今日はバレンタインデーですね(確認)。
今日はバレンタインデーですが、これは前編なのでまたそのうちバレンタインデーが来ます。
もしかしたら全然違う話に修正するかもです。
バレンタインキャルちゃん:前編
その日、キャルは随分と考え込んでいた。
テーブルの上に置かれた二つの箱。中身はどちらもチョコレートなのだが、問題はその箱の形。
片方はシンプルな長方形の箱で、もう片方はハートの形の箱だ。
「普通に考えてこっちよね。義理なんだから」
今日はバレンタインだ。女性が男性にチョコレートと共に思いを伝える日だが、そういった愛に満ちたものだけでなく、さすがは本音と建前のランドソル、世の中には義理チョコというものが存在する。
昨年までは、この時期の浮ついた空気が嫌いであったし、チョコレートを買う人を見かければ鼻で笑っていたキャルではあるのだが、今こうして美食殿のギルドに所属しているとなると、流石にチョコレートを用意せざるを得なかった。
すでにペコリーヌとコッコロのためのチョコレートは――こっちも友チョコなんかではなく義理だと誰に言い訳しているのか、キャルはさんざん心の中でそう叫びつつ――用意した。
そして残された問題はユウキにあげるチョコレートである。
そもそもどうして自分はハートの形の箱なんか用意しているのか。義理なのだから、こんなあからさまなものを渡すはずがないのに。
ハート形の箱入りチョコレートが売られているのを見かけて、せっかくならこちらの方がいいかな、などと考えた昨日の自分をぶっ飛ばしたいところだ。
「で、でもせっかく買っちゃったし……やっぱこっちのほうがいいかな」
ハートの形の箱の方が少しばかり値段が高かった。それを誰にも上げないというのはもったいない。やはりユウキに渡すのはこちらにしようか。深い意味なんて一切なくて、あくまでももったいないからだ。
しかし、ペコリーヌとコッコロに用意しているチョコレートの箱も、長方形のシンプルなものであるし、ここでユウキにだけハートの形の箱を渡そうものなら、深い意味が出てきてしまいそうだ。
だが、余ったチョコレートは自分用にするつもりなので、自分用のチョコレートだけハートの形の箱の良いものを買っているということになりかねない。
どうしたものだろうか。
キャルはこうして延々と悩み続けていた。
「やっぱり、渡したい方を……って、渡したい方も何も義理なんだから関係ないじゃない!?」
だが、特別深い意味なんかなくても、ただのサービスとしてハートの形の方が喜ばれるかもしれない。たとえ義理だったとしても、喜ばれる方がいいのだから、ここは思い切って――
「ただいまー」
「っ!? お、おかえりユウキ」
ガチャリとギルドハウスのドアが開き、何やら大きめの袋を抱えたユウキが返ってきた。キャルは慌てて二つのチョコレートを後ろに隠す。
「あんた今日は配達の仕事だったんでしょ? 何よその大荷物」
「なんだかいっぱいチョコレートを貰った」
そう言いつつユウキがテーブルの上に袋を置くと、いっぱいいっぱいに入れられていたチョコレートがあふれるように零れ落ちた。
「……」
その光景にキャルは表情を引きつらせるほかない。やけに女の子の知り合いが多いとは思っていたが、どうやら自分が認識している以上にユウキはモテるらしい。
明らかに義理だと分かる、シンプルな箱のものもあれば、箱に思いきり『LOVE』と書かれているゴリゴリの本命チョコまで。
「あ、あんたそれだけのチョコどうするつもりなのよ」
「えっと? 食べる?」
「し、死んじゃうわよ……? 致死量とか超えてるんじゃない?」
「でもせっかくくれたから」
そうはいっても、さすがにこれだけの量を消化するのは一苦労だろう。最悪ペコリーヌがなんとかするかもと一瞬だけ考えるが、ペコリーヌは食べ物に込められた思いも大切にする人だ。涎を垂らしながらも我慢するだろう。となると、ユウキが捨てない限り本当に全部ユウキが食べる他ないわけで、ユウキが捨てるわけがないのだから、全部食べることになる。
そこに自分のチョコレートが加わるとなると、むしろユウキの負担になるのではないだろうか。
「……あたしは用意してなくて悪かったわね」
キャルは言い捨てるようにして、二つの箱を見られないように自分の身体で隠しながら自室に戻った。
一応バレンタインの話がこれだけ遅れた言い訳。
デレデレキャルちゃん書く→あまりの違和感に没。
最新話基準のキャルちゃん書く→デレデレキャルちゃんと同じだった。
一部時点のキャルちゃんで書く→没二回。
バレンタインな話をいくつも書いてました。