「いや〜すいませ〜ん。遅れましたぁ!」
「……クソ遅ぇよ一確。決めた時間の10分前には来いっつっただろ。」
「いやぁ申し訳ない!ガチで!うん!」
「…おら、もう『あの人』来るぞ。」
2人の元に男が乗った一台のバイクが近づき、止まる。
ヘルメットを外した男はバイクから降り、懐から取り出したサングラスを掛ける。
「ご苦労、待たせたな。」
その男は「
除夢の所属していたエンゼル本部のライダーであり、「エンゼルのトップ」と謳われる実力者だ。
一潜の降りたバイクは変形、縮小し、スペルライターとなって一潜の手に収まる。
「お久しぶりです、田園さん。」
「ああ、久しぶりだな一確。本当にデーモンのライダーになっていたんだな。」
「えぇ、おかげさまで。」
「ご無沙汰してます、田園さん。」
「お前とも久しいな、穿。」
「はい。今回の合同作戦、よろしくお願いします。」
「あぁ、2人ともよろしく頼むぞ。」
現在、世界ではスペルライターの取り扱いについて厳重な取り決めがされてある。
政府が定めた機関に属さない一般人のスペルライターの使用、所持は基本禁止されており、それはこの国でも例外では無かった。
その中で違法にライターを売り捌く「売人」絡みの事件は、数年前から頻繁に起きていた。
そして今回、都内のある集団が売人から大量にライターを買い取ったという情報があり、それを取り締まる為、「エンゼル」と「ビートアップ・デーモン」の合同作戦が決定した。
「…で、その作戦に抜粋されたのが俺達。とは聞きましたけど…。確かその集団って、全員高校生なんでしたっけ?」
「取り押さえられた売人からの話だとな。だがまぁ、ただの高校生にあの量のスペルライターを買う金は無いだろう。実際は、そうする様に仕向けた親玉がいると、私は睨んでいる。」
「成程ねぇ〜流石田園さん。」
「連中の屯する場所と時間帯は会議の情報の通りだ。先に張り込んで取り押さえるぞ。」
「了解。」
「りょーかい。」
人気の少ない道路の裏通り、もともと人の所有物だったその倉庫の壁には、スプレー缶によるものであろう落書きがあちこちに描かれていた。
そこに集まった10数人の高校生達。髪を染めた者や、制服をだらしなく着る者。ピアスをした者もいた。
「よっしゃ!早速アレやろうぜ!」
「お!じゃあ俺も!」
数人がポケットからスペルライターを取り出す。
『"ソルジャー!"』
ライターを起動すると、少年達は全身が紅に染まった「ソルジャー・デビル」へと姿を変える。
「ヒャッホウ!体軽っ!」
怪人となった者達がはしゃぐ中、ライターの使用を渋る者もいた。
「どうしたんだよ?お前もやれって!折角城島さんが金まで出してくれたんだからさ!」
「いやなんか、実際に怪人になるって、気味悪ぃなぁって……」
「さてはお前…ビビってんなぁ!」
「お、なんだお前!ビビってるから使えねぇのかよ!ダセェな!」
「はぁ?!ビビってなんかねぇよ!!見てろや!」
『"ソルジャー!"』
「おらぁ!」
「おぉ!やるじゃん!」
そして全員がデビルに変態し、騒ぐ声が大きくなりだした時。
「やぁやぁ元気な糞ガキのみんなぁ!!お兄さん達による『お尻ペンペンタイム』だぜぇぇ!!」
待ち伏せていた3人が姿を表した。
「な、何だ?!テメェら!!」
「…『仮面ライダー』だ。大人しく署まで連行されとけ。」
「お、おい!あのサングラスのヤツ!エンゼルのめちゃくちゃ強いって噂のヤツだぞ!」
「ど、どうすんだよ!ヤベェって!!」
「ヘッ!仮面ライダーだろうが何だろうが、今のオレ達が全員でかかれば負けるわけねぇぜ!」
「そ、そうだよな!向こうはたかが3人だ!」
「大人しく捕まる気は無いらしいすよ。」
「そうだな。」
除夢と覇動はドライバーを腰に巻く。
「「変身」」
『『降臨!』』
『フォースオブデザイア!』
『フォースオブアンガー!』
『"デビルイズ ミー"』
『"ドントフォーギブ ユー"』
そして、ウェイクとヘイトに変身する。
「お、おらぁぁぁっ!!」
2人に向かい走り出すデビル達。
迎え撃つため、2人も体を前に傾けたその時。
何処からか足元に銃弾が撃ち込まれ、火花を上げる。
怯んだ2人は、銃声の鳴った方へ目を向けた。
「おいコラぁぁ!!!…オレのかわいい後輩達に…何しようとしてんの?」
そこには、機関銃の様な武器と犬の様な顔を持った「グラシャ=ラボラス・デビル」がいた。
「オラお前らぁ!さっさと逃げろ!」
「あ、ありがとうございます!城島さん!」
「あ、おい!待てやガキ共!」
「アイツが親玉って訳か。」
「…奴の相手は私がしよう。お前達は彼らを追え。」
「お願いします、田園さん。」
2人は逃げた少年達を追った。
一潜は無言でデビルに向き直り、手に持ったエンゼルのドライバーを腰に巻く。
『エンゼルドライバー!』
スペルライターを起動し、
『秩序!』
ドライバーに挿入。
『武装準備完了。Ready to arm.』
そしてドライバー前面の翼の様な形状のパーツをスライドした。
「変身」
『誠心!』
『One city closer!フォースオブオーダー!』
『"マネジメント ゼム"』
一潜は、金の角と緑の装甲を持つライダーに変身する。
「お、アンタ見たことあるぜぇ。エンゼルのトップとか言われてるライダーだろ。」
「如何にも、私が『仮面ライダーテリジェンス』。今からお前を取り押さえる。」
「ハッ!やってみろよ!」
デビルは倉庫の外へと走る。
テリジェンスは1つのライターを起動した。
『エンゼル
起動したライターはバイクに変形。
テリジェンスはそれに跨り、デビルの後を追った。
道を高速で走るデビル。
振り返ると、テリジェンスがバイクでの追跡を続けている。
デビルがテリジェンス目掛け機関銃を乱射。
全て躱したテリジェンスは、お返しに右腕に取り付けられた装置から、鎖状のエネルギー弾を射出する。
「うおぉっと!」
連射される鎖を躱し続けるデビルだが、段々と追い詰められていく。
テリジェンスもバイクのスピードを上げ、確保を狙う。
しかしデビルは余裕そうに笑みを浮かべ、背中から翼を生やした。
そして飛翔し、空中に逃れる。
デビルはこのまま逃げ切ろうと、テリジェンスに背を向けた。
テリジェンスはグラシャ=ラボラス・デビルの飛行能力を知っていた。
即座にバイクのメーターパネルで操作を行い、前後の車輪を真横に傾ける。
バイクはホバリングモードに変形し、空中に浮遊。空を飛ぶデビルを追従する。
「ゲェ?!そっちも飛べんのかよ!!」
焦るデビルはまたも鎖に追い詰められる。
今度こそエネルギー弾が命中する、かに思われた。
「まだ捕まってたまるかよ!」
デビルは突如姿を消した。
「!!」
放たれた鎖は空を切る。
テリジェンスは辺りを見回すが、デビルは何処にも居なかった。
「……既に透明化の能力まで使いこなしていたか。」
デビルを逃したテリジェンスは、地上へと降りた。