ウルトラのキセキ ~One More Sunshine Story~   作:がじゃまる

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短めですがこの世界での未来君達のお話は今回で最後となります
脅威を退け、世界と二人の少女を救った彼等が見る景色は………


24話 未来の輝き

振り返れば、本当に現実離れした日々だったと思う。

 

空想の中にしかあり得なかった光の巨人と出会い、自らもまたその存在となって戦った。

 

幼き日の自分に言っても信じはしないだろうけど、それでも確かにそこにあり、駆け抜け、大切なものを見つけた。

 

そんな――――ひと夏の冒険。

 

 

 

 

 

 

 

 

「未来くーん!」

 

朝焼けを背にその場所へと戻ってきた未来達を、太陽にも負けない輝きが出迎えた。

揚々と互いの手を交わす者、無事を喜び抱き留められる者。目の前にある景色はある意味、普段通りのものだ。

 

けど胸にあるものはこれまでとは違う。進むための試練を、自分達は乗り越えたんだ。

 

「…おかえり、未来君」

 

「…ただいま」

 

自らも眼前の少女と言葉を交わせば、ふと左腕に違和を覚える。

そこにあったはずの熱は急速に失われていっていた。宿るブレスは光の粒子となって天へと流れてゆく。

 

ずっと焦がれ続けてきた光。けど未練はない。ずっとこの胸に残ってゆくから。

 

『……俺達もそろそろみたいだな』

 

空へと昇るそれらを見送るように視線を上げれば、共に戦った別世界の勇者達の瞳があった。

内の一人―――ウルトラマンタイガの身体を包む淡い光が、告げていた。

 

「…帰るんだな」

 

『ああ。俺達をこの世界に繋ぎとめていたのはあの赤い靴の少女だ。彼女があるべき場所へ戻った今、俺達も俺達のあるべき世界に戻る』

 

「俺は自力で来たから関係ないんだけどな。……でもまあ、結構なこと長居しちゃったし、そろそろ戻らねぇと。それにお前等見てたら、負けてらんねぇって思っちまってさ」

 

別れの時がすぐそこまで迫っていた。

奇跡の出逢いから始まり、苦しみ、迷いながらも、大切なものを掴んだ日々。そんな冒険が今、終わろうとしている。

 

「……ありがとう、ウルトラマン。アンタ等がいなかったら―――」

 

「……掴んだのは、未来さん達自身ですよ」

 

たかが一週間程度、されど一週間程度。残った時間で語るには到底足りない想いを簡潔に言葉にした未来の声を遮ったのは、それを向けたはずの春馬だった。

映るのはタイガの顔ばかりで、彼自身がどんな顔をしているのかはもう伺うことは叶わない。けれどもそれはきっと穏やかなものなのだろう。

 

「俺、この世界で見たこと、感じたこと…………絶対に忘れません」

 

「…俺もだよ。春馬達が、皆が思い出させてくれたもの、ずっとここに刻み込む。忘れないさ」

 

消えゆく巨人の姿を見上げながら口角を上げる。

さざ波と浜風の音だけが揺れる静寂の後、この瞬間を噛み締める者達と代わるように、もう一人の巨人が零した。

 

「……そんじゃま、最後はウルトラマンらしくいきますか」

 

『だな。これ以上は名残惜しくなる奴が増えるだけだろうしな』

 

まだ微かに残滓する熱の感覚に触れながら、改めて彼と視線を重ねる。

これから先、この世界の日々ノ未来が彼等と再び顔を合わせることはきっとない。もう互いの行く先を見ることは叶わないけど、道はまだ、どこまでも続いてゆくんだ。

 

「…じゃあな」

 

「はい。皆さんも………お元気で」

 

最後の言葉を贈り合うと共に、その瞬間は訪れた。

 

『『シュアッ!!』』

 

巨悪を退け、人々の平和と笑顔を守ったウルトラマンは、声援を受け飛び去ってゆく。

幼き日は心を躍らせたその背中も、この時ばかりは一抹の寂しさを生んだ。

 

 

 

「…なあ、陸」

 

「あ?」

 

その感覚がどうにも心地悪くて。

ついつい心は、思ってもないことを口走ってしまう。

 

「俺……夢でも見てたのかな。凄くぶっ飛んでて、バカげた夢」

 

「……いいんじゃないですか? 夢でも」

 

返す声は陸のものではない。憑き物がとれたような、これまでよりもすっきりとした面持ちで遥は言う。

 

「白昼夢でも、明晰夢だっていいと思います。……ここに、残ってますから」

 

かつて逃げるようにこの場所へ来た彼の眼に曇りはない。訳までは継がずとも、その心中にあるものは明瞭だった。

 

「……ま、相変わらず難しい話はわかんねーけどよ」

 

夢に目を背け続けてきた親友も続く。

彼もまた普段と同じ。醸す空気は見知ったそれだ。けれどこれまでと違う何かが流れている。

 

「俺もお前も、一応は前に進めたんだ………それで十分なんじゃねーの?」

 

「……そうだよな」

 

終ぞ溶けていった熱の感覚から手を離し、三度空を見上げる。

夢の行く先に限界などない。進みだした赤と銀の光は、どこまでも遠く、伸び続けていた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 

「ぐっ……ぬぬ………!」

 

「ほーら、無理しないの」

 

抱えていた重荷がすっと軽くなる。

ゆうに十キロは超えているであろうそれを軽々と持ち上げた果南に驚愕の視線を注ぎつつ、未来は脱力の息をついた。

 

「ワンチャン………とか思ってたけど、やっぱダメか……」

 

「? なんのこと?」

 

「……なんでもないです」

 

一週間後。突如襲来した虚構の脅威を乗り越えた世界は、再び元の日常を取り戻しつつあった。

 

怪獣によって破壊された街の復興作業。地元のボランティアに名乗り出たはいいが、正直役に立っているとは言い難いのが現実で。

 

改めて自分が普通星人であると自覚させられるが………以前ほどの不快感や劣等感はなかった。

 

「お疲れさん」

 

一通りの作業を終え、投げ渡されたペットボトルを受け取りつつ積まれた材木に腰掛ける。

疲れた身体に供給される水分は染みる。喉から奥へと流動する何とも言えない感覚を味わいつつ、未来は同じくその場へ腰を下ろした幼馴染へ零した。

 

「…疲れるな」

 

「ま、実際人力だけでやるにゃちっと重い作業だしな」

 

「……ウルトラマンなら楽々なんだろうな」

 

「無いものねだってもしゃーねーだろ。やれる範囲でやるしかねーべ」

 

いつになく気の抜けた声音を交わす。

互いに眺めるのは真夏の空。吸い込まれるような深い青は、先日の災いなど感じさせないほど穏やかなものだ。

 

「…そっちの用はいいのか? さっき博樹さんに呼ばれてたろ」

 

「大体済んだ。そもそもあの人の目的俺じゃなくて遥だったしな」

 

「遥…? なんかまた珍しい組み合わせだな」

 

「なんかアルケ……なんちゃらのことで話があるとかそんな。やっぱ天才様の住む世界はわからんわ」

 

呆れ半分畏敬半分な含みで陸は言う。そう言えば遥が元いた東京の高校と博樹の学校は同じだったか。

となると何かしらの企画や研究に遥を勧誘しに来た、ということになるのか。

 

「そっか……やっぱ凄いんだな。遥、東京戻るのかな」

 

「いや、断ってたぜアイツ」

 

「…マジで? なんでまた」

 

「なんでも、こっちでやりたいことができたんだとよ………いい面してたわホント」

 

意外に思う反面、どこか腑に落ちるような感覚もあった。

あの日以降、目に見えて一番変化があったのは遥だ。以前ほど距離はもう感じず、笑い顔を見る機会も増えた。

 

未来達自身気掛かりにしていたのもそうだが、何より人心地するような梨子を見て安堵したのは記憶に新しい。

 

その真意を知り得ることはないのだろうが、彼もまた未来達同様、傍にいる者の支えで踏み出すことができたのだろう。

 

「しっかしま、自分の力が誰かに求められてるってのはいいねぇ。こちとら自分のやりたいこと通すだけでも一苦労だってんのに」

 

「…親御さんと話、できたのか?」

 

「いい顔はされなかったがな……でもまあ、一応応援はしてくれるってさ。高校卒業したら千歌んとこで働かせてもらう」

 

「え、お前大学受験しないの?」

 

「それはハナからわかってたことだろうが。今更僻むな」

 

思い切りの良さには驚かされるが、それでもやはり感心と心弛びが勝った。

 

大なり小なり差はあれど、周囲は踏み留めていた足で再び歩き出している。

そんな彼等と比較し、自分は、と考えてみる。

 

「……お前はどうすっか決めてんのか?」

 

未来の意を読み取る形で陸がその答えを促してくる。

 

「…いや、まだ。何になりたいとかはわかんないまま」

 

「そ」

 

結論から言うと答えは出なかった。進むべき道、将来の自分の姿なんてまだ白紙のままだ。

弛緩した時が流れるが、何も掴んだものはそれだけじゃない。束の間の静寂の後、潮風が運び込む夏の熱気を払うように未来は己の句を継いだ。

 

「……けど、何がしたいかはハッキリ見えてるよ。俺は馬鹿正直なお人好し。そこだけはやっぱ、変わんないみたいだ」

 

「……だろうな。でなきゃお前じゃねぇ」

 

才能も特技も、一途に打ち込んだ何かもない。依然日々ノ未来は普通星人なままだ。

それでもやっぱり、この胸にあるものに嘘はつけないんだ。

 

ウルトラマンでも、人であっても、そこだけはきっと変わらない。

 

「…だからとりあえず、目の前のものに一つ一つ向き合っていきたい。答えはその後からだって、遅くはないだろ?」

 

「……とか言ってる間に卒業しちまわないといいけどな」

 

「…貶すか応援するかハッキリしろよ」

 

「応援してるっつの……ついでに俺の方も応援しやがれ」

 

揶揄うように笑いながら、陸はゆらりと立ち上がる。

十千万旅館主体の炊き出しを手伝っている、とか言う話だったか。多くのボランティアが集まっているだけあり未来以上に忙しいらしい。

 

「ま、頑張ろうぜ。お互いな」

 

「……おう」

 

小さくなってゆく彼の背中から目を離し、遠い友人が去っていた方角を望む。

彼等もきっと掴むべき未来のために、走り続けているのだろう。

 

「よし……!」

 

意気込むようにペットボトルの水を飲み干し、その勢いのまま下ろしていた腰を上げる。

 

「もうひと踏ん張り………頑張りますか!」

 

追い風が吹いていた。

目指す場所も、世界すら違っていても、進まないことにその先はない。そこに変わりはないのだから。

 

 

重ねた想いは離れない。これからも共に、歩み続けてゆくんだ。

 




繰り返す形になりますがこの世界でのお話はこれでほぼほぼ完結です
未来君の結論は出来る限り虹タイガでの彼に近づけた形になりますね

以前予告した通りこのコラボ作品も次回で幕を下ろします
それとはまた別に例の座談会企画も間に合えば(ここ重要)明日にでも投稿する予定ですので最後までお楽しみ頂けたらと思います

それでは
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