あと、ギルドハウスで美食殿生活している設定です。
なるべく早いとこキャルちゃんといちゃつかせたい。
後たぶん何かしらの注意ある気がしますが、気づいた時に書き足しときます。
一話:キャルちゃんと仲良くなりたい
キャルちゃんと仲良くなろう。
ユウキはそう決意した。
ギルド美食殿のギルドハウスで生活するようになってしばらく。
ペコリーヌとは、彼女の持ち前の明るさや距離感の近さから、すでに友情と呼べるものが育まれている。
コッコロとも、主従関係と言えども、決定的な距離のある関係ではなくお互いに尊重し合える関係を構築できている。
しかしキャルはどうだろうか。
なんとなく距離を感じるのが現状だ。
口を開けば何かと拒絶するような言葉が飛び出してくるので、コッコロに相談したこともあるのだが、コッコロは優しく微笑みながら、言葉通りではないのですよとユウキに語ってくれた。
その意味も今では分かる。なんだかんだ言ってキャルとの付き合いも長いし、彼女の言葉が全くの本心というわけではないことは理解した。
それならばとユウキはキャルと仲良くしようと話しかけたり遊びに誘ったりはしているのだが、キャルの方はこちらの話題を軽く流したり、誘いを断ったりでうまくいっていない。
それがなんとなく寂しい。
なぜかは分からないが、キャルとは特別に仲良くなりたいとユウキは思っている。
キャルと仲良くなろうとしてうまくいかないと、寂しいような、苦しいような感じがあって、ごちゃごちゃとしてわからない感情に襲われる。けれどキャルと仲良くなることが出来たのならば、きっとこの不思議な悲しい気持ちに襲われることもないだろうし、そんなことを抜きにしても、美食殿の仲間として仲良く遊びたい。
「キャルちゃん」
「……なによ」
ギルドハウスのリビングルーム。今はユウキとキャルの二人きりだ。キャルはソファに座って本を読んでいるのだが、ユウキが声をかけると律義にも本から目を離してユウキを見上げる。
キャルと仲良くなろうと思って声をかけたはいいが、何と切り出したかわからない。ひとまずこの場にいない二人の話から始めてみることにする。
「ペコさんとコッコロちゃんは?」
「ペコリーヌの方は知らない。コロ助は買い出しに行ったわ」
そっけない返事。
しばらく沈黙が流れる。二人の話をしてみたはいいが、そこからどう話を広げていけばいいのかわからない。
ならば何か他の話題を探さなくてはと、ユウキはキャルの様子を観察しながら考える。
キャルはいつもと同じ服装、特に変わったことは無いので話題にできない。
ユウキを無視するように視線は本に落とされ、可愛らしい猫耳はツンと突き立ち、しっぽは全く揺れていない。日頃からキャルの方をついつい見てしまって、観察できているユウキは、段々とキャルの機嫌をそういった状態から察せられるようになってきた。今日はそこそこ不機嫌なようだ。
そうなると、何も考えずに話題を出すのではなく、なるべくキャルの機嫌がよくなるような話題を考える必要がある。
「キャルちゃん、何の本読んでるの?」
「魔法の本よ」
「どんな魔法?」
「……あんたに詳しく話しても分かんないでしょ」
ユウキが考えたのは、キャルが今読んでいる本の話題。最近必死に読んでいる様子だったので、キャルもご機嫌に話してくれるかと考えたユウキだったが、その予想は正しくなかったらしい。キャルは、本から視線を動かすことなく、突き放すような口調でぶっきらぼうに答えた。
「……うーん」
「……」
本でダメなら、他にどんな話題ならキャルは喜んでくれるだろうか。
昨日の夕飯の話なら――確か後から出汁がカエルだと知ってキャルは悲鳴を上げていたので、むしろ機嫌が悪くなりそうだ。
前回美食殿で行ったクエストの話題なら――大量の虫を頭から浴びてキャルはしばらく引きこもってしまったのでダメだろう。
「キャルちゃん……うーん」
「ああ! もう! さっきから一体何よ!?」
苛立ったように言いながらも、ようやくこっちを向いてくれたキャルにユウキは少しだけ悩んでから、変に遠回しなやり方ではなく正直に目的を話してみることにした。
「キャルちゃんと仲良くなりたい」
「…………はぁ?」
キャルは少しだけ間の抜けたような表情をしてから、心底嫌そうにユウキを睨みつける。
「そういうことはぺコリーヌかコロ助にでも言ったら? あたしなんかと仲良くなってどうすんのよ」
「キャルちゃんと仲良くなりたい」
「だから……あたしはあんたたちとは仲良くなったらダメなんだから」
「キャルちゃんと仲良くなりたい」
「ああああもう! しつこい! 何回も言うな!」
耳や尻尾を逆立てながら怒鳴るキャルだが、ユウキは笑いかけてみることにする。
気分的には、警戒している野良猫に、敵じゃないよと語りかけるつもりで。
そんなユウキをキャルはしばらく恨めし気ににらむが、しかしすぐにため息とともに呆れの表情へと変える。
「分かったわよ。じゃあ何? あたしと仲良くなりたいって具体的に何するつもりなのよ」
「わからない」
「……だと思ったわ」
じゃあ諦めなさいと、すこし満足げに言ってキャルは本へと視線を戻した。
確かに、ユウキはキャルと仲良くなりたいとは思ったが、具体的に何をすればいいのかまるで分らない。
キャルをじっと見つめたまま具体的な方法を考えていると、キャルはだんだんと居心地悪そうにしだして、
「…………ああもうわかったわよ! えっと……じゃあ買い物は? 買いたいものがあったから、あたしの買い物に付き合うってのは?」
どうやらユウキの視線を、非難のものだと誤解したのか、あるいは縋る様な目になってしまっていたのか、キャルは折れてくれ、買い物と言う提案をした。
「うれしい」
「うれしいって……あんたはただの荷物持ち! いい? 荷物が重いとか弱音吐いたって帰してやんないからね。ほら、さっさと行くわよ。準備しなさい!」
そういいながら、おそらく荷物を取りに自分の部屋へと向かうキャルを眺めつつ、これで仲良くなれるのだろうかと、ユウキは小首をかしげた。
2021/1/7少し文章修正。