着いた」

 

 どんくさい、深山というのが誘導弾を輸送してきた4発機の名称。双発機が噂に聞く新型爆撃機、銀河。

 銀河の爆弾槽扉が取り外されると、誘導弾がぴったりと収まる。サイズ的はかなりギリギリで機動が重くなりそうだが、それでも構わない。

 栗大尉に引っ張られた黒髪ショートカットの女性が、司令部天幕に居る吉沼司令に敬礼する。

 

「神原です。各務ヶ原で民間テストパイロットをしています」

 

 元ウィッチか。

 

「先日の捜索の時には本当に助かったぜよ」

「んで、そこに居るチビが」

 

 捜索?チビ?もしかしなくてもアタシのことを言ってる?

 ということは、この方が栗大尉の元僚機で、リバウで魔法力を失ってしまったという相棒か。

 

「あ、あの!犬宮飛曹長です」

「おう」

「その節は大変ご迷惑をおかけしました」

 

 腰を折って90度に頭を下げる。

 

「・・・いい」

「へ」

「頭下げんな」

 

 神原さんは天幕の中で会議をしている参謀たちの方に向かった。

 

「あいつ、照れてんだよ。部下居なかったから」

 

 思わず神原さんの動きに見とれていたアタシの腰を肘でつついた大尉がぼそっと呟く。そういう大尉だって、部下持ちたくないってずっとおっしゃってたじゃないですか、という言葉は飲み込んだ。

 

「よしっ」

 

 アタシとサエちゃんの肩を叩いて、栗大尉が立ち上がる。

 

「深山が秋水ユニットを2機持ってきてくれた。あとは、あのネウロイに落とし前をつけるだけだ!」

 

 大尉の言葉に、それまで入念に打ち合わせていたウィッチ部隊の隊長や司令部の参謀たちが応えた。

 これで戦いが終わるわけじゃない。だけど、あのネウロイを倒すのは大きな山場を超える。

 

「大陸側警戒哨より入電!」

 

 一気に空気が引き締まる。アイツが動き出した。

 

「高度1万、南西の方角に長良を取り込んだネウロイが巣ごと移動している由!」

 

 ネウロイは自身を動く漁礁にして、巣という漁場を持ってくるつもりか。

 巣では速度が遅すぎるし高度も取れない。簡単に攻撃されてしまうから大陸の奥地で息を潜めていた。

 長良を乗っ取ったネウロイは巨大で、巣の依体にするのには持ってこい。

 

「諸君、予定通りに作戦を行う」

 

 吉沼司令がゆっくりと重い口を開いて作戦開始の命を下す。

 全員が挙手の敬礼を行った。

 

「総員、かかれ!」

 

 時間が再び動き出した。大きな戦意がめらめらと燃え滾っている。

 

「作戦は簡単だ。豊とサエは、ユニットごと載せた深山に乗る」

 

 事前に迂回上昇する各ウィッチ隊が双胴ネウロイを掃討し、続いて誘導弾を搭載した銀河が同高度から八木アンテナでネウロイに誘導する。

 敵ネウロイにダメージが通ったところで、修復する隙間も与えず、空中発進のアタシとサエちゃんがとどめを刺す。

 

「帰還は、最優先だ」

 

 ネウロイの集団に対する攻撃は、全機帰還のために扶桑本土ギリギリまで引き付ける。

 失敗すれば扶桑本土にネウロイの巣が出来る。

 あまりにも高すぎるリスク。実行し成功すれば、扶桑を度々狙った戦略攻撃型ネウロイの巣を破壊できる。

 大陸側の捜索部隊がようやく見つけてくれた。昨晩長良ネウロイがそこに到着したことで結論がついた。

 より大陸の奥地で防空戦を行うことが出来る。扶桑の防空の負担を下げることが出来る。

 

「長良航空隊、かかれ!」

「かかります!」




次回、決戦。「小さな翼」
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