ウルトラマンゼロ The Another Lyrical Story 第一章   作:フォレス・ノースウッド

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STAGE11 - 絶えぬ疑念

 ウルティメイトフォースゼロ、ウルトラ兄弟の一人なウルトラ戦士、民間魔導師に時空航行船アースラクルーらによって構成された対闇の書特別捜査本部が日本国神奈川県海鳴の高級マンション最上階に置かれてから数日過ぎた。

 実はこの臨時捜査本部、海鳴だけにあるのではない。

 本部としている場所がもう一つある―――月の地表。

 ナオト・J・フライトが、宇宙船でもある巨大ロボット、鋼鉄の武人ことジャンボットであるのはご存じであろう。

 彼が魔力プログラムで肉体を構成された人間=ナオトでいる間、ジャンボットとしての鋼の肉体は、現在月面に隠してある。

 何を隠そう、ここがもう一つの捜査本部であるのだ。

 地球側に特定されないよう、対策もされている。

 説明が少し長くなるが、ジャンボットの体が、表面の装甲から生物なら骨にあたる内部の金属フレームまで、ナノマシンで構成されている。

 ナノレベルの極小さを誇る機械、ナノマシン、ジャンボットにとっては人間でいうところの細胞にあたる。

 このナノマシンと言う名の細胞たちは、地球製や管理世界製のマシンではありえない機能を持ち、例えば自己修復機能、右腕の籠手、ガントレットをガトリングガンへと変形させたり、どうみても収納するスペースが見当たらないのに左腕や頭部が現れるのも、ジャンバード時にはナノレベルで分解され、機体内部にある四次元空間で格納されている部品群である為、それらの部位は、必要時には瞬時に構築させられる。

 創作風に言うとケレン味の利いた、地球の科学力では無理がある変形を実際に行えるのは、このようなカラクリがあるのだ。

 他にも表面の装甲を周辺の空間の色調と合わせることで、迷彩にもなる、動いてしまうと微かに空間がゆらいで隠れていることがばれてしまうが、要は動かなければ良いだけだ。孫子の教えである〝動かざること山の如し〟になるだけで、周囲からの発見率は格段に低くなる。

 これらの機能によって、地球の衛星から姿を捉えられ、NASAに異星人の存在を実証されたりすることはない。

 

 さて、前置きはこの辺にして、今月面に隠れているジャンボットの宇宙船形態ジャンバードのブリッジでは。

 

「今までの調査で分かったことを整理するぞ」

 

 諸星勇夜ことウルトラマンゼロ、高町光ことミラーナイト、今はAIデータ――意識がジャンバード本体に宿っているナオト・J・フライトことジャン。

 ユーノにアルフのメンツだ。

 他のメンツはどうしているかというと。

 クロノたちは、各次元世界に出没している騎士の広域サーチ。

 アリシアはプレシアと、レイジングハートとバルディッシュの強化プランを練り。

 そしてなのはとフェイトは、おおとりゲンことウルトラマンレオからのご指南による修行に励んでいる最中、である。

 ジャンバードのブリッジは、王制国家エスメラルダの家紋が付いた自動扉部分を除いてほぼ360度のスクリーンで月の地表を映し、中央には円形に僅かに盛り上がった凸―エスメラルダ王家用の玉座を収納している。

 玉座以外にも座席は存在し、玉座周辺に備えられ収納状態から展開された椅子に光(リヒト)とユーノとアルフが座り。場を仕切っている勇夜はと言うと正面に添えられ、写真などの捜査資料が貼り付けられた長方形の半透明スクリーンの横に突っ立っている。

 

「そう堅苦しくなんなくてもいいんだぜ」

「すみません、何と言いましょうか…」

「何かさ、前に見た刑事ドラマっぽい感じがあってさ、つい身構えちまって」

『それほどまでに気負わなくていいぞ、たるみ過ぎない程度にリラックスするといい』

「「はい(はいよ)」」

 

 未来的に洗練されているが、確かに刑事ドラマで出てきそうな捜査会議風景にも見える。

 モニターに映った、魔導師襲撃事件の被疑者、ヴォルケンリッターたちの写真とかがそうだ。

 

「最初の報告は、僕からでよろしいでしょうか?」

「いいぜ」

『主と私で、狐耳の少女のことを調査していたのですが、本局のデータに興味深い事柄を発見しました』

「あの女の子の正体が分ったんですか?」

「はい、まだ断定はできませんが、恐らく彼女は、《魔源種(まげんしゅ)》と呼ばれる生命体です」

「マゲン…シュ?」

 

 狐耳の少女と同じく、人間の体に動物の耳と尻尾を生やしている特徴を持つアルフが、聞きなれない単語に対し、キョトンとして頭を横にかしげた。

 なんとなく頭の横に?マークが現れてそうな雰囲気である。

 

「突然変異で、リンカーコアと膨大な魔力を宿した動物たちの総称ですよ」

 

 少し前にも話したが、狐耳の少女――久遠の正体は、突然変異で莫大な魔力を有するリンカーコアを抱え、その魔力が筋肉、臓器、脳の細胞を活性化、人並みの知性と、肉食動物を上回る戦闘能力を得た生物へと進化した生けるもの。

 あらゆる種族がなりえる可能性を持っているが、天文学的数字ほどではないにしても、変異する確率は低い。

 そのためもあり、管理世界でも魔源種のことを知っている人間は生物学者など一部の人種に限られている。

 

「へ~~そんなやつらがいたのね」

「何を言っているのですか、魔源種はあなた達使い魔のモデルとなった方々なのですよ」

「ええーーーーっ!」

 

 光の思わぬ不意打ちな一言にアルフは耳と尻尾をぴょんと跳ねながら絶叫、勇夜たち他の者も驚きを隠せない様子だ。

 そう、アルフたち動物に魔力で編み上げた魂を定着させて誕生し、魔導師をサポートする使い魔たちは、魔源種たちの生態を元にして生み出された。

 魔源種の中には、変身魔法に近い妖術で、人間に変身できる者も存在が確認されており、それを生かせないかと研究を重ねた結果、この世に使い魔という概念がこの世に現界されたのだ。

 

「どうりで、アルフたちと似ている点が多いわけですね」

 

 モデルとなれば、動物の耳と尻尾を生やしている点が共通しているのも納得。

 特に意識せずとも、心が勝手に感心したくなる一同である。

 

 光からの少女に関する情報はこれのみ、というわけではない。

 彼がもう一つ提示したのは、海鳴に伝わるというある妖怪狐の伝承であった。

 今から約250年前、人間に化けることができたその妖狐は、薬売りをしていた青年と恋に落ちた。

 同時期に、浅間山の大噴火を端に発し、現在では『天明の大飢饉』と名付けられた全国規模の飢饉が起き、海鳴でも火山灰による冷害、さらに伝染病が蔓延、ただ一人薬売りとしての職柄なのか、感染が免れた青年は、一連の災害で狂気に陥った村人たちによって天災を起こす神仏を諌める生贄に祀り上げられ、殺されてしまう。

 村人たちの理不尽に対し、妖孤は我を忘れて怒り狂い、海鳴の山々を焦土の砂地に変貌させるまで暴れまわり、最終的に人間たちによって昇天したという。

 妖孤の怒りで、我を取り戻し、自らの愚かしさを恥じた人々は、彼女を供養するための塚を作ったのだという、これは青年が妖孤の呼び名として使っていた名称から取って『久遠塚(くおんづか)』とつかられ、現在でも八束神社の裏の森に残っているとのことだ。

 

「興味本位で調べてみたのですが、明治、今からおよそ150年くらい前まで、海鳴は木々の育たない荒地だったそうなんです、それに件の伝承に出てくる人間の姿となった妖狐の格好が、あの少女と同じ巫女姿と同じなのですよ」

『伝承と同じ容姿をした魔源種……か…』

 

 勇夜も後味の悪い話しで、口の中が苦味一杯となり、ちょっと天然入ったとある先輩ウルトラマンから聞いた『怪獣使いと少年』の話を思い出してしまった。その話は、詳しく話せば長くなり、聞いた者を鬱状態に陥らせてしまうので割愛するが、久遠塚の伝承と同じく、偏見によって思考を停止させ、狂気の底へと落ちてしまった地球人と異星人との間で引き起こされた悲劇だ。

 魔源種の存在と、魔法文化ない地球生まれでありながらリンカーコアを宿したなのはの例をとれば、あの伝承がほぼ実話であると見ていい。

 ともかくだ、あの狐耳の巫女少女が地球に生息する魔源種であることは判明された。

 

『本題に移ろう、次は魔力蒐集を続ける守護騎士たちだ』

 

 ここ数日も、各次元世界で特に魔力を宿した生物を中心に、リンカーコアが極端に縮小された事例が確認されていた。

 ただ、数日前より異なる点がある。

 今まで、地球から個人が転移魔法、すなわちテレポートで移動できる範囲内でしか現れなかった騎士たちが、クラナガンで出現し勇夜と戦闘を行った日を境に、より広範囲に出没するようになったこと。

 同時に、無人の次元世界を中心に、ゼロたちウルトラマンの世界に生息する怪獣たちが出現したことだ。

 出現した怪獣たちは、アーストロン、グビラ、ゴルザ、レッドキング、ガマクジラ、アストロモンス、キングザウルス三世などだ。

 外来種による固有種の駆逐が日本で問題になっているように、怪獣たちによって、その星の生態系が破壊されるのを防ぐため、勇夜――ゼロたちが対応せざるを得なかった。

 

「なんであいつらの転移範囲が急に広がったんだろうね? やっぱり怪獣を呼び出してる奴らが成り済ましてるのかい?」

『その線が妥当だろう、目的は恐らく……我々への捜査妨害とかく乱、よほど騎士たちの所在を知らせたくはないのだろうな』

 

 何らかの目的をもって、蒐集の手助けのために、おおとりゲンとやり合った仮面の戦士含めた第三勢力が守護騎士に化け、複数の世界に現れたるとを見せしめることで、本物か偽か、こちらを混乱させるのが魂胆。

 現に管理局は対応に追われ、怪獣の出現、勇夜たちの正体が仮にバレテしまった場合の対策を予め練った上での、本局への増員要請も見送られてしまった。

 おまけに、怪獣の出現は決まって、守護騎士が現れたのと同時刻に起きる。

 脅威の度合いでは、災害を誘発する怪獣の方が上なので、対抗できるウルトラマンゼロら巨人の戦士たちは彼らの対処を優先せざるをえない。

 状況によっては、止むを得ず倒すか、リンクを持つゼロの次元航行能力で、生息している惑星に送り返したりしている内に、逃げられてしまう流れを繰り返されていた。

 姿をはっきりと見せず、怪獣、異星人を使役して管理局を翻弄する第三勢力、だが勇夜たちも負けてはいない。

 

「どっち道、グレンと守護騎士の奴らが、海鳴にいるのは違いないけどな」

 

 海鳴に捜査本部を置いて以来、勇夜、光、ナオトの三人は、ゲンが騎士の一人と接触したときに見た、市内ではあちこちに存在する『関東スーパー』レジ袋から、書の主は海鳴市と隣接する市町村に潜伏していると踏み、市内に複数店舗が置かれているスーパー周辺を重点的に聞き込み調査をしていた。

 騎士達が日本人を通り越して地球人離れしていることもあり、街中で彼らを見かけた市民は結構な数で存在していた。

 まだどの地域かはまだ分からずじまいだが、市内の端、市町村の境に近づくほど、彼らの目撃談が少ないことと、さらに―――モニターボードに表示されたのは、少々不気味なデザインで子ども受けしなさそうなウサギの人形と、同形の顔人形が二つ付いた鉄槌の少女のベレー帽のズーム写真の二つ。

 人形の商品名は『のろいうさぎ』。

 関東でこれが販売されているのは、トイ○ラス海鳴支店のみ、購入されたのは今年でたった一回だけときた。

 聞きこみ等の情報収集の結果、主が海鳴市民である線は、この数日で確たるものとなっていた。

 この『うろいうさぎ』によって明らかになったのはほかにもある。

 勇夜はモニターボードをタッチすると、一年の暦が横並びに現れる。

 彼は7月に人差し指を差し。

 

「ト○ザラスで『のろいうさぎ』が買われたのが7月、蒐集が起き始めたのが10月に入ってからだから…」

「闇の書の最初の覚醒の時期は、それよりも以前になりますね、最低でも購入記録より1・2カ月は前でしょう」

「それならそれで、どうして10月から、今まで渋っていた蒐集を急に行い始めたのでしょうか?」

 

 闇の書が起動し、騎士たちの蒐集活動が確認されるようになってから、数か月の空白期間が存在している、という事実と。

 

「お人形さんを買ってもらってる辺り……昔の〝あたしら〟より恵まれた生活をおくってそうだし……」

 

 まだ推測の段階だが、情報を集めれば集めるほど、闇の書に選ばれた海鳴市民でもある日本人または日本在住の地球人かもしれない主の人間像が、善良のベクトルへと傾いていく、という疑問点だった。

 

 アルフの言う通り、一昔前の使い魔は魔導師のサポーターでもあり、奴隷的な立場であった。

 主人である魔導師と交わされた契約を果たせば、主からの魔力供給は絶たれ、使い魔は消滅という形で死ぬ、それがかつての使い魔たちに科せられた宿命。

 この余りに非人道的なシステムによって、現在使い魔を生み出すには、専用の資格を取得する為の試験をパスし、契約期間が、主人である魔導師が死亡するまでである条件を了承しなければ生成できないように法律で定められている。

 当然フェイトも、P.T.事件の裁判を受けている間、嘱託魔導師の試験と同時に受け、パスして資格を手得済み。

 闇の書と、その主の守り手であるヴォルケンリッターたちも、現在の主以前は、過去の使い魔たち、下手すると彼らよりも非道な扱いを受けていたはずだ。

 管理局の記録だけでも、騎士たちは蒐集行為を強要され、奴隷同然の待遇で酷使されていたとあった。

 

 ところが……だ。

 

 調査とプロファイルを重ねていけばいくほどに、彼らが人並みの生活を謳歌しているという仮説が急激なスピードで浮かび上がってくる。

 クロノの話しによれば、過去の守護騎士たちは人の姿をしてはいるが、感情を持たない、ただ主の命令を忠実に実行に移すだけのマシンであったという。

 それがどうだ?

 実際顔を合わせた勇夜たちから見て彼らは、使い魔に似た狼男を除けば、外見に反せず人間そのもので、全員がそれぞれ異なる人間性に性格と、明らかに感情を持ち合せている生命体であった。

 守護騎士、異世界から来た巨人であるグレンファイヤー。日本では妖怪の類な狐の魔力種。

 人の理から外れた者たちと共同生活を送っている点と、空白期間から見ても、主は人間や生き物から魔力を抜き取る行為を良しとせず、むしろ家族同然に暮らすことが望みで、騎士たちも主の方針に賛同していたとみて相違無い。

 

 ならばなぜだ?

 

 ユーノもその疑問を口にしたのだが……どうして彼らは一度は手放したはずの〝武器〟を手に取り、戦いに身を置くようになったのか?

 それが最も腑に落ちない。

 騎士たちに協力していた魔源種の少女はともかく、グレンは彼らを守る意志はあったが、蒐集そのものに全面的に同意していたわけではなさそうだ。

 一体彼らに何が起きたのか?

 9月の……それも下旬ごろに、騎士たちを蒐集に駆り立てる決定的な何かが発生したと思われるが、その肝心な『何か』は天高くそびえる巨大な壁によって阻まれてしまっている。

 一言で言うなら手詰まり。

 捜査はここに来て行き詰まりの現況となっていた。

 せめて、主の手掛かりがあれば良いのだが、騎士たちの目撃例はあっても肝心の主の方はさっぱり。

 どうも騎士たちは、所在が開かされない様に、主に〝石ころ帽子〟を被らせているようである。

 情報と言う名の追い風は、ここに来てぱったりと止んでしまい。

 勇夜たちは海上(ぎもん)のど真ん中で立ち往生を余儀なくされていた。

 

「ウルトラマンノアが勇夜に話してくれた内容も気になりますし…」

 

 

 

 ………………………………………………………………………………

 

 

 

 さて、ここからはあの日の明晰夢内でのゼロとノアの会話を再生する。

 

「あんたが闇の書と戦っただって!?」

『そうだ、いつの時代かまでは覚えていないが、完全覚醒した闇の書と私は相まみえたことがある』

 

 ノアがこの世界のロストロギアと戦闘を行ったと聞いた当初は驚いたが、実はありえない話ではない。

 このウルトラマンは、背中に生やした突起――ノアイージスによって次元を自由に渡り行くことができる。

 同じ世界と世界を転々とし、次元レベルでの災害を引き起こしかねない闇の書と、過去にご対面しててもおかしくはない。

 ノアの話では、ある次元世界の惑星に来た時には、その星は書が暴走したことで生まれた大都市を呑みこむまでの巨体を持った巨獣によって、粗方破壊しつくされていたという。

 

「無限再生能力…」

 

 彼によると、闇の書は脅威的な復元再生能力を持ち、いくらダメージを与えても瞬く間に再生されてしまう。

 全世界に存在するウルトラマンの中で、最強クラスの力を有する彼でも、書のタフさに手を焼かれたらしい。

 しかも、多人数の魔導師と生物から魔力をむしり取った闇の書の暴走体は、巨大な火薬庫と化し、再生が追いつかないまでの大火力攻撃で破壊しようとすれば、その世界ごと巻き添えにして消し去る結末に至ってしまうと来た。

 意を決したノアは、彼の体内の全エネルギーと引き換えに、対象を次元と次元の狭間の空間に閉じ込めてしまう最後の禁断の技。

 

『ノア・ザ・ファイナル』

 

 によって、闇の書を時空の牢へと封印したのである。

 

「それでナオたちの〝光〟で復活するまで、鏡の星の神殿で寝込んでたってわけか…」

「その表現が適切かは測りかねるが、大方君の言う通りだ」

 

 力を使い果たしたノアは、偶然にもかつて自分が救い、己の力の結晶であるバラージの盾を与えた。ランとナオ兄弟、エメラナ、ミラーナイトたちの宇宙の二次元世界に到着し、鏡の惑星の地下神殿で休息の眠りに着いたのであった。

 時空管理局のデータベースによれば、闇の書はおよそ10年周期に現れるとあるが、数十年間書が主を依り代に出現しなかった期間があり、その不自然な開きこそ、ノアによって封印されていた時間であった。ちなみに、バラージの盾の欠片をラン・ナオ兄弟の一族が持っていたのは、彼らのご先祖が、ノア及びネクサスと一心同体となった人間、適格者デュナミストであったことに他ならない。

 

「ゼロ、闇の書についての報はもう一つある」

「何だよ」

「私も詳しくは知らないが、〝闇の書〟という名はあの魔導書の本来の名では無い、積み重ねられた悲劇によって付けられてしまった〝蔑称〟だ」

「そいつは……本当、なのか?」

 

 どうにも、あの魔導書自体、本来の使い道から外れてしまった代物で、システムの根幹が故障したまま、転生を繰り返しているとのことだ。

 さしずめ『闇の書』は、その転生による災害の煽りをくらった人々の憎悪の結晶というわけだ。

 

『私がかの書物について知っているのはこれだけだ、些か拍子抜けしたかもしれないが…』

「そんなことないぜ、手かがりとしては上等だよ」

 

 少しでも魔導書の情報が欲しかった身としては、この上無い吉報だ。

 

「ありがとう…ノア」

「そうか、では頼むぞ……ウルトラマンゼロ―――――――」

 

 ウルトラマンノアは、神々しさは感じられるが、同時に淡泊でもあった口調に、ゼロを後押しするかのように感情の色を込め、彼にエールを送るのであった。

 

 

 ………………………………………………………………………………………

 

 

 

 銀色の流星によって、闇の書の特性の一端は判明したが、それでもまだ腑に落ちない点が残っている。

 ノアのような超常的で神秘の力を持つ存在でさえてこずる、次元災害レベルの災厄を引き起こす闇の書の完全覚醒を、なぜあの騎士たちは行おうとしているのか?…………生憎、本局のデータベースには、書が過去に引き起こした惨劇の記録がメインで、書そのものについての記述は心許ない。

 『闇の書』という名前が、俗称の類であることさえ、ウルトラマンノアを通じて知り得た事柄だ。

 

「どこかに、ロストロギアについての記述が記された史料が保管された施設は無いのですか?」

 

 ふと、光が口にした過去の記録の保管庫の存在を追及する質問に対して――

 

「光さん、その……実はですね…」

「一応……あるにはあるんだけどさ……色々問題があるって言うか………問題塗れとでも言うべきか」

「………?」

 

 ――どうにも歯切れを悪くさせて、大っぴらに言いづらい自身の心情をちらつかせながら答える勇夜とユーノ。

 二人の思わせぶりな態度に、頭を傾げたくなる光とジャンバード。

 今は宇宙船なジャンバードに、傾げる頭は無いと言ってはいけない。

 

「管理局本局には、無限書庫っていう、管理世界のあらゆる書物記録を保管した書庫があるのですが…」

 

 そうして、ユーノからその無限書庫の大まかな概要の説明を受けた光とジャンバードはと言うと――

 

「地球上の全ての博物館員を表彰したくなりましたよ…」

『それは奇遇だなリヒト……私も同じ心情だ…』

 

 ――と、どんよりテンションを低くして項垂れていた。

 主に……その施設の管理体制に対して…だ。詳細は今度の機会に実態とともに教えるのでお待ちしてもらいたい。

 いずれにしろ、闇の書と呼ばれるようになってしまった魔導書そのものについて調べるのは、その無限書庫がうってつけなのも実情なので。

 

「本局さんに閲覧申請を出すから、魔窟(しょこ)の探検…頼めるか?ジャン、ユーノ」

「はい、むしろ望むところですよ」

『私も異論は無い、たとえ書庫が魔窟にも等しい混沌とした管理下であったとしても、贅沢は言ってられない』

 

 と二人は覚悟を持って無限書庫に挑むことを表明した。

 大げさと言われるかもしれないが、実物を目にすれば、彼らの書庫に対する表現やリアクションが、決して誇張されたものではないことを思い知らされるであろう。

 

「俺はレイジングハートとバルディッシュのカートリッジパーツを取りに行ってくるから、先に帰っててくれ」

「「はい」」

「あいよ、でもあんまり遅いと、うちのご主人様がへそをまげそうだから、早く帰ってきてくれよ」

「わかってるよ……晩飯までには戻るさ」

 

 アルフの催促に、照れくさい心境などの時によくやる癖、鼻をこする動作を見せながら答える勇夜。

 というわけで、一部の構成員たちではるが、ジャンバード内での捜査経過報告会はお開きとなった。

 

 

 

 

 ある意味、彼らはかなりの速さで真実へと近づいているが、まだまだ地上の光が届く範囲までしか掘り進めていない段階だ。

 そしてその先の深層部にあるのは、ひたすら暗黒に塗り染められた、悲しき性(さが)と宿命に狂わされた真実であった。

 

つづく

 




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