仮面ライダーウェイク   作:脱臼 させ太郎

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仮面ライダーウェイク
第1話「"人に成れぬなら──"」


 

 

 

 

自分の愚かさには、つくづく嫌気が差す。

 

他人と自分とを比べた時、そのあまりの差に自分が本当に同じ人間なのかを疑ってしまう程に。

 

それこそまさしく、「人でなし」だと。

 

自分のことが そう思えてくる。

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.……………え?クビ?」

 

「そう、クビ。」

 

 

 

 

 

「ぅええ〜っっ、ちょ、ちょぉっと待って下さいよ本部長〜!何で僕がクビなんすかぁ?!」

「度重なる遅刻、欠勤、おまけに事件に対しての雑で適当な対応!理由は明白だろう!」

 

「いやまぁ、それはそうですけど、ちょっと聞いて下さいよ!」

「何だ。」

 

「二度寝ってめっちゃ気持ち良いんすよ。」

 

「さっさと荷物まとめてこい。」

「いや、ちょっとぉ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

今から約5年前。日本国内で、未知のエネルギーを秘めたジッポライターのような形状をした物体が発見された。

そのライターは、使用した人間に特殊な能力を与え、禍々しい姿の怪人に変える力を持っていた。

その怪人は「デビル」と、そしてライターは「スペルライター」と名付けられた。

 

この力を悪用しようとする者を取り締まるために、国は法を改正、そして警察に準ずる新たな機関を立ち上げた。

 

機関はテクノロジーを提供する企業の違いから、

「エンゼル」と「ビートアップ・デーモン」の2つが設立され、

それぞれの機関の「仮面ライダー」と呼ばれる者達が、街の平和を守ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

そしてこの男「一確(ひとがた) 除夢(のぞむ)」は、大学を卒業後都内のエンゼル本部に就職し仮面ライダーとなったが、持ち前の怠惰な性格によって失態を重ね、

たった今、クビを言い渡されたのである。

 

 

頭を抱えながら本部長室を出た除夢は、廊下でサングラスをかけたスーツの男とすれ違う。

 

 

「あ、田園さん。」

「一確か。……解雇通知か?」

「あぁ、はい。…知ってたんすか?」

「本部長から少し前に聞いていたんだ。エンゼルの人材を一人失うのは残念だな。」

「…すみません。」

「これからどうするつもりだ?」

「あー…えーと、とりあえずバイトでも探そうかなぁと。」

「そうか。染み付いた習慣を直すのは簡単では無いと思うが、次の職場では気を付けろ。」

「…はい。ありがとうございます。」

 

「では、私は失礼する。それじゃあ。」

「ええ、そんじゃ。」

 

サングラスの男は、その場を後にした。

 

 

「…さてと。いざ荷造りっと……。」

 

除夢は自身が使っていたロッカーに手をつけた。

 

 

 

 

 

手持ちの紙袋に荷物を詰めた除夢は「さぁ、どうしたもんか。」と思考しながら、自宅であるボロアパートへ向かって街を歩いていた。

 

考えごとをしながら歩いていたせいで、前から来るアタッシュケースを持った男に気付かず、肩がぶつかる。

 

「あぁっとぉ、すいません。」

「あ…、どうもすんません…。」

 

「あれ?アンタどっかで…」

「あ?あぁ…そういえばどっかで…」

 

 

「あっ、分かったぁ!アンタ、ビートアップ・デーモンのライダーだろ!」

 

「あぁ…エンゼルのライダーか…。何だっけ、名前…」

 

「俺、一確除夢です。」

「…穿(うがち) 覇動(はどう)。何してんだ、こんなとこで。」

 

 

2人は近くの喫茶店に入る。そこで除夢は解雇の件を話した。

 

 

「あー…そう…。そんでクビになったと…。確かにお前相当適当だったもんな。現場に来んのも毎回遅かったし。」

 

「そうなんすよねぇ。……こういう自分がずっと嫌いで。まぁ、ずっと直らないのも変わる努力を怠ってる自分のせいなんすけど。」

「それと…ここまで拗らせると、なんていうかこう、自分を信じられなくなるっていうか。……自分が人間じゃないような気がしてくるんすよ。」

 

「……ほう?」

 

 

「…『まともな人間』のラインから転げ落ちて、どうしようも無く落ちぶれて。まさしく『人でなし』って言うんすかね。…今更変われないんじゃないかって思っちゃうんすよね。」

 

 

「………へぇ。」

 

 

覇動は生返事を返しながら、カップに口をつける。

 

 

 

 

 

「……つーかお前、そのカップの中身全然減ってねぇじゃねぇか。水位変わってねぇぞ。」

 

「あぁ、俺ブラック飲めねぇんすよ。」

 

「じゃ何で注文したんだよ。馬鹿か。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人は喫茶店を出て、街から少し離れた人気の少ない道を歩いていた。

 

 

「穿さん、二軒目行きましょうよ。いざハシゴ。」

 

「喫茶店にハシゴするとかいう概念ねぇだろ。JKか。」

 

 

「…てゆうか、何でこんなとこ来たんすか?」

「ちょっと、な…。この辺りで待ってりゃあ…。」

 

 

 

「……来たな。」

 

「え…」

 

 

覇動の目線の先を除夢が見る。

 

 

そこには、ボストンバックを抱え辺りを警戒するようにして通過する、覆面の男がいた。

 

 

「あれは…」

 

「さっきネットニュースで見たんだよ。スペルライター使った銀行強盗が現金3000万持って逃走したってなぁ。あの銀行から逃げて人目につかないルートはここしか無いだろうから、待ち伏せてりゃ必ず現れるって訳だ。」

 

「へぇー、凄い推理力……って、早く追わないんすか?」

 

 

「……俺は今日外回りついでにもう一つ仕事を頼まれててな。」

 

 

覇動は手に持っていたアタッシュケースを開く。

 

 

「…おらよ。」

 

 

そして、中から取り出した物を除夢の方に突き出した。

 

 

「!!」

 

 

それは、ビートアップ・デーモンのドライバーとスペルライターだった。

 

 

「…良い感じのヤツがいたらスカウトして来いって上から頼まれてな。」

 

 

「…ハハっ、スカウトだからってわざわざドライバー用意しないでしょ、普通。」

 

「まあな。上の考えることはよく分からん。」

 

 

「……なぁ一確。お前さっき『今更変われない』とか言ってたよな。けど『変わりたい』って望みが確かなら、もう一度やり直せる筈だ。」

「お前がもう一度仮面ライダーになりたいんなら、文字通り『変身』したいんなら、…このドライバーを取れ。」

 

 

 

 

除夢は真っ直ぐにドライバーを見つめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………フハハッ」

 

 

 

 

 

そして、手に取った。

 

 

 

 

 

 

 

「……ライターを起動してドライバーにセット、そんで上部のボタンを押せば変身だ。」

 

 

「…りょーかい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

覆面の男の前に、除夢が立ちはだかる。

 

 

「なっ、何だ貴様!!…仮面ライダーか?!」

 

 

「あぁ…そうだよ。俺は仮面ライダーさ。」

 

 

「チぃ…面倒臭いっ…!退けぇ!!」

 

 

覆面の男は懐からスペルライターを取り出し、ホイール部分を回す。

 

 

『ウァレフォル!』

 

 

すると男はライオンの立髪と馬の様な顔を持つ怪人『ウァレフォル・デビル』に変態した。

 

 

 

「フフ…フハハァッ!初陣なんだ……よろしく頼むぜぇ…。」

 

 

『デーモンドライバー!』

 

『欲望!』

 

 

除夢はそう言ってドライバーを腰に巻き、ライターを起動した。

 

起動したライターをドライバーにセットする。

 

 

『Let's go,to the mad.』

 

 

そして、ドライバーのボタンを押した。

 

 

 

 

「変身」

 

 

 

 

 

 

『降臨!』

 

 

 

『The greedy breaker!フォースオブデザイア!』

 

 

 

『"デビルイズ ミー"』

 

 

 

 

 

 

 

除夢は、変身した。

 

 

2本の紫の角を持つ仮面ライダーに。

 

 

 

 

 

 

「オラぁぁぁぁぁッ!!」

 

 

「ぐうぅっ…!!」

 

 

除夢は助走をつけてデビルに飛びかかり、胸部に右ストレートを撃ち込む。

デビルは体制を崩すが、立て直し反撃のフックを放つ。

 

これを躱した除夢は腹部に右ストレート。

怯んだところを、また同じ場所に右ストレート。

何度も同じ箇所に、ストレートを連発した。

 

デビルは腹部の前を両手でガードする。

 

自然と顔が下がったところに、膝蹴りを容赦無く叩き込んだ。

 

 

「ハッハァ!!」

 

 

「くっ…!うぉぉぉっっ!!」

 

 

デビルは両手の指の爪を鋭く立て、それを除夢に向かって降りかざす。

 

 

襲い来る左手を除夢は右手で防ぎ、続く2撃目の右手をキックで弾く。

ガラ空きの腹部を蹴り、デビルを後方へ吹き飛ばす。

 

立ち上がるのを待たずに助走をつけ、デビルの肩を踏み台に蹴り、空中に跳ぶ。

 

そしてバク転し、その勢いのままデビルの顔面に強烈なキックを放った。

 

 

「ぐはぁっ!!」

 

 

着地した除夢はドライバーに手を添える。

 

 

 

 

「…いざ欲望。」

 

 

 

そして再度ボタンを押す。

 

 

 

『デザイア フルビートアップ!』

 

 

 

除夢の背中から、禍々しいオーラに包まれた大きな翼が生える。

 

浮遊するようにしてデビルとの距離を取り、また助走をつける。

そして、両脚を揃えてジャンプ。

脚部にオーラを纏い、ドロップキックを放った。

 

 

 

デビルに命中し、爆散。

元の人間の姿に戻り、気絶した状態でその場に倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

除夢はドライバーからライターを引き抜き、変身を解除する。

 

 

「…初陣にしては、まあまあ良かったんじゃ無いか?」

 

 

「アハハッ。まぁ、伊達にエンゼルのライダーやってませんでしたからね。……穿さん、名前って…自分で決めて良いんすか?」

 

「あぁ、構わないぞ。」

 

「そっすか。じゃあ、さっき良いの思いついたんでそれを。」

 

 

 

 

 

 

 

「タロットの悪魔のカード、その逆位置の意味。『覚醒』を表す『awakening』から取って」

 

 

 

 

 

 

 

 

「"ウェイク"。……俺は、

 "仮面ライダーウェイク"だ。」

 

 

 

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