仮面ライダーウェイク   作:脱臼 させ太郎

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第3話「怒りの剣」

もう誰にも使われていないような、古びた倉庫。

そこに逃げ込んだ二体のデビルは、ライターの力を解除し、元の人間の姿に戻った。

 

 

「追手は…来てないか。…スマン、助かった。明日人。」

 

「……なぁ兄ちゃん。やっぱもう止めようよ、こんなこと。」

 

「…今更止められないだろう。それに、アイツらに舐められたままでいいのか?」

 

「それは…嫌だけど…」

 

「いいか、明日人。正しいのは俺達なんだ。アイツらを、懲らしめてやるだけだ。」

 

「う、うん。分かったよ、兄ちゃん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、犯人のデビルは、2人組?」

「はい。佐藤さんを襲ったデビルとの交戦中、別のデビルが加勢してきて、そのまま2体に逃走されました。」

 

先程まで戦っていたデビルについて、覇動と除夢は小田に報告していた。

 

「俺達に恨みがあって、2人組…ま、まさか」

 

「犯人に心当たりが?」

 

「はい。…『ゼブラーズ』っていう、兄弟で弾き語りやってるユニットがいるんですけど」

 

「ゼブラーズ?どっかで……あぁ、そうだ。」

「駅前でアコギ弾いてたあの兄弟か。」

 

「えっ、穿さん、知ってるんすか?そのユニット。」

 

「…一度だけ演奏してたのを聴いたことがあるんだよ。」

 

「そうなんです。アイツらも俺達と同じストリートの人間で…それで、俺達はたびたびちょっかいをかけてたんです。」

 

「『今更兄弟ユニットなんて流行らねぇよ』とか言って、馬鹿にしてて。当然向こうは俺達を嫌ってましたし、その仕返しで襲って来たんじゃ無いかって…」

 

「なるほどね……」

 

そう言って覇動は踵を返す。

 

「情報ありがとうございます小田さん。一確、一旦本部に戻るぞ。」

 

「あぁ、はぁい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本部内の自販機で、覇動は缶のコーヒーを買う。

 

「…兄の有川進介と、弟の有川明日人。情報通りなら、今日も2時間後に駅前でゼブラーズのパフォーマンスがある筈だ。そこに割り込むぞ。」

 

「りょーかい。…それにしても、意外ですね。穿さんがストリートのミュージシャンの演奏を聴いてるなんて。好きなんすか?」

 

「……いかんせん、自分の『好きなもの』ってやつを見つけるのが下手くそでな。流行りの音楽を聴くぐらいしか、趣味といえる趣味が無いんだよ。」

 

「…へぇ。」

 

「お前はどうなんだ。趣味とかあんのか。」

 

「休みは家でゲームとかしてますけど、まぁ俺の場合はデビルとドンぱち戦うこと自体が趣味みたいなもんなんで。」

 

「そうか。」

 

 

 

「…お前はどうだ。さっきからそこで盗み聞きしてるやつ。」

 

「えっ」

 

「あれぇっ、なぁんだ気付いてたのか〜☆そうならそうと早く言ってよ〜!」

 

「美花ァ…」

 

除夢は、なんとも形容し難い顔をする。

 

「う〜ん、ボクは結構多趣味な方だと思うんだけどぉ、強いて言うんなら〜…」

 

 

 

 

「自分磨き?」

 

 

 

「あぁもう、ボクってばホント今日もビューティフォー☆」

カシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャカシャ

 

 

「…ちなみにビートアップ・デーモン内で毎月1番最初に携帯の容量が無くなるのは美花だ。」

 

「いや、絶対コレのせいですよね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休日の昼下がり。

楽しげな声と足音。

盛んに人が行き交う駅前で、ギターを手に歌う青年が2人。

 

足を止める者は多くは無いが、その確かな腕に、聴き入る客もいた。

 

演奏が終わる。観客が拍手を送る。

「「ありがとうございました!」」

2人が締めの挨拶をして、次第に拍手の音は弱まる。

 

 

 

 

 

ただ、ひとつだけ止まない拍手があった。

 

不自然に長ったらしいその音の方を、全員が向く。

 

手を叩くことを止めない男は、胡散臭い笑みを浮かべながら2人の方へ近づいていく。

 

「…綺麗な歌声をしてるじゃないかぁ。思わず聴き入っちまったぜぇ…」

 

そう言った除夢の後ろには、覇動もいた。

 

「あ、あんたらは…」

 

2人は焦りを見せた。

 

「…ビートアップ・デーモンだ。『ゼブラーズ』、有川進介と有川明日人だな。『SHARK』のメンバーを病院送りにした疑いがある。ご同行願おうか?」

 

 

「…兄ちゃん。」

 

「あぁ……やるしかないっ!」

 

有川兄弟はスペルライターを取り出し、起動する。

 

 

『ベレト!』

『アムドゥスキアス!』

 

 

デビルとなったゼブラーズの2人を見て、先程まで演奏を聴いていた観客含め、人々は避難した。

 

除夢と覇動はドライバーを取り出す。

 

 

「一確、弟の方を頼む。」

「了解。」

 

 

『欲望!』

『憤怒!』

 

『『Let's go,to the mad.』』

 

 

「「変身」」

 

 

『『降臨!』』

 

 

『The greedy breaker!フォースオブデザイア!』

『Like a fire and thunder!フォースオブアンガー!』

 

『"デビルイズ ミー"』

『"ドントフォーギブ ユー"』

 

 

「オラァ!テメェの相手はコッチだぜぇ!」

「くっ!」

 

ウェイクが弟の方のデビルと格闘を始める。

 

「お前の相手は俺だ…!」

「うおぉっ!」

 

ヘイトは2体の連携を割くため、兄の方のデビルに斬りかかり、追い込む形で別の場所へ誘導する。

 

 

 

「いざ欲望っ!」

 

ウェイクが飛びかかるようにパンチを繰り出す。

デビルはそれを手に持ったエレキギターのような形状の武器で防ぎ、ウェイクと距離を取る。

そして、ギターの弦を弾く。

するとそこから旋律状のエネルギー波が、ウェイク目掛けて繰り出せれた。

 

「そこはアコギじゃねぇのかよぉっ!」

 

文句を吐きながら攻撃を躱し、デビルからは死角になる壁の裏に隠れる。

 

しかし旋律は障害物を躱すように回り込み、執拗にウェイクを追う。

間一髪でこれを躱した。

 

「チィッ!隠れさせてもくれねぇってかぁ。」

「…これが『アムドゥスキアス・デビル』の能力か。穿さんからの情報通り、相当に厄介だぜぇ…」

 

 

 

 

剣同士が激しくぶつかる。

ヘイトとデビル、お互いに譲らない攻防を繰り広げる。

ヘイトは手に持つレイジチョッパーにライターをセットし、側面のボタンを4回押した。

 

『アンロック』

『フォーレイジ!』

 

『フォーレイジスペル!』

 

『エレキスラッシュ!』

『"Shit!"』

 

 

「オラァッ!」

 

電気を纏った斬撃をデビル目掛け飛ばす。

デビルは剣の側面でこれを防ぐ。

 

今度はボタンを1回押す。

 

『ワンレイジ!』

 

『ワンレイジスペル!』

 

『ヒートエッジ!』

『"Shit!"』

 

ヘイトの剣の刀身が高熱を帯びる。

再度デビルとの距離を詰め斬りかかるが、デビルも素早い剣撃で牽制する。

 

デビルが剣を大きく振るう。

デビルの剣はヘイトのものより長く、ヘイトは自分の間合いを取ることに苦戦していた。

 

「…どうやら、リーチは俺の方が上らしいな。」

 

「…やたらと長い剣だな。気に入らねぇぜ…。」

 

 

 

 

 

 

 

夥しい数の旋律がウェイクを襲う。

先程から、ウェイクはこの弾幕を危なっかしくも避け続けていた。

 

デビルが口を開く。

 

 

「…あんたの変身する前の顔、知ってるぞ。」

 

 

「あぁん?」

 

 

「あんた確か、エンゼルのライダーだったろ。散々ネットでネタにされてたぞ。都内のライダーは全員あんな適当な対応なのかって。」

 

 

「…あー……」

 

 

「危うく確保した犯人を逃しそうにもなったらしいじゃないか。…なんでデーモンのベルトを巻いてるのかは知らないが、俺もラッキーだ。あんたが相手なら、逃げられるかもなっ!」

 

 

「…『変身』すんだよ、俺は。変わってやるさ。お前も今からぶっ飛ばす。逃がさないぜ。」

 

 

「ふん、どうやってぶっ飛ばすんだ。現にあんたは俺に手も足も出ない。飛び道具の一つも持っていないんだからなぁ!」

 

 

「…飛び道具ねぇ、そんなら…」

 

 

ウェイクは、近くにあったベンチをコンクリートの地面から引き抜く。

 

 

「コイツでどうだぁぁッ?!!」

 

 

そしてそのままデビルに向かって全力で投げつけた。

 

 

「な、何っ?!!」

 

 

咄嗟にギターでそれを防御したデビルは、今さっきまでベンチがあった場所を見る。

 

そこには既にウェイクの姿は無かった。

 

 

ベンチを投げると同士にデビルに突っ込んでいたウェイクは、その顔面に体重を乗せた右ストレートをぶつけた。

 

「ぐはぁっ!!」

 

「オラオラオラオラオラぁっ!!」

 

畳み掛ける様に膝蹴りや頭突きを繰り出す。

 

なんとかウェイクと距離を取ったデビルは、再度ギターを掻き鳴らす。

先程同様に無数の旋律が一斉にウェイクを襲う。

 

 

しかしウェイクは怯むことなく、デビルに一直線に走り出した。

 

 

そして、さながらダブルダッチの様に、旋律と旋律の間をくぐり抜けながらデビルとの距離を詰め始める。

 

あっという間に、ウェイクはデビルの目前まで迫る。

 

「く、くそっ!…でも、この距離なら」

 

デビルの放った最後の旋律が、ウェイクに直撃した。

 

「よし!当たった!」

 

 

 

 

 

しかし、ウェイクは止まっていなかった。

 

旋律に直撃してもなお怯まずに、突進の勢いそのままにアッパーをデビルにお見舞いする。

 

 

大きく後方に吹き飛ぶデビル。ウェイクはドライバーのボタンを押す。

 

 

『デザイア フルビートアップ!』

 

 

「オラァァァァァッッ!!」

 

 

空中にジャンプしたウェイクは、上空からデビル目掛け垂直にドロップキックを放った。

 

 

爆発が起こり、デビルの変身が解ける。

その場に倒れ込む有川弟を確認し、ウェイクは「ふぅー」と溜め息をついた。

 

 

「さてと…向こうはどうかなぁ…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

デビルの繰り出す薙ぎ払いをヘイトはしゃがんで躱す。

その後反撃で繰り出す突きをデビルは後ろに下がり躱す。

 

すかさず放たれたデビルの切り上げを、ヘイトは咄嗟に刀身の側面で防ぐ。が、衝撃までは殺せずに後方へ吹き飛ばされてしまう。

 

 

「…有川。犯行の動機は、馬鹿にされたことに対するSHARKへの復讐か?」

 

「…そうだ。単純なことだ。アイツらは俺の怒りを買った。だからその怒りを晴らす。それだけだ。」

 

「……そのやり方で、本当にいいのか?」

 

「…何?」

 

 

「その怒りの晴らし方で、本当にお前の気に入らないものを全て排除出来るのか?お前は本当に、それで胸張れんのか。」

 

 

「……そ、それは」

 

 

ヘイトは、剣の側面のボタンを8回押す。

 

 

『エイトレイジ!』

 

『エイトレイジスペル!』

 

『エレキウィップ!』

『"Shit!"』

 

 

ヘイトの剣の剣先から、電気の鞭が伸びる。

それをデビル目掛け薙ぎ払う。

 

「ぐっ?!」

 

デビルに当たった鞭は、そのまま体にグルグルと巻きつき、動きを縛る。

ヘイトは鞭をグイッと強く引き、身動き取れないままのデビルを引き寄せ、斬りつけた。

 

その衝撃に吹き飛んだデビルは、よろめきながらも立ち上がる。

 

ヘイトはボタンを13回押す。

 

 

『サーティーンレイジ!』

 

『サーティーンレイジスペル!』

 

『バーニングスラッシュ!』

『"Shit!"』

 

 

激しい炎を纏う斬撃を飛ばす。

 

「二度も喰らうかっ!」

 

デビルは先程と同じ様に、これを剣の側面で受ける。

しかし、さっきのものよりも遥かに威力を増した斬撃を完璧に受け切ることは出来ず、剣を弾き飛ばされてしまう。

 

その隙を狙ったヘイトは、ボタンを15回押した。

 

 

『フィフィティーンレイジ!』

 

『フィフィティーンレイジスペル!』

 

 

「ぶっ潰す。」

 

 

『アンガーエッジ!』

『"Holy shit!"』

 

 

 

黒の禍々しいオーラを纏った刀身で、デビルを一閃する。

 

 

 

しばらくの沈黙の後、デビルは大爆発を起こし、変身が解除された。

 

 

 

「ぐはっ…ぐ、うぅ、…実力で、結果で見返せばよかったものを、…俺は……俺は、明日人を巻き込んでまで…こんな、しょうもない様なことを…うぅっ」

 

 

 

「………怒りは、悪い感情じゃ無い。何かを嫌うことで前に進めることもある。……今度はその晴らし方を間違えるなよ。そのやり方は、自分自身を嫌いになるだけだからな。」

 

 

「…また一からやり直せば良い。お前達の演奏は、嫌いじゃあ無い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

覇動はデスクに座り、今回の件についての報告書をノートパソコンで作成していた。

 

休憩がてら缶のコーヒーを口にしていると、喧しい声が近づいてきた。

 

 

「あぁッ!!ったく、マジ無いわぁッ!!クソがぁ!!」

 

「……どうした、一確。」

 

「聞いてくださいよ穿さん!俺さっきバス使ったんすよ!」

 

「おう」

 

「そんで降りる時、カード使ったんすよ!そしたら10円足りなかったんで、財布の中漁ったんすよ!」

 

「ふん」

 

「そしたら周りの乗客とか運転手が、俺を急かす様な目で見やがるんすよ!!あぁ思い出すだけで腹立つ!!クソがぁッ!!!」

 

 

「…あっそ。」

 

 

しょうもない怒りの理由に、覇動は呆れた顔をした。

 

 

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