ウルトラマンゼロ The Another Lyrical Story 第一章 作:フォレス・ノースウッド
リンディから支給されていたミッド製携帯電話端末が握り、先程まで彼女と連絡をとっていたゲン。
「おおとり先生、何があったんですか?」
なのはとフェイトは、彼に何の連絡が来たのか尋ねた。
「今武装局員が張った結界内で、弟子たちとヴォルケンリッターが戦端を開いたそうだ」
「え?」
「本当ですか!?」
守護騎士たちと武装局員たちの接触を端に発し、勇夜、光、アルフが強装型の封時結界内で、ヴォルケンリッターと交戦を開始したことは、桜台登山道広場での修行場の内でも、報せが生き届いていた。
その連絡内容の詳細をゲンから聞いたなのはとフェイトの様子を見たゲンは、二人の心中を瞬時に掴みとり。
「すまないが、君たちを結界(ここ)から出すわけにはいかない」
「どうして…分かったんですか?」
「君たちの顔に、ゼロたちの下に駆け付けたいと書いてあったからだ」
「「…………………」」
何度目かもしれないが、二人が闇の書事件にも関わろうとしているのは、騎士たちが半年前のフェイトと同じ、『強い意志で自分を固める余り、周りの言葉が入らない現状』と『どうしてもそうせざるを得ない』理由があると感じ取ったことと、蒐集の裏に隠された謎を日々突き止めよう尽力し、今こうして激闘に身を置いている戦士たちに助力したいからだ。
それを承知で、ゲンは二人のご指南を買って出て、みっちり鍛え上げてきたこともあり、彼女らの心境が手に取るように理解できた。
「ユーノ君とクロノ君が、闇の書のマスターさんを探してるんでしょ?」
「捜索くらいなら、私たちでも十分手伝えます」
ただし――――理解ができてしまうからこそ。
「最初の日に言った筈だ、私の認可が降りるまで実戦には出さんと、それにレイジングハートとバルディッシュの改修とシステム調整はまだ終わっていない、プレシアさんたちも、万全では無い内は君たちに君らの矛を託す気は無いだろう」
「でも……このままこの結界中で待ってるなんて…わたしたちには……」
「ならん! 半身も同然な愛機もなき半端な君らがのこのこと戦場へ出て行っても、戦闘経験では長のあるべルカの騎士たちに返り討ちに遭うだけだ!! なぜゼロたちと、彼らをサポートしている局員たちを信じられない」
「「っ……………」」
だからこそ、今の彼女たちをこのまま外に行かせるわけにはいかなかった。
彼女たちのAAAクラスの魔力量は、ヴォルケンリッターたちにも、仮面の男ら第三勢力にも、格好の獲物。
まだ一連の訓練メニューを修了しておらず、二人の相棒もまだ完全に改修作業を終えていない。
ゲンの言う通り、そんな中途半端な身で戦場に踏み込めば、手痛い敗退を受け、為す術なく、リンカーコアから魔力を略奪される可能性の方が高かった。
そのゲンもかつて、先日も弟子と一戦まみえたツルク星人によって宇宙パトロール隊MACのピンチに陥った状況に焦る余り、修行中な身でありながらそれを放棄、怪獣となって巨大化した星人挑んで、完膚なきまで叩きのめされ、完敗を喫したことがある。
ツルク星人に限らず、先走って痛い目を見て、悔しい思いを体験させられることになる挫折を幾度となく味わってきた獅子、それがゲン――レオの地球での戦いの日々のある一面。
これらの経験があるだけに、焦燥で感情を先走らせてしまうことが、どれだけ危険な結果を招くことになるか、ゲンは身に染みして理解しているがゆえ、どうしてもなのはとフェイトを、今行かせるわけにはいかなかった。
かつて自分が味わった同じ痛みによって、二人を傷つけたくは無かったのである。
その為なら、いくらでも〝憎まれ役″に徹する所存であった。
「焦る気持ちは分からんでも無い、だが彼らに助成する前にやらなければならないことを、君たちは忘れている」
「あの……それって」
「過去(それまで)の自分自身との戦いに打ち勝つことだ、なのは、フェイトよ、今君らが戦う相手は己自身、弟子たちに背中を託されてほしければ、修行を続けろ、今は耐え時だ、いいな」
片手を腰に添え、もう片方を突き出した宇宙拳法の構えを見せ戦闘態勢をとり、一時中断されていた模擬戦を再開する旨をその身で示すゲン。
「「はい」」
「さあ………いつでも来い!」
口の中に金臭くて、苦いものがこみ上げながらも、二人は幼いながらに、今の自分たちが優先しなければならないのは鍛錬、それに励むことしかできないと、己に言い聞かせながらデバイスを構え、宇宙拳法の構えをとり対峙するゲンとの組み手に再び臨み行く。
想い人たちへの背中に、少しでも追いつこうとするイメージを、頭に刻みつけながら、いつか辿り着いてみせると、意気込み、少女たちの戦いは、続行の火蓋を切って落とされるのであった。
それぞれ戦う相手を目線で打ち交わした後、脚を付けていたビルの屋上から飛び降りた諸星勇夜ことウルトラマンゼロと、烈火の騎士シグナム。
常人たちのよる、傍から見た視線では、どちらも大うつけの愚か者と見られてもおかしくない………どころか確実にうつけとみなされる。
どちらも高層ビルの頂から、命綱も無しに跳び上がったのだから。
しかし、常識の範疇ならコンクリートに叩きつけられ、衝撃で体をボロボロにされ、天へと召されるゆく運命でも、この二人の場合、簡単にそれを覆してしまう異能を持ち合わせていた。
八重桜の剣士は、古代ベルカ式の飛行魔法によってゆったりと一般国道のど真ん中に降り立ち。
いまは夜空よりも深みのある黒いデニムジャケット、自身のバリアジャケットを身に付けたウルトラ戦士の人間体たる勇夜は、ウルトラテレキネシス―念力を大地に向け発し、落下速度を緩めて着地した。
なお二人が、屋上から降りたのは、偶然自分が戦いやすいフィールドに移ろうとした思考が被ったためである。
〝似ている…………この私と、どこか〟。
相手を注視しながら、彼女は内心呟いた。
今の独白は、シグナムが今コンクリートジャングルの合間のアスファルトにて相対している少年への第一印象。
似ていると感じたのはまず見た目、鏡を見ているかのように何から何までそっくりというわけではないが、身を構成している部分はかなり共通点がある。
髪は綺麗に艶を帯び、長めに伸ばして耳と平行になる高さで後ろ髪をポニーテールで結んでいる。
そんなどちらかといえば現代の男性には合わなさそうな髪型と、遜色なく溶け込ましてしまう、どちらの性でも上位に相当する中性的な顔つき、 今まで何十、何百年と転生を繰り返しながら、ひたすら剣と騎士の道に準じてきた自分でも、この少年は他者を惹きこんでしまう容貌を備えていると、はっきり言える。
やや目じりのつり上がり様が強く、本人にその気が無かろうと相手を縮こませる威圧感を醸し出す眼力があり、男なら男らしく、女ならば漢女と言われそうな趣があるが、全体の顔つきの整いようは……最早凛々しいと表現すべき域へと達していた。
これらの点はシグナムにも該当しており、ある意味で両者は〝瓜二つ〟ととも言える。
そして共通点は、両者の得物も然り――どちらも、片刃の刀剣。
シグナムのレヴァンティンは、サーベルとソードの要素を掛け合わせるというコンセプトを下に作られた直剣。
一方少年の得物は、オートマチック型ハンドガンの木製グリップを連想させられる形状とトリガーボタンが付いた柄。従来の日本刀に付けたれたものより分厚く、形は三角というより台形寄り、青緑色の光る楕円状の球体が付いた黒い唾。
元の柄と唾の原型をできるだけ留めさせつつも、デバイス特有のメカニカルさが印象的なデザインではあるが、鞘に覆われている刀身が湾曲したその刃は、紛うことなきこの国、日本特有の刀剣―――『日本刀』――――であった。
文献、テレビやインターネット越しで、シグナムはその『刀』を何度か拝見したことはあったが、デバイスとは言え本物の真剣を直にこの眼で目にするのは、これが初めてだ。
そして、自らが持つ得物に負けず劣らず、持ち主の眼光も、若年の外見に似合わないようで、違和感を払拭させるまでに溶け込ませ、磨き上げられた刃を秘めていた。
だが、その少年に対して浮かび上がる妙な関心は、その容姿だけでは無いような気がする。
詳細は……自分でも関心の正体をはっきり測ることができない。
ただ―――
「貴様、どこかで私と会ったか?」
―――彼の佇まいに対し、どうにも得体のしれない既知感――デジャヴが彼女の意識をよぎっていた。
少なくとも、彼と会ったのはこれが初めて、その名前も、結界に侵入した際、ネットワークで相手方の情報を集めていたシャマルから聞いたばかりだ。
諸星勇夜―――それが今自分と対峙している、彼の者の名。
戸籍上は現在15歳の少年、社会での立ち位置は、時空管理局嘱託魔導師。
その若さにして、異名を付けられるまでの実力を持ち合わせた魔導師にして剣士であり、戦士であると言う。
その異名とは―――〝魔導殺し〟―――名の由来は、魔導を用いずとも、剣技と体術で、魔導師を地に伏せてしまう技量を秘め、なおかつ魔導師としても才に恵まれているという。
二つ名があるところから見て、十分名の知れた魔導師であるのだろう。
「さてな……道端でそっくりさんとすれ違いでもしたんじゃないか? ヴォルケンリッターの烈火の騎士さん」
彼は先のシグナムの質問に対し、明らかにはぐらかした態度と粗暴な口調で返答をしつつ、左手に持った刀を腰に近づけ、右手を柄に添えた。
一般的に〝居合〟という名称で広まっている鞘の中に納め、反りの入った刀を素早く鞘から抜くと同時に斬り付ける剣技――――抜刀術(ばっとうじゅつ)。
これはその前振り、いわゆる居合腰と呼ばれる構えである。
その無駄なく整った所作と姿勢と、研ぎ澄まされた闘志の気迫を前にして、シグナムの心に、震えという名の電撃が走った。
彼女の場合、震えとは、恐怖の感情と指すことではない。
強者にこうして相対したという幸運によって沸き上がる……心からの喜び、愉悦、これ即ち――〝武者震い〟のことを指す。
シャマルから聞いた彼の噂は、本当だと見ていい。
彼から発する魔力、以前にトリコロールカラーの超人―ウルトラマンと戦ったあの夜に刃を交わした、金髪紅眼の黒衣の少女ほどではないが、それでもAAAクラスの量を持ち合わせている。
それだけではない。
彼が今、披露した居合腰。
何という………美しい構えだろうか。
徹底的に無駄を排し、張りつめた緊張感と〝気〟を発した、実戦的な物腰ではあるが、そのくせ…美術刀などの芸術的側面を宿した武器を、この目にした時の何とも形容しがたいし難い、美への快感を、今この瞬間………この身で感じてしまった。
本来、人間なら何十年もかかる、達人による磨き抜かれた居合術を、この勇夜という、見た目は若輩者なこの男はモノにしている。
騎士としての経験による直感から、目にしただけで、
その若さで、この出様を見ただけでも、相当な剣の技量を持っていることが窺えた。
〝魔道殺し〟の噂に、嘘も、誇張も無さそうだ。
でなければ、管理局が彼に協力を仰いで、こうして前線に出させたりはしない。
その様相、その眼力、まさしく本物の戦士(もののふ)。
強敵として相まみえるに相応しい相手だ。
シグナムは勇夜の居合腰を前に、レヴァンティンの柄を左半身側の頬に寄せ、剣先を前方に突き出し、構えて応じた。
まさか、グレンの友、別の次元に存在する宇宙の、M78星雲の超人〝ウルトラマンゼロ〟に続いて……この現代で、自分と対等に戦える者と出会えるとは、なんと僥倖なことであろう。
これでは、己の血が熱く滾ってしまうではないか。
強者と心置きなく、熾烈に戦い、死合う場に歓喜を見出す本能が……だ。
これは前に紅蓮からも指摘された、自分の悪い癖だが、障害を叩っ斬り、状況を打破する為、十二分に利用させてもらおう。
下手な手加減は、むしろ彼の者のような兵には、むしろ無用の長物というものだ。
未だ彼へのデジャブの正体が掴めずじまいだが、現状は保留ということにしておく、なに…案外戦っている内に、詳細が浮かんでくる可能性も無きにしもあらずだ。
おっといかん、本来の目的を忘れぬようにせねば。
ヴィータたちを閉じ込めたこの結界からの脱出、奇しくも以前の海鳴でも戦闘と、立場が逆転していた。
これもまた、因果と呼ぶべきか…………まあいい。
本筋から逸脱しない範囲を見極めながら、今宵は奴と全身全霊を以てして、互いの剣技、剣舞を交わし合うとしよう。
「瑣末なことだった、先程の問いは忘れてくれ、お前の言う通り道端で他人の空似とすれ違ったことにしておく」
「こっちからも前置きに一つ聞いておくが、魔力を掻っ攫ってる理由(わけ)を話す気は――」
「毛頭ない」
「てことは、知りたきゃまず力で叩き伏せてみせろ、と言いたいんだな?」
「そういうわけだ、加減など入れず、存分に斬りかかってこい、〝魔導殺し〟」
「ふっ……上等だ」
異名を呼ばれながらも、勇夜は鼻で笑って過ごした。
それから数秒……互いの得物を構えたまま、言葉も無く、全く微動だにしない時が刻まれていくが、当人たちの体感時間は、それを上回るものであった。
一分……いや、それ以上経ったような感覚、それだけ神がかった集中力を、この二人の剣士たちは持ち合せていると言える。
さらに数秒の後………静かなる状況に、転機が訪れた。
シグナムがその身を僅かに地面から浮かせ、超低空飛行で加速し。
勇夜は、足を地に踏み込み、アスファルトに罅を入れながらシグナムに向け疾走。
「ハァァァァーーー!!」
「ディァァァーーー!!」
二人の間には、12メートルの距離が開いていたが、秒数を片手で内に間合いを詰め、勇夜は零牙を抜刀、シグナムは袈裟がけにレヴァンティンを振るった。
直剣と曲刀、二つの刃がぶつかり合う。
その後、剣士たちは上手く体の軌道を変えながら、擦れ違い、切り抜けた。
だが剣裁の舞は、そこで終わらない。
二人は振り返ると、間髪いれず、同時に斬りつけてきた。
逆袈裟、胴薙ぎ、切り上げ。
余りの早業、両者とも、剣の軌道を常人に全く悟らせないまでのスピードで、相棒たるデバイスの剣を振るう。
それから数合、刃同士の撃ち合いが続き、剣が交わされる度に火花が舞い、足が踏み込まれる度に、アスファルトは彼らの脚力によって、表皮が粉々に砕け散っていく。
カキン、と幾度も金属音が大気を震わせる。
剣裁は、動から静へ、鍔迫り合いによる膠着状態に移行される。
鋭く洗練され、底冷えさせられる鋭利さと、肌を焼き焦がすような熱さが内胞された殺気を放ちながら、刀身を突きつける両者。
再び状況は動へ。
先に動いたのは勇夜。
一端剣を僅かに引き、バランスを崩させてシグナムの体勢を不安定にさせつつ、同時に右足を下段に横合いから蹴り付けることで、完全に崩そうとする。
すんでのところ、シグナムは飛行魔法で後退し、彼の蹴りは虚空を掠めるに終わった。
チャンスは逃さぬとばかり、今度はシグナムが攻勢に転じる。
直刀の大剣を、振りかぶりながら勇夜に肉薄し、上段の一閃をスタートに踏み込み、前進しつつ連続して、斬撃を繰り出していく。
勇夜は、摺り足で身を引きながら、レヴァンティンの軌道を読みつつ、衝撃を上手く緩和させながら受け流したり、少しタイミングが遅れれば流血確実な、ギリギリの間で回避していく。
左からの切り上げを、避けると同時に一回転からの右足正面蹴りをカウンターで見舞わせた。
その一撃にシグナムは、咄嗟に本体の格納領域に納めてあった鞘を召喚させて防御。
斜線の剣劇と鞘の防御の次は、直線の突きがシグナムから勇夜に迫る。
しかし勇夜は身を横に逸らしてかわし、レヴァンティンの間合い内に入り込みと、左腕で彼女の下腹に肘打ちを披露した。
痛みに呻く時間も与えずに、続いて手の甲で鳩尾、頬の順で殴り付け、摺り足で後ろに下がりつつ、右腕の零牙による剣撃を放とうとする―――――が、その前に魔力を相乗して突きだされたレヴァンティンの鞘が勇夜の右胸に直撃。
すぐさまシグナムは続いてすらりとした白磁の足先を相手の腹部に蹴り付けた。
反射的に跳躍しながら後退し着地する勇夜。
どうにか軽減はできたが、ダメージそのものは避けられなかったため、胸を抑えている。
痛みを受けたのは彼女の方も同じで、先の肘打ちが当たった腹部を抑えられ、凛と整った容貌の頬には痣ができていた。
「女相手でも、殴るとはな…」
「いちいち気にする玉じゃないだろ? あんたの場合」
「当然だ」
戦闘の合間、少し言葉を交わされているが、ここで休止も隙を与える思考も二人には無く。
シグナムは、アスファルトにべルカ式の魔法陣を敷きながら、レヴァンティンの刀身が炎を纏い。
対して勇夜は零牙の切っ先を右半身側背後に向けた下段で構えながら、ウルトラ念力で周りの大気を刃に掻き集めていく。
「炎光牙(えんこうが)!」
「バーストストーム!」
虚空を切り裂く両者。
レヴァンティンからは、焔の大玉が、零牙からは風の衝撃波が解き放たれた。
今勇夜が、シグナムの火属性の魔法に対抗して見せたこの技は、以前クラナガンの廃棄都市区画で彼と戦ったツルク星人が披露したソニックブーム、別名かまいたちを元に、独自に発展させて作り上げたのが斬撃技である。
念力で大気密度を上げることで、破壊力を自在に調整が可能している代物だ。
火炎弾ととは、真っ向から正面衝突。
互いの攻撃の勢いは相殺されたが、圧縮された空気の群れに帯びる高密度の酸素が火球に触れたために燃焼の勢いを極度に強めて炎は急激に膨張し、バックドラフト現象に酷似した大爆発が起きた。
その火炎の巨獣によって、周りのビルの地上に近い階層の窓が、バラバラに四散する。
その爆煙とガラスの欠片の群れの合間から、シグナムが突進、真横から薙ぎ斬ろうとするが、勇夜は高く跳躍して免れた。
10メートル近くまで身を180度半回転し、零牙を上段に添えながら飛び上がり、シグナムの背後をとる形で、眼下の彼女に向けて落下しながら一気に振り下ろす。
それを彼女は素早く振り替えながら、レヴァンティン本体と鞘をエックス字に交差させて受け止める。
刃同士の衝突音が、夜の国道に残響された。
しばしの押し合いの後、シグナムは零牙を振り払い、勇夜の下腹部にひざ蹴りを見舞い隙を作ると、斜線を描きながら飛翔、地表から80メートルの地点で滞空状態をとった。
勇夜は地上から、シグナムは空中から互いに眼光をぶつけ合いながら、ミッドの円形型、ベルカの三角型の魔法陣が敷かれ。
「レヴァンティン!カートリッジロード!」
『Jawohl(ヤヴォール)』
ベルカ語とドイツ語で、『了承、承諾、承知、了解』等を意味する、実直にしてクールなマスターとは対照的なハイテンションで応じる愛剣のレヴァンティン。
「リンク!ベータカートリッジを!」
『了解しました』
レヴァンティンに装填された弾丸から魔力を供給、排莢装置のカバーがスライドして薬莢が排出され、メラメラと刃に火炎が舞い上がり。
零牙からも、青緑色の魔力光が渦を巻いて、刀身を包み込んでいく。
さらに勇夜の指示でリンクから粒子が溢れ、彼の左手の掌の中で実体化。
光の巨人、ウルトラマンと、その相棒によって生まれたUSB型次世代タイプ。
『ベータカートリッジ』
勇夜はそれを、零牙の柄頭―――持ち手の端にに備え付けられた差し込み口に装填。
「ロードカートリッジ!」
鍔に備えられた発光体が点灯して、問題無く零牙とカートリッジにエネルギーパイプが繋がったことが示される。
さらに柄に取りつけられたトリガーを人差し指で押すことで、大量の魔力がカートリッジから零牙本体に送りこまれ、その恩恵を受けたことで、刀身を覆う魔力が大型化、光の勢いが嵐を吹きあらすかのように飛躍的に増していく。
「オーラ―――――」
「紫電(しでん)――――――」
魔法の発動させる方法は三種類ある。
特定の単一の語句を発する『コマンド』。
大規模型、儀式型の魔法の発動の際に、定められた長文を唱える『詠唱』。
そしてもう一つ、武器タイプのデバイスが多いベルカ式で特に使用率が高い、特定の動作を行うことで発動する《アクショントリガー》という行使方法がある。
ウルトラマンで言えば、彼らにとって基本にして十八番な必殺光線――《スぺシウム光線》を使用する際、両の掌を伸ばした状態で、右腕を縦に、左腕を横に、十字になるように交差させて発射するのと、同じ要領だ。
ならばなぜ? この二人は動作を行うだけで行使できるアクショントリガータイプの魔法を使おうとしているにも拘わらず、わざわざ技の名称を口にしているのか?
それは、魔法のとある特性によるものだ。
この次元世界での魔法には、精密機械を扱うに等しい繊細なコントロール技能だけでなく、強靭な意志の強さも求められる。
意志―――想いが強ければ強いほど、魔法行使の成功率も、攻撃魔法なら、技そのものの威力も跳ね上げることが可能だった。
己の集中力を高め研ぎ澄まし、さらに技の名称を大きく声にして発して、意志(おもい)の強さを底上げさせることによって、魔法もより強大なパワーが発揮される。
現に、二人の声が引き金となって、刀身に宿る魔力たちがさらに活動を活性化させていた。
そして――――前振りの溜めは、ここで終わりを告げる。
シグナムは、レヴァンティンを横合いに構え、地表に立つ勇夜に向かい急降下。
勇夜は、零牙を上段に添えながら脚に渾身の力を込め、アスファルトの破片を舞い上がらせながら、上空のシグナムへと跳躍。
どちらも、一般の人には輪郭がはっきりと合わせなれないまでのスピードで宙を舞っていた。
両者の距離が、凄まじい速度で縮まり、10メートルを切り、さらに5メートルを下回った瞬間。
「―――セイバァァァァァ―――――――!!!」
「―――一閃!!!」
同時に両人から、閃く斬撃が振われ、舞い踊り、真上からの光刃(こうじん)と、横薙ぎからの炎刃(こうじん)が、激突。
暴れ狂う青緑と深紅の魔力たちが、打ち勝つのは自分だとばかり、光を 迸らせながらせめぎ合う。
やがて魔力と刃がぶつかり合ってできた、スパークの光が、超速、急激に登強まっていく。
次の瞬間。
先の爆発よりもさらに大規模で、刃を打ち合っていた剣士たちを飲み込んでしまうほどの巨大な閃光が、衝撃と一緒に広範囲に飛び、宵闇の海鳴のビル群を照らし出し、荒波と化した膨大な大気の高圧力によって、先刻よりもさらに大量のビルのガラスが砕け散り、コンクリートジャングルの中を、桜の花びらの如く飛び散らしてく。
ハイスピードのスロー撮影でなら、それはそれで、見る者を圧倒させてしまう、美麗な光景がそこにはあった。
「中々の見物だな…」
勇夜とシグナムの二人による剣舞を含めた結果内での戦闘を、観客気取りに静観している男がいる。
部屋は彼の無機質なルーム。
先日、鉄槌の騎士ヴィータになり済まし、勇夜と夜の都市区画で追跡戦を展開したフェイカーに脱出ルートを指示。
また彼に、F計画の技術で生成されたクローンのレイビーク星人たちとツルク星人を差し向けた張本人。
勇夜―ゼロたちとヴォルケンリッターの戦いは、観戦しているこの男でも、それなりに心躍らせる代物であった。
ただし、男が浮かぶ笑みは、自分の敷いたレールをひた走る、彼からは道化も同然な、『ベルカの使い手』たちをあざ笑う歪んだ感情によって、大半を占めていた。
〝とは言え……流石にこの場を道化なあやつらだけに賄わせるには負担が大きいだろう〟
ここは、自らの『傀儡』たちを助力役として差し出さねばなるまいて。
そう……ようやく力の片鱗を取り戻しつつある、全知全能の支配者たる己の力と、この体に宿る技術力、そしてこの世界の文明の力によって為しえ、完成することができた結晶体と表せる下僕たち。
今こそ……表舞台に出す時だ。
さて……やつらは我が下僕を前にどのような反応を起こすかな、全くもって楽しみだ。
男の邪悪な微笑は、さらに歪みを増して、不気味な様相を呈していった。
つづく。