ウルトラマンゼロ The Another Lyrical Story 第一章 作:フォレス・ノースウッド
読み直してみたら、最初に書いた当時の自分に「よくこんなの書けたな」と言いたくなった(汗
あれ? ウルトラマンとリリカルなのはを見に来た筈なのに? と思わざるを得ない第一話。
確かにそれ狙って書いてたんですけどね。
EP01 - 出逢い
とある世界からは、第97管理外世界と呼称される、ある宇宙に存在する青き惑星。
私たちには、『地球』と呼んだ方が馴染みがあるだろう。
その星の極東に位置する国―――日本。
満月の光に程良く照らされた市街地。
ここは〝この世界〟の日本での神奈川県西端に位置する地方都市で、名称は〝海鳴市〟。
その都市を囲むように隣接する山々の中の森の一画。
ほぼ全ての生物が明日の夜明けまで眠りにつく静寂につつまれた時間を破る者が、〝一頭〟と〝一人〟いた。
一頭の方は、熊であろうか?
黒い毛並みと、ずんぐりとした体格から見て、ほぼ間違いない。
どうしてほぼと付け加えたかと言うと、その姿は明らかに日本、否地球に生息するものと異なり、10メートル近くもある体躯、黒く禍々しい表皮と長い爪と牙、怪しく光る両目そして額には蒼く輝く菱形の宝石が埋め込まれていた。
「たく……よりによって地球(ここ)に落ちてきやがって」
その異形の熊と対峙している一人の方が、独特の艶を帯びた声色で愚痴を零した。
180近くある背丈、やや吊りあがった目尻と群青色の瞳、夜の闇より深く長い黒髪は肩辺りまで伸ばし、丁度耳と平行になる当たりの高さでポニーテールにまとめ上げ、黒いインナーの上にこげ茶色ジャケット、深い色あいのジーパンを着た外見は日本人寄りな黄色人種の少年。
目つきは、鷹などの猛禽類を思わせるまでに鋭く吊りあがり、ともすれば無愛想で近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、その顔つきは『イケメン』だとか『ハンサム』という表現では無粋と感じられるほど中性的で整われ、凛とした佇まいさえ感じられる。
やや細身ながら、バランスがとれ逞しく鍛えられた体つきで男性だと直ぐに分かるが、顔だけを見せられれば、確実に性別が判別できないくらい、長髪が良く似合う容貌である。
『愚痴を言っても始まりません、零牙(れいが)を使用しますか?』
一つ、訂正をしなければならない。
この場にはもう一人いた。
エコーがかかった成人女性の声をしたその『もう一人』が、愚痴た少年に語りかける。
「まだいいぜ〝相棒〟、こいつ程度なら素手で充分だ」
拳をバキバキと鳴らしながら、もう一人の問いに答える少年。
実は彼もまた、地球を含めたこの世界の生まれの人間では無い。
日本人、つまりは地球人の血も彼の体内に流れてはいるのだが、彼もまた、別の世界からの来訪者だった。
『了解』
そのもう一人の返事を合図に、異形の熊が体格に似合わぬ速さで少年に襲いかかった、普通の熊でさえ、人間よりも速いスピードとパワーを持っている。ましてやこの怪物の前では人の体は、一瞬で肉塊と肉片に果てるだろう。
死んだという自覚すらできないまま、気が付いた時には魂だけの存在となって天に召されるのが落ちだ。
それぐらい熊の攻撃は、豪快にして瞬速。
死を直に感じられないだけ、ましかもしれないが、生憎少年には天に召される気は微塵の欠片も無く、それどころか至極落ち着いた様子で、相手の連続で繰り出される爪の攻撃を最小限の動きで回避していた。
長身でやや細身な体躯から魅せる体捌き。
これだけでも人間離れしているが、彼は右手の上段から下ろされた一撃を回避しつつ、右足で自分を捉えようとした熊の爪を蹴り上げ、粉々に砕いた。
とても人間技では無い。
「このっ!」
そして左腕下段からの凶刃もかわし、カウンターの要領で放たれた手刀は、怪物の凶器の爪を粉々に砕きあげた。
もう一度だけ言う。ただならぬ威力をこめた『ただの手刀と蹴り』で、彼は怪物を圧倒したのである。
怪物は悲鳴をあげながらも、爪がダメならばと握りこぶしからの豪腕で襲いかかるが、少年はそれすらも難なく回避しながら、怪物の鳩尾に重い正拳突きをぶつける。
さらに、人間ではワイヤーなどのサポートを使わなければ不可能な高さ、およそ10メートルまで飛び上がり、空中からの回し蹴りを怪物の貌に叩きこむ。
直に蹴りと言う名のハンマーの一撃を当てられた熊は、回転しながら宙を舞い、地面に叩きつけられる。
常識外れの度合いにおいては、むしろ人間離れした少年の方が勝っていた。
それでも一度地に伏せられた怪物は、態勢を立て直し、少年に威嚇の雄たけびを上げる。
「ふっ……結構タフじゃねーか」
少年は大しては動じることも無く、むしろ不敵に笑いながら親指で鼻をこすった。
彼がこの『世界群』に迷い込む以前から癖にしている所作。
怪物が咆哮を上げ、殺気をぶつけながら正面から突貫してくる。
少年も同タイミングで走り出す。
ほぼ同時に地面を蹴ってジャンプする両者。
怪物は豪腕と、それがダメなら牙による二段構えで、少年を捉えようとするが…
「でえぇぇぇぇぁぁぁ!!!」
その前に少年の飛び蹴りが、相手の胸部に炸裂。
空中でもろにくらった怪物は衝撃で10メートルほど吹っ飛ばされた。
「零牙、ガンモード」
降り立った少年は左手を前に翳してそう呟くと、左腕にはめられた腕輪から、眩い青緑色にそまった光の粒子が溢れだした。
粒子は少年の周りを何周かすると、少年の右手に集まり、一瞬の発光の後に粒子は形を為した。
現れたのは拳銃。木製のグリップと撃鉄の形からリボルバーに似ていなくもないが、地球で生産されているものより銃口は大型で無骨、銃身も長くて分厚く、シリンダーの代わりに青く光る角が丸みを帯びた菱形の青緑色の光を照らす輝石が付けられた、単発中折れ式型の漆黒の拳銃へと姿を変えていた。
「リンク、カートリッジを」
『了解』
声を発す腕輪から、USBにも見える掌に置けるサイズの長方形型のカートリッジが出現。
それを中折れした拳銃に装填。
「カートリッジロード!」
銃口を怪物に向け、構える少年。
同時に彼の足元に、文字が書かれた青緑に輝く円陣が現れ、拳銃の銃口に光が球状に集まっていく。
「とどめだ………ジュエルシード封印、マグナムシュート―――ファイア!!!」
少年は段階的に声量を上げながら、引き金を引いた。
銃口から飛び出した光と言う名の弾丸は、正確に怪物の額に命中。
止めの一撃を受けた怪物は仰向けに転倒すると同時に苦しげに声を上げると、額を中心に閃光が走った。
視界を奪う白銀の光が消えると、怪物がいたところには幼い小熊が、あわててその場から逃亡し、小熊を怪物に変えた元凶であるその宝石は、枯葉が溢れる地面に転がっていた。
「災難だったな…」
怪物にされて暴れていたのはこの小熊、さっきまで相対していたその小熊の身を案じつつ、少年は菱形の形状をした青白い宝石を拾い上げ。
「リンク」
『了解、Internalize No’4』
宝石は拳銃を出現させた腕輪へと吸い込まれた。
『お見事です、マスター勇夜』
「どうってことねえよ、腕試しにもならない相手だ」
『油断大敵ですよ』
「分かってるさ」
少年を褒め称える『この場にいたもう一人』である、少年からリンクと呼ばれた腕輪に対し、腕輪から〝勇夜〟と呼ばれた少年は、謙遜しつつも皮肉げに返した。
実は彼、いわゆる〝魔法使い〟という肩書を持っている。
そして左腕に装着している腕輪と右手に持っている拳銃が、彼専用の『魔法の杖』、と言えよう。
尤も、腕輪の方は、一応だがこちらの平行世界に来る前からの付き合いである。
「残りの20個も、全部ここらに落ちたのか?」
『はい、正確な位置までは把握できませんが、おおまかな落下地点はこの『神奈川県海鳴市』付近一帯で間違いありません』
「まあ、バラバラに落ちてもらうよりは探しやすいけどさ、先に地球に行ったっていうスクライアの坊主君は明日探すとして、今日はもう―――」
帰るか―――と言おうとした時、彼は咄嗟に左腕を横に伸ばし、手を広げ翳した。
彼に向けて、稲妻を纏った光の矢が、少年に奇襲をかけてくるが、左手の掌から発生した半透明の光の壁に阻まれる。
稲妻と半透明の障壁(バリア)の拮抗する押し合い。
その押し合いの後、稲妻は根負けして四方に拡散し消滅した。
少年、勇夜は矢が放たれた方角に、目を向けた。
「渡してくれませんか、今あなたが手にしたものを…」
光の矢を放ったのは、少女だった。
まだあどけない、外見から判断して、齢10~11歳ほどの少女。
容姿から見て、明らかに日本人ではないのは確か、金色の髪をツインテールにまとめ、瞳はアルビノ――色素欠乏症な色白の人間よりも鮮やかな紅(あか)に染め上がっている。
着衣しているのは、ともすれば水着に見えそうな袖なしの黒い着衣とピンクのミニスカート、肩には魔法使いを連想させる黒いマントを纏っている。
こんな奇形な恰好でも似合ってしまうほど、容貌は美少女の領域において上方に位置していた。
少年よりも〝魔法使い〟の趣がある………実は本当に彼女も魔法使いではあるのだが。
黒色のグローブをはめた右手が握っているのは、少女の魔法の杖だろう。
ただ、大方の人間がイメージするのとは違い、それは彼女の髪と同じ色をした円形の宝石らし光沢が埋め込まれた、全長が彼女の背丈に匹敵するほどの長さを持った――――漆黒の武骨な斧だった。
少女の横には、同行者が一人いた。
オレンジがかった長髪の10代半ばの少女。
グラビアアイドル顔負けのスタイル。
胸元と下腹部、太ももと、惜しげも無く恵まれた体つきをくっきり見せる服装と顔つきから、物静かそうな黒衣の少女と好対照に、勝気そうな少女である。
だが彼女には、普通の人間なら絶対に見られない特徴が存在した。
犬、むしろ狼か、日本では固有種が絶滅したその肉食獣を連想させる髪と同じ色の耳と尻尾、口元には月光で反射される艶めいた犬歯、そして額には赤く丸い光沢が埋め込まれていた。
実は彼女、純然たる人間では無い。
いわば、魔法使いである黒衣の少女をサポートする生命体――〝使い魔〟。
先程の不意打ちといい、今の彼女たちの態度といい、どうやら穏便に済ますという選択肢は、端から皆無だと少年は感じ取る。
「誰だあんたら? 〝管理局〟の連中……じゃねえよな」
少年は少女に問う。
だが目的は聞くまでもなく把握できていた。
彼女たちが求めるのは、今自分が手にした宝石。
「今あなたが手にした『ジュエルシード』を、私たちに」
やはり、少女が目的は〝ジュエルシード〟を手に入れること。
「へぇ~…こいつの正体が何なのか知ってる上で、欲しいってのか?」
「どうしてもそれが必要なんです、さもないと………」
「なら………………もし俺が…………『嫌だ』と言ったら?」
「力づくでも奪います、バルディッシュ!」
フェイトは静かに、それでいて確かな意志の籠った真紅の瞳で少年を見据えると、バルディッシュと呼んだ杖を正眼に構え。
『Scyth Form』
フェイトがバルディッシュを称する?魔法の杖?から発せられたエコーがかかる男性の低音な発声と共に、バルディッシュの斧の刃が15度展開され、そこから金色の光の刃を発生する。
彼女の杖は、斧から巨大な鎌へと変わった。
黒く染まった装飾とマントと相まって、その姿は正に〝死神〟だ。
刃を向けられ、意思を持つ腕輪から〝勇夜〟と呼ばれた少年も、彼女たちとの戦闘は不可避と悟ったのか。
「零牙…ブレイドモード」
右手が握る拳銃が、先程と同じ光の粒子になり、やがてそれは、一振りの日本刀らしき漆黒の鞘に入った剣へと変わった。
らしきと付け加えたのは、日本人がイメージする刀と微妙に異なるからだ。
柄と呼ばれる持ち手は、彼が着用しているこげ茶色のジャケットと同じ色をした木の紋様と、まるでオートマチックの拳銃の木製グリップのような手にフィットする形状を形作り、鍔と呼ばれる部分は黒色でやや太めで厚みがあり、左右対称になる形で、丸く青白い光沢が二つ埋め込まれていた。
それでも、今は鞘に納められて隠れている反りの入った刃は、間違いなく刀そのものだった。
少年は刀に変えた得物を、居合の態勢で構え、少女と対時した。
二人は、お互いを注視し、武器を構えたまま微動だにしない。
「フェイト…気をつけて」
獣人の少女アルフが、彼女に忠告する。
「…大丈夫」
この時の彼女たちは勝算があると踏んでいた。確かに相手から発せられる気迫と魔力は尋常じゃない。
でも相手は剣を鞘に収めたままだ。
そして、死神の如き少女のスピードをもってすれば、負けない。
絶対に負けはしない、自分にとっては家族なあの人から叩きこまれた魔導は、今まで大の大人が相手でも圧倒してきたのだ。
そして、絶対に負けられない。今少年が手に持っているのを含めて、自分たちはあれを全て手にしなければならないのだから。
瞬間、さきほどの『ジュエルシード』と呼ばれた宝石で凶暴化した小熊の比にならないスピードでフェイトは少年に踏み込み。
相対する少年に金色の魔力の鎌の一撃を振るう―――――――はずだった。
少年を捕らえるはずだった杖はいつ抜いたか、全く視認できないほど、彼女のスピードよりのさらに速く抜刀した、青空を連想させる雲のような模様と白みがかった光を放つ彼の刀の刃の一閃で、彼女の魔法の杖は、真っ二つに切りさかれた。
少年の一撃必中の剣閃に、フェイトは為す術も無く、その場に倒れこんだ。
勝負は、余りにも一瞬の内に終わった。
「てめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーー!!!」
その光景に激昂したアルフは、主たる彼女を呆気なく切り裂いた剣(やいば)を手に持つ少年に向け、怒りのままに突進して行った。
これがある種の運命の出会いであることは、この時の両者には知る術も無い。