ウルトラのキセキ ~One More Sunshine Story~   作:がじゃまる

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最早更新遅れるのはいつものこととして()
ともかくクライマックス目前……ちゃんと駆け抜けたい……!


22話 願いを繋ぐ

 

 

世界の終わりは突然だった。

前触れも、そんなもの一切なく出現した怪獣達は瞬く間に世界を破壊しつくし、大切なものを全て、摘み取っていった。

 

「う……」

 

崩れ行く世界の中、煤や傷に塗れた身体を瓦礫に隠れる親友の前まで引き摺った。

伸ばした指先が触れた彼女の腕は冷たかった。辺りで燃え盛る炎の熱に反し、ずっと昔から感じ続けていたはずの温もりが存在しない。

 

『ッッッ――――――!』

 

「ああ――ぅ……!」

 

それが何を意味するのか理解する間もなく巨影が吐き出した何かが近くに着弾し、爆発。

巻き起こった熱風は容易く自分の華奢な身体を吹き飛ばし、同時に覆い被さっていた瓦礫と共に親友が宙を舞う。

 

「カエ、デ……?」

 

痛みも忘れ這いずった先で、遅れて現実を悟る。

校舎の破片。大切な思い出の詰まったそれによって隠されていた彼女の顔は、最早誰かと判別できるようなものではなくて。

 

「ぁ、ぁあ………」

 

けどわかる。ずっと隣にいたからこそ、それが紛れもない親友の身体だと心は理解してしまう。

 

「嫌……あんなのが、最後だなんて………!」

 

赤黒い色に塗り潰された、焼け焦げ拉げた顔に最後に移した表情を重ねる。

手を伸ばした輝きに届かず、救いたいと願ったものさえ救えずに流した涙………いくら思い返しても、焼き付いたその顔が離れない。

 

「なんで……! なんでこんなッ………!」

 

辛うじて形を留めていた友の手を抱きながら、泣き喚くように声を吐き散らした。

冷酷な世界を恨み、理不尽な現実を憎み………何より自分自身を呪う。

 

きっと世界の運命は変わりはしなかった。けど、自分達にこの顚末を迎えさせたのはなんだ。

 

自分が˝スクールアイドル˝になんてさえ誘わなければ、彼女との記憶は、楽しく美しいまま終われたはずなのに。

 

『……ニクメ』

 

「え…」

 

何度も打ち付けた腕から滲む朱が広がってゆく最中、絡みつくように耳に触れた声。

それを認識した時には既に、どす黒い何かが身体の、意識の奥底で渦巻くようにのた打ち回っていた。

 

『ウラメ、ケシサレ、ワレヲハバムスベテヲ………』

 

意志を感じぬ声音に反し、沸き立つような憎悪が胸の奥からせり上がってくるのを感じた。

 

そうだ。

あんなものが存在していたから、こんな結末を迎えてしまうんだ。

 

「…スクールアイドル………」

 

『…ホロボセ、ヒカリ……ヲ……―――――』

 

低く漏らした声が囁きを掻き消し、飲み込む。瞳が映すものは最早夢でも希望でもない。

 

崩壊する景色の中に凛と、黒い百合の花が咲いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

闇夜の空にもハッキリと映る異形の影。

歪に、禍々しく、あり得ないほどに巨大な体躯を蠢かせる様はまさに絶望の体現者……とでも言い表すべきか。

 

――――究極合体怪獣(キュウキョクガッタイカイジュウ) テラキマイラ

 

『……滅びの運命は覆らない。絶対にだ』

 

複数が入り交じった咆哮と重なり、直接語り掛けてくるような声が頭の中に響く。

奴の言う滅び。それは驕りであり宣言だったのか、テラキマイラの全身が淡く発光した直後に世界は―――一変した。

 

『ッッッ――――――!』

 

閃光が走り、同時に町を覆う爆発の群れ。

防ぐことも、まして回避も間に合いはしない。理不尽なまでの厚さと火力を伴った砲弾の束が三人のウルトラマンを襲った。

 

『この世界に未来はない。消えろ』

 

人々の悲鳴やどよめきをも掻き消す爆音が幾度となく上がる。

衝撃波に焼かれ揉まれる街並みの中に巨人の身体が崩れる。その力の差が歴然であるのは明らかだった。

 

「なろ……バカスカ打ち込みやがってッ!」

 

ここである程度のパターンを見切ったのか、砲撃のインターバルを突いたゼロが一気に飛翔。

 

『デエェェェリャッ!』

 

撃墜に放たれた光弾を掻い潜り、極限まで速度と勢いを増したゼロの豪脚が爆炎と共にテラキマイラの胸部に突き刺さる。

部位を構成するバット星人の顔面が歪む。反撃の狼煙が上がった。そう思われた次の瞬間、その理想は容易く打ち砕かれることとなる。

 

『ッッ―――――!』

 

「な―――んッ!?」

 

一撃を見舞ったゼロの上。唸りを散らすヘルベロスの咢が彼の足に喰らい付き、そのまま胸部から引き剥がしては真下へ放る。

間髪なく光弾の雨が降り注ぎ、ゼロを飲み込み巨大な火球と化したそれは地上へ着弾すると同時に大規模な爆炎を吹き上げた。

 

「陸――――」

 

攻撃の行く先はそれだけに収まらず。

隕石の如く流れ落ちるそれらはメビウスをも強襲。咄嗟にバリアを展開し防御を図ろうとするも―――、

 

「がッ……ああぁぁぁぁッッ……!」

 

障壁を容易くブチ抜いた光は絶えずメビウスを射止め、熱波に薙ぎ払われる形で膝を折る。

立ち上がるにも全身に走る痺れのような感覚がそれを許さない。ただ力なくその巨体を地面へと投げ出した。

 

『ドゥアァァッ!!』

 

翳む視界が光線を打ち上げるガイアの姿を収めた。

だがそれも間もなくして爆炎の中へと消える。如何に光の巨人が放つ光線と言えど、不条理の化身である奴の砲撃には太刀打ちなど敵わない。そう物語るように。

 

「くっ…そ……!」

 

時間にして、ものの数十秒だろうか。

絶望の暗雲を前に立ち上がり、闇を晴らさんと立ち上がったウルトラマン達………それらは圧倒的なまでの悪意を前に倒れ伏している。

 

『ッッッ――――――!』

 

終焉の鐘を鳴らすように、膨大な熱量が奴を中心に集約してゆく。

文字通りの終止符であるのは明らかだった。膨れ上がった破滅の光は残酷に夜空を照らす。

 

「ッ……!」

 

これまでかと視界を閉ざしかけた瞬間、解放された熱線の行く先が自分達ではないと悟る。

破壊の魔の手が狙いを定めたのは、未だ動かぬ彫像と化したままの―――二体の巨人だ。

 

「春―――」

 

赤黒い光は悉くを焦がし融解させる。通過した跡に伸びる溶岩の一本線がそれを告げる。

地表すらも溶かすほどの熱量だ。硬化している二人はおろか、メビウスだって受ければ欠片も残さず消滅するだろう。

 

バカなことを考えるな。それよりも見ろ。この熱線を放っている間の奴は完全に無防備。今なら有効な攻撃だって叩き込めるはずだ。

 

救うべきはこの世界なはず。だったら元々関係もなかった奴等のために賭けに出るよりも、確実に奴を倒す方がいいに決まって―――、

 

「いいわけ……ねぇだろッ!!」

 

過った邪な声を払い、弾かれるように飛び出した。

 

『ゼアァァァァッ!!』

 

全身、全霊を込めて、形成した光の盾で熱線を向かい撃つ。

 

また踏み違えるところだった。

この世界を救いたい。大切な人を守りたい。その想いに二言も嘘もない。だから、もしかしたらこの行動はそれに反することなのかもしれない。

 

けれどここで背を向ければ˝日々ノ未来˝を裏切ることになる……それだけは絶対にしたくないから。

 

「う、ぐ…ああぁぁぁッ………!!」

 

熱い。熱いあついアツイアツイ。

バリア越しだというのに、貫通してくる熱気は許容範囲を遥かにオーバーしている。

 

「未来ッ……!」

 

亀裂の走った壁が綻び、地に伏したままの陸から飛ぶ声が危機を告げる。

防ぎきれないことなど最早明白だったが、それでも込める力を緩めはしなかった。

 

「諦め…るかァ……!」

 

憧れてきたヒーロー。その背中が教えてくれたもの。

一時とは言えその存在になったのだ。ならばやるべきことは一つなはず。

 

『ンン……アァァァァァッ………!』

 

踏ん張れ、ひり出せ。

この場に立ったというのならやって見せろ。

 

「…最後まで諦めず、不可能を可能にする………」

 

皆の信じてくれた自分を貫くために。

 

あの時の自分に―――恥じないように。

 

「それが……ウルトラマンだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「……思い出して、くれたんだね」

 

未来の叫びに呼応するように、メビウスを中心に光が溢れる。

けれどその発生源は自分ではない。もっと淡く、弱々しく、それでいて揺るがぬ意志を秘めた光。

 

「君は……」

 

瞬く熱の中に浮かぶ、深紅と純白の花。

 

「ううん。ずっと、あなたの中にあったんだよね。夢見る想いは」

 

初めて、彼女の笑顔を見た。

名も知らぬ花が咲かせた最後の灯り。それは翳みかかった希望を、再度無限の輝きへと昇華させる。

 

「……だから、応えてくれた」

 

メビウスの光は彼女の願いに乗り、封じられた戦士達に宿っては蒼い二つの煌めきとなり雄々しく広がってゆく。

 

『ッッッ――――――…………!!!』

 

直後に迸った金光が熱線を押し戻し、テラキマイラを穿つ。

撃墜された数多の視線、そしてメビウス達の銀色の眼が映したのは、再び光に満ちたその身体を躍動させる二体の巨人の姿。

 

「ちょっとちょっと……面白そうなことやってんじゃねーの」

 

『まあともかく、役者は揃った……ってとこか?』

 

バリアの消失と共に脱力し、膝をついたメビウスに差し出された赤い腕。

二角の影に灯る、勇ましくも穏やかな双眸。初めて彼等と出会ったあの日と変わらない眼がそこにあった。

 

「やりましょう未来さん。この世界と……あの子達の想いを守るために」

 

「……ああ!」

 

交わす言葉はそれだけだった。ただ手を伸ばすことすら諦めかけていたその腕を、掴む。

ついぞ集結した五人の勇者。見上げた先でなおも蠢く強大な闇との戦いは……終局を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やっぱり、ここに来たね」

 

復活した勇者も加えた巨人達と、未だ衰える様子を見せない悪魔の対峙。更なる衝突を予感させる光景をただ人々が見守る最中、同じ光を宿す少女が三人、集う。

 

「梨子ちゃん……病院にいなくていいの?」

 

「うん……元々大した怪我じゃなかったみたいだし、病院のベッドも足りなかったから」

 

轟音が耳を劈き、閃光と爆炎が再度夜空を満たしてもなお、少女達に流れる空気が変わることはなかった。

 

「それに……頼まれちゃったから」

 

「赤い靴の女の子に?」

 

「曜ちゃんも?」

 

「うん……まあ、ただ頼まれたから、ってだけじゃないんだけど」

 

託された願い、誰かへの想い、そして自分自身の心。

抱くものはどれも、これしきの事じゃ挫けはしないから。

 

「…やろっか」

 

ほの暗い舞台に立つ。ホントいなら今この瞬間、最も輝いていたはずのステージ。

 

けど終わりやしない。何も終わってない。

伝えたかった気持ちも、自分達の想いも、全部、全部ここにあるから。

 

「…そう言えば名前、決めてなかったね」

 

「…名前?」

 

「そう。スクールアイドルなんだから、何か必要じゃない?」

 

「ほんっと、形から入るわね……」

 

「名前かぁ……」

 

一瞬、曇り顔を互いに向け、噴き出すように笑う。

ああそうだ。自分達はもう知っている………この˝名前˝を。

 

 

「―――A()q()o()u()r()s()

 

 

円陣を組み、遥かな輝きに重ねた声を馳せる。

 

 

「「「――――サンシャイン!!!」」」

 

 

垣間見た輝きにはきっと、程遠いものだろうけど。

それでもきっと無二のものになると信じて―――精一杯、輝くんだ。

 

 




若干駆け足ですがユリがこの世界に至った顚末に加えエックス&タイガ復活となりました
敢えてある程度の描写を省いた意味をご理解頂けるときっと喜びます

失敗に頓挫のまま終わってしまったカエデとのスクールアイドルは、ユリにとって輝いていた記憶を忌むべき存在となっていた……まあ端的に語るならこういうことです
影法師が憑依した影響も多少ありますね

そして彼女の心を救うのは動き出した3人……?

次回で遂にクライマックス!
ちょっとした思い付きから始まったコラボ企画、どうか最後までお付き合いください……!
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