ウルトラマンゼロ The Another Lyrical Story 第一章   作:フォレス・ノースウッド

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ハーメルンに投稿の際、タイトルは日本語に変えるつもりだったのですが、同名の小説とそれ原作の映画があるので結局英語に、意味は『幕は上がる』です。

最初に出てくるオリキャラは、大塚明夫さんの要素を詰め込んだキャラとなっております。


STAGE01 - Curtain Rises

 暦は地球の西暦で11月末、第一管理世界、惑星ミッドチルダ。

 その星の西側に位置するエルセア地方の中心都市の郊外に、夜は酒屋だが、昼はデバイスの注文、作成、修理点検を請け負う一風変わった店がある。

 店名は『ビリーフ』、日本語で〝信念〟と意味する。

 この店を切り盛りしているオーナーは、職人――デバイスマイスターでもあり、名はベイカー・オールディス。

 口周りに生える髭がよく似合う厳つい四角顔に、オールバックの長結いな中年の渋みがある、それでいてどこか愛嬌も感じられる男。

 声はハリウッド俳優のス○ィーブン・セ○ールの吹替えを担当する声優の声とよく似て図太い。

 一見すれば典型的な頑固親父で、デバイスに関する仕事は『ある条件』をクリアしないと受けないが、はたから見れば無茶苦茶な注文でも、期限内にこなす腕の立つ職人であった。

 

「おお来たな、お前さんのデバイスなら、整備は済んでるぞ」

 

 近未来的で洗練された都市に反して、穴場で木独特の匂いが漂う、薄暗い店内で店主は、見た目が10代半ばの日系人の少年に、腕輪型の待機モードなデバイスを渡していた。

 

「ありがとうございます、久しぶりですね、ライト」

『はい、一週間と二日ぶりです、我が主』

 

 日系の少年、高町 光(リヒト)ことリヒト・シュピーゲル、鏡の騎士ミラーナイトと、その相棒、シルバーライトである。

 今から11年前、とあるアクシデントで彼を含めた宇宙警備チーム、ウルティメイトフォースゼロは、時空の歪みに巻き込まれ、ミラーナイトはこちらの次元世界の地球、日本の地方都市、海鳴市にとばされた。

 その際肉体が4歳児に退行して、ミラーナイトとしての姿に変身できなくなってしまったが、高町家に助けられ養子となって10年以上を地球で過ごし、約半年前に起きたP.T.事件をきっかけに義妹とともに魔法使いになった。

シルバーライトとはその事件をきっかけに巡り会ったバディな仲である。

 

「今日もそのお仲間さん探しか?」

「そんなところですね」

 

 件のP.T.事件以来、一度光の国に帰省した諸星勇夜ことウルトラマンゼロに変わって、休日の合間を縫って、次元世界を廻っては、仲間の手掛かりを探していた。

 提督であるリンディ・ハラオウンのサポートもあるが、鏡面ワープなど、元々長距離転移が得意な光には、各世界を転移魔法で移動し、その日の内に地球の高町家に帰るなど造作も無かった。

 ゼロからのウルトラサインによる伝言で、仲間の一人であるジャンボットが彼の故郷である光の国にいるのは知っている。

 残るは元宇宙海賊の用心棒、炎の戦士、グレンファイヤーだけ。

 なのだが…彼だけ手掛かりの手の字も見つからず仕舞いだった。

 ひょっとしたら、灯台もと暮らしといわんばかりに、地球にいるのではと考える時があるが、それならロズウェル事件以上の注目度で、世界中で話題になるかもしれない。

 異世界人で50メートルもある巨人、炎がそのまま顔になった容貌に、喧嘩番長なムードメーカーな性格の彼のことだ、現地の地球人と、一悶着あってもおかしくない。

 が、実際のところは、噂の〝う〟の字も無かった。

 実際、自分も地球に飛ばされたのだから、可能性は無いとは言い切れないし、身寄り先の地球人に上手くフォローされているのかも。

 

「手詰まりになってんなら、手伝ってやるぜ、俺は情報屋も兼ねてっし、これでも顔は広い方だ」

 

 彼は情報屋も兼任しており、勇夜によく情報提供していたという。

 無論お金はかかるが、金銭面では勇夜が嘱託魔導師として受けた仕事の報酬で充分賄っていた。

 

「いえ……そこまで甘えられません、ライトのメンテナンスだけで充分ですから」

 

 とは言え、自分たちの正体は余り世間に公表できることではないので、こればかりは感謝しつつも申し出を断った。

 そして何を隠そう、主なデザインは光本人だが、この世界における魔法の杖――デバイスであるシルバーライトを直に作成したのはこのベイカーで、勇夜のデバイスの零牙も設計こそ使い手本人だが、それを元にしてパーツを作りあげたのもこの御方だ。

 どちらも独自の機構を持っているにもかかわらず、特に前者は一週間で作り上げてしまった。

 これでも昔は、時空管理局でも指折りな技術者だったそうである。

 

「そうか……なら代わりといっちゃなんだが」

「何か?」

「お前さんも魔導師だろ? これは無関係で済む話じゃねえからな」

「代金はいくらですか?」

「よせよ、今回はサービスだ」

 

 ベイカーの顔が、気さく笑みから重々しさのあるものになる。

 

「実はな、最近魔道師……っつーより、魔力を持ってる輩が襲われてる事件が起きててな」

 

 彼が話してくれたのは、ここ最近あらゆる次元世界で魔導師相手に起きる通り魔的襲撃事件のことであった。

 その日の夜、彼はその〝無関係では済まない一件〟に関わることになる。

 ちなみに、ベイカーがおっしゃった通り、サービスということで情報料はタダにしてもらった。

 

 

 

 

 

 

 宇宙の外に広がる超空間。あらゆる宇宙を内包し、〝マルチバース〟とも、〝次元の海〟とも呼ばれる広大で幻想的な世界。

 主に魔法関連、滅んだ文明の落し子ロストロギア、次元を超えた規模の犯罪などを取り締まる時空管理局の本局は、この海の真っただ中にある。

 局員でも、その施設の全容を把握していると言えないほど、巨大な円形コロニー兼ステーションであった。

 そこに向かう艦船が一隻、L級巡航艦船アースラ。

 その艦内にある食堂の一角では、クルーである大人たちに混じって、少年少女たちもそこにいた。

 

「さて、じゃあ最終確認だ、被告席のフェイトは、裁判長の問いにその内容通りに答える事」

 

 15歳の若さにして、執務官という高官に就いた黒髪の少年、クロノ・ハラオウン。

 

「うん」

 

 彼とは向かいとなる席に座っているのは、魔導師―――魔法使いである金髪赤眼で髪をツインテールでまとめた少女、フェイト・テスタロッサ。

 

「今回はアルフにも同席してもらうから」

「分かった」

 

 オレンジ色の髪色と狼のような獣耳と尻尾、さらに鋭利な犬歯を生やした肉体の発育の良い、10代後半ほどの少女が答える。

 彼女と契約を結び、姉妹ともいえる関係で、かつ魔道師であるフェイトをサポートする使い魔、アルフだ。

 

「で、僕とそこのフェレットもどきは証人席、質問の内容はそこの資料に書いてあるから目を通しておいてくれ」

「うん、分かった――――――っておい!!」

 

 で、クロノにフェレットもどきと呼ばれて、のりツッコミをした艶のある薄めの色合いなブロンド髪と、翡翠色の瞳をした12歳くらいの少年はユーノ・スクライア。

 クロノと同じく若年ながら、遺跡発掘を行う考古学者でもある結界魔道師だ。

 

「何だ?」

「誰が〝フェレットもどき〟だ! 誰が!」

「勿論君のことだが、何か?」

 

 普段のユーノからは想像できない剣幕と突っ込みを、クロノが冷静に打ち返した。

 危険が伴う遺跡発掘を生業とするスクライア一族は、自らの体を小動物に変身すると言った補助系の魔法が得意で、人型サイズでは無理がある閉所を通る時などに重宝されている。

 ユーノの場合だと、彼が変身するのはフェレット。

 

「そ……そりゃまあ! ちょっと前まで動物形態で居る事が多かったけど、そのあだ名を定着させないでほしい!」

 

 で、本人の言う通り、ここ最近は本来の姿

 自身が発掘したロストロギア――ジュエルシードが輸送中に起きた事故で地球、日本の地方都市である海鳴市に流れ着いてしまい、責任を感じて独自に回収に向かったものの、その際負ったダメージの回復の為、その姿にならざるを得なかったのだ。

 お陰でクロノからはすっかり

 光からも同様に呼ばれ、勇夜に至っては『イタチもどき』と言われた。

 成り済ましている点では、もどきと呼ばれても何ら間違っていないのが何ともである。

 

「ユーノ、まあまあ落ち着きなって」

「クロノも、あんまりいじわる言っちゃ駄目だよ」

「大丈夫、場を和ませる軽いジョークだ」

 

 と彼は言うが、正直そんなシリアスな真顔で言われても、場を和ませる効果は皆無である。ユーノのノリツッコミが無ければ、滑って空回りしているところだった。

 少し横道に逸れたが、彼らが今行っているのはこれから始まる、裁判の最終公判の打ちあわせだ。

 フェイトとアルフは、ジュエルシードを不法に収集した罪等で裁判を受けている被告人の身である。

 本来なら、フェイトの母でもある事件の主犯格、プレシア・テスタロッサも同席しなければならないのだが、病を患っている身なので、主な公判ではフェイトが出頭していた。

 私服を着ている辺り、とても被告人には見えないが、これでもアースラからは基本出られない身……が、それも次の公判で終わる。

 罪状は免れないが、執行猶予と数年間の保護観察も付いてくる。再犯さえ起こさなければ、制限はついてくるものの、彼女らは晴れて自由の身だ。

 

 

 

 

 

 

 礼服に着替えるために、フェイトは一度、アースラ内の自室に戻った。

 部屋に置かれた机の卓上には、写真やら封筒やら、映像記録ディスクならが置かれている。

 写真立に、フェイトと一緒に写っている日本人の少女。

 高町なのは。

 かの高町光の義妹で、高町家の末っ子で、地元の小学生である地球人で、PT事件をきっかけに魔法の力を開花させた魔道師。

何よりフェイトとは、ジュエルシードを巡って争いながらも、それを経て初めての友達となってくれた女の子。

 机に置かれている封筒やディスクは、そんな直に彼女と触れ合えない現状においての交流の軌跡というやつだ。

 そして……机の引き出しから、そっと大事に何かを取り出した。

 金色の縁と文字で彩られた長方形型の黒い髪留め。

 それまで同性しか触れ合ったことが無かった自分が初めて会った異性で、多分、初めて――――〝好き〟――――になった人。

 その彼が、自分が帰ってくるまで預かってくれと渡されたのが、この髪留めだった。

 それを―――大切に握りしめた。

 

 

 

 もうすぐ、会いに行ける。

 今まで、時々しか直に会えなかった母さんに、ビデオメールでしか顔を合わせられなかったなのはに、記憶の中でしか会えなかった姉さん――アリシアに、そして……もうすぐ姉さんと一緒に、彼も帰ってくる。

 諸星勇夜―――ウルトラマンゼロ。私にとっても〝ヒーロー〟な人。

 この間マルチバースにウルトラサインが上がって、今週中には戻ると聞いた時、天に昇るような気持ちになった。

 今日を乗り切れば、いつでもあの人たちと会える。

 その時になったら――

 

「まだ気が早いんじゃない、フェイト♪」

 

 温暖な心持ちに浸っていた私の耳に声が響き、意識は現実に引き戻されました。

 

「あ、アルフ!?いつから!!?」

「丁度勇夜の髪留めを、ぎゅーと抱き締めたところから♪」

 

 既に赤くなっていた私の頬が、余計に紅潮されていきます。

 いくらは寝食を共にし、相部屋である間柄で、しかも使い魔の精神リンクで自分の感情がアルフには筒抜けであること理解していても、こんなところを見られるのは………恥ずかしくなります。

 よく見るとアルフは、男の子には刺激が強そうな露出の多い私服ではなく黒の礼服で、耳も尻尾も完璧に隠されていました。

 八重歯が多少鋭いことと、額の宝石を大目にみれば完全に人間の姿、もう準備は万全と行ったところです

 

「早くしないと遅れるよ」

「う…うん」

 

 噛みしめるのはいいけど、まだハードルは越えた分けじゃない。

 私は、喜びを丁重にしまって、気持ちを切り替えてしゃきっとさせました。

 この時は当然、思いもしませんでした。

 自分が予想もしなかった形で、勇夜たちと再会することになることを。

 自身の〝鏡〟も同然な人たちとの――出会いが待ち受けていることを。

 

 

 

 

 

 

 一方で、こちらはアースラのブリッジ。

 艦橋の窓からは、わざわざカメラのモニターで確認しなくても、時空管理局本局の大型コロニーが肉眼ではっきり見える。

 

『お疲れ様リンディ提督、長旅御苦労さま』

 

 その艦長であるリンディ・ハラオウン提督は、同じ提督で、同僚でもある、眼鏡と淡い紫のロングヘアが印象的な、レティ・ロウランと通信を取っていた。

 

「ねぎらいのお言葉どうもレティ、そっちは問題無い?」

『っ………アースラのドッキング受け入れと整備に関してはね………』

 

 レティの声色が、幾分か歯切れが悪くなり、悩ましそうな表情になる。

 

『こっちの方では、頭を抱えさせられる事態が起こっているのよ……』

「その事態というのは……もしかして」

『そう、違法異世界渡航者による魔導師、及び魔力内胞型の生命体の衝撃事件よ』

 

 ここ数カ月、管理世界で頻発していた事件とは、レティも今述べたが、魔導師である人間と、体内に魔力を宿した管理世界での生物が、次々と何者かに襲われている、ということ。

 同日、光がベイカーから聞いた情報も、それに関連するものだ。

 一連の事件が同一犯であると、既に判明はしている。

 被害を受けた者たちの、ある〝共通項〟によって。

 

『いくつかの世界で、痕跡が発見されているみたいで、今は派遣した担当の捜査員たちの報告を待つしかないわ』

「大変ね………」

「それと、襲撃犯のことで有力な仮説があるのだけれど…」

「提督、と言うのは?」

 

 歯切れが優れない言い方が気になりつつ、クロノは『仮説』の詳細を問うた。

 

「ロストロギア、一級捜索指定が掛かってる危険物で、まだ断定はできないのだけれど…………あなたたち家族とも因縁浅からぬ代物』

「…………………………」

 

 レティの一言で、そのロストロギアの名称が直ぐに行きついた。

 リンディは内心、動揺を隠せなかった。この仕事を続けて行く以上、いつかは〝あれ〟と関わることになると覚悟していたが、こんなに早く活動が再開されるなんて………〝彼〟が亡くなってから……まだ7年。

 自分はともかく…クロノは……まだ心の整理がされたとは、言い難い。

 その自分でさえ―――〝友軍艦に撃ち落とされる次元航行船〟―――の光景がフラッシュバックされると、胸の奥から疼きが再出されるのだ。

 これが、息子となれば………疼きと一緒に、懸念がリンディの胸を過ぎっていた。

 

 

 

 

 

 

 冬独特の、早目な日没を終えたばかりの海鳴市。

 中心市街のビルの頂の内一つに、影一つ。フェンスを越えて、屋上と壁による角を椅子代わりに座る少女一人。

 外見から見るに、歳は5~6歳程。髪は濃いオレンジで、髪型は二つに枝分かれされたお下げ。青味の目は、一目で強気な性格だと伝えられそうな吊り目。

 服も、黒のミニスカートを除けば、長袖のTシャツに、黒と白のラインが横方向に刻まれた袖なしのパーカーで活発そうな印象。

 右手には、銀の光沢を帯びた女の子の小駆並の長さな大鎚。

 左手には、市街のCGが映されたホログラムの球体が浮遊していた。

 球体に、赤く点滅する小さな光点が浮かぶ。少女はそれを目にすると、その場を立ちあがった。

 どうも、少女はこの街で何かを探しており、丁度目星のものを見つけたようだ。

 

「いくぞ…アイゼン」

 

 

 

 

 

 

 

 ほぼ同刻の夜にて、フェイト・テスタロッサの〝友達〟である高町なのはは、自室で学校から出された宿題をやっていた。

 P.T.事件以降の彼女の日常は、そんなに大差は無い。

 家では家族と団らんし、学校では勉学に励みながら親友たちと談笑。

 ただ、平日の朝は兄の光と一緒に体力を付けるためのトレーニングと、魔法の訓練、さらに時に母からの指南による菓子作りが日課になったこと。

 また直に会えることを祈りながら、フェイトとビデオメールと手紙を送り合う文通を続けていること。

 と変化は少しずつだがある。

 だが、変わってるようで変わって無いものがあった。

 前々から、悩みになっていた将来の不安。

 ずっと、取り柄が無い自分が嫌になり、そう思う自分にも嫌になる。

 みんなの……〝誰か〟の為に、自分にしかできない〝何か〟が欲しい。

 願う一方で、それが見つからない日々。

 でも、フェイト、ユーノ、勇夜たちと出会ったことで、見つけられた。

 それが――魔法。ようやく出会えた、しゃんと胸を張って言える自分だけの特技。

 ただ、出会えたのは良いけれど、これから自分がどうするべきか、なのはにとって余計悩ましいものになってしまった。

 魔道師を続けて……管理局に入る?

 それとも翠屋二代目を目指す?

 具体的な選択肢はこの二つ。

 どちらもまんざらではないだけに、余計悩ましい。

 二代目になれば、魔法の世界、フェイトたちとの関わりが薄くなる。

 でも局員になっても……兄や勇夜のように、守りたいものの為に〝腹を括って〟戦い続けられるか?と言われても自信が無い。

 中途半端にしたくないから、訓練は続けているし、あの頃は無我夢中だったけど、前に兄が言っていたように、力を行使する以上、心にストッパーをかけなきゃならない。

 

『マスター、手が止まっています』

 

 今は自分の魔法の杖でパートナーであるレイジングハートが呼び掛けてきた。

 

「にゃはは、ありがとう」

 

 いけない、悩みをこんな、心の中にばかり、押し込めてばかりじゃいけない。

 言えない理由があったからとは言え、そのせいで親友のアリサとは疎遠になったこともある。

 今度、兄に相談してみることにした。

 もうすぐフェイトたちとだって会えるんだから、こうくよくよしてちゃ駄目だと、なのは心を落ち着けさせる。

 何だか、不思議だった。光にフェイト、ユーノに勇夜にアルフ、大切な人たちの顔が浮かんだだけで、頬がはにかんだ。

 なんとまた現金か、でも嬉しいことに嬉しいと感じて何が悪いのだろう?

 味わえるのなら、ちゃんと噛みしめないと勿体ない。

 気分をリセットしつつ、今目の前にあるハードル、宿題に取り掛かろうとした時だ。

 

『警告、緊急事態です』

 

 愛機からの警告の一声。

 同タイミングで自分の体が魔力を感知した。

 周りを見渡す。

 周辺の空間の色調が、変質される。

 結界?

 誰かが張った魔法による異空間の中に、自分が閉じ込められたとなのはは気づいた。

 でも……どうして?

 地球には、管理世界と関われるような要素は無い。

 P.T.事件はイレギャラー中のイレギャラーで起きたものだ。

 ジュエルシードのように、ロストロギアがこっちに流れ込んできたなんてことも聞いてない。

 

『マスター、結界を張った魔道師が高速で接近しています』

 

 

 

 

 

 ともかく、家の中ではどうしようもなかったので、なのははレイジングハートを連れて外に出て、今はあるビルの屋上に立っていた。

 アースラにいるリンディたちに連絡を取りたかったが、結界は通信妨害の効果を持っているようで断念させられる。

 念話もまったく駄目だった。

 光もメンテナンス中の愛機――シルバーライトを取りにミットチルダに行って、まだ帰ってきてない。

 となれば、相手の出方次第だが、暫くは自分とレイハで対応するしかなかった。

 

『来ます』

 

 魔力を纏った球体が、こちらに向かってくる。

 

『誘導弾です』

 

 それは、オレンジ色の魔力スフィアだった。アルフのものより、若干色が濃い。

 

『Round Shield』

 

 それを右手で生成した魔法陣の障壁で受け止める。

 重い……気を少しでも抜けば押し切られてしまうほどの衝撃。

 よく見ると、障壁を押し付けるのは魔力を纏った鉄球。というより、むしろ魔力で限りなく実体化された弾丸と言えた。物理的衝撃が付加された魔力製の弾丸は、防御が得意ななのはでもてこずらせる。

 日頃から運動し、ある程度体力が上がった体と、魔力フィールドでどうにか耐えているが、このまま耐え続けるのは正直きつい。

 どうにかして、軌道を逸らして受け流そうと考えた時。

 

『マスター! 後ろです!』

 

 愛機の警告と気配で、反射的に左手にも障壁を張った。

 なのはは攻撃してきた相手を見て驚く。

 

「ぶち抜けぇぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!」

 

 それは、あの銀色のハンマーを持った幼子だった。

 

「ああっ!」

 

 誘導弾よりも鋭く重い一撃に、なのはは吹き飛ばれた。

 屋上から、叩き落とされるなのは。

 

「レイジングハート!お願い!!」

『Standby, ready, setup』

 

 なのはの言葉に応え、レイジングハートが起動。

 自由落下をしながら、魔力光に包まれたなのはの体にバリアジャケットが装着され、レイハも球型の待機モードから、デバイスモードの杖に変形した。

 

『Flier Fin』

 

 バリアジャケットを纏ったなのはの具足に翼が生え、姿勢制御して滞空させる。

 

「どぉぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そこに、あの女の子が二撃目の打撃を振り下ろしてきた。

 

『Flash Move』

 

 なのはそれを加速魔法で、どうにか回避。

 

「どこの子?一体なんでこんなことするの!?」

 

 いきなり警告もなく襲いかかられる理不尽を受けながらも、なのは女の子に呼び掛けた。

 バリアジャケットらしき服装は上下とも赤色、膝より下に伸びてすそがギザギザなスカートと、半袖のジャケット、頭にはお世辞にも可愛いと言いきれない独特の顔つきをした兎の顔人形が付けられたベレー帽らしきものを被っている。

 それよりなのはが気になったのは、その少女が〝自分より幼い〟ということだ。女の子は、なのはの呼びかけに一切応じずに指を翳すと、立てた指の間から鉄球が二つ出現。

 

『Schwalbe Fliegen』

 

 少女のデバイスらしきハンマーから、英語でもミットチルダ語でも無い電子音が発され、少女は鉄球をそのハンマーで撃ち、なのはに飛ばす。

 

『Wide Protection』

 

 誘導機能があるのか、左右二方向から来る弾道を全方位にバリアを張って防ぐが。

 

『Tödlich schlag』

 

 同時にハンマーの打撃も襲いかかり、バリアとハンマーが再びぶつかり合った。

 

「話を聞いて!教えてくれなきゃ、分からないってば!!」

 

 中々なのはは攻勢に転じられない。フェイトの時は、彼女の目的がある程度はっきりし、集めているジュエルシードが、どれだけ危険な代物か思い知らされていたため、どうにか応じようがあった。

 だが目の前の女の子は、動機も目的も、何もかも不明。記憶を探っても、以前会った形跡は全くで見覚えが無かった。

 

『Barrier burst』

「っ!?」

 

 そんな時、レイジングハートが独自の意志でバリアを暴発、反射的に後退する少女だが、衝撃波を前に、後方に飛ばされる。

 

『(マスター、今は戦闘に集中して下さい)』

「(でも!?)」

『(これが戦いというものです、目的、真意を尋ねて、相手がそれに応えてくれるほど甘くありません)』

 

 愛機の言葉は心にずしりと響く話だが、正論でもある。

 どの道、話し合いも拒否されて攻撃される以上、応じるしかない。

 

「ごめん……レイジングハート、付き合ってくれる?」

『All right, canon mode set up』

 

 なのはの意志に応え、レイジングハートは砲撃形態へと変形。

 

『Devine Shot』

 

 なのははトリガーに指を掛け、態勢を立て直して向かってくる相手に。

 

「ごめんね………ディバインショット、シュート!」

 

 罪悪感を押し込め、トリガーを押す。桜色の魔力弾が発射された。

 

『Panzer Schild』

 

 少女はなのはたちのとは違う、三角の図と角の頂点に円が描かれた魔法陣で受け止め、着弾した瞬間、爆発を起こす。

 相手は爆煙で見えなくなる。

 一瞬、魔力ダメージで失神したのか? と思われたが、

 

『Raketen form』

 

 あのエコーが掛かったハンマー型のデバイス音声が響き。

 

「ラヶェェェェェェェテン」

 

 爆煙を振り払い、四散させ。

 

「ハンマァァァァァァァ――――――!!!!」

 

 先程とは比べ物にならない加速で回転しながら、横薙ぎの一撃が振るわれる。

 最初の一打はどうにか避けられた。だが〝バーニア〟から荒々しく吹き荒れる推進力を乗せたスピードでなのはも迫る。直撃を受けまいとこちらも限界まで速度を上げて後退するが、とうとう回避不可の距離まで詰められ。

 

『Round Shield』

 

 レイジングハートはシールドを張って受け止めるが。

 

「負けるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!」

 

 屈強な桜色の障壁は、呆気なく破壊され、『片方の打突の先端が尖り、もう片方がジェットを噴射する推進機が付いた』ハンマーにレイジングハートは、衝撃で罅が入り、なのははその身にのしかかるGに悲鳴を上げながら、為す術も無くビルの外壁に叩きつけられていった。

 

 

 

 

 

 常人なら即死レベルの衝撃だったが、バリアジャケットの魔力フィールドのお陰で致命傷は避けられている。

 だが、ダメージそのものは無効化されるはずも無く、ビルのガラスを超えて、部屋の壁面に叩きつけられたなのはは、全身に走る痛みを前に、呻いていた。

 流石に全身打撲は避けられなかったようだ。

 レイジングハートも、今の一撃であちこち亀裂が入って痛々しく、ルビー色のコアは弱弱しく、エネルギーが消耗した時のウルトラマンのカラータイマーのように点滅している。

 なのはが叩きつけられたビルはどこかのオフィスのようだが、もう原型を留めていない。

 痛みの最中、目を開けると、あの少女がゆっくりと歩んでくる。

 逃げなきゃ……逃げなきゃ……逃げなきゃ……離れなきゃ…心がそう訴えかけるのに、体が痛みと恐怖に応えてくれない。

 薄暗い部屋のせいで、目の前の少女な悪魔は、どういう表情をしているのか掴めない。

 が、その少女は防御力の高いなのはの魔力障壁を容易く破壊、愛機にまで重傷を与えた。

 もしあの一撃が自分の体に当たってたら………背筋が凍る。

 相手が自分より幼い容姿なことが、却って恐怖心を煽らせる。

 涙が流れていることさえ自覚されないまま、初めて直にこの身で、この肌で感じさせられる〝死〟の匂い。

 真意も分からぬまま、一方的に蹂躙される恐怖、それを突きつけた少女は、受け手からは悪魔の所業に映るだろう。

 なのはも、ほぼ似たような感情に埋め尽くされていた。

 だから、少女が一瞬見せた逡巡と憂愁の表情が、目に入ることはなかった。

 鉄槌を持った幼い外見の〝悪魔〟が、得物を振り上げる。

 

 嫌だ……嫌だ…嫌だ、いやいやいやいや! 嫌だよ…まだ…死にたくない……死にたくはない……まだ…生きたい…生きていたい。

 生きたい!

 助けて!

 

 その時、レイジングハートから〝あの光〟が煌めいた。

 

 

 

 

 

 

 相手から見れば、何が起きた? であったことだろう。

 目の前で脅える少女のデバイスから、突然煌めきと見たことも無い紋章が発され、そこから飛び出した光が突進、正面からもろに受けた少女は痛みに耐えながら後退し、ビルから脱出した。

 

『Scythe Slash』

 

 少女の得物なデバイスのものとは違う電子音が響き、咄嗟に回避、第二破が来ると見越して、魔力刃の斬撃を振りおろしてきた誰かから、距離を取る。

 自分と対峙して、浮遊する人が2人いた。

 いや、もう片方は人と呼べるのか?

 一人の方は、さっきの白いやつと同じくらいの歳で金髪、仲間であるとある戦闘狂な剣士と同じ、その髪を一纏めに縛り、黒いバリアジャケットとマントを羽織らせ、刃が金色の魔力でできた大鎌を持っている少女。

 そしてもう一人は、銀色に緑色のラインが走ったスレンダーなボディ、顔には顔らしいパーツは無く、代わりに金色に発光する光体があった。

 自分たちはそれなりに長生きだが、こんな野郎は今まで見たことない。

 どちらにしろ、こいつらはあの白い奴の――

 

「仲間――」

 

 ――なのか? と思わず尋ねていた。

 

「答える義務はありません、〝あの子〟の言葉を無視したあなたに」

 

 レイジングハートのコア部分の鏡面から現れて、少女に拳を振るった銀色の人、ミラーナイトは独読の高音の声を冷たく染めながら答え。

 漆黒と金色の魔導師、フェイト・テスタロッサはと言えば、静かに、だがはっきりと聞き取れる声量で、ただ一言。

 

「〝友達〟だ」

 

 ――と、発した。

 

 

 

 

 

 かくして、長きに渡る戦いの幕は、上げられた。

 

つづく。

 




お読みになった通り、のろいうさぎが付いた帽子がなのはの砲撃で消滅展開はばっさりカットしております。
ただでさえ彼女たちの行為はお世辞にも褒められたことじゃないのに、彼女に逆ギレさせる展開なんてとてもできなかったもので。

ゼロが主人公なのに本人が全然出ない第一話ですが、もう少しお待ちを。
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