ウルトラのキセキ ~One More Sunshine Story~   作:がじゃまる

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遂にその時です
迫る絶望の暗雲が全てを覆い隠す時、立ち上がる光は………



含みたっぷりに言いましたが2週間空いたせいで台無しですね。ごめんなさい忙しかったんです()


18話 光立つ時

 

鳴り響くサイレン。至る所で上がる悲鳴。そしてそれらを掻き消す咆哮。

 

絶望とは、きっと終わりがないからそう呼ばれているのだろう。地獄以外の何物でもない光景を前に人々は悟る。

 

 

―――――斬鉄宇宙怪獣(ザンテツウチュウカイジュウ) キングディノゾール

 

 

―――――宇宙戦闘獣(ウチュウセントウジュウ)  (キング)コッヴ

 

 

悪夢と言い表す他ない惨劇から一夜が明け、未だ深々と傷跡の残る町に˝それら˝は再び現れた。

大海を震わせ、大地を割き、大切な町を壊してゆく。逃げ惑う人々の中に最早希望など残されてはいなかった。

 

 

―――――触覚宇宙人(ショッカクウチュウジン) スーパーバット星人

 

 

『…人間に未来はない。滅べ……!』

 

黒い竜巻に乗り、舞い降りた悪魔の嘲笑が渦巻く。

 

甲冑のような装甲に覆われた肉体は燃ゆる火災に照り映え、爆風によって靡くローブは翼が如く黒を広げる。

 

自らもまた路傍の雑草を踏み躙るように命を摘み取りながら、奴は終わりゆく世界への侵攻を開始した。

 

「うぇぇ…ままぁ…………!」

 

「君、大丈夫!?」

 

騒ぎの中で逸れたのか、我先にと避難する流れに突き飛ばされた少女を宥めつつ未来は顔を顰める。

宇宙人が一体に怪獣が二体。何もかもが昨夜を上回る事態を前にただ逃げることしか出来ない。

 

『ッッッ――――――!!!』

 

程無くしてどこかの軍と思しき戦闘機が隊列を成して攻撃を仕掛けるも、瞬時に壊滅。

 

爆散したそれらが火の粉となって降り注ぐ様は、より一層人々の恐怖を駆り立てるようだった。

 

「春馬……!」

 

叶わぬ祈りを捧げるように物言わぬ巨人の名を零す。

 

ピンチの時に現れるウルトラマンはもういない。

少女の真意も、その言葉の意味も、何も掴めない自分達が行き着く先はもう……破滅しかないのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

漂うものは昼間となんら変わらない。鼻腔を焼くような焦げ臭さと、置き去りにしたままの未練。

 

「……避難勧告、出てるんだよ?」

 

阿鼻叫喚の波が寄せては返す中、ただ一つ、静かな声が耳を撫でる。

最早振り返らずともわかる。行く先も、情動も何もかも、仙道陸という人間を知り得ている者など渡辺曜の他に存在しない。

 

「…なんか、そんな気も起きなくてよ。未練ついでにここで死ぬのもアリなんじゃねえかって」

 

「…そっか。じゃあ……」

 

燃え切らなかった夢の残骸に腰掛ける身体は重い。逃げることも抗うことも諦めた心が重石となるかのようで。

何もかもが沈む感覚のままに口を動かしていれば、小さな気配が隣に鎮座した。

 

「………おい」

 

「あんまりスペースないしこうでもしないと座れないじゃん」

 

「いや、そうじゃなくてだな………」

 

悲鳴と共に咆哮が聞こえる。間もなくこの場所も火の海と化すだろう。

それなのに身を寄せて体重を預けてくる馬鹿を突っ撥ねようと動かした腕は、直後に発された一言によって撥ね退けられた。

 

「……動かないから」

 

揺るがぬ意思を醸す語気。

これまで彼女のワガママに振り回されてきたのは一度や二度ではないが、今日この日に映るそれからはまた別の何かが含まれている。

 

そしてその正体を知るのもまた陸一人のはずだ。

 

「……夢を見るってのと現実から目ぇ逸らすってのは違うんだよ。俺はずっと現実見てるフリして都合のいい理想に浸ってただけ………いつかは覚めなきゃいけない夢だったんだよ」

 

「だったらなんで、今陸はここにいるの?」

 

向けられた二の瞳が嫌に痛く、顔を逸らした。

 

「…カッコ悪いよ。今の陸」

 

そんなの自分が一番わかっている。そう言いかけて飲み込む。

斜に構えて現実を見ている自分はカッコいい。そうやって己を誤魔化していたのは事実だ。

 

その様は彼女にはどう映ったのか……そんなものは想像に難くなかった。

 

「………逃げないでよ」

 

より重く圧し掛かってきたのは曜の身体だけではない。

これまでに手放そうとしたもの、目を背け続けたもの。その全てに押しつぶされるような感覚がする。

 

「……今更どうしろってんだ」

 

それでもまだ逃げ場を探すように視線を上げる。絶望の巨影はなおも破壊の炎を広げ続けていた。

断続的に飛来する戦闘機も撃墜されてばかり。いよいよそれが抗いようのないものだと告げているようだ。

 

「どうしようもねぇだろ………なんもかんも、もう」

 

情けないのだってわかっている。カッコ悪いのだって承知の上だ。

けど向き合う術なんて知らないから。結局最後までこうやって、背を向け続けてしまう。

 

「だからもういいよ。俺なんざほっといて、お前はさっさと―――」

 

「……一人じゃないよ、陸は」

 

そんな背中に寄り添ってくるのはいつだって彼女だ。

どれだけ気概が無かろうと、期待を裏切ろうと、この熱だけはいつまでも傍を離れようとしない。

 

「……バカなのか? こんなとこにお前まで付き合う必要ねぇだろ」

 

「こーらこら、早とちりするな」

 

またそれに甘えた先にある結末を想像し、今ばかりは突っ撥ねる。

けれど隣り合う少女は頑としてそこから動こうとせず、揺るがぬ眼差しを陸に向けた。

 

「…陸はさ、基本的に人のことばっかりだよね。最近だってずっと人のこと気に掛けてるし」

 

「…未来のことならそんな大層なモンじゃねぇよ。昔がどうだったかは知らねぇけど、アレに関しちゃ俺自身から目ぇ逸らしたかっただけだ。進路調査あったのはうちも同じだしな」

 

「……それでも、私は嬉しかったよ」

 

「はぁ……?」

 

繋がらない言葉に対する間抜けた声は悲鳴と爆音に掻き消される。

それでも彼女の心だけは耳に届き、心を打つようで。

 

「実は……さ、今年の踊り子、引き受けるかどうか迷ってたんだよね」

 

「…いやお前、引き受けるも何もだいぶ前からやるつもりでいたんじゃ……」

 

「そのつもりだったよ。……けど、だんだん周りからも期待してるーとか、沢山言ってもらえてさ。そしたらなんか急に、怖くなっちゃって」

 

きゅっと、小さな手が握られるのが見えた。

 

完璧超人ヨーソロー。陸達幼馴染間でもたまに用いるその肩書き。

それは誇張でも嘲りでもない。実際、周りからいればそうなのだろう。運動に勉強その他諸々、曜はソツなくこなす。

 

「結構歴史のある行事だっていうじゃん、漁港祭の踊り子。去年の果南ちゃん達のこともあって気が立ってる人もいたからさ……期待通りにできるか不安だったんだ」

 

「…ほんと、なんでパンクロックなんて選んだんだろなあの人等」

 

けど本当のところ曜はそんな器用な奴じゃない。

人並みに失敗だってするし、隠れて悩んでいることだって少なくない……それは幼馴染である自分達が一番知っている。

 

「……で、そこに千歌のワガママか。そら不安にもなるわな」

 

「……うん。でもさ、陸が言ってくれたじゃん」

 

「え?」

 

「千歌ちゃんは私のこと信用してるから、そんな無茶苦茶なこと頼めたんだって」

 

そう言えばと思い出す。

陸にとっては記憶にも残らないくらい何気なく口にした一言らしいが、彼女にとっては大きな意味を持っていたようで。

 

「上手く、言えないんだけどさ。私にはそれがすごく嬉しくて、頑張ろうって気持ちになれたんだ」

 

真っ直ぐな瞳が向けられる。揺れる蒼はどこまでも深い。

 

「あの時だけじゃないよ。私は何度も、陸に背中を押してもらったから…………」

 

その蒼の中に映る景色など、最早覚えてもいないことだけれど。

少なからずそれらは今の渡辺曜を形作っていると、重ねた視線は語っていた。

 

「……だから今度は、私が支えるね」

 

だからこれは、そんな彼女であるからこそ口にできる言葉。

無責任でも押し付けでもない、誰よりも仙道陸を知る曜が語るのはいつだって陸の本心であり真実だ。

 

その曜を拒むことは即ち自らの心を否定すると同義であることも、とっくの昔に知っているはずだ。

 

「………簡単に言うなよなお前。俺一人の問題じゃねーし。家業が関わってくる以上親父達にはまぁ………渋られるだろうな」

 

それでもまだ、逃げ続けてきた心は踏み出し切れずにいて。

情けなくも彼女の優しさに甘え、わかりきっているはずの答えを求めてしまう。

 

「……それでも、お前は―――」

 

最後の逃げが言葉に成り切ることはなく、それよりも早く圧し掛かる熱と重みに遮られる。

怪獣の火焔が近くに着弾したのはすぐにわかった。その衝撃と振動で腰掛けていた屋台の残骸は崩れ、陸を押し倒す形で覆い被さった曜の顔が視界いっぱいに映る。

 

「…大丈夫か?」

 

「……うん」

 

温もりも、柔らかさも、鼓動も、何もかもを鮮明かつダイレクトに感じる。

 

背も伸びた。髪型や顔つきだって多少なり変わったし、野郎の無骨さも女の子の膨らみだって立派に表れてきている。けれどそんなこと、ずっと互いを見てきた自分達からすれば気に留めるようなものでもなくて。

 

だからこそこうして直に伝わってくる互いの身体の感触は……まだ遠いはずの結論を急がせる。

 

「……」

 

徐々に、何よりも見慣れた顔が近づいてくる。

紅潮するほどに朱を差した頬に潤む双眸はいつになく扇情的に瞬く。受け入れればきっとそれは自分のものになるし、彼女も拒みはしないだろう。

 

「……やめだ」

 

でも、だからこそ、今は拒んだ。

重なりかけたそれらの間に挟んだ手で彼女を押し返し、起き上げた身体を小さく震わせた。

 

「また逃げることになるのはわかってる。……でもさ、今のままのお前等でいてくれないと、踏み出せる気もしないんだよ」

 

その先へ進めば、きっとこれまで通りの関係ではいられなくなる。

それはいつかは迎えるはずのものだ。けれど、今じゃない。

 

「簡単にゃ行かねーだろうし、また逃げたくなるようなこともわんさか待ち構えてんだろうけどさ」

 

千歌、果南、未来……そして曜。隣り合う温もりはいつだってそこにあった何でもないものだ。

曜がそうであったように、何でもないからこそ、それはふとした時に力をくれる。

 

「……お前が、お前等が今まで通りでいてくれんなら、なんか頑張れそうな気がするんだよ」

 

だからこれは逃げだ。踏み出すための、前に進むための逃げ。

背中を押された夢がある。もう逃げないと決めた道がある…………その道を進むためにも、今はまだこのままでいたいから。

 

そしてそれを壊しかねない脅威はまだ、眼前に一つ残っている。

 

「……だからちょっと、行ってくるわ」

 

「え……?」

 

自然と口にした言葉に続き、再度想い起される˝彼˝の姿。

彼があらゆる理不尽も運命もぶっ壊し突き進んでこれたのは、案外こんな、何でもない温もりを守りたかっただけなのかもしれない。

 

だって、それこそが―――、

 

「ああぁ~~~………もう、結局俺もあの馬鹿と同じかよ」

 

ここにはいない友に思いを馳せながら愚痴のように吐き捨てた。

恐怖がない訳じゃない。でも進む勇気をくれた奴等がいるから、ここで逃げる訳にはいかないんだ。

 

「…馬鹿みてーだよな。いくら本物のウルトラマンにそう言われたからって、別の世界じゃ俺もウルトラマンって話まで鵜呑みにするなんざ」

 

「ウルトラマン……?」

 

「そ。この年になって何言ってんだって感じもするけど………でも信じちまったからな」

 

自分の答えは決まった。やるべきことだってはっきりしている。

あとはあの時聞きそびれた、彼女の答えを聞くだけだ。

 

「…だから、信じてくれねぇか。俺のこと」

 

「……信じてるよ。昔から、ずっと」

 

逃げ続けてきた自分に対し、彼女はただ、穏やかに笑った。

普段と変わらない温かさのまま、その一言に全ての想いを乗せて。

 

「……帰ってきてね」

 

「…当たり前だ」

 

髪を撫でる手を離し、その場所へと向かう。

 

終わらせやしない。本当の戦いは……ここからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――まる達は遥君の味方だよ。

 

身体を包んでいた温もりはとうに引いている。残留していた喪失感も既にない。

けれど胸に灯ったこの熱だけは、収まることなくじわじわと広がっていく。

 

「姉さん……僕は、どうしたいんだろう」

 

白の中に置いた手を、その世界も巻き込み握る。

触れるのが怖かった。だから遠ざけてきた。それなのにその温かさは、否定しようもないくらい奥底にまで触れてしまって。

 

「……どう、したらいいんだろう」

 

依然心は迷子のままだ。

求めてしまったからこそ、不明瞭だった行く先は更に立ち込める霧を深くする。

 

 

 

「……いいんだよ、遥は。遥のしたいままで……」

 

「姉、さん……?」

 

その濃霧の中に差したものは、光だったのだろうか。

失いかけていた声の気配に顔を上げれば、閉じられていたはずの瞳と視線が重なった。

 

「……心配させてごめんね。でも、教えてくれたから」

 

「え……?」

 

これを奇跡と呼んでもいいのか。医者ですら匙を投げた容体は見る影もなく、包帯や病服姿を除けば普段通りの梨子の姿がそこにはあった。

だがその余韻を感じさせる間もなく、目を覚ました姉は言葉を紡ぐ。

 

「赤い靴の女の子が言ったの、遥が苦しんでるって。だったらいつまでも寝てる訳にもいかないでしょ?」

 

姉の言う現象が、胡乱の中で見た妄想なのかは定かではない。空想であるはずの存在が現実に現れた今だ。神に救われたなどと言われようとも信じるだろう。

 

「私は、お姉ちゃんなんだから」

 

けれどただ一つ確かなのは、根底にあったその使命感が姉の意識を呼び戻したということ。

 

お姉ちゃん。きっとその言葉は呪いだ。

姉だからなんだって言うんだ。だからと言って弟に巻き込まれていいはずがない。奪われていいはずがない。

 

そんな言葉があるから、自分は姉を苦しませてしまうというのに。

 

「……姉さんはピアノ、続けたかったの?」

 

あの日は問うた自分を呪った。でも今は己の意思で口にする。

姉の本心はもう知った。だから何の介入もない姉自身の言葉で言ってもらえれば、楽になれる気がしたから。

 

「…そうね。続けたかったんだと思う」

 

姉も何かを決しているのか、あの時はぐらかした答えを迷わず口にしてくれる。

 

「……僕のこと、恨んだ?」

 

その勢いのままにアクセルを踏み切った。

これを問うことが即ち何を意味するかもわかっている。

 

こうするしか知らないから。先を見失った心は、いっそ楽になることを求めていた。

 

「……うん」

 

姉の答えは、求めていたものだった。

でも予見していた感覚は一向に訪れない。膨らんでゆくのは違和感ばかりだ。

 

「実はね、東京を離れる少し前から、スランプ…っていうのかな? ピアノ弾いてても全然楽しくなくて。そんな時に転校が決まったの」

 

何故なら姉の表情はすごく……悲しそうだったから。

 

「…あの時遥に言ったことは、私の本心で間違いないと思う。実際、続けたいって気持ちはどこかにあったから。でもわかったの。それはピアノから逃げた自分が嫌で、その理由を誰かのせいにしたかったんだって………最低だよね」

 

姉にそうさせるのは、昨夜怪獣に変貌する直前の記憶だけではないのだろう。

それよりももっと前。不甲斐なさに押し潰されそうな様は、どこか自分自身と重なった。

 

「それがずっと遥を苦しめてたのに気付きもしないで………ううん。気付いてたのに、目を逸らしてたの…………ごめんなさい」

 

「なんで…、姉さんが謝るんだよ…………」

 

滲む何かで歪む視界が映す姉の顔は悲し気で、それ以上に真っ直ぐで。

向き合うと決めた瞳だった。逃げることなく、正面から。弟と、他でもない自分自身のために。

 

「元はといえば僕が……僕が逃げたから…………!」

 

「じゃあ、おあいこだね」

 

遮るように抱き寄せられた胸の中でまた熱を感じる。花丸のそれとは違う、ずっと昔から知っている温もり。

 

「…ホントはね、漁港祭の舞台が終わったら言うつもりだったんだ。ここに来て私は変われた、前に進めたんだって、ちゃんとそれを見せてから伝えたかった」

 

その熱に包まれようと、痛みはまだ胸の中にある。きっとこの先もずっと、この痛みが消えることはないだろう。

 

「……すっぱり忘れるっていうのは無理だよね、お互い。多分これからも苦しくなる時はあると思う」

 

だから逃げてきた。これ以上傷付くのが怖くて。

いつしかそれは人と関わる怖さへと変わり、寄り添ってくれる者まで遠ざけてきた。

 

「けど遥も私も……もう一人じゃないでしょ?」

 

だからこそそれを受け入れた先にあるものなんて、想像もつかなかったんだ。

 

「遥には私がいるし、皆がいる…………もう、一人で抱え込まなくていいんだよ」

 

その答えを示すように、また胸に熱が灯る。

触れる温かさは別質のもの。でも奥から広がってゆくのは˝彼女˝に抱いたそれと同じもので。

 

「だから遥………一緒に、進んでいこうよ」

 

ああ、そうか。これだったんだ。

ここへ来てから何度も感じた熱の正体。遥がそれを心地よいと感じたのは、胸に掛かる痛みが和らいだのは、そこに居場所があったから。

 

それを作ってくれたのは他でもない。ここで遥が出会い、拒み続けてきた人達だ。

 

「……姉さんは、ここに来てよかったって思う?」

 

またわかりきったことを問う。求めるのは姉の答えじゃない、自分の声に出す機会。

 

「勿論。ここでよかったって、心の底から言える」

 

「僕も……今ならハッキリ言えるよ」

 

ここでなら進んでゆける………自分でいていいんだ。

 

「僕はもっとここにいたい。皆と一緒にいたいって」

 

紛れもない心からの言葉に、姉もまた、心から笑って見せた。

こんな顔を向けてくれたのはいつぶりだろうか。そんな感慨に浸る間もなく病室を揺らす咆哮が轟いた。

 

「……行くの?」

 

「……うん」

 

どこに、とも、何をしにとも聞かれなかった。

ただ一つ歩み出した背中で感じ取るのは、変わらずそこにあった信頼だけだ。

 

「……見てて、僕の答え」

 

確証はない。でも確信があった。

夢の中で触れた自分ではない自分。何が作用して彼と繋がったかはわからないままだが、自分が歩み出す動機と彼が進んでこれた理由は同じ。

 

だったら自分にだって、出来るはずなんだ。

 

「この世界は滅んだりしない………滅ぼさせないから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……正直言うと、陸さんのこと結構苦手でした。斜に構えて達観した顔してるのが自分を見てるみたいで気に入らなくて…………あと怖いし」

 

崩れ行く世界を並んで進む。

どうしてここにいるかなんて聞かなかった。やるべきことなんてわかってるから。

 

「……普通このタイミングで言うかお前。泣いていい?」

 

「…まあ、そうかもしれませんね」

 

交わす声音は穏やかだった。取り繕う必要はない。ありのまま、普段通りでいいんだ。

もう何度もこうして会話を交わしたはずなのに、今この瞬間を流れる時は新鮮だった。

 

「それでも僕には大事なことだったので言わせてください。……それと、これからもよろしくお願いします」

 

「これからねぇ…………もう勝った気でいるなんざ大したこった」

 

「勝ちますよ……終わらせませんから。陸さんだってそうでしょ?」

 

「…当然」

 

想いを交える度に瞬く景色がある。

これまでの自分を培ってきたもの、重ねてきた記憶………そして別世界の自分から伝播する光。

 

それら一つ一つが蛍火となり、オーロラのような軌跡を描いて手の中へ収まってゆく。

 

「……行こうぜ」

 

「……はい!」

 

これまでを踏みしめ、これからへ踏み出すために。

形を成した戦士の証を着装し、掲げ―――――全てを込めて˝その名˝を叫んだ。

 

 

 

 

 

「ゼロォォォォォォォォォォォォッッ!!!!」

 

 

 

 

「ガイアァァァァァァァァァァァッッ!!!!」

 

 

 

 

 

直後、絶望の夜闇を切り裂く煌めきを伴って光の柱が昇る。

 

やがて集束したそれらは方や閃光を散らし、方や大地を轟かせ―――――二体の巨人が降臨した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なに………?』

 

絶大な光、そして希望の気配に、バット星人は計画の綻びを悟る。

馬鹿な、どうして。渦巻く戸惑いは意味を成さない……なぜなら現にそれらは目の前にあるのだから。

 

『……ウルトラマン』

 

胸に宿る輝きは巨人達が紛れもないその存在であると物語っている。

 

ウルトラマンゼロ、そしてウルトラマンガイア。

 

受け渡された想いが時空を超え――――輝きが降り立った瞬間だった。

 

 




遂に陸と遥が変身……………8兄弟風に言うなればゼロとガイアの復活です
少々詰め込み過ぎた上に若干駆け足ですが作者としては満足してます。やはり同時変身は正義

ちなみに陸はゼロライブ本編でゼロの名を叫びながら変身したことは一度しかない為何気レアだったりします


そして忘れてはいけないのが冒頭の彼
8兄弟とは異なり先にサイドの二人が変身することとなりましたが当然彼もこのままである筈がありません

さあ盛り上がって参りました。駆け抜けていきましょう
それでは次回で


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