ウルトラマンゼロ The Another Lyrical Story 第一章   作:フォレス・ノースウッド

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さて第六話目です。
今回はこちらでの投稿を機会に結構内容変えました。
ただ、こいつ本当に『あの○○なのか?』と思わす仕様は一緒。
まだ彼の人物像に空席があった当時、私は惑星アヌーの青年と一体化していた時の彼と、黒澤明監督で、マーベラスのモデルたる三船敏郎主演の『用心棒』と『椿三十郎』の主人公をモチーフに勇夜のキャラを固めていったのですが……結果とんだ突然変異を起こしてしまいました。
彼が本来の姿を見せるのは、もう少しお待ちを。


EP06 - ある休日の交錯

 四月の休日。

 その日は適度に温かな日光と、風速と涼やかさ加減が丁度良い心地よさな春風に恵まれ、外出するにはもってこいの一日だった。

 喫茶翠屋も、晴天の恩恵を生かそうと、今日は店の前でテラス席をいくつか設けられ、内一つの円型テーブルを囲む形で、なのはとアリサとすずかが座って、注文したケーキとジュースを食べながら雑談していた。

 テーブルの上にはフェレットに変身してるユーノもいる。

 

「今日の試合凄かったよね」

「うん、ギリギリの勝負っていうか、いつの間にか手に汗握ってたわ」

「でも、〝あのお兄さん〟のシュートも凄くなかった?」

「あ、それは言えてる」

「ていうか試合終わり立ての時は、あの通りすがりの人に全部持ってかれてたわよ、漫画みたいなシュートこの目で見るなんて思いもしなかったわ」

 

 

 

 

 

 

 話題の内容となっていたのは、ここから少し時間を遡った頃に起きた出来事。

 なのはの父で翠屋のマスターな高町士郎は、少年サッカーチーム〝翠屋JFC〟の監督も務めており、この日は河川敷でのサッカーグラウンドにて相手チームの〝桜台JFC〟と一試合が行われていた。

 なのはたちも観客として、翠屋JFCにエールを送りながら試合を観戦していた。

 両チームとも、一歩も引かない一進一退の攻防を続けているが、ついに士郎のチームは先取点を取った。

 

「(ユーノ君の世界では、こういうスポーツはあるの?)」

「(あるよ、ただ僕は研究と発掘に夢中だったから、あんまりやってなかったけど)」

 

 この一文だけ見ると、何か寂しさを禁じ得ないユーノの幼少時代ではあるが、見方を変えれば、彼にとってその〝研究と発掘〟こそが、やりがいのあるスポーツというか遊戯であったとも言える。

 

「(にゃはは、私と同じだ、運動は苦手だからね)」

 

 二ラウンド目の終盤、翠屋JFCはさらにもう一ポイント取ってリードを広げ、やがて終了のホイッスルが鳴り響いた。

 

「やべ!」

 

 不意打ちの甲高い笛の音にびっくりしたのか、うっかり選手の一人がボールを場外に蹴り飛ばしてしまった。

 アーチを描いて跳ぶボールの進行先には、通行人である少年が一人。

 今にもボールが彼の頭にぶつかる寸前―――それは起きた。

 まるで先に感づいていたかのように少年は振り向くと、胸で受け止めたボールを垂直に蹴り上げ、落ちてくるボールを、一回転した勢いからタイミング良く落ちてきたボール蹴りつけた。

 鮮やかな手際、ほとんどタイムラグを起こさず、歩行者の少年が蹴りつけたボールはネットに放り込まれていた。

 選手は誰もその一撃に見惚れ、反応もできずにいた。

一拍置いて、選手も観客も、一度たりとも入らなかった翠屋JFCのネットにボールが入りこまれたことに気づいた。

 

「悪い! 今のはノーカウントにしてくれ!」

 

 部外者でありながらファインプレーを披露した少年は、詫びを入れるとそのまま悠然と立ち去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごちそうさまでした!」

 

 鈴が取り付けられた翠屋のドアが、澄んだ音色を奏でて開かれ、中からジャージを着た男子たち――翠屋JFCの選手たちが出てきた。

 

「―――次の大会でもこの調子で勝とうな!」

「「「はい!」」」

 

 監督の士郎は一同を整列させる。

 彼らも試合後、ここで昼食をとっていたのだ。

 

「じゃあ、これにて解散」

 

 士郎の閉めの挨拶は終わり、選手たちは各々帰宅していく最中、なのははっとした。

 ほんの一瞬、微かだが感じたのだ………〝通りすがりの少年〟に入れられるまでゴールネット死守し続けた翠屋JFCのキーパーから、〝ジュエルシード〟の波動を。

 そのキーパーはチームのマネージャーの女の子と一緒に、通りの向こうへと歩いていく。

 引っかかりを感じつつも、確信を持つにはあまりに反応は小さ過ぎて、この時なのはは、気のせいだと思い込み、片づけてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第三海鳴公園、海鳴市に点在する公園の一つ。

 アリサ・バニングスが見つけた塾への近道であり、ユーノがジュエルシードの異相体と戦闘を繰り広げ、なのはとユーノが巡り合った場所である。

 正確にはユーノと異相体が戦闘を行ったのは、この公園内のボート場がある池で、それなりに水場の面積は広い。

 当然今は、先日の戦闘による爪跡が大きく、立ち入り禁止の看板も立てられ、だれも遊びに来る人はいない―――が、娯楽以外の理由で、公園に来ている人物が一人いた。

 伸ばした黒髪を耳と同じ高さで纏め、中性的で美人と評されても決して過大評価とは言い難いまでの顔つきながら、刀剣のように鋭い目つきとぶっきらぼうで近寄り難い雰囲気を漂わせる少年―――諸星勇夜。

 

「ここなのか? リンク」

『はいマスター、微かな量ですが、『槙原動物病院』で感知したものと同様の魔力とジュエルシードのエネルギーが残留しています』

「まあ……如何にも一波乱ありましたって、感じだけどな」

 

 正直なところ、一々魔力の形跡を確認しなくても分かるぐらいのひどい荒れ様だった。

 建物やボートの損壊は激しく、地面はところどころ抉られた跡があり、倒れている木々も少なくない、ある程度見栄え良く作られたはずの池も、水は泥で濁り、散々な有様だった。

 勇夜はさらに目を忙しく右、左と行きゆきさせて、周辺を注視して観察。

 地面にできた何かに引き摺られた跡………異相体が移動してできたもの、恐らく不定形なスライムタイプ。

 一定の幅でできた小さなクレーター………そのスライムの足跡ならぬ跳躍跡。

 ボート施設の破壊痕………体そのものを弾丸に変えて発射したものと思われる異相体の攻撃。

 そして、勇夜の立つ地点の近くでできた一際大きなクレーターと、より大きく土を抉らせた移動痕。

 

『クレーターから、封印魔法を発動した痕跡があります』

 

 ここで起きたことは、大体分かった。

 ジュエルシードの発見者である《ユーノ・スクライア》は、ここで異相体と戦闘となり、封印を試みるも失敗、異相体にダメージを与えたものの、取り逃がしてしまった―――ってところか。

 スクライア族は、結界等の補助系統の魔法技術には秀でているが、戦闘に関してはお世辞にも得意とは言い難い。

 ここでの戦闘を見るに、やはりユーノはたった一人でこの地球に来たようだ。

 それは分かったが……どうにも解せないことが二つ。

 ここに来る前、勇夜は魔導師と異相体の戦闘が原因による〝槙原動物病院で起きた建築物事故〟の現場に赴いた際、そこで残留魔力反応が二つ検出されたのだ。

 一つは同様の魔力がこちらにもあるので、〝ユーノ〟のもの。

 だったら……もう一人の魔力の持ち主は一体誰だ?

 同伴していた協力者のもの………ではない、公園での戦闘は動物病院の前日に起きている。

 連れがいるのなら、わざわざ一人で異相体との戦闘に挑んだりはしない。

 無謀にも一人でロストロギアの怪物に立ち向かったってことは、協力者を連れてくるだけの思考も、あの時の彼には持ち合わせていなかった。

 そうなると、一つ目の謎たるもう一人の魔力反応の正体は解けた。

 一番気になっているのは、二つ目の謎、あの事故現場で、魔力とは別のエネルギーの反応があったのだ。

 勇夜はそのエネルギーの波動に覚えがあった。

 まさか―――

 

『どうでしょう? 気晴らしに街を散策してみては』

 

 とそこへ、リンクが休息を提案してきた。

 そう言えばここに来てから調査と回収と、フェイトたちに食べさせる為の食事の調理ばかりだった。

 これでは何か味気ない。幸い自分の容姿は日系人そのものだ。日本の喧騒と雑踏に溶け込むくらい造作も無い。

 

「そうだな……調査ばかりじゃ面白味もねぇし、折角地球に来たんだ、楽しまねえと損だぜ」

 

 それに、たとえ別の世界に存在する星だとしても、《地球》は自分の〝父〟たちが必死になって守ろうとし、地球人たちと共に戦ってきたウルトラ一族にとって馴染み深い星だ。

 一休みに、海鳴市内を散策してみるかと決めた勇夜は、戦場の爪跡と化したボート場を後にした。

 

 

 

 

 そんな勇夜が最初に寄ったのは、図書館でありました。

 えっ?―――〝なん……だと?〟―――ですって?

 かつて不良街道真っ盛りだった〝あいつ〟が読書?

 何の性質の悪い冗談だよ!―――ですって?

 ジョークではありません。彼は確かに素行不良で、一応努力家ではあったので〝訓練校〟の授業には出てはいましたが、読書どころか長時間座って活字を読むと言う行為自体は好きではありませんでした。

 転機となったのは、彼の師匠から『思考力も鍛えろ』と、故郷の図書館にて無理やり読まされた小説が切っ掛け。

 その作品とは、あの《シャーロック・ホームズ》のシリーズでした。

 最初こそ嫌々読み進めていた彼でしたが、優秀だが変人過ぎてダメ人間なホームズと、頼りになる相棒で時に保護者同然にホームズを支える元軍医ワトソンの名コンビっ振りと彼らの生活模様が〝超面白れえ〟と病みつきになり、そのまま一気に長編短編全て読破。

 やがて本を読むと言うこと自体、彼の趣味一つとなりましたとさ。

 

 

 

 

 

 

 ずらりと棚が立ち並び、粛々と訪問者たちが本を読む館内。

 

〝ホームズの原語版!? これもあるとは域だぜ、一度は読んでみたかったんだよな〟

 

〝逆○の日本史………こいつは面白そうだ、ゾクゾクする〟

 

〝黒○明の用○棒のノベライズ版? こんなのが出てたのか……〟

 

 静寂がむしろ気持ちよくもある棚と棚の間を移動しながら、勇夜は興味をそそられた本を手に取っていく。

 最初に読むのは『用○棒 ○三十郎』、なぜかこの本の原作の映画の主人公の浪人に、妙なシンパシーを感じているのだ。

 特に劇中で、初代黄門様な俳優さんが演じる酒屋の親父の『お前は根っからのワルじゃない、ワルぶるのが好きなだけ』って台詞は、思い出すだけで体がむず痒くなってしまう。

 もし自分が、その浪人と同じように一人流浪の旅をしていたら、彼みたいな人柄になっていたかもしれない。

 何冊かまとめて腕内抱えて机の一画に向かっていると、一人の女の子が目に入った。

 フェイトと同じくらいの年頃で、電動式の車椅子に腰かけた女の子。   

 バッテン印の髪留めを着けた茶色がかったショートカット。

 彼女は棚から一冊取り出そうとしているのだが、目的の本はギリギリ手の届かない高さに置かれているので、四苦八苦している。

 他に館内にいる者は読書に夢中になっていて、彼女の悪戦苦闘に気づく輩は勇夜を除いて一人もいなかった。

 

「これか? 読みたいのは」

 

 代わりに本を取り出して、車椅子の少女に渡す勇夜。

 

「あっ……おおきにな」

 

 勇夜は彼女の発した言い回しを前にに〝?〟が脳内を駆け巡る。

 今、この子はありがとうって言ったが、言い回しが標準的な日本語と違う。

 同じ国の生まれでも、住んでる地域によって微妙に違う喋り方、〝訛り〟ってやつか、確か日本じゃ《方言》とも呼ぶんだっけ?

 

「(リンク、この子の方言がどこのか分かるか?)」

『(関西弁のものでしょう、ただ……)』

「(ただ?)」

『(彼女の発音は独特で、関西のどの各府県の方言とも微妙に一致しません、最も近い方言は京都弁なのですが……)』

 

 関東で暮らしている時間が長いのもあるのか、少女の喋り方はどの地域のものとも似てるのだけど、でもどこのものとも似通わない独特の訛りをしていた。

 

「(じゃあ、関西弁って言えば問題ねえんだな?)」

『(はい)』

「お兄さん、どないしたんですか?」

「いや、こんなところで関西弁を聞くとは思わなくてさ」

「ああ、今はここに住んどるけど、生まれは関西なんです、お兄さんはよくここに来るんですか?」

「いや……最近こっちに引っ越したばっかりで初めてだ、街中散策ってやつさ」

「そないですか」

 

 ん? ふと相手の顔を見て気がついた。

 なんでそんなに笑っているんだ?

 少女は勇夜の顔面に視線を送りながら、微笑みを見せていた。

 自分の顔に……何か付いているのか?

 悪意は感じないので悪い気はしないのだが、気にもなったので尋ねてみる。

 

「何がおかしい?」

「ごめんなさい……なんや私の兄によう似てましてな、でもお兄さんは二枚目寄りで、兄の方が三枚目やな……」

「顔がか?」

「いや、なんと言うか、雰囲気ってやつです」

 

 なんでだろうか? ある映像が脳内で再生される。

 一瞬、音信不通になって久しい仲間の一人であるあの〝火頭〟なあいつの顔を思い浮かべたのだ。

 確かに喧嘩っ早いところとか、口調が粗野なところが似ていることに自覚はあるし、ある意味あいつとは肉体言語で語り合った仲ではある。

 だけど………あいつがここに飛ばされたのなら、一悶着と言うか……一騒ぎに一騒動ありそうなものなのだが。

 身を隠して暮らすイメージが、どうしてもあいつからは浮かんでこない。

 あいつの性格のことだ、あの姿のまま街の中を堂々と歩きそうだ。

 いや……そもそもあいつって、人間の姿に変身できたか?

 まあいいか、たまたまあいつとこの子の兄の人柄が似てるだけだろう。

 

「他に読みたい本はあるか? 代わりに出してやるよ」

「あ、ほんならあの茶色のと朱色のを」

 

 勇夜は指定された本を、棚から出して少女に渡した。

 本たちの主なジャンルは大雑把に言って、『剣と魔法』のファンタジーものが多かった。

 中には、『上巻』で電話帳並みのぶ厚さがあるものまである。

 地球の子って読解力が高いんだな、と感心してしまった。

 

「おおきにな」

 

 俺はできるだけ、彼女の足については言わないように接した。

 五体満足な健常者から見れば、障害を抱えていることは、可哀そうに思われるかもしれない 、中には見下げてしまう野郎もいる。

 だが当人たちにはそのハンデを受け入れた上で、この健常者にありふれた世の中を生きているのだ。むしろこうして普通に、対等に接した方がいいのだと、聞いたことがある。

 それを言うなら、自分だって〝本来の姿〟を隠して生活しているというハンデを背負っている身だ。

 

「じゃあな」

「あの」

「何だ?」

「わたし、名前は八神はやてと言います、お兄さんは?」

「勇夜、諸星勇夜だ」

 

 そうして自己紹介した勇夜は、〝八神はやて〟と名乗った関西弁の女の子と別れた。また会えたらいいなと思って、名前を言ったのかもしれない。

 ずっとここにいるわけじゃないし、立場上そう度々地球には来れないのだが、不思議と自分ももなんとなくそうであったらいいなと、ふと思った。

 彼女に課せられた、重さと痛みと宿命を、後々思い知ることになるとも知らずに………。

 

 

 

 

 

 

 

 諸星勇夜が関西弁の少女八神はやてとと出会ったのと同じ頃。

 

「ふにゃ…」

 

 なのはは自分の部屋に入ると、そのままベッドに倒れ込んだ。

 本日は特に激しい運動はしていない。

 この歳に似合わない疲労は、日頃の魔法行使から来るものであった。

 魔法を習いたてなビギナーの宿命とも言えるだろう。

 

「なのは……せめて寝るなら、着替えておかないと……」

「はぁ~~~」

 

 ユーノからの苦言で、渋々なのはは眠気と疲れで重くなった体をおこし、茫洋とした表情のまま私服を脱ぎ、ユーノの目の前で下着姿を披露しながらパジャマに着替え始める。

 

「はあ!」

 

 何度も言おう、『ユーノの目の前』である。

 なのはの無防備な姿に顔を真っ赤にしつつ慌てて背を向けて、なのはが着替え終わるのを待つユーノ。

 しまった……さっきのは不用意な発言だった。

 なのはは寝ぼけてて、仮にも〝男の子〟なユーノが目の前にいることを認識できていない。

 光が外出していたのは、不幸中の幸い……もし家内にいたら、怒りの雷がユーノに落ちるのは明白である。

 

「晩御飯の時間になったら起こしてね、おやすみなさ~~い……」

 

 着替え終えるとともに、なのははそのままぐたっとうつ伏せに眠り込んでしまった。

 その寝顔には、疲労が溜まっているのが容易に窺える。

 

「(やっぱり、慣れない魔法で、疲労が溜まってるんだ……)」

 

 彼女の魔法に対する才能は、予想以上だった。

 デバイスのサポートによる賜物もあるとはいえ、初戦で魔法に精通している者でも取得が難しい飛行魔法と砲撃魔法をいきなりやってのけたのである。

 とは言え、光=ミラーナイトの言う通り、それ以外は普通の女の子だ。

 本当なら、やっぱり自分一人だけでなんとかしたかった。

 だが魔力が本調子に戻ったとしても、異相体と化したジュエルシードを封印できるのか…と言われると。

 十中八九、この前の二の舞になるだろう、それこそ光さんの言う通り、浅はかな考えだ。

 今なら分かる、こうなっているのは全て自分の力だけで問題を解決しようとして周りが見えていなかった自分にあると。

 でも、なのはやミラーナイトという心強い味方がいると言っても甘えてばかりではいられない、もっと自分もしっかりしないと。

 それに……ユーノには気がかりなことがもう一つあった。

 午前中のサッカーの試合時にファインプレーを見せた……あの少年。

 無論あんな芸当はサッカー歴が長い経験者やプロでも、そうそうできないだろうが、気になる点はそこではない。

 どこかで見たことあるんだけど、どこで会ったのだろう……あの人と。

 長く伸ばした漆黒の髪を後ろで縛った、美しさと実用性を兼ね備えた刀のような鋭さを秘めた顔つきの少年。 

 だが漠然と見たことがあるだけで、いつどこで会って、名前はなんであったか………までは、この時思い出せなかった。

 

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