ウルトラのキセキ ~One More Sunshine Story~   作:がじゃまる

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毎年ぶっ壊れるで有名なラブライブ公式のエイプリルフールにはしゃいでた結果また更新逃したらしいですよコイツ()


11話 抱くものは

 

「いっ…!」

 

「こらこらじっとしてー。消毒できないでしょ」

 

消毒液特有の臭いと共に痛みが傷跡を駆け抜けてゆく。

頬に肘。蹴り飛ばされ地面を転がった際についた傷へ最後に絆創膏を貼り付けると、淡島の鯱もとい松浦果南(まつうらかなん)は柔らかな笑みを作った。

 

「何があったかは聞いたけど、無茶しちゃだめだよ未来」

 

「……すみません」

 

「…まあでも、偉いね。よしよし」

 

ベンチに座らせた未来を胸元に抱き寄せると共に頭を撫でる果南。

ダイヤや鞠莉と同様三年生であり、未来にとっては姉貴分である彼女。このスキンシップも昔からだが、流石に高校生にもなれば恥ずかしさが勝る。

 

「…俺より陸を褒めてやってよ。実際、解決したのはアイツだし」

 

その柔らかさから抜け出すと共に火照りを誤魔化すために隣のベンチへ視線を向ける。見やった先では陸が伸びていた。

 

「陸ちゃんも喧嘩っ早いとこはあるけど……果南ちゃんも大概だよね」

 

「うんまあ………悪いことしたなぁとは思ってるよ…」

 

「果南の悪評を広めた罰だ。一度痛い目に遭う方が丁度いいさ」

 

「ちょっと、その言い方じゃ私が元々不良みたいじゃんか」

 

「博樹の言う通りデース。小さい頃の果南は不良そのものだったよ?」

 

今でこそ未来達幼馴染組の姉ポジションである果南だが、幼少期は中々にヤンチャしていたらしく。

 

今でも地元の大人達に度々掘り返されるその話は広まるうちに肥大化し、最も果南を慕っている陸が一部で不良扱いされていることもありいつしか˝淡島の鯱˝などと言う二つ名が定着したそうな。

 

「…んな騒がれるようなこたぁした覚えねぇぞ………アイツ等が勝手に広めてるだけだろ」

 

「あ、蘇ってた」

 

「どうだかな。何もしてない奴にそんな噂が立つ訳ないだろう」

 

「……戻ってきて早々に嫌味ったらしいっすね博樹さん」

 

「俺は純粋に思ったことを口にしただけだ」

 

曜に介護されながら身体を起き上げた陸の風貌はそんな噂を立てられるのも納得な覇気を孕んでいたが、博樹と呼ばれた青年は微塵も怯む様子もなく受け流して見せる。

 

そんな飄々とした雰囲気を纏うのが湊博樹(みなとひろき)。未来自身はさほど関りのない彼だが、果南達三年生組とは縁が深く幼い頃はよく一緒にいたという。

 

「大体なんだ。高校生にもなって果南を姉ちゃん姉ちゃんと……まだ姉弟ごっこでもしてるつもりか?」

 

「原因作ったアンタに言われたかねぇんだよ! そのくせたまにしか戻ってこないんだしいちいち口出ししてくんじゃねぇ!」

 

「イエース。戻ってくるなら連絡くらい入れてよね。そしたらscheduleも空けてたのに」

 

「俺だって暇じゃない。今回だって果南に言われて無理矢理時間を作ってきたんだ。……顔を見せれただけでも良しと思え」

 

「けっ……世界も注目の天才様は重役気取りかよ。誰もアンタなんざ求めてねぇってんだ」

 

その口調や雰囲気から察せるが博樹はかなり頭がよく、今は小学校の時から声を掛けてきていたという東京の名門高校に通っているためこちらにはたまにしか顔を出さない。それも未来とは関りが薄い要因の一つだ。

 

ちなみに見ての通り陸との仲はすこぶる悪い。

 

「その言葉そっくりそのまま返してやる。たまの帰省にお前と顔を合わせる羽目に遭う俺の身にもなれ」

 

「そっちから顔見せといて随分な物言いだなオイ。向こうで勉強しすぎて脳味噌溶けたか?」

 

「お前こそその残念な知能を鍛えろ。そうすれば軽い頭も少しはマシに………まあネアンデルタール人程度の知性にはなるだろ」

 

「退化してんじゃねーか!」

 

犬猿の仲、水と油、冷戦状態。この二人の関係をどう言い表したものだろうか。

ある程度互いを信頼している部分はあるだろうし、何なら似た者同士とでさえ思うのだが……どうして上手く行かないものか。

 

「…ったく、こんな幼稚なのに付き纏われてお前も大変だな」

 

「ああいや…俺も好きでアイツとつるんでるんで……」

 

終いには同情の視線を向けられてしまう。

秀才であるが故か、それとも不仲から来る偏見か、いずれにしろ博樹にとって陸は幼稚な存在らしい。

 

「それに……陸のがずっと、俺より大人ですから…………」

 

最後のそれが誰に向けたものだったのかは自分自身わからない。

けれど胸に抱くこの劣情だけは、確かなものらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「わりいな後片付け手伝わせて。殆ど客来なかったけど」

 

「まあ色々悪条件重なったしな……てか身体大丈夫か」

 

「伊達に何年もしばかれてねぇっつの。いくら姉ちゃんのパワーでも流石に慣れた」

 

「果南さんもだけどお前も大概人間離れしてるよな……」

 

不満そうに口を尖らせる陸の少し後を進む形で人の引いた夜道を歩く。

三日に渡って行われる祭りといえど催し物の時間が過ぎればこんなものだ。川の如く流れを作っていた人々も今は疎らにしか散見できない。

 

「しっかし、お前ホントに博樹さんと仲悪いよな。結構似た者同士だと思うんだけど」

 

「あぁ? 誰があんなのと……!」

 

条件反射のように反論しようとし、その途中で言葉を飲み込む陸。

代わりに紡がれたのは、未来にとっては少し、意外なものだった。

 

「……いや、案外そんななのかもな」

 

「…え?」

 

「実際のとこ羨ましいし妬ましいのかもしれん……どっか似てるからこそ、俺との差がハッキリしちまうというかなんというか」

 

ダッセェ。小さくそう呟いた表情に映る自虐の色。

彼が見せた、つい先程自分も抱いたその色に……何かがずきりと痛んだ。

 

「変に意地が邪魔して本人の前じゃ絶対言えないけどよ、実際すげぇよなあの人。頭いいとかそう言うのじゃなくてさ、なんつーかこう、迷いがないというか……何にも言い訳せず夢や目標と向き合えるって…………カッコいいよな」

 

恐らく陸自身初めて言葉にしたであろう、博樹への劣情と羨望。

漏れ出るような吐露と同時に揺れた瞳は、どことなく己と重なった。

 

「まあともかく、あの人見てるとどうにも自分が情けなく思えてよ……それでちょっと八つ当たりっぽくなってんのかもな。向こうがどう思ってるかは知らねーけど」

 

それが嘘や欺瞞、まして忌憚でもないのは未来にはわかる。

幼馴染の勘が故か。少なからず、その言葉が彼の本心なのだけはわかってしまう。

 

「……俺から見たら、お前も十分凄いけどな」

 

「…そういや、さっきもそんなことぼやいてたな。俺の方が大人だのなんの。……なんか含みを感じるが」

 

「別に深い意味はないよ……ただ思った通りに言っただけだ」

 

果南に貼られた絆創膏に視線を落としつつ続ける。

敗北の証の下に封じ込まれた傷跡は、今も痛むようだった。

 

「だってそうだろ? 陸には才能もあるし、強い。漁港祭で屋台出す許可貰えたのもそう言うことだろうし、さっきだって、陸達がいなきゃ千歌がどうなってたか……」

 

勇敢と無謀をはき違え、結果的に地を舐めた未来とは違う。

最初は不干渉を主張していたとはいえ、結果的にあの場を収めたのは陸だ。

 

ウルトラマンである翔琉と比べても遜色ない強さで奴等を抑え込む様は……輝いて見えた。

 

「それにいつまでも幼稚な空想に浸ってる俺なんかよりずっと現実見てる……敵わないよ」

 

陸だけじゃない。周囲もどんどん、未来を置いて先に進んでいく。

そんな皆に置いていかれまいと走れば走るほど、その差を認識させられるようで。

 

「…別世界じゃ俺はウルトラマンだって話聞いた時さ、滅茶苦茶嬉しかったんだよ。実際は俺の話をしてる訳じゃないのに、なんか俺まで特別な力があるように思えてさ……舞い上がってた」

 

その折に春馬達と出会い、憧れであったウルトラマンや別の世界の自分のことを知った。

彼等から聞く雄姿のみならず、この世界に迫る危機に立ち向かう勇者などと言われた時にはどれほど好い気になったことか。

 

「だから陸も別の世界でウルトラマンって知った時はちょっと焦ったし、あくまでも別の世界の話だって言われた時には、急に一人はしゃいでた俺が馬鹿みたく思えてきた」

 

陸が博樹に対しやっかみがあったように、未来にも陸に対する羨望が少なからずあった。

だから陸にそう言われたあの瞬間、ハッキリと自分との差を突き付けられたような気分になった。

 

「……結局俺は何もない自分から目を逸らして、都合のいい妄想に浸ってただけなのかなって」

 

言葉は止めどなく溢れてくる。

口を動かせば動かすほど胸が締め付けられていくようなのに、今の未来にはそれを止める術すら見つけ出すことは叶わなかった。

 

「……お前が自分自身をどう思ってるかは知らねぇけどよ」

 

数拍の後、殆ど一方的に垂れ流していたそれを陸が遮る。

照れとも呆れとも取れない微妙な表情をした彼は少し言葉を探すように天を仰ぎ、そして続けた。

 

「…少なからず俺は、お前ほど敵わねぇって思った野郎はいねぇぞ」

 

「……え?」

 

先程と同じだ。その言葉に嘘がないことはわかる。

だからこそ、陸の言っていることがわからなかった。

 

「…なんでだよ。お前強いじゃん。料理だって上手いし、俺よりよっぽど現実だって……」

 

「現実見てる……か。バカ言え、俺ぁただ何かと言い訳つけて逃げてるだけだ」

 

問い返した未来に、己を皮肉るように彼の口角が上がる。

 

「お前にはなんか変に美化されて映っちまってるみたいだけど、そんな立派なモンじゃねぇよ。実際はいざ踏み出すのが怖くて、現実だとか便利な言葉言い訳に逃げ続けてんだよ……夢からも、アイツからも」

 

勿論ウルトラマン云々の話からもな、などと低く漏れる。

わかっていても変化に踏み出す勇気が持てない。そんな心情が伺えるようだった。

 

「さっき言ったよな? 何にも言い訳せず夢や目標と向き合える奴はカッコいいって。あれ別に博樹さんだけに言った訳じゃねーんだわ」

 

どこか悲し気に未来へ向けられた彼の顔。

幼い時から飽きるほど突き合わせてきたその顔も、この時ばかりは違って見える。

 

「確かに高校生にもなってウルトラマンだとかヒーロー云々ってのに思うことはあるけどよ。…………そんな夢にも真っ直ぐ向き合って悩めるお前はカッコいいよ」

 

何故、どうして。彼の方がよっぽど立派なはずなのに。

幼稚だ、馬鹿らしいなどと卑下し続けた己は、そんな彼にとって羨望の対象だという。

 

変わらずその意味を理解出来ぬまま歩みだけが進み、やがて数人の声で賑わう広場に出る。

 

「まあどう思うかは人によりけりだとは思うけどな。………けどお前のそれに関しちゃ、割とすぐ近くに答えはあるんじゃねーの?」

 

そう言い残したのを最後に、着々と形になりつつある舞台の上で予行演習を行う少女達と二人のウルトラマンの下に駆けてゆく陸。

 

直前の言葉の意味を模索するようにその背中を見やりつつ、未来もまたすぐにその後を追いかけた。

 

 




某姐さんの例で大体お察しかもですが本筋に絡むキャラ以外にも何人か客演させております

そんなゲストさんとの口論をきっかけに互いの心情を吐露する結果となった二人ですが無事前に踏み出すことは出来るのやら………

前回言った通り日常パート?的なものは今回で終わりです
ということはつまり……(暗黒微笑)

それでは次回で~
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