仮面ライダーウェイク   作:脱臼 させ太郎

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第4話「トップの男」

 

「いや〜すいませ〜ん。遅れましたぁ!」

「……クソ遅ぇよ一確。決めた時間の10分前には来いっつっただろ。」

「いやぁ申し訳ない!ガチで!うん!」

「…おら、もう『あの人』来るぞ。」

 

2人の元に男が乗った一台のバイクが近づき、止まる。

ヘルメットを外した男はバイクから降り、懐から取り出したサングラスを掛ける。

 

 

 

「ご苦労、待たせたな。」

 

 

 

その男は「田園 一潜(たぞの ひせん)」。

除夢の所属していたエンゼル本部のライダーであり、「エンゼルのトップ」と謳われる実力者だ。

 

 

 

一潜の降りたバイクは変形、縮小し、スペルライターとなって一潜の手に収まる。

 

「お久しぶりです、田園さん。」

「ああ、久しぶりだな一確。本当にデーモンのライダーになっていたんだな。」

「えぇ、おかげさまで。」

 

「ご無沙汰してます、田園さん。」

「お前とも久しいな、穿。」

「はい。今回の合同作戦、よろしくお願いします。」

「あぁ、2人ともよろしく頼むぞ。」

 

 

 

 

 

現在、世界ではスペルライターの取り扱いについて厳重な取り決めがされてある。

政府が定めた機関に属さない一般人のスペルライターの使用、所持は基本禁止されており、それはこの国でも例外では無かった。

その中で違法にライターを売り捌く「売人」絡みの事件は、数年前から頻繁に起きていた。

 

そして今回、都内のある集団が売人から大量にライターを買い取ったという情報があり、それを取り締まる為、「エンゼル」と「ビートアップ・デーモン」の合同作戦が決定した。

 

 

 

「…で、その作戦に抜粋されたのが俺達。とは聞きましたけど…。確かその集団って、全員高校生なんでしたっけ?」

「取り押さえられた売人からの話だとな。だがまぁ、ただの高校生にあの量のスペルライターを買う金は無いだろう。実際は、そうする様に仕向けた親玉がいると、私は睨んでいる。」

「成程ねぇ〜流石田園さん。」

 

「連中の屯する場所と時間帯は会議の情報の通りだ。先に張り込んで取り押さえるぞ。」

「了解。」

「りょーかい。」

 

 

 

 

 

人気の少ない道路の裏通り、もともと人の所有物だったその倉庫の壁には、スプレー缶によるものであろう落書きがあちこちに描かれていた。

 

そこに集まった10数人の高校生達。髪を染めた者や、制服をだらしなく着る者。ピアスをした者もいた。

 

 

「よっしゃ!早速アレやろうぜ!」

「お!じゃあ俺も!」

 

 

数人がポケットからスペルライターを取り出す。

 

『"ソルジャー!"』

 

ライターを起動すると、少年達は全身が紅に染まった「ソルジャー・デビル」へと姿を変える。

 

 

「ヒャッホウ!体軽っ!」

 

 

怪人となった者達がはしゃぐ中、ライターの使用を渋る者もいた。

 

 

「どうしたんだよ?お前もやれって!折角城島さんが金まで出してくれたんだからさ!」

「いやなんか、実際に怪人になるって、気味悪ぃなぁって……」

 

「さてはお前…ビビってんなぁ!」

「お、なんだお前!ビビってるから使えねぇのかよ!ダセェな!」

「はぁ?!ビビってなんかねぇよ!!見てろや!」

 

 

『"ソルジャー!"』

 

「おらぁ!」

「おぉ!やるじゃん!」

 

 

そして全員がデビルに変態し、騒ぐ声が大きくなりだした時。

 

 

 

「やぁやぁ元気な糞ガキのみんなぁ!!お兄さん達による『お尻ペンペンタイム』だぜぇぇ!!」

 

 

待ち伏せていた3人が姿を表した。

 

 

 

「な、何だ?!テメェら!!」

 

「…『仮面ライダー』だ。大人しく署まで連行されとけ。」

 

 

「お、おい!あのサングラスのヤツ!エンゼルのめちゃくちゃ強いって噂のヤツだぞ!」

「ど、どうすんだよ!ヤベェって!!」

 

「ヘッ!仮面ライダーだろうが何だろうが、今のオレ達が全員でかかれば負けるわけねぇぜ!」

「そ、そうだよな!向こうはたかが3人だ!」

 

 

 

「大人しく捕まる気は無いらしいすよ。」

「そうだな。」

 

 

除夢と覇動はドライバーを腰に巻く。

 

 

「「変身」」

 

 

 

『『降臨!』』

 

 

『フォースオブデザイア!』

『フォースオブアンガー!』

 

『"デビルイズ ミー"』

『"ドントフォーギブ ユー"』

 

 

そして、ウェイクとヘイトに変身する。

 

 

 

「お、おらぁぁぁっ!!」

 

 

 

2人に向かい走り出すデビル達。

迎え撃つため、2人も体を前に傾けたその時。

 

 

 

何処からか足元に銃弾が撃ち込まれ、火花を上げる。

 

怯んだ2人は、銃声の鳴った方へ目を向けた。

 

 

 

 

「おいコラぁぁ!!!…オレのかわいい後輩達に…何しようとしてんの?」

 

 

そこには、機関銃の様な武器と犬の様な顔を持った「グラシャ=ラボラス・デビル」がいた。

 

 

「オラお前らぁ!さっさと逃げろ!」

 

「あ、ありがとうございます!城島さん!」

 

 

「あ、おい!待てやガキ共!」

「アイツが親玉って訳か。」

 

 

 

「…奴の相手は私がしよう。お前達は彼らを追え。」

 

「お願いします、田園さん。」

 

2人は逃げた少年達を追った。

 

 

 

一潜は無言でデビルに向き直り、手に持ったエンゼルのドライバーを腰に巻く。

 

 

 

『エンゼルドライバー!』

 

 

スペルライターを起動し、

 

 

『秩序!』

 

 

ドライバーに挿入。

 

 

『武装準備完了。Ready to arm.』

 

 

そしてドライバー前面の翼の様な形状のパーツをスライドした。

 

 

 

 

「変身」

 

 

 

『誠心!』

 

 

『One city closer!フォースオブオーダー!』

 

 

『"マネジメント ゼム"』

 

 

 

一潜は、金の角と緑の装甲を持つライダーに変身する。

 

 

 

「お、アンタ見たことあるぜぇ。エンゼルのトップとか言われてるライダーだろ。」

 

 

「如何にも、私が『仮面ライダーテリジェンス』。今からお前を取り押さえる。」

 

 

「ハッ!やってみろよ!」

 

 

 

デビルは倉庫の外へと走る。

 

テリジェンスは1つのライターを起動した。

 

 

 

『エンゼル X-1(クロス ワン)!』

 

 

 

起動したライターはバイクに変形。

テリジェンスはそれに跨り、デビルの後を追った。

 

 

道を高速で走るデビル。

振り返ると、テリジェンスがバイクでの追跡を続けている。

 

 

デビルがテリジェンス目掛け機関銃を乱射。

全て躱したテリジェンスは、お返しに右腕に取り付けられた装置から、鎖状のエネルギー弾を射出する。

 

 

「うおぉっと!」

 

 

連射される鎖を躱し続けるデビルだが、段々と追い詰められていく。

 

テリジェンスもバイクのスピードを上げ、確保を狙う。

 

 

 

しかしデビルは余裕そうに笑みを浮かべ、背中から翼を生やした。

 

そして飛翔し、空中に逃れる。

デビルはこのまま逃げ切ろうと、テリジェンスに背を向けた。

 

 

 

テリジェンスはグラシャ=ラボラス・デビルの飛行能力を知っていた。

即座にバイクのメーターパネルで操作を行い、前後の車輪を真横に傾ける。

 

バイクはホバリングモードに変形し、空中に浮遊。空を飛ぶデビルを追従する。

 

 

 

「ゲェ?!そっちも飛べんのかよ!!」

 

 

 

焦るデビルはまたも鎖に追い詰められる。

 

今度こそエネルギー弾が命中する、かに思われた。

 

 

 

「まだ捕まってたまるかよ!」

 

 

 

デビルは突如姿を消した。

 

 

 

「!!」

 

 

 

放たれた鎖は空を切る。

テリジェンスは辺りを見回すが、デビルは何処にも居なかった。

 

 

 

 

「……既に透明化の能力まで使いこなしていたか。」

 

 

 

デビルを逃したテリジェンスは、地上へと降りた。

 

 


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