ウルトラのキセキ ~One More Sunshine Story~ 作:がじゃまる
メビライブから続いて4年強でしょうか。蒼人さん本当にお疲れ様です
『シュアッ!』
『ッッ―――!』
二体の巨大生物が衝突し、寸刻前まであった静けさを完全に打ち壊す。
その戦いに沸いているのか、はたまた怯えているのか。海面の荒立つ波や度々揺れる大地は両者の衝突の凄まじさを物語っていた。
「…なんだよ……これ……」
夢でも見ているかのような光景だった。
怪獣に……ウルトラマン。
これまで画面の向こうでしか触れることのできなかった存在が、憧れた存在が、今目の前で戦っている。
『ッッ―――!』
『フッ!』
だがその戦いはテレビで見るよりもずっと苛烈かつ激しい。
怪獣の背に生える幾つもの刃がミサイルの如く発射されたと思えば十字に組まれたウルトラマンの腕から放たれた光の刃がそれを打ち消す。
『テェェアッ!』
すかさずウルトラマンが突撃。
立ち込めた黒煙を切り裂くようにその巨体から打ち出される拳が怪獣の側頭部を捉えた。
「ウルトラマン……なんだよな……、本物の……!」
脳の思考回路は未だ情報を処理し切れていない。
それでもただ一つわかるのは、今目の前で繰り広げられている戦いが紛れもない現実だということ。
『タアァァッ!』
「よし……!」
ドロップキックが炸裂し、転倒した巨獣の体躯に思わずガッツポーズ。
自分の知っている彼と差異はあれど、目の前にいるのはウルトラマン。
焦がれ続けたヒーローの存在に、こんな状況にも関わらず未来の心に確かな高揚感を生んでいた。
『オォォ……!』
「そこだ……いけ!」
頭上で両腕が重ねられた瞬間、全身に集約してゆく七色の光。
やはり形こそ違うが、それがウルトラマンの˝必殺技˝であることはすぐにわかった。
平和を乱す怪獣や宇宙人を倒し、その戦いに終止符を打つ―――必殺の光線。
『ッッッ―――!!!』
だが、戦いの行く末だけは未来の思い描いたものとは違うようで。
七色の光が放たれたその瞬間、振るわれた怪獣の両腕から生み出された鎌鼬のような刃。
それは光線を真っ二つに切り裂きながら猛進してゆくと、そのままウルトラマンへと直撃し―――、
『グアアァァァッ……!?』
着弾と共に吹き荒んだ爆風がウルトラマンの身体を薙ぎ払ってしまう。
直後に赤く点滅を始めた胸のランプは限界が近い証。つまりもうウルトラマンに残された時間は少ないということだ。
『ッッ―――!』
『グ……ァァ……!』
見るからに動きが鈍り始めたウルトラマンを怪獣の剛力がねじ伏せる。
力負けしていることも、このままいけば敗北の結末が訪れることも明らか。
何か、何かないのかと、紛いなりにもあの作品を繰り返し見続けた頭で必死に考える。
「そうだ……!」
閃きが灯る。
差し込んだ希望の光に導かれるように、恐れも忘れた未来はその声を届けるべく巨人の下へと走った。
『どうなってんだ……エネルギーの消費が馬鹿に早いぞ……!?』
「ほんとだ……なんかいつもより疲れる……」
一体化する相棒の身体を通して疲労感や脱力感、焦りが伝わってきた。
眼前には自分が彼と出会い、初めて倒した相手―――ヘルベロスと酷似した怪獣が唸りを上げている。
コイツが以前の個体よりも格段に強いこともあるが、それでも今の状況が異常だというのは自分でも勘付くところだ。
『ぐッ…、˝スワローバレット˝ッ!!』
相棒―――ウルトラマンタイガの言う通りエネルギーの消費が尋常じゃなく早い。
既に活動時間の限界を警告するカラータイマーは点滅を始めており、牽制に放った光の刃は奴の装甲に容易く弾かれてしまう。既にエネルギーが足りてないんだ。
だがまだ変身して一分も経っていないはずだ。いくら地球上では活動時間が限られているとは言っても早すぎる。
『ッッ―――!!』
『うあぁぁッ……!?』
その理由を考える余裕すら与えられず地面へと押し付けられ、頭部の二本角から発生した雷撃が身体を打ち付ける。
逃れようにも被弾により更に脱力感の増した腕に力は入らず、それどころか更に拘束が強固になってゆくばかりだ。
「っ……、タイガ、力比べじゃ不利だ……タイタスに―――」
力自慢の˝彼˝なら。
そう思い腰元に手を伸ばし―――更に違和感が加速することとなる。
「え……?」
『どうした春馬!? 早くタイタスに……!』
「タイタスのキーホルダーがない……フーマもだ!」
『はぁッ!?』
いつもそこにあったはずのものが忽然と消え去り、いつも共にいてくれたはずの彼等の気配もない。
呼びかけに答える声もなく、徐々に膨らんでいっていた違和感がいよいよ確かなものとなる。
「どうなってるのタイガ……エネルギーの消費が早いのと関係あるの?」
『そんなの俺に聞かれても―――ぐあぁッ……!?』
ただでさえ混乱する頭の中がヘルベロスの追撃によりぐちゃぐちゃになってゆく。
点滅を加速させるカラータイマーが更に焦りすらも加速させ、打開策はおろかこの状況切り抜ける術すらも見失ってしまう。
『ッッ―――!』
そんなタイガにトドメの一撃が突き刺さろうとした―――その時、
「ウルトラマ――――ンッッ!!!」
ヘルベロスの咆哮すらも掻き消すような叫び声。
それが自分達に向けられたものであると理解したタイガが目線を向けた先では、一人の少年が何かを口にしながらこちらへ駆けてくるのが見えた。
「その怪獣は首元に装甲がない! 狙うならそこだッッ!!!」
耳に届いた彼の声からは、ウルトラマンの力になろうとする強い意志が伝わってくる。
見やれば確かに首元の装甲が薄い。このヘルベロスは全身に堅くまた凶器を備えた鎧を持つが、動きや生命活動の維持そのものに支障をきたす間接部位までもは覆えないのか。
いいや、それよりも……、
「タイガ……」
『あぁ…!』
その声が清涼剤となるように、ショートしかけていた脳内回路がクリアになってゆく。
ウルトラマンに怪獣。巻き込まれれば命の保証はないそれらの衝突を前に逃げ惑う人々を大勢見てきた。
けどあの少年は自らの危険を顧みず自分達の力になろうとしている。
その勇気に、自分達が応えないでどうするんだ。
「『う…おぉぉ……!」』
不思議と湧き上がってきた力を糧にヘルベロスを押し返す。
何が起ころうと自分達のやることは変わらないはずだ。
今はただ、あの声に応えることだけを考えろ。
『ハ……アァァッ!!』
地面に背を預けたまま真上へと両足を突き出し、ヘルベロスを全力で蹴り飛ばす。
転倒こそさせられなかったが後退させられただけで十分だ。それだけで随分余裕ができる。
『ッッ―――!』
『フッ!』
再びあの巨大な刃が迸るが、同じ手を二度は食わない。
上体を屈め空間すら切断するそれを回避し、瞬時に大地を蹴って奴へと肉薄。
『今だ春馬! 行くぞ!』
「うん……!」
大技の反動で反応動作の遅れたヘルべロスの両腕を弾き、潜り込んだ懐の中で思いっきり拳を振り上げる。
身体は仰け反り両腕も開いた状態にある。首元という弱点を晒した奴に今一度決め技を叩き込むべく、タイガは両腕を天へと掲げた。
「『˝ストリウム――――!」』
気力も、残されたエネルギーも、この情動も。
ありったけの力を全て込めて――――ぶちかませ。
「『ブラスター――――˝ッッ!!!!」』
T字に組んだ両腕から虹色の光線が放出され、その断末魔ごとヘルベロスを首元から焼き払ってゆく。
やがてその肉体は爆発四散し、それに伴った轟音と凄まじい閃光が視界を白く染め上げていった――――、
「―――い! 未来ッ!」
「っ……!」
爆発と共に視界を満たした白。
その純白が徐々に色彩を取り戻していった世界は差した夕陽に染まって見えた。
「陸……?」
「やっと反応しやがった……。急にぼーっとしだすからビビったぞ……」
揺れる紅をバックに親友の顔が視界の中央に映る。
その様子に直前まであった二つの事象を思い起こした未来は、弾かれたように辺りを見回した。
「そうだ怪獣は……ウルトラマンはどうなった!?」
「はぁ…?」
だが巨大な影などどこにも見つからず、映るのは陸の怪訝な顔だけ。
「未来……お前ホントに大丈夫か?」
平穏の息衝く内浦の景観に巨大生物はおろか戦いの跡すら見る影もない。
それらは憂慮と呆れの混じった陸の表情と共に何事も起こっていなかったことを示しているかのようだが、未だ身体に残るこの感覚が今しがたの体験が現実であることを教えてくれる。
「―――うわわぁっ!?」
そんな未来の勘が呼び寄せたことなのか。
短い悲鳴に遅れ、どさりと何かが地面へと落下した鈍い音がする。
「いっ…たた……って、あれっ!?」
引き寄せられるようにその方を見やれば、一人の少年が腰を擦りながら困惑した様子を見せていた。
特別変わった特徴は見受けられなかったが……何故だか、彼の姿が
「…ひょっとして」
「ちょ…、おい未来!」
天啓を受けたかのように動いた身体が陸から離れ、焦燥を伺わせながら独り言を言い始めた彼へと駆け寄ってゆく。
雑多な憶測が頭を行きかう中、その奥で高鳴る期待が、心を弾ませていた。
「ねえタイガ、ここって……」
高所から落下した身体が痛む中、ぐるぐると見回す景色に既視感を覚える。
忘れもしない。自分の魅せられた輝きの跡を追い、大切なものを受け取った……ここはそんな場所だ。
『俺達がフォトンアースの力を手に入れた場所か……』
「うん……でもどうして? 俺達さっきまで……」
人気のない穏やかな海岸通りには、どこかノスタルジーな空気が流れていた。
けれど先程まで自分がいたのはそれとは真反対な建設物の立ち並ぶお台場の街。今この地を踏んでいるのはおかしいはずだ。
「タイガ…、やっぱりおかしいよ。何か変だ」
『そんなこと俺もわかってる。けど今の状況じゃ何も―――』
「ねえ君!」
消えた二人の仲間に、突然飛ばされた˝内浦˝の地。それに戦闘中に抱いた疑念も数多くある。
様々な異変が頭の中へ押し寄せてくる中、明確に意識を射止めたのはそのどれでもない背後から掛かった声だった。
「え……?」
振り返り、またも既視感。
「突拍子もないこと聞くけどさ……さっきのウルトラマンって、もしかして君?」
髪型がそれだったならば女子と見紛うような中性的な顔立ち。
遅れて先程の戦いで自分達に力をくれた少年だと理解するが、改めて見る彼の顔はどことなく˝とある先輩˝を思わせる。
……いや、注視すべきはそこじゃない。
「怪獣を倒した時にさ、一瞬見えたんだよ。あのウルトラマンが人間に戻るとこ」
また別の焦りが浮かび上がってくる。
期待の含まれた声と視線にたじろぐ余裕もない。
自分がウルトラマンである。バレてはいけない秘密にあっけなく迫られているのだから。
「それで今君が現れたからひょっとしてと思ってさ……ていうか結構な高さから落ちたっぽいけど大丈夫か?」
「えっ……えっ……」
確かにヘルベロスの爆散に巻き込まれる形で変身が解除されたのは事実だが……まさかその瞬間まで見られていたとは。
最早言い逃れのしようもないのは明白だった。
(どっ……どどどどうしようタイガ……!)
『お、俺に聞くなよ……!』
これまでも幾度か自分がウルトラマンと一体化している事実を明かしたことはあったが、それはあくまでも家族や友人といった、ある程度こちらの事情に理解がある
だが今目の前にいる彼は明らかに一般人。こちら側の融通が利くとは考え難い。
「ウルトラマンじゃ何にしろ何かしら見てないか? なんだっていいから―――」
「何しとんのじゃテメェはァッ!!!」
全神経を言い訳の探索に集中させていたその時、漕ぎついてきたのは救い船か。
少年の背後から振り下ろされた手刀がその脳天へ直撃。ごすっ、という音から鑑みるに相当重いと思われる。
「いい加減にしろよお前! 俺等ならともかく知らん奴にまで迷惑かけてんじゃねぇ! ほら、困ってんだろうが!」
友人なのか、諫めの一撃を振り下ろしたもう一人の少年によって彼が引き剥がされてゆく。
今にも口論に発展しそうな雰囲気には少々ハラハラさせられるが、まあとにかく、助かったと考えていいのだろうか。
「わりぃな馬鹿が迷惑かけて。オラ行くぞ
「ちょっと待て陸! これだけは本当に……!」
「問答無用じゃ! いいから帰るぞ」
駄々を捏ねる子供とその母親のやり取りを彷彿とさせながら、陸と呼ばれた少年が彼を引き摺りながら歩き去ろうとする。
その中で耳朶に触れた単語は、自分の中にいる相棒も含めその意識を射止めるには十分だった。
「˝未来˝……?」
二人のやり取りの中で口にされた名前を復唱する。
そんなはずはない。繰り返し自分にそう言い聞かせるが、確信へと変わりつつある既視感を抑え込む術はなかった。
「あ、あの……」
呼び止める形で声を出すと足を止める二人。
˝未来˝。そう呼ばれた彼の顔を改めて確認する。その名を聞いたからか、ぽかんとこちらを見返す少年はよりあの人と重なって見えた。
「もしかして……˝日々ノ、未来˝さん…………?」
「…え、あ、あぁ、そうだけど……」
「あれ? もしかして知り合いだったか?」
「……へ?」
答え合わせの瞬間、フリーズする思考。
「えっ……え? ええええぇぇぇぇぇッッ!!!???」
なんで、どうして、次々と湧き上がってくる疑念が頭の中を疾走する。
直後にパンクしたそれらは声となって溢れ―――
と、いう訳でメビライブの未来君に続き蒼人さんの「タイガ・ザ・ライブ!〜虹の向こう側〜」から追風春馬君の登場です
未来に対する反応や既にタイガと一体化している時点でお察しかと思いますが、先に登場している3人と違い春馬はタイガ・ザ・ライブ(以降虹タイガ)の追風春馬本人でございます
今作での彼は8兄弟で言うメビウスポジになりますね
次回列としては虹タイガ63話、成長した未来達に出会ったり女装したりしたスクールアイドルオーディション編の後辺りの彼となっております
完結したばかりの作品からキャラを引っ張り出してくるってなんか変な感覚がしますね()
そんな彼ですが何やら知らぬ間にこの世界に飛ばされた上にタイタスやフーマは行方不明に……一体何が起こっているのでしょうか(すっとぼけ)
それでは次回で
ちょっと忙しい時期なので来週の投稿はお休みするかもです()