ウルトラマンゼロ The Another Lyrical Story 第一章 作:フォレス・ノースウッド
なのはの心情を描くには、その方が良いと判断したもので。
それと温泉回もばっさりカットです。
てか全体的に女性陣のサービスカット率は原作より低くなってます。
突然だが、ジュエルシードと言うロストロギアは、ある意味に関しては生き物だと言えるかもしれない。それが人間であれ、動物であれ何であれ、願いを餌に、食らいついてくる生物。
八束神社という名称が付いた、海鳴市では最も丘の高い場所に建てられた神社の裏の森、その周辺に落ちたジュエルシードは、自らを見つけた猫に憑り付き、活動を開始した。
さっきは生き物と言ったが少し表現を変えよう、寧ろ願いに寄生してくるジュエルシードは、寄生虫と呼んだ方が正確だ。
憑りつかれた猫は、ライオンよりも大きい黒い体躯に虎のような白い模様を全身につけ、とうの大昔に絶滅したサーベルタイガーより鋭い犬歯を持つ、異形の異相体となった。
異相体は、同胞であるはずの子猫たちに狂気混じりの殺気を剥き出しにし、威嚇する。
子猫たちは脅える余り、逃げ出すことすらできない。たとえ逃亡を実行しようにも、その小さな躯では、翼を持った凶獣から生きて帰れることも叶わない。
今にも、異相体の凶刃と凶牙が、あどけない子猫たちを襲おうとしたその時、金色の魔法陣が爪の一撃を食い止めた。
「バルディッシュ!」
魔法陣と同じ色をした髪をツーサイドで纏めた。どう横目に見ても日本人ではない少女、フェイト・テスタロッサだ。
『GET SET』
彼女と愛機のバルディッシュは、掌より長く、白光りする異相体の爪の攻撃を、魔法陣の障壁、『ラウンドシールド』で食い止めつつ、攻撃魔法を発動。
地面に魔力で構成された稲妻が走り、もろに受けた異相体は吹き飛ばされた。
『Barrier Jacket. SET UP』
夕方の住宅街をひた走る少女が一人、なのはである。
アリサ、すずかと下校し、丁度二人と別れた矢先にジュエルシードの発動を感知したなのはは、たった今波動を示す八束神社方面へと向かっていた。
ふと突然、現場への方角から黄色い光の柱が走る。
この時の彼女は知る由もないが、天へと上がった光はフェイトが相棒のデバイス、バルディッシュをスタンバイモードから起動した際のものであった。
「(なのは!焦らないで! せめて僕と光さんが行くまでは――)」
同じく発動を察し、高町家宅から飛び出してきたユーノが、一人先行するなのはに念話で呼び掛けてくる。
「待てない! 怪物になったジュエルシードが人や生き物を襲うかもしれないんだよ」
なのはの言う通り、現にジュエルシードは生き物を憑りこみ、森を破壊し、動物たちに襲いかかって暴れている。
しかも相手は、飛行能力のある憑依タイプの異相体。
このまま放っておけば、ロストロギアの本能のままに、近くの住宅街に住む住民たちを襲いかねなかった。
先日の自分のミスで、危うく市街が大木に覆われる大災害になり、本来自分がやるべきだった後始末も、あの光の巨人、ウルトラマンゼロにほとんど押しつけてしまった。
封印したのは自分だが、ゼロのサポートが無ければそれすらもままならなかった。
あの時ゼロが言ってくれたように、もう〝中途半端〟のまま終わらさせたりしない。
ちゃんと自分の意志で、やりぬくって決めたんだから。
八束神社の祭壇に繋がる石畳の階段を、全て登り切ったなのは。
まだ異相体がいると思われる森まで距離があったが、木々の間から発せられる爆音や、雷光が事態の深刻さを物語る。
「レイジングハート、お願い!」
『All right, Standby Ready, SET UP』
「レイジングハート!!セェェェトアァァァァプ!」
そして今現在この森で、フェイトと異相体との戦闘が行われている。
戦況ではフェイトが圧倒していた。
不利であることを悟ったのだろうか?
異相体は背中から蝙蝠のような翼が生やし、その場を逃走しようとする。
しかし、飛べるのは相手も同じだ。
そしてスピードにおいては、彼女の方がはるかに上、あっという間に追いつき、バルディッシュの刃で、上空から唐竹の要領で振りおろし、相手の左翼を切り裂いた。
だが異相体の左翼は瞬く間に再生され、直ぐに態勢を立て直す。
斧を振りおろした勢いで一旦地面に降りたフェイトは追跡を続行しようとするが、切られた翼が、かの生物に寄生して成長する完全生命体の幼年体のような物体に4つ分裂し、彼女に襲いかかる。
が、フェイトは冷静に食いつこうとした物体を電撃を込めたバルディッシュの一撃で消滅させた。
人間体とは言え、正体がウルトラ戦士で戦闘経験も勝る勇夜には遅れをとってしまったフェイトだが、彼が一目置いている通り、若年だが魔導師としては破格の力量の持ち主だ。
もはや彼女から逃げおおすことは不可能と悟ったのか、空から異相体が斜めに降下しつつ突っ込んでくる。
それに対処しようとするフェイト、右の掌に稲妻の魔力を集める。
だが反対方向から、異相体に向かって桜色の光が突進、被弾する。
思わぬ不意打ちに、異相体は慣性を受け止められずに地面へ激突した。
桜色の光=魔力を纏って、空から体当たりを敢行したなのはは、今の攻撃で深手を負った異相体を足で押さえつけ、キャノンモードのレイジングハートを向ける。
しかしそれにしても、魔力を全身に纏って体当たりを仕掛けるとは……なんとも滅茶苦茶な戦法である。
もっとも、ウルトラマンも変身直後に、こうして空から体当たりをよく仕掛けていたりする。
「ジュエルシード!封印!!」
キャノンモードに変えたレイジングハートの砲口を異相体に向け。封印処理を施した砲撃を放とうとするなのはだが、異相体は最後のあがきで振り払い、飛び上がった。
逃走を許さない黒い影が迫る、フェイトだ。
『Scythe Form』
バルディッシュの黒い実剣が展開し、黄金の魔力刃を現れ、異相体に眼前に振りかぶり。
「ジュエルシード―――封印!」
振り下ろした。
死神のごとき一閃が異相体を襲い、唐竹に切り裂かれた異形の生命体は、為す術も無く爆発した。
あれが…光兄の言っていた、魔法使いの女の子?
上空を浮遊する、体にぴたりと密着した黒いノースリーブと短いスカートで組まれたバリアジャケットらしき装束と、地球人のイメージする魔法使いに近いマントを巻き、自分よりも長い金髪をツインテールで縛り、明らかにその細い体格とは似合わない―――はずなのに、この少女にはとてもよく似合う、無骨な斧の形をした魔法の杖―――デバイス。
歳は…私と同じくらいかな?
艶やかな金髪と燃えるように赤く大きな双眸、幼いなのはから見ても美少女と呼べるカテゴリー。
そして何より、それだけの綺麗な容姿をしながら、どこか………寂しそうな、〝悲しそうな眼〟をしている。
ふいに浮かんだ少女への印象に、なのはは立ち尽くす心境であった。
どうして……〝かなしい〟…なんて。
わけは自分にも解らない。なぜ一目見てそう感じたのだろう?
ただ、彼女を一目見て、直感的に現れた言葉がそれであった。
そしてその女の子は、目の前に浮いている封印が完了されたジュエルシードを手に取ろうとする。
「あの…待って!」
『Flier Fin』
なのはも空へ飛び上昇、彼女と正面から向き合える位置へ止まり、滞空状態を取る。
「それはユーノ君が見つけて、この街の人たちに迷惑をかけないように必死に…」
すると少女は、なのはに視線を移すと、稲妻を纏った魔力弾を生成する。
彼女は無表情を貫いたままだ、しかし斧の切っ先をなのはに向けたことからも、明らかに戦う気であり、なのはと対話する姿勢は絶無であった。
「あ、あなたも…それを探してるの?」
「それ以上近づかないで…」
「お、お話したいだけなの……あなたも魔法使いなの?とか……なんでジュエルシードを……とか」
それでも相手の真意、ジュエルシードを集めてどうする気なのか確かめようと、少しずつ歩み寄りながら、話を試みるなのは。
「答える意味は、無い」
『FIRE』
相手は返答の代わりとして、周囲に滞空させていた魔力弾を発射。
ジェット噴射の要領で全身を魔力を出し、それを推進力にしてかろうじて回避するなのは。
しかし、その瞬間、少女はなのはの背後に回り込み、魔力の刃を胴薙ぎになのはに一閃する。
それもどうにか急上昇して躱した。
だが予断を許さず、正面から閃光のようなスピードでなのはに迫る少女。
互いのデバイスがぶつかり合い、火花を散らす。
「待って!私、戦うつもりなんてないのに!」
なのは相手の一撃をレイジングハートで受け止め、杖での鍔迫り合いの状態になりつつもなお、話し合いに持ち込もうとする。
自分も彼女も、ジュエルシードを集めるために戦っているのは同じなはず。
目的が同じなら、こうして争う必要は無いのではと、なのはは考える。
が、だからと言って素直に協力とまで――
「だったら、私とジュエルシードに関わらないで」
――いかなかった。
少女はその一言でもって、なのはの想いを拒絶し、切り捨てた。
「だからそのジュエルシードはユーノ君が!」
発掘した本人を差し置いて集めて、何をする気なの?
街なんて簡単に壊して、人だって殺してしまう、危険な物なのに。
あの日の巨木の異相体が起こした災害の光景が目に浮かび、目の前の少女がどうしてそこまで宝石を求めるのか、居たたまれなくなりそうになるなのは。
膠着状態が続くと判断した二人は一旦後退、フェイトはチャンスとばかり。
『Arc Saber』
バルディッシュから生成した魔力刃を、三日月の刃にしてブーメランのように飛ばす。
斬撃タイプの魔法、名はアークセイバー。
『Protection』
なのはは防御魔法プロテクションを張り、魔力の盾で防ごうとするが、
『Saber Expload』
三日月状の魔力刃は桜色のシールドに接触すると同時に刃状に固められた魔力が拡散され、暴発を起こした。
この魔力の刃は、『セイバーエクスプロード』と唱えて結合を解くことで爆発させる効果も有している。
爆風を受けたなのはは、衝撃で態勢を立て直せないまま、地面へと落ちていく。
止めとばかり、魔力弾を生成した少女は、小さく、だがはっきりとなのはにも聞こえる声量で。
「……ごめんね…」
詫びを入れ、魔力弾を放った。
高速で発射された雷の弾丸は、落下するなのはに迫り、彼女の意識は、着弾する直前にブラックアウトした。
フェイトのフォトンランサーは正確に、なのはを捉えたはずだった。
しかし、前述の結果を覆すアクシデントが起きた。
「あの光?」
レイジングハートから、光が発し、魔力弾を受け止めると、なのはの体はゆっくりと地面に降りていく。
やがて光は人の姿となって、彼女を優しく地面に横たわらせた。
彼を纏っていた光が消える。
フェイトは驚いた。
先日、なのはとウルトラマンゼロが倒した巨木の異相体の出現と同時に、市民プールで発動したジュエルシードを回収した際、建物のガラスからいきなり現れた―――謎の鏡の騎士。
勇夜から、白い魔道師の子がまだ魔導師になりたての地元の女の子であることは知っていた。
だがこの騎士は…あの子とどう言う関わりが?
騎士は両腕を×字に組む、独特のファインティングスタイルでフェイトを見据える。
フェイトも愛機を構えた。
あの騎士が何者か考えてる時間はない。
白衣の少女と違い、向うは積極的に戦う意志を見せたのだから。
対峙する両者。
突然眼下の騎士の姿が、光を発して消えた。
どこに?
フェイトは辺りを見回す。
後ろ! 反射的に、横に回避。
いきなり現れた騎士の蹴りは宙を舞った。
速い。魔法とは違う方法で、ワープしたのも脅威だが、スピードに関しても、フェイトと五分五分。
「ミラー!ナイフ!」
騎士の手先から、無数の矢尻状の光が飛んでくる。
小刻みに宙を飛行してかわしつつ、バルディッシュの魔力刃で光を迎撃しながらフェイトは。
『Arc Saber』
金色の魔力刃、アークセイバーを投げつけた。
三日月の刃は、正確に相手に当たった………のだが。
「えっ?」
金属音が鳴り響き、銀色の破片が四散する。
命中したのは、騎士ではなく、騎士の姿を写した鏡だった。
真っ二つに切裂かれ、破片となって散っていく鏡。
少なくとも、この破片と化した鏡が囮であることはフェイトでも理解できる。
なら…本物はどこに?
「ミラァァァァァーーー!キック!」
上空から、本体が急降下してきた。
回避が間に合わない!
『Round Shield』
バルディッシュがすんでのところで障壁を張るが。
「きゃっ!」
飛行と落下の勢いと何らかのエネルギーを乗せた蹴りの衝撃に、態勢を崩したフェイトは、地面に叩きつけられた。
バリアジャケットが鎧とクッションの役目を果たしてくれた恩恵で、外傷はほとんどない。
フェイトは騎士から追い打ちをかけられる前に、立て直そうとしたが。
突然、フェイトは体が重くなったかのような感覚にとらわれる。
自分の周りの引力だけが強くなったかのようだった。
その重力を前に、空を飛ぶことも、魔力を生成することも、立ちあがることさえ、ままならない。
一体、何が起きた?
周りをよく見ると。
光でできた4つの十字架が、彼女を取り囲んでいた。
フェイトを封じこむこの十字架は、鏡の騎士―――ミラーナイトの技の一つ、《ミラーウェイト》。特殊な重力波を生み出す光の十字架で、対象の動きを封じる技であった。
なのはの初陣の時に、異相体の動きを封じたのもこの技だ。
ゆっくり、地面に降り立つミラーナイト。当分フェイトは動けない。10歳前後の少女の力で振りほどけるほど、十字架が発す重力の縄は脆弱ではない。
その間に、彼は彼女に聞こうとした。
彼女が、愛する妹のなのはと一戦交えてまでジュエルシードを集める……その理由と―――?自分の友?と思わしき人物と、何らかの関わりがあるのか?―――ということを。
「大人しくしてもらえませんか? いくつか、君に聞きたいことが――――」
と質問しようとしたが、全て言い終える前に。
「はっ!」
気配を感じ、空を見上げると。
ミラーナイトに向かって、光の球体が急接近。
あの金色の光は……まさか!?
その正体を思案する間も無く、ミラーナイトは降下してきた光に包まれた。
その数分前、八束神社の裏の森の中を走る艶やかな黒髪をポニーテールに縛るの少年が一人。
諸星勇夜だ。
もう、戦闘が始まっているのか?
茂みで向うがどうなっているかは、視覚では掴めないが、爆音と雷鳴で、わざわざ透視を使わなくても、フェイトが異相体と戦っていることは理解できた。
フェイトとの約束があるため、迂闊に戦闘に介入はできない。
とは言え、その制約で全く何もできないわけじゃないし、それを何もしない言い訳にもしない。
せめて戦闘の火の粉を、海鳴の人たちにかからないようにしなければと、その足で戦場へと向かおうとしたその時だ。
彼の体に、〝人の目では見えない流れ〟が触れて、染みわたる。
空気中に漂う、エネルギーの流動を、彼の皮膚感覚が掴みとった。
そしてこの波動の持ち主がだれなのか、直ぐにいきついた。
ミラーナイト――――――リヒトか?
今回はくっきりと彼のものだと分かった。
やっぱりあいつは、あの子―――高町なのはと何かしら繋がりがある。
あいつの波動と魔力の流れからして、今頃フェイトと戦闘を行っているのは明白。
変化球な形ではあったが、あいつの技量は実際に戦ったこともあるからよく知ってる。
確実にフェイトの方が分が悪く、ピンチの疫病神が微笑むのは彼女の方だ。
となれば……やることは一つ。
「リンク」
『了解』
勇夜の意志を察したリンクから光が溢れ、変身サングラス、ウルトラゼロアイが出現。
約束は約束だからな……ちゃんと果たすさ。
すまないミラーナイト、少しの間、付き合ってもらうぜ。
「デュワ!!」
ゼロアイの光が勇夜を包み光体となりは、光そのものとなったゼロは、フェイトとミラーナイトの元へと飛んだ。
「ここは?」
ホワイトアウトした視界が元に戻り、ミラーナイトは今、どこかの森にいた。
さっきフェイトとの戦闘があった位置とは、そんなに離れていない。
だが視界に映る物体たちの奇妙な色無いと、外にいるのに、室内にいるような、この独特な圧迫感によって。
「結界の……中か…」
誰かが張った異空間に閉じ込められたこと確認した時だった。
背後に気配を感じ、振り向くと。
「………ゼロ……」
青と赤と銀の配色。
吊りあがった金色の瞳。
頭部に装着された宇宙ブーメラン―――ゼロスラッガー。
自分の戦友であり盟友。
ウルトラマンゼロが……そこにいた。
この結界を張っている主も彼だろう。
今は、お互いの立場上……戦うしかないようだと覚悟を決め、両手を交差させた構えをとる。
ゼロは、その様子に一瞬戸惑いを見せたが…彼も意を決し、片手を前に突き出し構え、戦闘の意志を表明する。
対峙する両者。
こうして舞台を、平行世界の地球に移し、二人の戦士の再戦が始まった。
人と同じ体格をしながら、人を超えた力を宿す巨人たち、
たとえ今、大きさが人間と同じサイズでも、その戦いの苛烈さは凄まじい。
お互い、武器を持たない、素手でのストリートファイト。
だが彼らに掛かれば、それだけで。魅了かつ壮絶な決闘となった。
走るだけで地面が抉れ、拳を振るうだけで、突風が起き、蹴りが舞うだけで木々は倒れた。
並の人間ならその戦闘の余波さえ、致命傷となる嵐の渦中。
ミラーナイトの蹴りの連撃が、ゼロを襲う。
美麗で、かつ鋭く無駄が無い。
それでいて、細身な体躯からは考えられないほど重い。
だがその連舞をゼロは、最小限の動きで回避しつつ、相手の足を掴み、そのまま投げ回した。
だが相手も態勢を立て直し、倒立の勢いで反撃の蹴りを見舞う。
それを両腕で防御し後退しつつ、頭部のゼロスラッガーを投擲する。
ナイトに迫る刃は彼の手刀で弾かれるが、その隙を狙い、ゼロの額のランプから緑の光線、エメリウムスラッシュが放たれる。
それを間一髪、両手で掲げて形成されたバリア、《ディフェンスミラー》で防ぐミラーナイト。
追い打ちとばかりゼロは、ナイトに向けて飛び上がり、袈裟がけの手刀が下される。
ナイトはそれを上空へ飛びあがり回避した。
空振りとなった手刀は、大地を大きく抉り取る。
「シュア!」
ゼロも、彼に続いて飛び上がり、空中で再び対峙する格好となる二人。
既に森は嵐か竜巻が来た後のように荒れていた。
結界の中だからこそ、二人はここまで戦えたと言える。
互いに譲らない互角の勝負。
死線を潜り抜けてきた戦士だからこそできる、戦闘と言う名の円舞。
ミラーナイトは手の甲を重ねると。
「ミラーエッジ」
甲に位置する光沢から、光の刃が伸びた。
対してゼロも、頭部のゼロスラッガーを手に取り、逆手に構えた。
武器と持ち方は異なれど、二刀流と二刀流。
ゼロとミラーナイトはこの時、不謹慎であることは理解しつつも、
二人は、互いの技量に…感嘆し…驚嘆し、別離してから久しい友は、今でもその腕を衰えさせていないことに歓喜していた。
やはりこの二人も、根っからの文字通りの戦士である。
数秒の間の後、第二ラウンドが開始された。
奇しくも、なのはとフェイトの初戦と同じく空中戦。
だがその凄絶さは、比べ物にならない。
いくらなんらかの能力の補助を得ても、人間の体は音速を超えられない。
そういう作りになっていない。
だが彼らの場合、そんな常識は通用しない。
音速を遥かに超えたスピードで翔け巡る光点と光点が交差し、シザース軌道を描きながら、刃と刃が交わり、激しいスパークが幾つも起きる。
まさに………超音速の大決闘。
刃を振るうスピードも、もはやまともに視認できない。
刃を交わしたのがこれで何十回となるだろうか?
そのまま膠着状態が続くと思われたが、状況は動いた。
ミラーナイトの刃がゼロのゼロスラッガーを弾かせ、彼の手元から離れさせた。
後退しようとするゼロにミラーナイトは決めてとばかり、一気に踏み込み、両手の光の刃を突きだす。
勝敗は決まったと思われた。
だが、ミラーナイトの刃と刃がクロスし、ゼロの体を捉える寸前、ゼロは刃を両手で挟み込んだ。
真剣白羽取り。相手にそれを理解する暇さえ与えず、強烈なストレートキックがゼロから炸裂。
腹部へもろに受けたナイトは、その勢いを逆に利用して距離を取りろうとするが、彼の背後に迫る物体が、ゼロスラッガーだ。
間一髪、回し蹴りで振り払うナイトだが、ゼロへ向き直ると、炎を纏ったゼロの右手が迫っていた。
ゼロが師匠から受け継いだ、エネルギーを纏った手で繰り出す手刀技《ハンドゼロスライサー》の強化版、《ビックバンゼロ》。
回避は不可避と悟ったミラーナイトは、ミラーエッジを×字に構えて受け止めようとする。
「デェヤァ!」
紅蓮の手刀が、ミラーエッジと衝突した瞬間、光の刃は砕け散った。
だがナイトはその衝撃を利用してゼロから離れ、腕を×字に組み、エネルギーチャージ。
対してゼロも左腕を横に広げ、体内のパワーを両腕に集束。
「シルバァァァー!クロス!」
「デェア!」
ナイトからは十文字の光刃、《シルバークロス》。
ゼロからは光の粒子の奔流、《ワイドゼロショット》。
二人の必殺技が炸裂。
光刃と光線は衝突すると、凄まじいスパークによる対消滅とともに爆発が起きた。
その爆発を見止めると、手合わせは終わったとばかり、二人は同時に地面に降り立ち、そして同時に変身を解き、人間態へと戻った。
「腕は鈍っていないようですね、ゼロ」
「たく……グレンならともかく、お前まで鉄拳で伝えにくるとは思わなかったぜ」
傍目からは、とてもさっきまで拳を交わしていたとは思えぬ二人のやり取り。
実はこの二人、拳や足にテレパシーを込め、この世界に来てからのことを報告し合いつつ、攻撃していたのである、
文字通り、〝拳と拳の語り合い〟であった。
だだ、それを理論的に実行したのは、後にも先にもこの二人だけだろう。
「まあまあ、その拳から、あの子とは今停戦しているだけ、ということはよく伝わりましたから」
「ならいいさ、そろそろ外の状況を確認したいから、結界解くぞ」
勇夜は結界を解く。
竜巻に遭遇した後にも窺える荒れた惨状の森は、戦闘前の元の光景に戻って行く。
結界のおかげで、外界には被害の欠片も無い。
この時勇夜は、改めて魔法を覚えておいて良かったと、内心呟いていた。
リンクには彼女をゼロに授けたウルトラマン記憶を一部ながら有している。
その記憶によれば、そのウルトラマンが弱体化、あるいは力をセーブした形態であるネクサスという名の巨人は、地球では3分だけ外界と遮断できる異空間、《メタフィールド》を形成できる能力を持っているとのこと。
生憎ゼロには、その能力は受け継がれなかった。
その代わりが、この封時結界である。
ゼロの姿の時は、ウルトラマンの力を最大限発揮できる代償に、魔法は『殆ど使えなくなる』のだが、幸い結界はその『殆ど』から除外されていた。
「でも良かったのか?義妹(いもうと)さんだけに戦わせて、まだビギナーなんだろ?」
「はい……ですが魔法の非殺傷設定のような術を持たない身では、ロストロギアには迂闊に手は出せませんからね……破壊はともかく、封印するとなると、今の私では門外漢ですから」
今のところ、光はデバイスを持っていないこともあって補助魔法ぐらいしか使えないし、デバイスを持ってないと攻撃魔法を非殺傷に設定もできない。
それに……昨日のあの一件以来、よりジュエルシード収集に乗り気になったなのは。次は、自分にやらせてほしいと言ってきた………必ず封印させてみせると意気を見せながら。
もちろん当初は反対したが、それでもなのはは譲らなかった。
現状でジュエルシードを確実に封印できるのは、デバイスを持つ彼女だけ。
ならいっそ、ちゃんと実戦を経験させた方が良いと判断した。
危険への対処法は教えることはできても、『危険』がどれだけ危険なのかは、結局のところ、実際危険に遭遇しないと分からないのだ。
籠に閉じ込めてばかりでは、いつまでもそれを身に付けられない。
過保護過ぎる教育では、良い結果を生まないこともある。
「(光さん!直ぐに来て下さい!)」
とその時ユーノが念話で呼びかけてきた。
光のみへの念話だったが、勇夜は光の表情から事態を把握し。
「行ってやれ」
行ってあげるよう促した。
11年前より、言動や佇まいに落ち着きが見られるようになったゼロ――諸星勇夜だが、少し棘のある言動のオブラートに包まれた優しさと気遣いを見せる一面は変わっていないようだ。
「はい」
それに悦びを感じながら、光はなのはたちの許へ走っていった。
「広域サーチ、第四区画終了と」
その日の夜、アルフは海鳴市街の上空で、魔法陣を足場に立ち、ジュエルシードの探索を行っていた。
やり方は先日光が披露したのと同じ、僅かな魔力を全方位に放出して対象を探し出すソナー式。
『アルフ、お疲れ様』
一区切りついたところへ、フェイトから通信が入った。
「あ、フェイト」
『そっちの調子はどう?』
「じゃーん♪ 発動前のやつを、一個見つけたよ」
一方のフェイトは、噴水のある公園広場にいた。
結界で地元の人が来ないようにしているので、堂々とモニターを出してアルフとコンタクトをとっている。
「私は、子猫に憑りついたのを一つだけ…」
『そう…』
ジュエルシードは、相当かくれんぼが上手なようで、二人がこの数日で得た収穫は3個だけ……早く母さんのところへ、持って行きたいのに。
できればこれを全部、せめて最低でも多目に持ち帰れば、きっと自分の母は、遠い昔の頃みたいに。
焦りを抑えながら、フェイトは今日交戦した二人のことをアルフに話した。
『やっぱり…あの白い子と鏡から出てきたあいつは、グルみたいだね』
「うん……勇夜の言う通り、女の子の方は素人だったけど…あの鏡の戦士は強かった、手加減されたのに、負けそうになったし…」
『本当かい!? 怪我とかは! どこも何ともないの!?』
「大丈夫、傷とはついてないよ………多分……勇夜が……」
負けそうになったという発言に取り乱すアルフを、心配掛けまいとするフェイト。
実際鏡の騎士の手加減で、怪我らしい怪我は負っていない。
それが少し悔しいけど、それよりも、まるで騎士を自分から遠ざけるようにいきなり飛んできた光。
あれが勇夜によるものなのかは、はっきりしない。
聞いてみても上手くはぐらかされて、また一本取られて、恥ずかしい気持ちにさせられそう。
『勇夜が、助けてくれたってことかい?』
「どうなんだろう…よく分からないの、いきなり光が飛んで来て、騎士と一緒に消えちゃったから……」
けど………何でなんだろう?
勇夜が助けてくれたって……絶対そうだって……確証はないのに確信が……フェイトにはあった。
その頬も自身が気づかないほど、無意識のうちに緩んでいた。
目を覚ますと、見知った天井が目に入る。
まどろみを残しつつ、なのはの意識と思考能力が少しずつ覚醒して行く。
思いだした。八束神社の境内の森に現れた異相体のジュエルシードを巡って、あの〝女の子〟と話したいと思ったけど、攻撃されて…負けちゃったんだった。
『ごめんね…』
とどめの一撃を受ける直前、あの時確かに聞こえた……あの子の謝罪の言葉。
「なのは…」
ユーノが、心配の色を見せる眼差しでこっちを見ていた。
「光兄は…」
「念の為にって、見回りに行った」
「そうなんだ…あ…あと、憑りこまれちゃった動物さんは…」
「無事に元に戻ったよ」
「………良かった」
「あと…光さんが、今日はもう休みなさいって」
本当なら、直ぐにでも収集に出たいけど、言う通りにするしかないよね、もう夜だし、気を失ったんだし、休める時は休めって恭也兄ちゃんも良く言っていたし。
「うん……分かった…」
でも、あの子って……いったい。
どうして? あんなことしてるのかな?
なのはは無意識の内に、あの〝金髪の魔法使い〟のことで頭が一杯になっていった。
フェイトがこの世界での隠れ家的なマンションがあるのと同じく、 諸星勇夜ことウルトラマンゼロも、この地球での住居を借りている。
彼が借りたのは、よくCMに出てくるマンション。
家具家電が予め付いてきて、敷金礼金0、短期間での契約も可能だったので、ゼロにとって都合が良かった。
ちなみに戸籍とか言った個人情報はどうしたのかと言うと、裏技を色々使ったとしか今は言えない。
そして今ここには。
「CMの通り、本当に一通り揃ってるんですね」
高町光ことミラーナイトが、訪問していた。
「ここに感心するために、来たわけじゃないだろ?」
「そうでしたね」
勇夜は現状で分かった情報の交換と今後の対策を組むために、彼を呼んだのである。
「まずこっちから話すな、一応……フェイトがなんであれを集めているのかは、目星が付いてる」
「本当ですか?」
「ああ、あいつのお袋さんから頼まれた〝お使い〟らしい」
「それはまた……やけに物騒な〝お使い〟ですね」
今までジュエルシードが引き起こした事故、事件を反芻するだけでも、アレの危険性は身にしみて理解できたし、次元振が起きていないのが奇跡的とさえ考えてしまう。
「お袋さんの名前はプレシア・テスタロッサ、ミットチルダ、あっちの世界じゃ結構名の知れた技術者で魔導師、つまり魔法使いだったんだが……」
勇夜はフェイトの母が、件の魔導炉実験の事故をきっかけに失踪したこと、以前からフェイトにロストロギアを集める違法行為を強いていることなどの情報を、大まかに話した。
「しかし、娘さんを危険な目に遭わせてまで、そのプレシアという女史は何を……しようとしてるのです?」
「そこなんだよ………一番腑に落ちねえのは、ただな…」
「ただ?」
「ちょっと引っかかることがあってさ」
勇夜はジーパンのポケットから、コンパスに似た物体を取り出して、ボタンを押すと、縦に密着して並んでいた二つのスティックが展開し、3Dモニターが現れた。
見たところ、向こうの世界のタブレットPCだろう。
「プレシアはあの事故の時、娘さんを一人亡くしてるんだ」
「あのフェイトって子の……姉、ということですか?」
「……………とりあえず、これを見てくれ」
怪訝そうな顔で、タブレットのモニターに入力操作をすると、彼は画面を光に向けた。
ディスプレイに表示された写真を見た時、光はそれから目が離せなくなった。
「本当に……この写真の子は、そのアリシアなんですか?」
「ああ………」
光がモニターに釘付けになれている理由。
それは、画面に写っていたのが、どう見ても………■■■■にしか………見えなかったのだから。