ウルトラのキセキ ~One More Sunshine Story~   作:がじゃまる

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案の定2週間開きましたが一応予告はしてたしセーフってことに(ならない)


とにかくお待たせいたしました
今言える言葉はそれだけです


20話 約束の焔

 

夜はまだ深い。

未だ夜明けを予見させぬ黒の下、巨大な影同士の衝突はより過激を極めてゆく。

 

『ジュアァッ!』

 

建物を薙ぎ払いながら猛進する皇コッヴの突進をガイアの膝蹴りが相殺。勢いを失った巨体に更なる連打を叩き込む。

 

「はぁ…はぁ……!」

 

戦い方のコツは掴んできた。素人目で見てもガイアに分があるのは明らかだろう。

けれどどうしてだ……全く押している気になれない。

 

『ッッッ――――――!』

 

「うっ―――」

 

込み上げる疲労に足を止めたその一瞬。白刃の如く迫った手鎌が喉元を掠める。

違和感の正体。それはこの怪獣の異様なまでのタフネスさにある。

 

如何なる攻撃を幾度叩き込もうとも、一向にその勢力が衰える気配を見せないのだ。

 

『デェェェリャッ!』

 

横目に確認したゼロは開幕時の勢いを保ったままキングディノゾールを圧倒しているが、恐らくは同じ状態だ。

 

元が身体能力お化けの陸だ。もやしっ子の遥と違い体力切れはずっと先の話だろうが、それでもその時までにディノゾールを削り切れそうかと言えばそうではない。

 

(…どうする……)

 

ウルトラマンの代名詞とも呼べる光線技だが、あれは文字通りの必殺技。恐らく何発も打てるような余裕はない。

 

だから放つのは勝負を決めに掛かるその瞬間だというのに……これでは一向にその時など訪れはしないだろう。

 

『ッッッ――――――!!』

 

『ジュアァァ……!』

 

組み立てていた正解への道建ては今度は直撃したコッヴの突進により瓦解させられる。

 

「遥……!」

 

後方の建物も巻き込み転がったガイアにコッヴからの追撃が襲い掛からんとするが、寸でのところで割り込んだゼロが受け止める形でガード。

直後に吹き荒れた空拳の嵐は奴の巨体をディノゾールの傍らにまで押し戻した。

 

「…陸さん、なにか気が付きませんか?」

 

「何が?」

 

「もう少し頭使って戦ってください………コイツ等、削れてる感じが一向にしません」

 

すぐさま起き上がりつつ低く構える。

ゼロの稼いだ一瞬が仮説を立てる時間をくれた。怪獣の挙動一つ一つに精神を注ぎながら、遥は隣り合う陸に耳打ちする。

 

「……なにか裏があるとしたら、恐らくアイツです」

 

「……なるほど」

 

ただそこに佇み、無言のまま成り行きを眺める宇宙人が一人。

もし蝙蝠が人型を成したようなアイツが怪獣達に何か作用を及ぼしているとしたら……、

 

「…つまり、アイツから叩きゃいいってことか!」

 

「ちょっ……陸さ―――」

 

しかしまだ仮説の段階。奴の能力等は未だ不明瞭なまま………それなのにも関わらずゼロが突撃を仕掛ける。

 

『……青いな』

 

不敵に笑うバット星人。

だが奴自身が何かを成すことはない。代わりに飛来したのはディノゾールの射出した弾頭の群れだ。

 

「ちっ……」

 

完全に初見なはずの弾幕攻撃に対する反応は舌打ちのみ。流れるような打擲に撃墜されたそれらは黒煙を舞わせるだけに終わる。

 

―――が、

 

『…所詮はただの子供か』

 

「ガ……ッ!?」

 

砂塵の舞う世界の中、土埃の奥より差し込んだ破壊の光。

バット星人の掌より射出されるレーザー状のそれは連続でゼロを穿つ。

 

『『ッッッ――――――!!!』』

 

『グアァァ……!』

 

奴に続く形で巨獣達の放った光弾がゼロを飲み込み爆ぜた。

 

やはりそうだ。この怪獣達、生物的な本能や思考に即しているにしてはやたら挙動が()()()()すぎる。

 

恐らく単純な命令以上の何かが絶えずバット星人から受け続けている……瞬時に連携を取ることを可能としているのも恐らくそれが故だ。

 

『少々驚かされはしたが脅威になり得るほどではない…………消えろ』

 

つまり奴等は意思のない人形も同然の傀儡……そこまで掴んだというのに、遂に動き出した第三の壁は容易く理想を屠る。

 

操る怪獣二体にゼロを抑え込ませたバット星人は一瞬のうちに眼前にまで肉薄し、横薙ぎの一蹴でガイアを跳ね飛ばして見せた。

 

『……まずは貴様だ』

 

くるり。

踵を返したバット星人の掌が定めた標的は再度ゼロ。

 

「陸さんッッ!!」

 

狙いを悟り上げた叫びも僅かに遅い。

次の瞬間に放出された漆黒の波動はゼロに直撃。瞬く間にその身体を蝕んでゆく。

 

「ぐっ……あぁぁぁッッ………!!」

 

途端に漏れ出してゆく淡い粒子はウルトラマンとしての肉体を構成する光に他ならない。

 

奇跡が紡いだ光の力は…………邪悪を前に失われようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「陸ッ……!」

 

黒の瘴気に囚われた巨人の姿に、千歌の前だということも忘れて親友の名を口にした。

あの闇は春馬達を襲ったものと同じ。それはこのまま事が進めば陸までもが彼等と同様の状態になることを示していた。

 

「…やっぱり、陸ちゃんだったんだ」

 

焦燥に身を焼く未来に対し、千歌の声は穏やかだった。

 

「気付いてたのか……?」

 

「なんとなく。幼馴染……だからかな?」

 

誘うようにコンクリート造りの防波堤に座する千歌。続く形で未来も腰を下ろす。

 

「そっかぁ………陸ちゃんなんだぁ………」

 

遮るものも何もない。ただ視界の端で暗い海が荒波を立てている。

その奥で奮戦する巨人をどこか嬉しそうに、それでいて少しだけ残念そうに彼女は眺めた。

 

「……でも、やっぱりあっちの方は未来君じゃなかったんだね」

 

その色を映すように、擦れた呟きが直後に漏れる。

明瞭に含まれた落胆はまるで千歌までもが未来の弱さに呆れているかのようで、胸を抉った。

 

「すぐにわかったけどね。………でも最初は未来君なんじゃないかって、嬉しくなっちゃった」

 

「え……?」

 

「だって未来君、言ってたじゃん」

 

けど受け取ったそれと千歌自身の想いとは異なるようで。

記憶の中にあるであろうものを抱き留めるように、屈託なく笑った。

 

「もし怪獣が現れたら、未来君がウルトラマンになって助けてくれるって」

 

語られたのは幼き日の約束。

もう何年も前の話だ。ウルトラマンに出会って間もない頃、抱いた興奮のままに千歌と交わした約束。

 

でもそれは所詮、想像の中で描いた絵空事でしかないんだ。

 

「……まだそんなの信じてたんだな」

 

今更それを持ち出す千歌と、そんな約束をしたかつての自分を皮肉るように口角を歪めた。

もっと別な形があるのはわかっているはずなのに、迷子の心はそれすらも見失ってしまう。

 

「……信じてるよ、ずっと」

 

それでも彼女の瞳は真っ直ぐなままだった。

 

あの夕暮れと同じだ。直視できないくらい輝いてて、眩しくて………敵わないと思ってしまう。だからこそ、また卑屈になる。

 

「そりゃ、こんな状況だし信じそうになるのもわかるけど…………陸でも勝てないかもしれない奴等だぞ。今更俺が行ったところで―――」

 

「……じゃあ、助けたいって思わないの?」

 

何気ない、日常の風景の中に溶け込むような響きが閉じた扉を叩いた。

何もかもを見透かされているような錯覚すら感じるその目は、直前にあった級友と重なった。

 

「……そんなはずないよね。未来君だもん」

 

「…だからなんなんだよ」

 

答えるよりも早く千歌は笑う。

その真意は定かではないけれど、今未来の手の中にある事実が揺ぎ無いことであるのも確かなんだ。

 

「助けたいとか見過ごせないとか………そんなのただ後先考えずに幼稚な正義感振り回してるだけだろ。…一昨日のことだって、結局解決したのは陸達だ」

 

いつだって同じだ。

駆り立てられるままに突っ走り、周囲を巻き込み、最終的には自分は何も出来ないまま誰かが解決する。

 

「……俺じゃできないんだよ」

 

ヒーローになれはしない。それをやる、やってくれるのはいつだって誰か。

今だってそうじゃないか。未来がやるまでもなく、立ち上がったヒーロー達は戦ってくれている。

 

「…真っ直ぐだよね。未来君は」

 

一度重ねた視線を外すと、千歌は羨むようにぼやいた。

終わりの足音が迫るこの時でも夜空は綺麗だ。普段通り、何ら変わらない顔で未来達を見下ろしている。

 

「……どこがだよ」

 

ほんの少しだけ苛立つように、低くなった声を霧散させる。

 

「ちょっとしたことで舞い上がって、すぐに現実に挫折して、悟った面して……なのにまた半端にそれを追いかけて………どこが…………」

 

「諦めてないってことでしょ?」

 

「言い方の問題だ。諦めきれてないだけなんだよ。………幼稚だって、アホらしいって、そんなことわかってるはずなのに、ずっと……」

 

「でもそれって、凄いことだと思うよ」

 

それでも彼女の声音に澱みはなかった。

体育座りをするように丸めた身体が堅いコンクリートの上で揺れる。見上げる瞳に映るのは、夜空ではない何か。

 

「こう言ったらアレだけどさ、未来君も結構、普通じゃん?」

 

そうして語られたのは、未来自身も千歌に対して抱いていたものだ。

これと言った特技も能力もなく、普通星に生まれた普通星人。千歌の言葉を借りるそれは、いつの間にか二人の間に生まれていた、自虐に塗れた親近感。

 

「でも未来君は迷っても決めたことだけは真っ直ぐなままで、こう、芯が強いっていうのかな?」

 

そして、それはいつしか安心感へと変わっていた。

身勝手に、自分の弱さを押し付けるように、彼女にも普通であり続けて欲しいと願う自分がいたのは事実だ。

 

「私はほら、興味本位で挑戦するわりにはすぐ挫折して投げ出しちゃうじゃん? だから未来君のそういうところは羨ましくて………カッコよかった」

 

「は……?」

 

けれど、言葉尻に漏れた感嘆がそれを瓦解させる。

根本的に違っていたのかもしれない。点にした目が再び千歌と重なる。

 

「……だから、私も頑張ろうって思えたんだよ」

 

追いかけられていたんだ。その真実と共に更なる情動が重ねられる。

それが何を差しているのか、未来は既に知っていた。

 

「………どうして、スクールアイドルだったんだ?」

 

揺れるままに、触れることをしなかった疑念を口にする。

偶像に焦がれたのは一緒だった。けど彼女がそれを追いかける度に差が開くような感覚がして、触れることをしなかった。

 

けど、本当に千歌が走り出した切っ掛けが未来であるなら。

求めていた答えもきっと、それに通ずるもののはすだ。

 

「わかんない。ホントにただ、ビビっと来ただけだから………案外今までと同じかも」

 

たははと笑う千歌。今日に至るまで、彼女に熱弁されたスクールアイドルの、ラブライブの魅力の数々が脳裏を駆ける。

普通だった。何よりも強く焼き付いているのはそう語った千歌の顔。

 

普通。少なからず良い意味で用いることはなかった言葉は、その時ばかりは千歌に輝きを与えていた。

 

「……でもやってみたいって思った。これなら私も変われるんじゃないかって、思ったの」

 

一拍の沈黙の後、秘めていた希求が切り出される。

当たり前だ。未来がそうだったように、千歌にだって変わりたいという願望はずっとあったはずだ。

 

「もちろんそれだけじゃないよ? 楽しくなかったらここまでやってないし、そもそも元からやるって決まってたことだったし………でも、ずっと思ってる」

 

何度躓いたのだろう、何度挫けそうになったのだろう。未来に知る由はないけれど、それはこの数週間ずっと、千歌の根底に在り続けたもの。

 

「今投げ出したら、絶対後悔するって」

 

それはいつだって単純だ。

けど、だからこそ見失ってしまう。成長して、変に賢くなるにつれ、染み付いたものに覆われ塗り潰されてしまう。

 

「…未来君もそうでしょ?」

 

過去に何度も投げ出してきた千歌だからこそ、ずっとそれを留めておくことができたのか。

だとしたら、それは諦めることをしなかった未来の中にもきっと―――、

 

「……」

 

もう一度、寸刻前の級友の言葉を反芻する。

これまで何度も正義感と善意のままに突っ込んで、失敗することだって少なくなかった………けどそれを後悔したことなんてあっただろうか。

 

「……うん」

 

いいや、そんなことはなかった。

尾を引いていたここ数日のことだってそう。結果的には未来も誰かに助けられることになってしまったけれど、それでもその行動を後悔なんてしてないはずだ。

 

「そっか…………そうだよな」

 

行動したのはウルトラマンに憧れたから? ヒーローになりたかったから? ………どれも違うはずだ。

善意や正義感。それ以上に、˝今助けなかったらきっと後悔する˝………胸の内にあるのはいつだってその想いだった。

 

「……やっとわかったよ、春馬」

 

改めて、日々ノ未来に問う。

今お前は何がしたい。できるかできないかなど関係なく、未来自身は何がしたいのか。

 

「……行くの?」

 

「うん。これは俺がやらなくちゃいけないことだから」

 

背中を押してくれる人がいた。理解してくれる友がいた。………そして勇気をくれる彼女がいた。

そんな、色んな人達から受け取ってきた想い。それらが形になるように左腕に宿った銀色のブレスレットを握りながら、伝える。

 

「ありがとう………千歌」

 

「いいよ、そんなの。だって約束したじゃん………夢とか、やりたいことができたら応援するって」

 

「…そうだったな」

 

決めたからこそ交わす言葉は少なかった。

全部、この約束に詰まっているから。

 

「だから未来君も約束………守ってね」

 

「守るよ。絶対に」

 

それ以上は何も言うことはなかった。

いつもそこにあった真っ直ぐな瞳と笑み。その輝きに背を押されるように、未来は答えの待つ場所へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

焦っていたんだと思う。将来を選択しなければならない時が近づいていて、親友への劣等感が加速するようで。だからこそ踏み出す動機ができるできないに置き換わってしまっていた。

 

けどやっと思い出した。なぜ自分が˝彼˝に憧れたのか。

 

強い力があるからじゃない。正義の味方だからでもない。それよりももっと、大切なもの。

 

どんなに傷付いても、どんなに無謀でも、大切なもののために戦う姿。………始まりはそこからだったじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何しに来たの」

 

盛る炎に包まれる町の中に黒い百合の花が咲いていた。

光と闇がせめぎ合う舞台を背に揺れるその花弁は、やはり悲痛に思えた。

 

「……守りに来た。この世界を、俺の大切な人達を………ユリも」

 

「はぁ…?」

 

肩を上下させる未来に怪訝な顔が向けられる。確かな苛立ちが含まれていた。

 

「余計なお世話よ。何も知らないくせに勝手言わないで」

 

「確かに俺は君について殆ど知らない……けど、ずっと君が苦しみ続けてきたのはわかる。だから助けたい」

 

「それが勝手だって言ってるの………いいから消えてッ!」

 

鬼気迫る声に乗り闇の波動が走るが、それは未来に到達する前に生じた炎の壁に阻まれる。

腕に宿したブレスレット。それは徐々に熱を増していっていた。

 

「ユリにとってはそうかもしれない。けど、ここでやらなかったらきっと後悔する。………それだけはしたくない」

 

これまでと変わらない。言葉を借りるなら、これは正義感と善意で突っ走ったただのお人好しだ。

でもそれでいい。それこそが未来だから。皆が信じてくれた、日々ノ未来だから。

 

「だからここにいる。………それが俺の決めた道だ」

 

刹那、ブレスレットに走る烈火。

銀色を包んだ熱は徐々に形を生成してゆき、やがて炎そのものを宿したような、深紅を煌かせる新たなブレスレットへと昇華する。

 

「……見ててくれ」

 

少しは近づけたかもしれない、マシになったのかもしれない。ただそれだけだ。きっと˝英雄˝と呼ばれたあの世界の自分はもっと強い。そこに追い付くことはないのだろう。

 

けどただ一つ。この心だけは……絶対に負けはしないから。

 

 

 

 

「メビウ――――――スッッッッ!!!!」

 

 

 

 

託されたその名と共に突き上げた左腕から広がる無限の焔。

 

灯った光はその勇気を祝福するように炎へと宿り―――最後の勇者を覚醒させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ぐッ……ぬぅ………!?』

 

舞い降りた炎と光に押し戻され、逆流した闇の奔流がバット星人を襲う。

浮遊するその陽はやがて巨人の形を成し、先んじて立ち上がった友の肩を支えた。

 

「……遅いですよ」

 

「まあまあいいじゃねーの。主役は遅れて来るって言うしな」

 

どよめく人々に対し、巨人達に驚く様子はなかった。˝彼˝は必ず来る。そう信じていたから。

 

「けどまあ、遅刻した分はしっかり働いてもらうぜ………未来!」

 

「……ああ」

 

無限の勇者―――ウルトラマンメビウスを中心に据え、三人の巨人が並び立つ。

封じ込めたはずの光が伝播し、また新たな光が立ち上がる。その様をバット星人は隠すことの無い憎悪を込めて睨んだ。

 

『何故だ………何故お前達は立ち上がる。この光も希望も消えた絶望の中で!』

 

「消えないからだよ。どんな絶望の中でも、人の心から光は消え去らない」

 

もう一度追いかける夢、これから探す夢、ずっと焦がれ続けてきた夢。その全てが未来へと続く光の軌跡だから。

今はただウルトラマンとして、人として………それを守り抜くだけだ。

 

 

 

「これが俺達の光………即ち、無限の輝きだ!!」

 

 




遂に未来君が覚醒です………
大事なのはできるかどうかじゃない。やりたいかどうか。そう言うことです

メビウスも加わり決戦もいよいよ大詰め
彼等の˝未来˝はどこへ向かうのか


それでは次回で
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