ポケットモンスターシャイニーカラーズ   作:Garbage

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パートナーとの出会い

 

 

 

 

「さ、入って。おかーさーん、ただいまー」

 

 ハロンタウンに帰ってきたヒナナとコイトはトオルの招きでトオルの家へと入れてもらう。トオルの家は街の中では大きな方であるが、ツバサ地方ナンバーワンアイドルのそれとは思えないほど素朴で暖かみのある家だった。

 

「お、おじゃまします……」

「おじゃましまーす♪ トオル先輩のお家~」

 

 これまで何回かは来たことはあるものの、二人がトップアイドルを目指すために苦楽を共にするポケモンと出会う場でもあるため、コイトは緊張を隠せないようだった。一方でヒナナは大好きなトオルの家に招かれた喜びでいっぱいだったのだが。

 

「おかえりトオル。あんたもっと早く帰ってきなさいよ。ずっと待ってるのよ」

「え、どういうこと」

「トオルにお客様よ。今はあんたの部屋にいるから」

 

 母親にそう言われると、トオルはうーんと首を傾げる。今の時点では事前に送っていたポケモンたちが部屋で待っているのだろうか、と思っていたが部屋に上がった三人を出迎えたのは一人の少女だった。

 

「あ、マドカじゃん。うぃーす」

「マドカちゃん!? どうしてここに……?」

「あ~、マドカ先輩だ~」

 

 出迎えたマドカに対する三人の三者三様の反応にマドカははあ、とため息をつく。マドカはトオルと同い年かつ三人の幼馴染であり、トオルがアイドルを目指してハロンタウンを旅立った時、彼女もまたトオルと共にアイドルになるために旅立っていたのだ。

 

「相変わらずね、トップアイドル様は」

「そうかな? ま、私は全然変わってないよ。マドカの勉強は順調?」

「まあ、それなりに」

 

 しかし、トオルがツバサ地方のトップアイドルになれたのに対し、マドカはトップアイドルになることができず、やがて彼女はアイドルになることを諦めてしまった。重い決断を下したマドカであるが、彼女が選んだ進路がアイドルとは違う形でポケモンに携われる仕事の一つでもあるポケモンの研究者だったのである。

 彼女は見分を広げるため、ツバサ地方を離れた別の地方で研究者になるための勉強をしていた。ナムコ地方というツバサ地方より遥か東にある地方では有名な研究者であるアカバネ博士に、ツバサ地方の遥か西にあるミシロ地方ではタケウチ博士に指導を仰いでまだまだ未熟ではあるものの、研究者としてのキャリアを培っていた。

 

「他の地方にもトオルのようなアイドルがいっぱいいるけど、その人たちの間でもトオルは有名人だったわ。いわばトオルはこのツバサ地方の顔みたいなもの」

「え、そうなの」

「……当事者がこんな調子だとツバサ地方のアイドルみんなの評判に関わるからもっとしっかりしてほしいんだけど。ほら、今日だってコイトとヒナナにポケモンを渡す日でしょ」

「そうだね、えっとそこのボールにポケモンが……」

 

 トオルの机の上に丁寧に置かれていた三つのモンスターボール。このボールの中にコイトとヒナナの相棒となるポケモンが二人を待っている―――はずだった。トオルがボールの前方についているボタンを押し、ボールを開いたのだが、中にはポケモンが入っていなかった。

 

「トオルちゃん……?」

「……ふふっ、ごめん」

「は?」

「ポケモンいないわ」

 

 そう言って微笑んだトオルの頬をマドカはぎゅーっと引っ張る。ツバサ地方全土でも、トップアイドルの顔にこんなことができるのは恐らくマドカ一人だろう。

 

「いひゃいいひゃい」

「いないわ、じゃないでしょ。どうしていなくなるの」

「あの~、そこの窓から逃げちゃったとかじゃないかな~」

 

 モンスターボールが置かれていたのはトオルの机だったが、その机の上にある窓が全開になっていた。マドカが入ってきた時からそこの窓は開けられていたため、何らかの拍子でモンスターボールから出てきてしまった三匹のポケモンが窓を開けて脱走してしまったようであった。

 

「ぴゃっ、じゃあ私たちのポケモンは……」

「うちの庭にいるかもしれないね。探しにいこっか」

「探そ~」

「はぁ……」 

 

 家の外に出た四人はトオルの家の庭を探す。彼女の家の庭はポケモンバトルをするためのバトルコートが小さいながらも作られており、周りには草むらや池、大きな木があるため小さなポケモンが隠れるにはうってつけのスポットであるといえるだろう。この庭を三つに分かれて捜索することになり、トオルとマドカ、コイト、ヒナナはそれぞれポケモンたちが隠れていそうな場所を見て回る。

 

「えっと、こういうところに隠れてそうだよね」

 

 一人になったコイトは背の低い草むらを身を屈めながら探してみる。小さなポケモンならこのくらいの草むらに身を潜めることも容易であるため、ポケモンと同じ目線で探すことにしてみたのだ。少しでも動けば生い茂る草むらが揺れ、音で見つけることができるはず。コイトの狙いは決して悪いものではなかった。

 

「ヒババババ」

 

 しかし、小さなポケモンと言えども個体によっては悪知恵がやたら働くものもいる。1匹のポケモンがコイトの後ろに音もなく忍び寄ると、彼女の足元にそっと火をつけた。

 

「ぴぃっ!?」

 

 足元が突然燃えて驚いたコイトはまるで自分がポケモンになったかのように飛び上がって驚く。振り返った彼女の視線の先では1匹のポケモンがケタケタと笑っていた。そのポケモンは頭の上に大きな二本の耳のようなものが生えており、見るからにすばしっこそうな見てくれをしていた。

 

「あーっ、見つけた!!」

「ヒババババ~ニ、ヒッバニバ~ニ♪」

 

 人間は基本的にポケモンの言語はわからない。しかし、コイトの視線の先でまるで挑発するかのように尻を振るそのポケモンがコイトに何を言いたいのかはその態度から伝わってくる。

 

「おにさんこちら、てのなるほうへ……もーっ!!」

 

 コイトとそのポケモンの追いかけっこが繰り広げられる中、少し離れたところでヒナナはぼーっと池を除いていた。初心者用のポケモンは3匹いるのだが、そのポケモンは草・炎・水の3つのタイプに決まっている。ポケモンはそのタイプに関係した場所に生息していることが多く、水タイプのポケモンは大半が水辺で暮らしている。そのため池の周りに行けば水タイプのポケモンを見つけやすいのではないか、という考えからなるものだった。

 

「ポケモンさんどこですか~……」

 

 ヒナナは目を閉じ、そっと耳を傾ける。すると、彼女から見て左の水面がほんの少しだけ音を立てた。

 

「いたー!」

「メソッ!?」

 

 ヒナナが声を上げながら指差すと、それに驚いた水色の爬虫類のようなポケモンが水の中から飛び出してきた。飛び出してきたポケモンは水から出ると、池の周りを走って逃げようとするが、ヒナナに回り込まれてしまった。ヒナナは同年代の少女にしては背が高く、小さなポケモンからしてみれば最終進化形のポケモンに匹敵する大きさでもあったりする。そんなヒナナに追い詰められたポケモンはえんえん、と泣き始めてしまった。

 

「あ~、怖がらせちゃいました~……? 大丈夫だよ~、ヒナナは怒ってないからね~」

「メソッ……」

 

 ヒナナはそのポケモンを優しく抱き抱える。ポケモンの潤んだ瞳にはヒナナの笑顔が映し出されていた。

 

「コイトとヒナナは大丈夫なの?」

「あの二人なら大丈夫だと思うよ。タブンネ」

「タブンネはツバサ地方にはいないんだけど」

「わかんないよ。まだ明らかになっていない未開の地にいるかもしれない」

 

 そんなところがツバサ地方のどこにあるのか、と問いたくなるマドカは目の前の手ごろな木を見上げる。細すぎず太過ぎず、蹴ったり頭突いたりするに丁度いい太さの幹を持った木であり、マドカはそこでナムコ地方でのフィールドワークを思い出していた。

 

「どしたの、そんな木なんて見上げちゃって」

「ナムコ地方ではこのくらいの太さの木に頭突きするとポケモンが落ちてくることがあるって聞いたことがあるの。フィールドワークの時にアカバネ博士に教えてもらったわ」

「へー、じゃあ試しにマドカやってみてよ」

「私のポケモンに頭突きできるポケモンいないんだけど……まあやってみるか。お願い、トゲデマル」

 

 マドカのボールから出てきたのは銀色の身体をした丸っこいポケモンだった。“まるまりポケモン”の“トゲデマル”という電気・鋼タイプのポケモンであり、身体の三角模様は逆立てると棘になるのが特徴だ。

 

「トゲデマル、アイアンヘッド」

 

 トゲデマルは全身に力を込め、頭を固くしては思い切り頭突きした。

 

「頭突きじゃないじゃん」

「アイアンヘッドもそんな変わらないでしょ」

 

 厳密に言えば頭突きとは別の技であるが、アイアンヘッドで大きく揺れた木からは緑色の身体をしたサルのようなポケモンが落ちてきた。落ちてどこかを打ったのか、ポケモンが右手でその箇所をさすっている隙をついてトオルはそのポケモンを抱きかかえた。

 

「見つけた、このいたずらっ子」

「ノリー……」

 

 ポケモンは頭に手を置いては反省した様子を見せる。遠く離れたサイコー地方には似たようなポケモンを使って芸をする集団がいるらしいが、このポケモンにも素養があると言うことなのかもしれない。マドカからしてみれば、これはどこで役に立つかはわからない知識ではあるものの、研究者を目指すのであれば細かいところまで目を凝らすべき、というタケウチ博士の助言が活きていた。

 

「あ~、トオルせんぱ~い」

「ヒナナ、見つけたんだ」

「うん! この子とすっかり仲良くなれたよ~」

 

 ヒナナは見つけたポケモンを抱きかかえており、ポケモンはヒナナを信じているのか怯えて泣きじゃくっていた時と比べて落ち着いている様子だった。

 

「その子は水タイプの“メッソン”ね。よく見つけたわね、隠れるのが得意のポケモンなのに」

「ヒナナは案外感が鋭いからね」

「トオルが得意気にすることじゃないのに。コイトは?」

「コイトちゃんはー……」

「みんな~!!」

 

 三人が集まっているのに気づいたコイトが息を切らしながらぱたぱたと駆けてくる。コイトの頭の上にはまるでコイトを馬を駆る御者の如く振る舞うポケモンが乗っかっていた。

 

「コイトも“ヒバニー”を見つけたんだね」

「ヒバニー……このポケモン、ヒバニーって言うんだね!」

「じゃあこれで3匹みんな見つけたんだ。コイトとヒナナには私たちが見つけた草タイプの“サルノリ”、コイトが見つけた炎タイプの“ヒバニー”、ヒナナが見つけた水タイプの“メッソン”から1匹を選んでもらうことになるわけだけど……」

「もう決まってるようね」

 

 思わぬトラブルに見舞われたものの、ヒナナとコイトの相棒となるポケモンが決まった。ヒナナはメッソンを一度モンスターボールに戻すと、改めてメッソンを外に出す。これで本当の本当にメッソンはヒナナのポケモンとなったのだ。

 

「あは~、メッソンよろしくね~」

 

 満面の笑みを浮かべるヒナナは、同じく相棒となったメッソンとハイタッチを交わすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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