ウルトラのキセキ ~One More Sunshine Story~   作:がじゃまる

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なんだかんだ半年以上続いたこのコラボ作品もいよいよ終幕目前です……!
作者の事情に振り回されまくってきた作品ですがどうか最後まで見届けてください


23話 ウルトラの奇跡

 

 

戦いの場は街並みすらも伺えぬほどの高度にまで移る。歪な巨獣の周囲を五つの光が飛翔していた。

 

「『˝ストリウムブラスター˝ッ!」』

 

「˝ワイドゼロショット˝ッ!」

 

次々に殺到する弾幕を回避し、焼き払いつつ、五人のウルトラマンはテラキマイラへの接近を図る。

人数が増えたといえど依然不利な状況であることに変わりはない。下手を打てば一瞬でゲームオーバーだ。

 

「ユリッ! ホントにこれが君のしたいことなのかよ……それじゃあの子の気持ちはどうなるんだ!」

 

繰り返し、何度も呼びかけるが返事はない。沈黙こそが答えなのか、はたまた届いてないのか。

ともあれこのデカブツをどうにかしないことには何も変わらないというのに………突破口が見えない。

 

「赤の他人も同然の奴のために必死になっちゃって………相変わらずあのお人好しっぷりにゃ敵わねぇわ」

 

「差し詰め囚われの姫を救う王子様ってとこか? ま、お膳立ては任せなさいよ!」

 

光彩豊かな軌跡を描き、一気に速度を上げる影が一つ。

 

「何があったかは知らねぇけど不細工なカッコになって……これじゃ高尚もクソもねぇな蝙蝠野郎ォ!」

 

乱雑に振るわれる腕を掻い潜り、至近距離からテラキマイラの真正面へ位置取ったエックス。

ゼロスラッガーによる援護を受けつつ、ガラ空きの腹部に向けて解き放つ。

 

「˝ザナディウム光線˝ッ!」

 

X字の電子砲がコッヴの顔面に着弾。爆炎と共に紫電が舞う。

他のウルトラマンとは性質の違う一撃に呻きを漏らすテラキマイラだが、それでも決定打には至らず何度目かも知らぬ咆哮が夜空を震わせた。

 

『硬いな……生半可な攻撃じゃ通用しないぞ』

 

「生半可って……結構本気でやったつもりなんだけど……」

 

立ち込める暗雲の黒は未だその深さを保ったままだった。

先行きが見通せぬまま、時間と余力だけが削られてゆく。

 

「あの!」

 

八方塞がりに思われた状況下、導くように一筋の声が差し込む。

 

「考えがあるんですけど、いいですか?」

 

「遥……?」

 

声の主は意外な人物だった。テラキマイラの背後を飛ぶガイアからテレパシーを通して遥の意図が伝わってくる。

 

「…凍結系の攻撃の直後に熱攻撃を加えることって出来ますか?」

 

『出来なくはないと思うが……それが?』

 

「分子結合って、急激な温度変化を加えると崩壊しやすくなるんです。あれだけ硬い表皮なら、恐らく鉄に近い分子構造だと思うので………もしかしたら奴の防御を削げるかもしれません」

 

これまで一歩引いた位置で会話を眺めていることが多かった彼からの提案。

首を横に振る者はいなかった。彼なりの踏み出し方、なにより現状において彼の頭脳に勝る信頼はない。

 

「難しい話はよくわかねぇけど……とにかく燃やせばいいんだな?」

 

「はい……冷やす方は僕達が!」

 

一度メビウスに視線を重ねた後、砲撃を回避する形で四方に散る巨人達。

異物を打ち払わんとする奴の中心核―――バット星人が構成する胸部へと攻撃を集中させる。

 

『ドゥアァッ!』

 

『˝ウルトラフリーザー˝!』

 

ガイアとタイガ。両者の腕より発された吹雪にも近しい冷気が奴の顔面を中心にその巨体を凍てつかせる。

駆動部の氷結は桁外れの馬力によって砕かれてしまうが、凍り付いた胸部を中核に霜が張り付いている。

 

直後、その凍気を融解させん熱量が迸った。

 

《CYBER ZETTON ARMOR》

 

《ACTIVE》

 

金色の光が闇夜を舞い、高熱を従えてエックスへと合着。

宇宙恐竜の名を冠した鎧の生成する火球は瞬く間に膨れ上がってゆき、周囲の空間すらも焦げ付き揺らめかせながら放出される。

 

「˝ゼットン火炎弾˝ッ!」

 

轟。一兆度を超えるという熱が疾走する。

着弾と同時に爆風が吹き荒れ、文字通りの火力が瞬く間にテラキマイラを染める白を消失させて見せた。

 

『デエェェェリャッ!』

 

温度差攻撃による装甲の劣化。遥の挙げた推測を証明したのはゼロによる一撃だった。

叩き込まれた烈火の豪脚は硬質なバット星人の頭部に亀裂を走らせ、その奥から微かな光を伺わせる。

 

「未来さん!」

 

「行けッ! 未来ィッ――――!!」

 

道を切り開いた友の声を受けながら特攻。突き出したメビュームブレードを構え、貫くべき˝一点˝を目指す。

接近する未来を拒むように黒い波動が押し寄せるが、その悉くを切り裂き彼女の元へ突貫した。

 

「君がここまでどう藻掻いて、何を抱いたのかなんて俺にはわからない。けどあの子を……君自身を否定するようなこと言うなよ!」

 

刃が帯びてゆく熱の正体などとうに知っている。

今はただそれを―――ブチ込むだけだ。

 

「思い出せ………君自身を――――相墨ユリを!!!」

 

遂に到達したメビウスの刃が深々と突き刺さる。

直後に溢れた光は亀裂を伴い広がってゆき、小さな歌を響かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

差し込んだ光に乗り、懐かしい声がした。

近いようで、果てしなく遠い。もう届かない場所にあるそれは胡乱な心を強く縛り付ける。

 

「……」

 

重なった歌声が記憶の中を駆ける。

触れる度に蘇ってくるのは輝かしい思い出だった。あの子と歩んだ大切な、何物にも代え難い宝物。

 

(あ、れ……?)

 

暗闇の中、回らない思考が模索する。

違う。聞こえてくる声は、自分達の歌じゃない。けれど本質的には同じ、ただ純粋に、その瞬間を楽しむような音色だ。

 

(千歌……?)

 

自分はこの声を知っている。

初めて触れたはずなのに、旧懐すら覚えるほどに強く惹かれた光。

 

姿は見えない。されど聞こえ、()()()

微かな明かりが灯るだけのステージ上。拙くて、ちぐはぐで、決して完成されたものではない歌声と舞い。けれど眩しいくらいに輝いている。

 

その輝きはきっと、かつての自分達にも宿っていたもののはずだ。

 

「……」

 

視線を落とし、今の自分を見つめてみる。

醜悪だった。かつての光すらも見失い、ただ壊れたブレーキのまま走り続けてきた道化の姿。途端、これまでの自分の行動が虚しくなる。

 

そもそも取り戻したかったものとは何だ。自分達が、大切にしていた時間は一体何だった。

 

全部、全部あの輝きに集約していた。そのはずじゃなかったのか。

 

「……本当、眩しいね」

 

「……!」

 

その直後に起こった現象が、果たして現実であったかは定かではない。

でも確かにそこにあったんだ。共に駆け抜け、笑い、泣き、そして失い、この瞬間まで追い求めてきた友の姿が。

 

「カエ、デ……?」

 

「…久しぶり、でいいのかな? 随分遅くなっちゃったけど……やっと、迎えに来れた」

 

どれだけの時間が流れたのかなんて最早わからないけれど、揺れる笑顔はあの日のままで。

黒く、醜く染まった自分とは正反対の純白が闇の中で瞬いていた。

 

「…私、わたし……!」

 

「いいよ、何も言わなくて」

 

「私……なん、で……」

 

靄が晴れるように、明瞭になってゆく思考。

途端に抱えきれなくなった感情は雫となり、零れた。

 

「確かに許されることじゃないと思う。いっぱい奪って、傷付けてきた。その責任は果たさなきゃ。……でも私は、ユリがあの時間を大切に思ってくれてたのが、嬉しかった」

 

記憶の中で反芻するばかりだった声は、痛いくらいに染みた。

認めたくなかったんだ。何かのせいにしたかったんだ。現実に頓挫し、理不尽に摘み取られていった自分達の輝き。

 

矛盾している。あの時間が大切だったから突き進んできた道の跡に残ったものは、その大切なものの亡骸。短いながらも二人で紡いだ絆の形を、自ら否定した道化の踊りだ。

 

「…色々、あったよね。ユリから誘ってきたのに何にも決めてなくて、作曲とか、踊りとかでてんやわんや。たまに喧嘩しちゃったりもしたよねぇ…………ほんと、楽しかった」

 

在りし日の思い出と共を語らいながら、あの日から失われたままの温もりが腕を広げる。

 

「……ユリはどうだった?」

 

ああ、そうだ。どうして千歌に惹かれたのか、彼女が進む先を見たいと思ったのか。

高尚な理由とか目的とか、それ以前に。もっともっと、単純なもの。

 

だから、思い出せたんだ。

 

「たのし、かったよ……!」

 

「うん……私も」

 

閉じ込めていた感情を吐露し、伸ばした手がようやく彼女に触れる。

途端、崩すまいと堪えていた最後の関すらも決壊し、ただただ、溢れるままに泣いた。

 

「だから否定しないで。私とユリの思い出、私達の輝きを。……あんな形で終わっちゃったけど、私にはもう十分なくらい眩しくて、楽しい時間だったから」

 

けれどあの日引き裂かれた運命を辿るように、触れた直後から失せてゆく彼女の身体と共にその温もりは失せてゆく。

薄れてゆく存在を離すまいと必死に抱き留めるが、親友はなおも穏やかに言った。

 

「カエデ……!」

 

「……大丈夫。きっとまた会えるから。だから――――」

 

最期まで変わらぬ笑みのまま、友は泡のように弾け、消える。

 

「また一緒にスクールアイドル……やろうね――――…………」

 

やがて誰もいなくなった虚空を掴んだ手のひらに舞い降りる残滓。

淡い雪のように溶けてゆく最後の温もりを胸に抱きながら、願った。

 

 

 

「……守って」

 

言えた立場ではないのはわかっている。許されることはないのも承知だ。

 

けど、まだ願うことが許されるというのなら。

この願いが叶うのならば他にどんな報いを受けたっていい。だから今はただ、心の底から叫ぶんだ。

 

手を差し伸べてくれた………ヒーローに。

 

「……お願い、未来。この世界を…………スクールアイドルを守って!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ッッ…………!」

 

声が聞こえた。

歌声だけじゃない。助けを求める、ウルトラマンを呼ぶ声が。

 

「ユリ……」

 

のたうつように藻掻き始めたテラキマイラを眼前に据え、未来は深く息を吐く。

やるべきことは変わらない。ただ一つ、背負う願いが増えただけ。

 

今やるべきはその願いに応えることだ。

 

『オオォォォ……!』

 

どれだけあの瞬間に心を躍らせたのだろうか。

何度も真似た。何度も練習した。憧れたヒーローの、象徴ともいうべきポーズ。

 

(……˝メビューム―――)

 

描く軌跡はこの瞼に焼き付いた光景とは違う。でもこれでいい。自分なりの形で、解き放つ。

 

平和を乱す怪獣や宇宙人との戦い。その終止符を打つ―――必殺の光線を。

 

(―――シュート˝)

 

十字に組んだ腕から伸びる金色の光。

闇を切り裂き突き進む奔流は、凄まじいまでの眩さを以ってテラキマイラへと直撃した。

 

「うおおおおおッッ!!」

 

未来一人じゃない。一緒に並び立つ友、支えてくれた皆、託された願いの全てが込められた光線は巨獣の肉体を少しずつ照らし、その闇を晴らしてゆく。

 

『ッッッ――――――!!!』

 

だが奴もただでは撃ち滅ぼされないか、バット星人の怒号に続き轟いた咆哮は僅かにメビウスの光を押し戻す。

光の巨人と闇の巨獣。意志と意地の、文字通りの根競べ。

 

「まだ…足りない……!?」

 

「くっそ、ぶっ飛ばされる流れだろこれ……!」

 

メビウスの援護に四人も光線を打ち出すが、テラキマイラはなおもその力を衰えさせぬまま実体を保っている。

脅威的なまでの粘り。奴の執念がそうさせるのか、ここまでしてもなお倒しきることができない。

 

「だ……あああああッッッ!!!」

 

振り絞れ。奴が想定外の力を見せたというのなら、それ以上の力で押し戻せ。

何かを守りたい想いに限界なんてない………ああ言い切ったのは自分だろ。

 

どんな時でも諦めず、不可能を可能にする。それが―――、

 

 

 

「ウルトラマ――――ンッッ!」

 

 

 

 

また声が聞こえた。

出所も、誰のものなのかもわからない声。されど確かにそれは、自分達に向けられたものだ。

 

「頑張れ! ウルトラマーンッ!」

 

「そうだ! 負けるなッ――!」

 

「守ってくれ……この世界を!」

 

続く声は絶え間なく上がる。

未来達の姿が心を動かしたのか、一度は疑視したヒーローの背中を見上げ、人々は絶え間ない声援を送り続けている。

 

まるで小さな頃、テレビの中のヒーローを応援していた自分のような声。

その声を受け―――何かが湧き上がってくるのを感じた。

 

(そうか……そうだよな)

 

今理解した。

初めてその姿を見て、心を打たれたあの日から。プレゼントにねだり、真似事をして遊んだ、時には支えになってくれた。

 

作り物のヒーローから生まれたものだけど、この気持ちだけは紛れもない本物で。

 

(……ずっと、傍にいてくれたんだな)

 

だからこの直後に起こった光景を、自分達は忘れることはないだろう。

 

「ッ……!」

 

傍らに灯った暖かさが瞬く間に膨れ上がり、眩い閃光が周囲を照らす。

最後に灯った蒼い輝きが暗雲を払い、その姿を現したのもまた、光の巨人だった。

 

「え……?」

 

『アンタは………!』

 

誰もがその名を知っていた。

 

人々の声に応え、光と共に駆けつける―――赤と銀のヒーロー。

 

「……!」

 

未来と視線を重ね、静かに頷いた彼もまた自分達と並び必殺の光線を放つ。

メビウス達の光と融合したそれは際限ない輝きを生み、テラキマイラを消滅させてゆく。

 

(……アンタにさ、ずっと言いたいことがあったんだ)

 

断末魔もろとも奴を飲み込む光の中、念ずるように永遠のヒーローへ伝える。

この想いはこの先も消えることはない。いつまでもずっと心に残って、日々ノ未来を支え続けてくれる。

 

だからただ一言―――こう言うんだ。

 

(今の俺を作ってくれて…………ありがとう)

 

自らもまた光と一つになるように、言葉にした想いは闇の向こうへ、どこまでも伸びた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暗雲が晴れ、長く続いた夜は明けてゆく。

光に溶けてゆく黒の中、本当の彼女は最期に穏やかな笑みを見せた。

 

 

「…ありがとう………未来……――――」

 

 

影に囚われていた魂が、空へと還る。

 

泡のように消えてゆく白い花弁を見送るように、昇った朝日が暖かく世界を照らしていた。

 

 




短いようで長かった戦いも遂に決着です

ちょっと臭い話になりますが、未来にしろユリにしろ、人には色々な支えがあるはずです
その思い出は成長する度に薄れ、時には否定すらしてしまうものかもしれませんが、今の自分を作り上げたものきっと消えない

最後に現れた˝彼˝はそんな思い出が形になったものなのかもしれません

結局最後までラブライブ要素が希薄となってしまった本作ですが、上述した最終的な結論はサンシャインを踏襲したつもりです


さて、以前前書きで予告した企画を除けば残るはエピローグ(2話)のみ
5つの作品を跨いだストーリー、間もなく完結です
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