ウルトラマンゼロ The Another Lyrical Story 第一章   作:フォレス・ノースウッド

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学校の怪談?

 朝焼けの光に照らされた、海と山に囲まれたとある地方都市、海鳴市。

 そこのとある住宅街では、このあたりに住むとある一家、高町家の兄妹と付き添い一匹もとい一人が、早朝でのジョギングのコースとなっていた。

 

「光兄……もうちょっとペース落として……」

 

 黒いリボンでツインテールに纏めた栗色の髪が虹状の曲線を描き。学校から支給されている物であろう体操着を着て、ルビーの球体を携えたペンダントを首にかけ、息が荒れ気味な小5くらいの年齢の少女――高町なのは。

 高町家の末っ子で、私立聖称大付属小に通う小学生で、かつ小5に進級と同時に〝魔法使い〟をデビューしてしまったちょっと前までは普通 (?)の女の子。なぜはてなを付けたかというと、彼女の性格(ないめん)と彼女の魔法使いとしての活躍を知ってしまえば、絶対普通じゃないと突っ込まれてしまうからだ。

 

「その言葉……これで何回目ですかなのは? これ以上の譲歩はありませんよ」

「うっ……いじわる……」

 

 アニメ声と表せる独特の高音な声色と、丁寧な口調でなのはの要望を却下した少年の名は高町 光(リヒト)。聖称大付属中に通うなのはの兄だ。

 実は彼、地球人ではない。一応地球人の血を受け継いでいるが、こちらの世界の地球とは違う世界から来た、本来の姿は50m近くある異世界の巨人で、ウルトラマンゼロが結成した警備チーム『ウルティメイトフォースゼロ』の一員、『ミラーナイト』である。 

 

「(ユーノ君も疲れてるでしょ?)」

「(僕はまだ大丈夫だけど)」

「(はぁ……はぁ………ユーノ君も凄いよね)」

 

 なのは魔法で、俗に言うテレパシー(正式にはこれは念話と呼ぶのだが)を使って地面を駆けているフェレットに話かけた。

 このフェレット君こそ、良く言うとなのはが魔法使いになった切欠、悪く言うと元凶な、魔法少女もので言えばマスコットキャラに当たる魔導師。

 ユーノ・スクライア。

 その正体は、遺跡発掘を生業とする部族の少年で、13歳の男の子、列記とした人間だ。

 それがどうしてこんなフェレットの姿になっているか気になる人は、本編を見てほしい。

 遺跡発掘を行っているだけあって体力は有り、フェレットの姿でありながら息一つも乱さずに並走している。

 

『(マスター、ここは踏ん張りどころです、これも魔導師として必要な訓練ですから)』

「(うん……頑張る…)」

 

 なのはの首にぶら下がっているルビーの球体が点滅しながら声を発して、なのはを励ますのは、デバイスと呼称される魔法の杖。

 レイジングハートだ。

 

 彼らがどういう経緯で会って、今に至っているのか気になる方々には申し訳ないが、今ここは番外編。

 本編を既に見ており、舞台となるこの世界の理を知識として持っていると踏んだ上で話を進める。

 

 

 

 

 やはり、なのはを朝練につき合わせたのは正解でしたね。

 なのはの要望を却下しながら、自分は独白した。

 妹のなのはは、魔法使い―――魔導師としては有り余る才能の持ち主だ。

 魔導師になってから、まだ二カ月しかたっていないが、あくまで非殺傷設定が前提となるものの、戦闘面に関して言えば並ぶ者がそうそういないという成長振り。

 おまけに魔法で作られた空間内とは言え、街一つを消し飛ばしてしまう鬼畜振り。

 なんと恐ろしい妹でしょう。けどこうして見れば分かるとおり、体力面で言えば、はっきり言って年相応未満、音痴レベルです。

 こうして三人で朝走る習慣になってから、そこそこ日が経つのですが、御覧の有様。

 世の家電が、電気がなければ唯の箱なように、なのはも魔法が無ければ肉体面なら普通の女の子だと実感します。

 自分がこうして、妹を朝練につき合わせているのには訳があり、それは『なのはが魔法の才能に溢れすぎている』からでした。

 魔導師としてのなのはを、戦闘スタイルのカテゴリーに分類させると――〝砲撃魔導師〟――〝歩く砲台〟だと言ってもいい。

 飛行の機動性は大したことは無い一方で、魔力量と防御力は桁違いに高く、敵の攻撃を持ち前の防御力で耐えきり、大火力の攻撃魔法で完膚なきまでに相手を落とす。

 可愛らしい外見に反して、なんと小手先からは遠く、男らしい戦法でありました。

 が、これははっきり言って体に大きな負担をかける。いくら魔法で身体を強化しても、多大な魔力を行使して敵の攻撃を受け止め、極太の魔力流を発射させる行為はそれだけ体に多大な負担をかけるのです。

 そしてなのははまだ幼く、肉体も成長途中。そしてその砲撃は使用者にも反動という形で、襲ってくる。

 何が言いたいのかというと、なのはの戦い方は、はっきり言ってなのは自身を蝕む諸刃の剣なのです。

 今はたいして問題なくても、なのはが今後も今の戦闘スタイルで〝魔導師〟を続けていけば、確実に体に罅を入れることにもなろう。

 最悪……我が戦友ウルトラマンゼロの父、ウルトラセブンがかつて経験したようなことが起こらないとも限らない。

 自らの才能の為に、身を滅ぼすなんて本末転倒なことになるのは、血縁は無いとは言え、兄である自分としては避けたかった。

 その対策の一環がこの朝練。なのはが、今後も魔法使いを続けるか……それ以外の道に選ぶのかは分かりませんが、成長を阻害させないよう無理の無い程度で、かつ手厳しく、自身の戦闘スタイルと魔力に耐えられる体作りを今から行った方が得策でありました。

 しかし……こうして息を切らしながら妹を見ていると、やはりまだあどけない女の子だと思えます。

 魔道師としては、もういくらか貫禄が着いてしまいましたが、なのはだって、まだ魔法使いとして駆け出しだった初々しい時期が、ちゃんとありはしましたがね。

 地面を駆けながら、自身の意識は数か月前に遡った。

 

 

 

 

 

 なのはが魔道師になりかけで、今では親友で当時はロストロギアを巡る競争相手だったフェイト・テスタロッサと、光の友、諸星勇夜ことウルトラマンゼロと邂逅する数日前。

 その日の高町兄妹とフェレットは、夜の聖称大付属小学校の校門前にいた。

 

「ユーノ君……ホントにここなの?」

「間違いないよ……ジュエルシードは、この学校の敷地内だ……」

「どうにかして結界内に取り込めませんか?校舎内にあるとしたら、とてもまともに戦えたものではありません」

「やってみます、封時結界!」

 

 ユーノ足元に魔法陣が敷かれ、周囲の空間の色合いが変わっていく。

 

 外にいながら、建物の中にいると感じる独特の感覚で、結界の中にいることが直ぐに分かった。

 

「なんとか、ジュエルシードも結界内に取り込めました」

「感謝します、これで心おきなく戦える…………………それよりなのは、いつまで僕にしがみついているおつもりですか?」

「だって……」

 

 校門の前に来てからというもの、このメンツの中で確実にジュエルシードを封印できる高町なのはは、木にしがみ付くコアラみたいな様相で、体を震わせながら兄にべったりと張り付いていた。

 理由は単純だ。

 夜の学校が怖いのである。

 日が上がっているか沈んでいるかの違い、すなわち……暗闇が蔓延んでいるだけで、いつもの馴染みある場所も、恐怖を湧きあがらせる異空間となる。

 

「まったく……ジュエルシードの異相体に毅然と立ち向かった魔法使いとは、到底思えませんね……」

「それとこれとは別だよ……あの時だって…光兄がいたからどうにかなったし………」

『マスター……もう覚悟を決めましょう、一人で行くわけでは無いのですから、バリアジャケットを展開して下さい』

「うん……」

 

 レイジングハートからの励ましもあって、なのははようやく光から離れ。

 愛機を手に取り。

 

「レイジングハート、SET.UP」

『Standby lady set up』

 

 桜色の光に包まれたなのはは、聖称の制服をモデルにレイジングハートが形成したバリアジャケットを身に纏い。

 左手にはデバイスモードになったレイジングハートが握られる。

 

「さあ行きましょう!」

「はい!」

「光兄!ユーノ君!待ってよ!!」

 

 光は校門を苦も無く飛び上がって入り、ユーノは門の隙間から校内に侵入。

『Flier,fin』

 そのどちらの芸当もできないなのは、飛行魔法でどうにか付いていった。

 

 

 

 

 

 どうにか勇気を振り絞って、校舎内に入ったなのはであったが、暗く細長い廊下、ドアのガラス越しに見える教室、不気味に照らしている非常灯を前に、表情を強張らせ、足が震えている辺り、相当無理をしているのが窺える。

 ただ、恐怖を抱くこと自体は悪くない。

 人として、生物として、それは普通で正しい反応。

 だからこそ、危険を危険だと判断でき、そこから困難に立ち向かう勇気が生まれる。

 光もユーノも、その恐怖を乗り越えた経験が生きてるからこそ、この場で冷静にいられるのだ。

 光は騎士として何度も実戦を経験し、ユーノも落盤事故などの危険が多い発掘作業でメンタルが鍛えられている。

 

「光よ、床の闇を照らしたまえ、ライトボール」

 

 対してまだ理性を保つのに手一杯な妹の現状を察した光は、呪文を唱え、掌から、魔力スフィアが出現、周囲を照らした。その灯りは、廊下の最果ての壁まで届いていた。

 

「ありがとう、光兄」

 

 ライトボールは、一種の人工太陽で暗闇を照らす魔法だ。

 本来なら魔法で、視力の明度を上げることができるのだが、生憎駆け出しのなのはは、そこまでできない。

 で、ブラコンな兄貴が妹のフォローのためだけに、独自にこの魔法を編み出してしまった。

 妹愛、恐るべしである。

 ちなみに二次元人の血を受け継ぐ光は、魔法に頼らずとも、暗闇でも見える。その上、御神の剣士は、常人以上に気配で人や生き物の存在を識別できる。彼から見て結界内の校舎は、ジュエルシードの波動以外、気配を全く感じなかったので、未知なる存在への畏怖は浮かびようがなかった。

 

「ジュエルシードの場所分かりました、屋上………っ!?」

「まさか!?」

 

 勇み足で屋上に来てみると、案の定だった。三人の眼前には、以前の異相体とよく似ているが、体格が人間に近い、赤い双眸の影が立ちはだかっていた。

 間違いなくジュエルシードが発動したことで生まれた異相体。

 

「2人とも下がって…」

 

 夜と結界の相乗効果で震えている妹と、ユーノを下がらせ。

 光は、服の下に隠していたペンダント型の変身アイテム。

 ミラーズアイズを取り出し。

 

「ミラー!」

 

 ミラーナイトに変身しようするが。

 

「guuuueeeeeeeeeeeeeeeeeee!!」

 

 不気味な叫び声で、光に踏み込み、変身は断念させられる。

 

「光兄!!」

 

 手に伸びた異相体の爪が、光を襲う……常人よりは体が頑丈だと自負しているが、まともに受ければただでは済まない一撃。

 

「(こんなの、レギオノイドに比べれば!)」

 

 連続で振るわれる凶刃を回避しつつ、下腹に回し蹴りを入れた。

 衝撃で異相体が後退し、隙ができた。

 

「スパーク!!」

 

 腕をミラーズアイズの前クロスさせた光は閃光を発し、二次元人としての本来の姿。

 銀色のボディと緑色のラインに、目や鼻といったパーツの代わりに漢数字の十にも見える金色に輝く光沢が埋められた鏡の騎士。

 ミラーナイトとなった。

 

 腕を×時にクロスさせ構えるミラーナイト。

 睨み合いつつ対峙する両者。

 両社とも同タイミングで踏み込んだ。

 ミラーナイトは凛として冷静に――

 

「Guuaaaaaaaaaaaーーーーーーーーーー!!!」

 

 ――対して異相体は天地を裂く唸り声で。

 超人と怪人の肉体がぶつかり合い、組み合いになり、両者はそのままの体勢でフェンスに向かって走り、突き破って校庭に落下した。

 突き破られたフェンスに駆け寄ったなのはとユーノは、校庭で肉弾戦を展開しているミラーナイトと異相体。

 

「レイジングハートお願い!!」

『all right.Canon mode』

 

 なのはの呼びかけに応じ、レイジングハートは、槍先が音叉に見える砲撃形態、キャノンモードに変形させた。

 校庭で繰り広げられている演武は、一見すると互角だ。一撃一撃が強力だが、荒くて大ぶりな異相体の体裁きにミラーナイトは空回りさせている。

 だがミラーナイトには決定打となる大技が使えないハンデがある。相手は大火力の爆弾を抱えているに等しいのだ。そしてミラーナイトには、その爆弾の起爆装置を解除する手段を持っていない。

 それができるのは、デバイスを持っているなのはだけなのだ。

 

「僕がバインドで動きを封じるから、その時まで待って!」

「うん」

 

 ユーノの足元に魔法陣が敷かれる。

 

「たえなる響き……光となりて……許されざるものを、封印の輪に!!」

 

 地球人がイメージするのとはかなりかけ離れた、ミットチルダの魔法だが、行使するのに特定の単語の詠唱が必要なのは一緒だ。

 ユーノの意図を理解したミラーナイトは、飛びあがりながら両足からの蹴りを交互に連打、蹴った勢いで距離をとりつつ。

 

「ミラーナイフ!」

 

 指先から光の手裏剣ミラーナイフを異相体の足元に放つ。

 

「チェーンバインド!!」

 

 それにより生じた隙を突き、ユーノ右手に翳された魔法陣から、魔力でできた鎖が解き放たれ、異相体を縛りつけ、体勢を崩させて仰向けに倒させた。

 

「ミラーウェイト!」

 

 体勢を立て直そうとしつつ、バインドを解こうとする異相体は、光の十字剣ミラーウェイトから発せられる重力波で断念させられた。

 二重の物理的な圧迫感に、まともに身動きどころか立つこともできなくなる。

 

『マスター!トリガーを』

「ジュエルシード……シリアルⅪ……」

『Target lock,Devine shot』

 

「封印!!!」

 

 トリガーが引かれ……相手に引導を渡す魔力光が、異相体に突き刺さり。

 

「aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaーーーーーーー!!!!」

 

 不気味な断末魔を上げながら、夜の校庭を照らす閃光をとともに異相体は消えていった。

 ちなみに、ほぼ同時刻にもう一つが原生生物に取りつき、それは諸星勇夜が封印、そしてフェイトたちと邂逅し、戦闘になっていた。

 

 

 

 

 

 そして今現在……ジョギングをしていた三人は近所の公園で一休みしている。

 

「はあ~~~~もうへとへと……」

 

 なのははすっかり疲労困憊な様子でベンチにへばりついている。

 光は飲料水を買いに行っている最中。

 

『以前より走破距離は長くなってます、成果は出ていますよ』

「でもみんなに比べたらまだまだだよ、ユーノ君だってフェレットの体なのに息乱してないんだよ」

「まあ発掘で、嫌でも鍛えられたからね……」

 

 ユーノに賞賛の言葉を送りながら、今の自分の立ち位置を再認識するなのは。

 以前から運動音痴は自覚していたが、魔法を得たせいで、あやうく感覚麻痺になりところだった。

 超人とは言え魔法が無くても戦えるよう、修練を積んだ勇夜や兄の光のお陰で、なのはは自分がいかに井の中の蛙だったか思い知らされる。

 結局自分は、魔法が無ければ、電気が通ってない家電で、体育の成績が下方な小学生。

 それに気づけただけでも良かったかな……慢心させないよう気遣ってくれる光兄には感謝しないとね。

 息を乱し、体操着の袖を腕まくりをして、胸元のチャックを下ろすなのは。

 

 

 

 

 

「………(ゴクっ)」

 

 ユーノはその様を見て思わずドキっとしてしまった。

 疲労で頬を火照らせて、息が荒れ気味ななのはは、まだ幼いのに妙に艶めかしい。襟の合間から見える素肌も、露わとなっている面積が少ないのに、心拍数を上げさせてくる。フェレット体型からのあおり視点が、それに補正と拍車をかけていた。

 

〝駄目だ! 何を考えてるんだ僕は!?

 

 なのはを、こんな目で…そりゃ……多少異性に気になる思春期なお年頃に入っているけど……でも、だからって少女にそんな嫌らしい目で見てどうする? と言い聞かすユーノ。

 なんとか…心を落ち着かせて……精神統一…でないと。

 

「(ユーノ……)」

「(なっ!?……な、なんでしょうか? 光さん)」

 

 すると、いきなり光から念話で話かけられた。

 

「(気のせいなら良いのですが……今なのはを〝変な目〟で見ていませんでしたか?)」

 

 ギクっ!

 どう答えていいものか………あながち間違って無かった。

 

「(別にいいのですよ……ユーノも微妙なお年頃で健全な男の子です、異性が気になってしまうのも仕方ないでしょう)」

 

 そうは言ってるが、声色は低めで淡々、なのに蛇に睨まれたようなプレッシャーを感じるのは……何故でしょう?

 傍から見ても震えが伝染してきます……あ~~恐い。

 

「(ですが……もう少し上手く隠して下さいね……私から見ればもろバレでしたので……)」

「(はい……善処します…)」

「(よろしい…)」

「ユーノ君大丈夫!?ひどい汗だけど……」

「あ……なんか…今頃になって疲れが出てきたみたい……あはは…」

 

 見えない圧迫感にユーノは苦笑するしかなかった。

 高町家の末っ子には、普段は物腰穏やかな好漢だが、妹のためならヤンデレにもなるスーパーシスコンな騎士さんがいる。

 彼女に惚れてしまった方々は、くれぐれも要注意するよう心がけよう。

 

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