ウルトラのキセキ ~One More Sunshine Story~ 作:がじゃまる
総勢4人5作品によるラブトラマンクロス、ぜひお楽しみください
――――夢を見た。
昔――――まだ幼かった頃の記憶だ。
夢の中で、自分は目を輝かせていた。
憧れていたんだ。テレビの向こうから現れる、˝赤と銀のヒーロー˝に。
平和を乱す怪獣や宇宙人を倒し、人々の笑顔を守る正義のヒーロー―――――ウルトラマン。
その必殺の光線が戦いに終止符を打つたびに、何度も、テレビの前で歓喜の声を上げた。
カッコよかった。感動した……自分もそうありたいと願った。
派手な必殺技は使えなくても、怪獣は倒せなくても。
いつか自分もウルトラマンのように、誰かにとってのヒーローになりたい―――――そう、思っていた。
「―――ん」
瞼の外から差し込んでくる陽の光と共に、耳元を擽る小さな声が夢の中にあった意識を引き戻す。
「―――みらいくーん? 未来君!」
「んぁ……?」
寝ぼけまなこの先でみかん色の髪が揺れる。
まだ胡乱の中にある思考の中、それが幼馴染のものであることと、今の自分の状況を理解すると―――
「よーう日々ノ……いい夢見れたか?」
だが見るからにご立腹の笑みがこちらに向けられているのを確認し、既に遅かったことを悟る。
一様に自分を向くクラスメイトの視線と書きかけの黒板は、今自分のいる空間が教室であり、なおかつ授業中であることを物語っていた。
「この俺の授業サボって寝るくらいなんだ。そりゃさぞいい夢をご覧になられたんでしょうねぇ……?」
「…えぇまあ、懐かしい気分にはなれました」
「そうかそりゃよかった…………それはそれとしてお前居残りな」
「……へい」
隣にいる幼馴染達も含めクラス中から笑いが沸き起こる。
妙な気恥ずかしさと居心地の悪さから見上げた窓枠の外では、夏の太陽が燦然と光り輝いていた。
ウルトラマン。
M78星雲―――光の国からやってきた正義の味方であり、怪獣退治の専門家。
そんな彼が俺にとってのヒーローだった。
傷付き、時には倒れても戦うその背中で大切なことを教えてくれる。
そんな彼の姿に、幼心ながら惹かれた。
俺にとっては単純なエンタメ以上の何かがあったんだ。
でも、そんなものは所詮テレビの中での絵空事。
この現実には存在し得ないものだということもとっくの昔に理解している。
それがわかっていてもなお俺が彼に焦がれ続けるのは……一体何故なのだろうか。
「……残したのは他でもねぇよ」
昼間見た夢の続きに浸りお説教をやり過ごしていると、いつの間にか目の前に空欄ばかりのプリントが突き出されていることに気が付く。
遅れてそれが何を意味するかを理解するや否や、未来は顔を顰めた。
「進路希望表……もう出してねぇのお前くらいだぞ日々ノ。今ここで書け、さっさと書け」
逃がさねぇ、気だるげながらも双眸はそう訴えてくる。
ものぐさなくせして珍しく居残りを命じてきたと思ったらこういうことか。大方教頭か何かに早く提出させるよう催促されたのだろう。
「……」
しぶしぶ取ったペンが走ることはなかった。
漠然とイメージだけは蟠っているが、それをどう形にすればいいのか、そもそも進路として掲げていいものなのか。そんな疑義が書く手を止めさせる。
「…なあ日々ノ。お前なんかやりたいこととかないのか」
それに対しても答えることは出来なかった。
恥ずかしいとか外聞的なものじゃない。まだ自分自身でもどう伝えたらいいものかわからないから。
「……今のとこ何も目的がねぇってんなら出来るだけいい大学入っとけ。今の時代何になるにしろ学歴は問われるし、少しでもいいとこ入っとくのがお前のためだ。俺の評判も上がるしな」
「最後の一言で台無しです先生」
「うるさいよ。俺だって今後の俺の生活のために少しでも功績残して評判上げにゃいかんのですよ。つー訳だちょっとでもいい大学行って俺の評判上げろ日々ノ」
「もう私情しか残ってないです先生」
「今になってちょっと饒舌になるんじゃないよお前は。その元気を少しでもペンに乗せなさいな」
それができたら苦労しないと、抗議の意も込めて息をつく。
考えていない訳じゃないんだ。むしろ世間一般の高校生よりよっぽど考え悩んでいると思う……その上で答えが出ないから。
「……まあ、お前は俺等大人と違ってまだなんにでもなれる高校生だ。将来に悩む時間も大事だたぁ思うけどな」
幾らかの悔いも含み零される。
「とりあえず今日のところは帰してやる。夏休みまでには提出しろよ……間に合わなかったらお前に夏は来ないと思え」
将来について悩める高校生という時間にも、少しずつ終着点が見え始めている。いつまでもウジウジと悩んではいられないのに、その先のビジョンがどれだけ考えても見えてこない。
「はぁ……」
再びついたため息と共に込み上げてくる幼い頃からの情景。
いつから抱いたものなのか、そんなことはとうの昔に忘れたけれど、少なくとも今日この日まで捨て切れていないのだけは事実だった。
改めて、自分自身に問う。
俺は一体……何になりたいのかと。
***
ようやく校舎から解放された時には既に陽は傾き始めていた。
普段ならば下校する生徒でそれなりに賑わっている帰り道もこの時間ともなれば閑散としている。
「……今日はもう無理か」
携帯電話に入っていた友人のメッセージに返信しつつ自宅へと通ずる坂道を下る。居残りさせられている時間があったならその手助けができたと思うと少し申し訳なかった。
「はぁ…」
今日何度目かもわからないため息。
夏休みの間にある˝とある催し物˝に幼馴染が携わっている。その手伝いをしなければいけないのに、自分一人その夏休みにも突入できない可能性があるとは何とも情けない。
とりあえず明日は土曜、休日だ。
その手伝いがてら、恐らく顔を出してくるであろう親友に相談でもしよう―――そんなことを考えながら坂を下りきったその先。
―――――『思い出して』
「……んあ?」
澄んだ声が耳朶に、そして頭に直接響いてくるような感覚がし、未来は思わず周囲を見回した。
―――――『お願い……時間がないの』
「何言って……」
今しがた自らが下ってきた坂を見上げた先にあった˝何か˝に視線が縫い留められる。
麻色の髪を揺らす、妖精のような衣服を身に纏った少女。幼さを感じさせる顔立ちだがその瞳には強い意志が宿っているように見えた。
だが注視すべきはそこではない。
どこか不思議な雰囲気を醸す少女だが、それもそのはず。淡く光を発するようなその身体は半透明に透けており、更に赤い靴を履く足は地面に着くことなく浮遊している。
幽霊かはたまた何かの立体映像なのか、目の前の現象に混乱する未来に考える暇すら与えず、その少女は二の句を継いだ。
『あなた達じゃないとこの世界は……あの子は救えない……!』
少し焦った様子で弱々しく告げる彼女。
不思議と引き込まれるようなその声に聞き入っていれば、不意に手が差し伸ばされ―――、
『思い出して……あなたの―――を……!』
白く染まってゆく視界。
その中で輪郭すら覚束無くなってゆく少女の顔が完全に見えなくなる刹那、一瞬、その表情が渇望と寂寥に、揺れた気がした。
荒廃した街並みの真上に暗雲が広がっている。
世界の終わりを連想させる光景の中に暗黒の巨人が佇むその様は、まさしく絶望をそのまま絵に描いたかのようだった。
――――『……いこう、私達……九人も!』
そんな絶望に抗うように、重なった˝十˝の声と光が上がる。
これは夢だ。
そう気付くのに時間は掛からなかったが、それがわかっていても目を離せないものがそこにはあった。
――――『これが究極の光……即ち、無限の輝きだ!』
絶大な輝きを放ち、暗黒の巨人と対峙する黄金の巨人。
九人の少女と共にその巨人へと姿を変えた少年は、確かに――――、
「ッッ……!」
弾かれるように飛び起きた。
寸刻前にあった夕暮れの道は薄暗い自室へと変わり、身体に圧し掛かる感覚が今自分がベッドの上にあることを告げてくれる。
意識を失っている間に何があったのか、そもそも一連の出来事は全て夢だったのか……そんな疑念に頭を悩ませるよりも早く˝その名˝を口にする。
あの夢の中。
見知った顔の少女達と共に光の巨人へと変身していたのは、紛れもない
「ウルトラマン……メビウス……?」
もうお察しかもしれませんがこの作品は「大決戦!超ウルトラ8兄弟」を元にしたものとなっており、舞台となる世界はコラボ先のどの作品とも世界観を共有していないため一部を除き登場人物は
そんな世界でのダイゴポジション、つまり主人公は蒼人さんの「メビライブ!サンシャイン!!〜無限の輝き〜」から日々ノ未来君に努めて頂くことになります
メビライブでの彼とは少し設定を変えており、この世界の未来君はメビウスには変身しないだけでなくウルトラマンに対し憧れのような感情を抱いております
そしてそんな未来に対し何かを訴えかけてきた少女の正体は……?
長くなってしまうので最初の後書きはこのくらいにしておきましょうか
遂に形にできたコラボ作品、是非ともお付き合いください