ウルトラマンゼロ The Another Lyrical Story 第一章   作:フォレス・ノースウッド

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みなさん、特にリリなのファンな方々ならお待ちかね。
なのはの名言が出る回です。
やっぱこれをちゃんと入れないとね、フェイトは救えませんよ。
なのはがフェイトの出生を既に知っているという大改編が挟まれましたけど。
まああの子はフェイトがクローンだとしても気にせず接することができる子ですが、やっぱ真実を知って悩むを描いて見たかったんです、原作じゃ切迫した状況だったからそれどころじゃなかったからね。

あと、海上での戦闘場面では、ガンダムUCの劇半曲である『RX-0』を聞きながら読むのをお勧めします。それ聞きながら書いたもので。
イベントでの生演奏verですがURL→http://www.youtube.com/watch?v=7WbHX5QjVIE


EP22 - 海上の決戦

 6個のジュエルシードの強大な魔力を有す天へとそびえ立つ一頭の海の竜巻を前に、フェイトは防戦一方。

 体内の魔力は強制発動に使ったサンダーフォールで体力とともに枯渇し、新たに魔力素を取り込む余力も無い。

 当然、遠距離から封印の術式を込めた飛び道具は使えず、飛行速度もいつもよりキレに欠け、渦から放たれる水の鞭を回避するだけで精一杯、踏み込んで切り付けることすらままならない……気を抜けば、強風で姿勢制御すら崩されそうだ。

 

「フェイトォォォォォ――――――――!!!」

 

 アルフも風と鞭の猛撃にフェイトと引き離され、サポートすら叶わない。

 完全に活路が断たれたかに見えた。

 その刹那、薄暗い曇天の合間から、光が溢れ出る。

 積乱雲が起こす雷、ではなかった。

 降り注ぐ桜色の眩い光に、アルフとフェイトは釘付けになった。

 そして、雲と光の隙間から、降りてきたのは、桜色の光を纏った、あの白い魔道師の女の子。

 陽光を浴びた白装束のバリアジャケットを纏うその姿は、正に天使。

 

「フェイトの邪魔を……するなぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!!」

 

 アルフは舞い降りた白の魔導師へ、拳を振り上げ突進。

 フェイトの消耗が著しいこんな時に、管理局と手を組んでいるであろう彼女が現れたので、てっきり妨害しに来たのかと思っての行動だった。

 

「(落ちつけアルフ)」

 

 そこへ脳裏に響く、聞き覚えのある声に飛行速度が緩む。

 直後、アルフの目の前に出現した魔法陣から勇夜がこの場に転移し、彼女の拳は彼の掌に受け止められた。

 

「勇夜!?」

「いがみ合ってる場合か? このままじゃお前もフェイトもお陀仏になるぞ」

 

 勇夜の忠言で冷静さを取り戻すアルフ、確かに自分たちだけではあの異相体の竜巻を止めるには無理がある。

 自分では大掛かりな儀式魔法は使えないし、フェイトも体力も魔力も搾り取られてしまった。

 

「僕たちは戦うために来たわけじゃないんです!」

「今は拳を引いて下さい、戦闘なら異相体を止めた後でもできるでしょう」

 

 アルフの懸念を頷けるように、光とユーノが呼び掛けた。

 ちなみに、初めて実戦でデバイスを起動した光は、勇夜より明るい色のジーパンと、ミラーナイトと同じカラーが塗られたジャケットを羽織っていた。ファスナーを襟まであげているあたり、彼らしい。

 そしてその手に持つのは、緑が主な配色の鍔無しの二振りの小太刀。

 シルバーライトの基本形態、ショートセイバーモード。

 

『全く、何をやってるんだ君たちは!?』

 

 通信でクロノの声が響いた。案の定独断専行されたことに、変声期前の中性的な声は少し強く張りがあり、苦言の色が混じっている。

 

「ごめんなさい!でもほっとけないです!! ジュエルシードも! フェイトちゃんも!!」

 

 なのはは丁重に謝罪しつつも、フェイトを助けたいという強い想いを口にする。

 

「悠長に待ってたら手遅れだって言っただろ、ここで結界が消えたらジュエルシードが起こした津波で街を呑みこんじまうだよ!」

 

 勇夜、光、ユーノの三人も、理屈じゃない想いを内に秘めていたが、一方で理性的判断も以てこの場に来ていた。

 確かにジュエルシード6個相手に無謀な手段を押し通そうとしているフェイトを御用にするには、自滅するまで待った方が合理的ではある。

 だがフェイトはおろか、アルフまで消耗させてしまえば、結界の維持は困難となり強制解除、そうなってしまえば、異相体の竜巻が海鳴市街に襲いかかるのは確実だ。

 それを判断した上で、彼らはなのはの背中を押しつつ急行したのだ。

 

「………」

 

 なのはの押しの強さと、勇夜の筋の通った返答を前に、さしもの堅物君なクロノも、言い返すことができなかった。

 人命を救うのは局員の使命としている彼から見れば、勇夜たちの行為は命令無視だが、同時にこの状況に於ける判断としては間違っていなかったからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな勇夜たちの遣り取りを、呆然と見ていたフェイト。

 敵は、満身創痍でもある彼女が見せた隙を逃さなかった。

 

「フェイトちゃん! 後ろ!」

 

 渦から放たれ、遠心力を相乗して振るわれる海水の凶刃が、フェイトを捉える寸前。

 

「この!」

 

 勇夜は刀身にディファレーターパワーを纏わせた零牙による一閃――オーラ

セイバーで横薙ぎに両断した。

 オーラセイバーは非殺傷等の利便に富む魔法か、今間一髪フェイトを救えた様にタイムラグをほとんど挟まず発動できるディファレーターと、状況に応じて使い分けられる技だ。

 斬撃による衝撃と熱で、水蒸気を上げ四散する水製の鞭。

 飛び散る水玉を浴びながらフェイトは勇夜に視線を送った。振り向いた彼は目線を送る返すだけで何も答えない、でも彼がフェイトを助ける理由は分かっている。

 約束。フェイトが、自身の魔法を以てしてもどうにもならなくなった時は、必ず助けるという、彼の誓い。

 口にせずとも、それを勇夜は、今でも当たり前のよう実行に移していた。

 熱い……ウイルスに感染しているわけでもないのに、彼を意識すると、頬が胸の奥が、奇妙な熱に晒された。

 そして、またこうして来てくれたことが、堪らなく………却って戸惑う程に、嬉しくなる。

 まだこの時のフェイトには、その気持ちの正体が、全く分からずにいた。

 

 

 

 

 

「まずはジュエルシード止めないと……放って置いたら融合して、手の付けられない状態になるかもしれない!」

 

 ユーノの言う通り、ジュエルシードの輝きは増し、渦巻きとそれによって誘発される波の勢いも凶暴さを増していた。

 

「封時結界!」

 

 外への影響を完全に遮断すべく、ユーノはフェイトの結界の内側にもう一幕結界を生成した。

 これでもう暫くは外への被害は回避される。

 

『融合による次元振発生まで、後およそ10分です』

 

 異相体の状態をスキャンしていたリンクが、最悪のシナリオがスタートを切るまでのタイムリミットを導き出した。

 10分、父ら先人たちの地球での激闘に比べれば、充分な時間だ。

 

「光とユーノとアルフは奴の動きを止めろ! 三分割に切り分けてな!」

「了解!」

「はい!」

「ゆ、勇夜?」

 

 あたかも普通のことのように、アルフにも指示を出してきた当惑気味だ。

 

「力を貸してくれ、頼む!」

 

 戸惑うアルフに、勇夜は念を押して願い出る。

 いくら自分でも一度に6個全部を一度に封印するには無理がある。

 かといってウルトラマンになって破壊するわけにはいかない。そんなことすれば、先日に引き起こされたのと比べ物にならない規模の次元振を発生させてしまう。確実にこの世界の地球が空間の歪みに捻じ切られ、そこに住む生命たちごと消失することになる。

 この状況をどうにかするのは、ここにいる6人全員の力が必要なのだ。

 勇夜の端的だけど、必死で切実さが籠もった言葉が功を奏したのか、アルフは顔に戸惑いを残りつつも頷いた。

 

 

 

 

 

「フェイトちゃん手伝って! ジュエルシードを止めよう、勇夜さんと一緒に」

 

 一緒に手伝ってほしいと言ってきたなのはに対して、フェイトはまたも面喰う。

 

『Divide Energy』

 

 なのははディバイトエナジーでレイジングハートからバルディッシュのコアに魔力を送り。

 

「メディカルパワー」

 

 勇夜の掌から、様々な暖色に彩られる小さな光球たちによるシャワーが彼女に注がれる。

 メディカルパワー、生命力を活性化させるウルトラマンとしての治癒技だ。

 疲労による体の重荷がみるみる抜けていき、体内に魔力が戻っていく感覚をまじまじと知覚するフェイト。

 

『供給完了』

 

 バルディッシュの応答とともに、消えかけていた魔力が回復。

短くなってきた魔力刃も、元の長さに戻った。

 

「光兄とユーノくんとアルフさんがサポートしてくれるから、今のうちに、大丈夫、私たちなら、一緒なら、きっとできるよ」

 

 なのはの言う通り、未だどうするべきか惑い漂うばかりのフェイトをよそに、状況は動き出す、荒波を止めるべく尽力する者たちによって。

 

「チェーンバインド!」

 

 先手はまずユーノ、掌から出現した魔法陣から魔力で形成された翡翠色の鎖を解き放ち、異相体を縛り付ける。

 だが相手も大人しくする気は毛頭なく、鎖を解き放とうともがき続ける。このままでは力負けするのはユーノの方だ。

 

「ぐっ! このままじゃ…」

「ストラグルバインド!」

 

 そこにアルフもバインドを形成し、その抵抗を抑えつけた。

 彼女の使ったストラグルバインドは、捕縛した対象の魔法効果を弱らせる効果がある。

 ジュエルシードのパワーを弱体化させるには持ってこいな捕獲魔法、その分拘束力はお世辞にも強いと言えない弱点があるが、パワー不足はユーノのチェーンバインドが補うことで互いをカバーしていた。

 

「行きますよ、ライト!」

『御意、ミラーリング』

「ハァァァ!」

 

 光はライトの刀身から、CD型の魔力カッターを形成して放つ。

 ウルトラマンの切断光線、『八つ裂き光輪』を参考にした斬撃魔法、『ミラーズリング』だ。

 二振りの刀身から発した二つの刃は、幾重にも分身。

 バインドに縛られたジュエルシードの荒波を三分割に切裂く。

 融合寸前だった異相体の波は一体から三体にジュエルシードごと枝分かれし、融合妨害による弱体化でその勢いを一気に弱めた。

 ユーノとアルフは、もう一度バインドを張り直し、再融合を図る異相体の行動を阻止すべく力を強めて縛り上げる。

 それでも分散されたことで力が弱まっているので、さっきよりは動きを封じやすくなっていた。

 そして光は追い打ちに。

 

「まったく騒がしい方々ですね、少しは落ち着いたらどうですか?」

『シルバーウェイト』

 

 異相体の真上に、彼の防御技、ディフェンスミラーを彷彿とさせる輝く十字架を形成、それが幾重にも降り注ぎ、突き刺さる。

 周辺に特殊な重力場を作る光剣――《ミラーウェイト》を元にした彼独自の魔法――《シルバーウェイト》だ。

 

「デュア!」

 

 勇夜はウルトラゼロアイを装着してゼロに変身、左腕をスライドさせ、両手をL字に組んだ。

 

「そろそろ大人しくしてもらうぜ、ブリザードワイドショット―――デェア!」

 

 右腕の側面から、ディファレーターエネルギーを青白い冷凍光線に変換させたワイドゼロショット――《ブリザードワイドショット》を発射、三体の異相体の渦の根元を素早く氷結させた。

氷の糧を壊そうにも、ユーノたちのバインドと、光のシルバーウェイトによる重力波が阻みとなり、その上ゼロのダメ押しで異相体の動きがさらに鈍化、先程までの荒ぶる勢いは失速して見る影もない。

 四重の拘束で、波も風も、身に降りかかる圧力が一気に弱体化した。

 今が、封印するのに絶好のチャンス。

 

「フェイト、なのは、1人2つの割り当てで封印だ、行くぞ!」

「はい!」

 

 人間体に戻った勇夜となのはの足元に、それぞれの魔力と同色の魔法陣を生成され。

 

「零牙、アローモード!」

 

 リンクから弓形態の零牙を取り出した勇夜は、弦を引き。

 

『Mode change, Canon Mode』

「ディバインバスターフルパワー、行けるね?」

『当然です、我がマスター』

 

なのははレイジングハートを砲撃形態に変え、パートナーのトリガーに指をかけ標的に向かって狙いを定めた。

 

 二人は大技を解き放つための、膨大な魔力エネルギーを、愛機に集束させていく。

 特に言葉を交わすまでもなく、連携をとる一同にただ一人立ち尽くしたままのフェイトの現況を破るかの如く。

 

『Glave form, set up』

「バルディッシュ?」

 

 普段は寡黙だが、フェイトからの指示には従順なバルディッシュが勝手に形態を変えたのである。

 どうして、勇夜とあの女の子が自分を助けて、語りかけてくるのか、まだ分からない。

 けど………勇夜たちが折角チャンスを作ってくれ、バルディッシュも後押ししてそれに応えようとしてくれるのなら、無駄にはできない。

 

『Thunder Rage』

 

 フェイトも足下に魔法陣を敷き、自身の大技を放つために雷撃に変換された魔力をチャージする。

 収束された魔力は、大きさと輝きを増していき。

 

『『チャージ完了』』

 

 二機のデバイスの声が見事に重なり、全く同じタイミングで三人の魔力

チャージが完了される

 

「今です!」

 

 光の言葉が合図になり。

 

「ディバイィィィィィン!」

「サンダァァァァァァ!」

「バニシングスピアー―――」

 

 三人は同時に撃ち出す。

 

「バスタァァァァァァァァァァァーー!」

「レイィィィィィジ!」

「貫けぇぇぇぇ!」

 

 なのははレイジングハートの引き金を引き。

 フェイトはバルディッシュの刃先を魔法陣に突き立て。

 勇夜は零牙の弦と引き絞った魔力の矢を離して。

 必殺の一撃を解き放った。

 溢れる桜色の魔力光が、広範囲に迸る金色の雷が、燦燦(さんさん)と輝いて大気を裂き、突き進む青緑色の矢が、災厄を巻き起こす宝石を呑みこんでいく。

 6個のジュエルシードは、一斉に眩過ぎるな光を発して、活動を停止していった。

 

 

 

 

 アースラのモニターに映ったのは、青い閃光の後に活動を停止したジュエルシードだった。

 

「凄い……6個全部を完全封印」

 

 エイミィは、オペレートの仕事をこなしつつも感嘆の声を上げる。

 

「凄いわ…」

 

 ハラオウン親子も、クル―たちも驚きを隠せず、。

 一発で封印させた彼らのパワーもあるが、何よりも敵対している身同士でありながら、それぞれの役割を分担して事態を収束したその手際の良さに驚嘆を隠せなかった。

 特に裏の功労者を上げるなら、諸星勇夜ことウルトラマンゼロ。本人は自分の立ち位置を一番〝中途半端〟と自虐していたが、結果として双方からの信頼を得て、立場では敵対する間な者たちを共同戦線に誘わせたからだ

 無論、あの状況で〝一人〟でも欠けていたら、ここまで迅速にジュエルシードの暴走を食い止められなかっただろう。

 海上に〝6人〟全員が集っていたからこそ、可能にした離れ業だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 海は静寂を取り戻し、雨も風も止み、雲の合間から太陽光が降り注ぐ。

 先程の荒れた光景から一転して、穏やかなものになっていた。

 

「勇夜さん…」

「宿題の答えはできてんだろ?なら 言ってやれ」

「……………はい」

 

 そう……勇夜――ゼロから出された宿題。

 その自分なりの解答がようやく定まった。

 自分が一人だと思ってたあの頃に、光兄が教えてくれたこと。

 勇夜さんが自分に宿題を出した時、ヒントを既に出してくれたこと。

 なのはは、真っ直ぐフェイトに向き合う。

 余りの真っ直ぐにフェイトへと送られる瞳に、受けてたる彼女はどう応じればいいか困惑した表情を浮かべていた。

 

「フェイトちゃんの抱えてることに比べたら、私は恵まれているのかもしれない、甘ったれた…我儘な子なのかもしれない、でも、今伝えたいの、ジュエルシードは……どうしても譲れないけど……私は……フェイトちゃんと―――」

 

 自分の想いを打ち明ける。

 喩え歪な生まれ方をしていても。

 心を押し殺して戦っていたとしても。

 自分がその子より、暖かな家庭で育っていたとしても。

 それでも、目の前の悲しみを背負ったこの女の子を助けたいから。

 だから―――

 

「―――友達に……なりたいんだ」

 

〝この子と、分けあいたい〟

 寂しさや悲しみを共有し、自分が持っている喜びや温かさを分けて、少しでもフェイトの抱える重みを和らげて、支えてあげたい。

〝友達〟―――として。

 雲の隙間から注がれる太陽光を受けて、想いを伝えたなのはの姿を、フェイトは目を大きく開かせて、じっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 だがなのはが想いを告げるために用意された静寂は、糸も簡単に破られる。

 最初に異変を察したのは勇夜と光……本能が自分たちに危険が迫っていること呼び掛けてくる。

 まさか! そして次なる異変。

 

『次元干渉? 別次元から本艦及び戦闘空域に高次魔力来ます! あ、あと六秒!?』

 

 通信から響く、エイミィからの無情な宣告。

 

「母さん…」

 

 フェイトは、その宣告を遂行する元凶の名を読んだ。

 黒く染まった空から、紫色の稲妻が降り注ぐ。

 

「動かないでください!」

 

 それが当たる寸前に勇夜と光は互いのエネルギーを合わせて巨大な長方形のバリアを貼り、雷撃を防いだ。二人がそれぞれのバリアを合体させた防御技――《ディフェンスミラーゼロ》の魔法版だ。

 

(フェイトと同じサンダーレイジだが……)

(威力は彼女のより…遥かに…上)

 

 巨大な雷撃の龍に押しこまれながらも、なのはたちを巻き込ませないと二人は必死に耐える。

 第一射はなんとか持ちこたえた。

 だが、間髪入れず、まるで勇夜たちをジュエルシードから引き放すように、最初の一撃よりは弱目だが、さらなる雷撃が降り注ぐ。

 果断無く振ってくる雷に回避に専念するしかない一同。その間にアルフは、ジュエルシードに目がけて飛んだ。

 しかし、その目前に。

 

「これを渡すわけにはいかない!」

 

 クロノがアルフの眼前に転移をして立ちはだかった。

 

「じゃまを…」

 

 アルフは激情のままクロノの腕を掴み上げ。

 

「するなァァァァァァ!」

 

 投げ飛ばした。

 その隙に回収しようとするが… 三個だって!?

 浮遊するジュエルシードは、先程の半分しか残されていなかった。

 なら残りはまさか……クロノを投げ飛ばした方に目を向けると、クロノの手には消えた残り半分の三個があり、デバイスに収納していた。

 

「ちくしょう!」

 

 アルフは海面に魔力弾を撃ち込み、水柱で目くらましをし、母のとった行動に立ちつくしているフェイトを連れて逃げ去っていった。

 その時はアースラも攻撃を受け、システムが一時ダウンし、逃亡した先を特定することも断念せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

 

「グォホォ!」

 

 災害クラスの雷を降らせた元凶。

 プレシア・テスタロッサは時の庭園、玉座の間で多量の血を吐いた。

 吐血は止まったが、息は荒く、短いサイクルで呼吸が繰り返されている。

 

「もうこれを使うのも…限界かもしれないわね」

 

 彼女の右手には、〝怪獣使いのアイテム〟と類似した補助デバイスが握られている。

 そして左手は、吐血した血液で、赤く染まっていた。

 こんな汚れた手で………〝あの子〟を取り戻そうと、もう一度会いたいと考えるなんて………今となっては、なんて愚かだったのかとしか言いようが無い。

 ここに来て今さら、あの子との約束を思い出すなんて……なんと間が悪い。

〝てめえの下らないエゴのために、フェイトとアリシアを弄んでんじゃね!〟

 そうね……わたしは娘の為と言いながら、結局自分のことしか考えず………〝子どもたち〟を不幸にさせてばかりだった大悪党。

 大事にしていたのに、忘れてしまい、それに気づくのがいつも遅すぎる愚者………ならせめて、〝悪女〟の極みな自身にできることと言えば、やはり。

 

 

 

 

 

 

 

「指示や命令を守るのは集団を守るためのルールです。勝手な判断や行動があなたたちだけでなく、周囲の人たちも危険に巻き込んだかもしれないということ。それはわかりますね?」

 

 アースラ内の会議室、ここでは艦長のリンディ・ハラオウンが、命令無視をして独断行動をとったなのはたちを、厳しい声色と口調で咎めていた。

 リンディの横にはクロノがおり。無論、光も勇夜もこの場に同伴している。

 

「「はい」」

 

 大小問わず、組織に属することは、同じ組織内にいる同士と一心同体かつ一蓮托生となる。

 生きるも死ぬも―――は言い過ぎかもしれないが、一個人の独断が全体を巻き添えにしてしまう結果を生み出しかねない。

 

「艦長……責任は自分たちにあります」

「この子たちを煽ったのは俺たちだ、余り責めないでくれ」

 

 勇夜と光は、少女たちの独断が自身が起こしたものと強調する。

 理屈を超えた想いで動いたなのはと違い、この世界に来る以前から、二人はある意味社会人として、組織に身を置き、その運用についてはある程度理解を及んでいるいたからだ。

 その為最初から、罰則を受けること覚悟して、彼らはあの場に臨んだ。

 

「待ってあなた達、確かに本来なら厳重に処するところですが……融合暴走と地球に多大な被害が及ぶ危険性があったということも鑑みて……」

 

 とは言え、あのままフェイトが生き倒れるまで静観を続ければ、ジュエルシード同士が融合して、最悪の中の最悪の場合、以前海鳴市街で起きたものと比較にならない次元振を引き起こしかねず……最悪地球が太陽系から消滅してしまう事態になってもおかしくなかった。

 結果的ではあるが、組織の『最善の選択』が『最悪の結果』を生む皮肉的な結末は免れたのである。

 

「よって今回は、特別に不問とします」

 

 処分は無し、という判断になのはとユーノは頬が緩みそうになったが。

 

 

「ですが……正式な局員であったなら、罰則は免れなかったことはご理解して頂くように」

「はい……すみませんでした」

 

 続けてリンディから釘を刺され、特になのはは縮こまった。

 

「(みんな、ごめんなさい)」

「(なのはが謝る必要はありません、むしろ私たちが頭を下げる方です)」

「(気にするな、命令違反は事実だけど、お陰で海鳴市も救えたんだからな)」

 

 しゅんとする彼女に、光らはフォローを入れた。

 

「エイミィ、犯人に関する情報を出してもらえる」

『はいはーいっ♪』

 

 クロノの指示で別室にいるエイミィが卓上に3Dモニターを表示させた。

 その映像の中にプレシア・テスタロッサの画像があった。

 この人が…フェイトちゃんのお母さん…勇夜から、フェイトの出生もプレシアがフェイトに対して行っている所業諸々は聞いていたが、今表示されている写真からはとてもそんなことをする人物には見えない。

 だが…数時間前の海上での出来事を思い出す。

 

〝母さん…〟

 

 あの雷撃が落ちる瞬間、フェイトの顔は間違いなく恐怖に染まっていた。

 それだけ日頃、この人から手痛い目に遭っているということだろう。

 と言うことは今頃彼女は………母の暴力を無抵抗に受けて、ひたすら耐えているフェイトの姿を、なのはは思わず想像してしまった。

 なのはは拳を握り、やるせない気持ちになる。

 あの子はただ……母親に笑ってほしい、ただそれだけ、それだだけなのに……でもそんな願いでも、ジュエルシードはまともに応えてはくれない。

 

「まあこのプレシア・テスタロッサとフェイトさんに関することはもう粗方勇夜君から聞いているのよね?」

「「はい」」

「で、勇夜君、新しい情報が手に入ったから、こちらに来たのでは無くて」

「まあな」

 

 勇夜はリンクから、彼女に収納されていた茶色のトランクを取り出した。

 

「勇夜さん、それは?」

「あの親子に関する重要な文献が入ってる」

「どう言うことですか?」

 ユーノが勇夜に問うてくる。

 

「フェイトには、母親代わりに育ててくれた人がいてな、これはその人が残した代物さ」

 

 勇夜の言う通り、後にこのトランクはこの事件における重要な証拠物件となる。

 

 

 

 

 

 扉一つを隔てて、狂気に彩られた女の怒声と、鞭が人体に叩きつけられる音と、痛みに呻く少女の声。

 

「あれだけの好機を前にして、ただぼーとしているなんて……ひどいわフェイト」

「ごめんなさい………母さん」

 

 聞きたくない音と悲鳴に目を閉じ、耳を塞ぎ、体を屈ませながら、アルフは玉座の間へと繋がる扉の前の床で座っていた。

 なのはの想像通り、フェイトは今理不尽な『躾』を今まさに受けている。

 鞭が弾かれる音と、悲痛な叫びを耳にするたび、アルフの心も、容赦無く痛めつけられていく。

 確かに残りの6個全部を持って行くことはできなかった。

 でもだからって……そんなにアリシアに生き写しのフェイトが憎いのか?

 今までは、フェイトが引きとめてくれたから、なんとか我慢してきたけど…もう……今度という今度は……限界だ。

 拳を引っ込めることは、もうできない。

 悲鳴と鞭の音がやみ、あいつの足音と扉が閉まる音が聞こえた。

 アルフは、あの時勇夜がそうしたように、拳を引いて力の限り殴り付ける。

 重く分厚い扉が開く。

 部屋の中は、前の勇夜との戦闘で受けた傷跡はまだ癒えず、中央には、全身痣だらけで、バリアジャケットもボロボロの………フェイト。

 

「フェイト!」

 

 アルフは傷だらけの彼女を抱える。

 

「ごめんね…あたしが…」

 

 こんなことすれば、また勇夜に〝莫迦〟だとか言われるかもね。

 でも………もう我慢がならない。あいつにどうにか〝一発〟ぶち込んで、目を覚めさせてやる。

 

「あたしがもう、何もしなくていいようにするから…」

 

 決意の言葉を述べ、フェイトを床に寝かせ、バリアジャケットのマントを毛布代わりに被せた。 

 この部屋の床じゃ冷たくて、固いけど、しばらく我慢してね。

 

 

 

 

 

 

 玉座の間から向うに繋がる、プレシアの部屋は、その言葉の通り異界であっ

た。

 黒や紫などの黒目の色色が混じり、淀んでいる空間に、ところどころ、ギリシャ様式のものと似た円柱と

地面がまるで冬の北の海に流れる氷塊のように無数に浮いている。

 そんな暗く、閑静な空間に爆発と爆音が起きる。

 中央の円陣にいたプレシアが、爆発のした出入り口の扉がある方角に目を向けた。

 

「来たわね…」

 

 そこにいるのは、憤怒の形相でプレシアを睨めつけるアルフ。

 牙をむき出し、髪も怒りで逆立っている。

 顔と体つきは人間に近くても、その姿は狼そのものであった。

 アルフは、浮遊している地面を、八層飛びの要領で飛び、プレシアに向かって突っ込んでいく。

 が、プレシアは魔法陣を形成、そこから伸びたバインドでアルフを縛り上げた。

 それを解こうともがくアルフ。

 

「そりゃ………フェイトは……普通の子とは…違う生まれ方をしたけどさ…」

「っ?………聞いたのね………諸星勇夜………いえ、ウルトラマンゼロから」

 

 驚愕するアルフ。

 なぜこいつが、勇夜が〝ウルトラマン〟だと……そもそもなんで〝ウルトラマン〟って固有の名を知っている!?

 だが今は、その疑問よりも、沸騰する怒りが凌駕した。

 

「ああそうだよ! フェイトのお姉さんのことも、洗いざらい全部さ!」

 

 アルフがバインドブレイクでバインドを解き、プレシアに殴りかかるが、魔力の障壁に阻まれた。

 障壁とぶつかった右手から激痛が走るが、構わずに左手も障壁に触れ、魔力を流し込む。相手と自分の魔力を合わせ、中和し、障壁の魔力結合を弱めると、力の限りそれを引き裂いた。

 その勢いのまま、プレシアの襟元を掴み上げ。

 

「それでもあんたは〝母親〟で………あの子はあんたの〝娘〟だろ!? それなのに………それなのにどうしてあんなことを、平気な顔でできるんだよ!」

 

 今まで溜めこんでいた憤りを、プレシアにぶつける。

 

「何とか言えよ!この…」

 

 その怒りの余り、反応が遅れた。

 アルフの腹部に向けて、詠唱もせずに発生させた雷撃に。

 

「………っ!?」

 

 至近距離で受けた攻撃に、吹き飛ばされて、円柱の一つに叩きつけられた。

 その衝撃で口を切ったのだろう、唇から血が流れていく。なんとか立ち上がろうするが、全身に痛みが走り、思うように動けない。

 そんなアルフに、プレシアはデバイスを向けた。

 

「邪魔よ…消えなさい」

 

 デバイスの先に魔力が集まる……止めの一撃を放つ為に。

 こんなところで終われない! 咄嗟の判断で転移魔法陣を引く。

 ごめんフェイト……もうちょっとだけ待ってて…発射の直前、アルフはその場から転移して消えた。

 

 

 

 

 それを見届けると、プレシアは魔力の収束を止めた。

 最初から彼女を撃つ気は、はなから無かったのだ。

 こうすれば、アルフはこの場から逃亡を測る、これはそれを見越した一芝居。

 それにしても、あのフェイトの使い魔、ああも容易く、自分のバインドと障壁を破るとは……それだけでは無い。

 明らかに以前より、魔力の瞬間最大出力、制御能力がアップしている。

 いくら使い魔とは言え、この短期間で…ここまで……まあ良い。

 なんにしてもこれで良いのだ……あの使い魔は真っ先に、〝彼〟の元に行って頼るだろう。

 そして〝あの子〟の罪を軽減させるために尽力する。

 それで良い……道化を演じて罪を被るのは自分だけで充分なのだから…

 後は――

 

「誰が出てきていいと言ったかしら?」

 

 プレシアは背後に振り向く。

 浮遊する地上の一つに、銀と黒と茶色がかったオレンジの体色をした人型が立っていた。

 その人型は、ある科学者から齎されたデータを元にプレシアが傀儡兵を生み出す上で作り上げた、いわば試作品。

 こちらの命令は絶対噂守とプログラムしている。

 なのに、勝手に補助デバイスの格納領域からワープしてきた。

 原因は……自分に危機が及んだと判断したことと、〝彼〟の戦士としての名を呼んだ為、かもしれない。

 このマシンとあの〝ウルトラ戦士〟には、浅からぬ因縁があるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 会議室での話が終わり、艦内の廊下を歩いていたなのはたち。

 なお勇夜は、例のトランクを渡した後、さっさとアースラから出てってしまった。

 その前にクロノから、光にシルバーライトを渡したことを少々追及されたが、海の一件の事態の収拾に一役買ったこともあり、これもまた不問になった。

 

「プレシア女史もフェイトちゃんも、あれだけの魔力放出の後ではそうそう動

きはとれないでしょう、あなた達も一休みしておいた方がいいわね」

 

「あ…でも…」

 

 なのはは少々渋った。

 なんせ、アースラのクルーはその休息をしている間も仕事がある。

 のこのこ自分たちだけ、休みをもらうのは、さすがに気が引けた。

 

「こちらも無理を言って、手伝わせていましたからね、ご家族とお友達に元気な顔を見せてあげなさい」

「なのは、ご厚意は受け取っておきましょう」

「光兄……そうだね」

 

 

 

 

 

 勇夜はその時、借りているアパートに帰宅する為、雑踏の中を歩いていた。

 時間帯はもう夕方、家に帰る学生やサラリーマンがあちこち見かける。

 さて…今後はどうするか…全てのきっかけになった、あの魔導炉事故の資料を集めるのは良いとして…

 ジュエルシードは実質全部回収された。

 もう、発現した場所で鉢合わせなんて手は通用しない。

 時の庭園も、既に前にあった地点から移動しているし、あんだけの大技を使ったから、当分は静かにはしているのはず。

 なのはが〝友達になりたい〟って気持ちを伝えたことでフェイトにある程度心境の変化があるかもしれないが、どの道プレシアをなんとかしない限り……完全にフェイトを〝血を吐きながら続ける悲しいマラソン〟をさせ続ける呪縛は消えないだろう。

 一応、あいつを説得させる材料はある。

 自分の故郷、M78星雲光の国、そこまでの道筋が分かった時点で芽生えた可能性。

 だが、時間が余りに無さ過ぎるプレシアがそれを了承してくれる保障も、それが上手くいく保障も100%ではない。

 ずっと希望に裏切られ続けたあいつに、下手に光明をみせることは、逆に傷つける結果になる可能性だってある。

 どうしたもんかな……と、これからのことを思案している時だった。

 

「(ゆう……)」

 

 脳内に声が響く。

 念話? 誰からだ? 細々しくて、最初は誰の声か特定できなかった。

 

「(勇夜…)」

「(アルフか…どうした?)」

 

集中力を高めて聞き取ったことで、ようやくアルフの声だと認識。

 弱弱しく、痛みに耐えている声からして怪我をしているかもしれない。

 

「(庭園から……逃げて来たんだ…)」

 

 逃亡までの流れは、直ぐに把握できた。

 大方プレシアのフェイトへの仕打ちに我慢の限界が来て、喧嘩を吹っ掛けて返り討ちにあったんだろう。

 それで仕方なく、フェイトを残して逃げてきたってところか。

 

「(今どこだ!?)」

「(た、確か……じ、神社とか言う建物の……裏の…森の中…)」

「(そこで待ってろ! 今そっちに行く!)」

「(すまない…)」

 

 勇夜は念話を切り、人気の無い場所に移動し、周囲を確認すると。

 

「封時結界! あとリンク、VMAXを!」

『了解』

 

 結界を貼り、リンクからVMAXカスタムを取り出した。

 海鳴にも神社はいくつかあるが、近くに森があるところは一つしかない。

 結界内なら警察も通行人も交通規制も気にせずに突っ走れる。

 勇夜はアクセルを捻り、スロットル全開にしてバイクを走らせた。

 人っ子一人いない、道路のど真ん中を極太のエンジンの重低音を響かせながら、VMAXが疾走する。

 日本では不法滞在で銃刀法にも違反、さらに無免許で結界内とは言え、違法改造されたバイクを、明らかに法定速度もオーバーして走らせているが、この際大目に見よう。

 

 

 

 

 

「ぐ……」

 

 さっきよりはましにはなったが、全身が痛みで悲鳴を上げながら、わたしは目を覚ました。

 今わたしはどこかの部屋のベットで寝込んでいたようだ。

 隠れ家として使ったマンションよりは、リーズナブルと言った印象。

 狼形態をしている今の自分の体には、包帯が巻かれていた。

 その手当てをしてくれた筈な人物も、地元の集合自宅を借りていると聞いていたから、ここがそうなのだろう。

 ガチャと、ドアが開く音がし、部屋に灯りがともる。

 ビニール袋を持った勇夜が入ってきた。

 

「勇夜…」

「起きたか……ちょっと待ってろ」

 

 買い物袋から、材料を取り出すと、料理を作りだした。

 

「勇夜…あたし」

「分かってるよ、あいつに殴り込みをして、そうなったんだろ?」

 

 勇夜は調理をしながら、アルフがこうなってしまった経緯を簡潔に代弁する。

 

「うん…」

 

 あいつを追いつめた勇夜と違って、やり返されてしまったが。

 

「バカヤローが……無茶しやがって…」

 

 やっぱり言われてしまった。

 でも……彼なりに、それだけ自分を案じているということである。

 現状、頼れるのは彼しかいない。

 初めて彼に会った――フェイトが打ち負かされた時はもう駄目だとさえ感じたが、今思えば幸運だったと言える。

 頭が冷静さを取り戻し、真実を知った上で考えてみれば、遅かれ早かれ、ジュエルシードが欲しいというあいつの願いが叶えられてしまったら、真っ先にフェイトは用済みとして捨てられ…この星も巻き添えになって………そして、勇夜が前に言ったように、自分は笑わなくなった主と後悔を抱えて、残りの人生を歩むことになっていたのがはっきり分かる。

 そう思うと、なんで…………あんな石ころなんかに希望を見出そうとしたんだろ………と己を嘲笑してしまう。

 ちゃんと彼が前から『欠陥品』だって言ってくれていたのに……あれを手に入れれば、求めていたものが元に戻ると、考えてしまったのか。

 

〝もし君が君の魔法をもってしても、どうにならねえ状況になった時は……必ず君を助ける〟

〝私は……フェイトちゃんの…………〝友達〟に……なりたいんだ〟

 

 あんなものよりも、フェイトの頑なな心を溶かしてくれる人が、いたというのに。

 

「できたぜ」

 

 気がつくと、目の前にご飯と切り刻んだ材料を油で炒めた、所謂チャーハンが置かれていた。

 あたしは料理の匂いを嗅ぎ、口に入れる。

 ご無沙汰さった勇夜の料理、やっぱり美味しかった。

 ただ味が美味だけじゃない。

 久しかった……誰かと一緒に食する温かさを思い出させてくれたのも、この人の料理だったから。

 そうだ、あの時あいつは勇夜のこと。

 思考がクリアになったことで、アルフの脳裏にプレシアの言った言葉がよぎった。

 

「勇夜あのさ…前にあいつに会った時、ゼロに変身した?」

「いや、それがどうした?」

「あいつ……勇夜がウルトラマンだってこと、知ってた…」

 

 彼が別の次元世界のM78星雲光の国から来た巨人であることは、あいつに一言も言ってなかったのに。

 勇夜は若干驚いた表情をしたが、すぐ納得した様子になる

 

「あんまり、驚かないんだな…」

「一応……心当たりがあるからな……それより分かってると思うが、俺は嘱託魔導師だ、重要参考人としてお前を管理局に引き渡すことになるが、いいよな」

「ああ……構わないよ」

 

 アルフは勇夜からの申し出を了承した。元々そうなることを覚悟して、彼に助けを求めたのだ。下手に匿ってくれるよりは、むしろそうしてもらえた方が良い。

 いつだって彼は、自分たちがやっていることの〝重み〟をちゃんと示す一方で、救おうとしてくれていたんだから。

 

「心配すんな、保護という形にしてもらうからさ」

 

「ありがとう……それとさ…」

 

 初めて自分らと会ってから、勇夜は自分たちの我がままに付き合ってばかりだった。

 そのことに申し訳なく思う一方、今でも尽力してくれるこの人には、感謝しないと。

 

「何だ?」

 

 勇夜だけじゃなかった。

 敵対する立場にいたのに、それでもフェイトを何度も呼びかけてくれた……今日〝友達〟になりたいって言ってくれた……あの地球人の女の子。

 

「なのは…って言ったっけ?…あの子に………会わせてくれない……かな?」

 

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