ウルトラのキセキ ~One More Sunshine Story~   作:がじゃまる

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当初予定していた部分まで書き終わらなくて昨日の更新を諦めるも、いざ完成したら逆に長くなりすぎて区切った結果今回の更新分は昨日の時点で出来ていたというオチ

いや、マジですんません()


5話 輝きとその陰で

 

 

閉めたカーテンの合間から漏れる陽光に意識が呼び起こされる。

普段は全身に圧し掛かってくるはずの倦怠感も、この日ばかりは沸き立つ情動に掻き消されていた。

 

「……」

 

床に敷かれた客人用の布団の中で未だ寝息を立てる彼を視認し、昨日の出来事、そして昨夜の言葉が現実であったと改めて認識する。

 

―――――˝ウルトラマンメビウス˝はタイガの兄弟子で、俺達の世界でいう五年前、とある人と一緒に戦って世界を救った英雄です

 

―――――そのメビウスと一緒に戦ったのが日々ノ未来……俺達の世界の、お前だ

 

一夜を経てもなお、身体の奥底で燻る熱が収まらない。

 

この感覚を何と呼ぶべきなのか、期待、高揚、不信……そのどれでもあってどれでもない、不可思議な感覚。

 

少なからず確かなのは、()()にとってあの言葉が、紛れもない真実だということ―――、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あの怖い人もいる……よね……?)

 

『お前がそんなでどうするんだよ……』

 

先行く未来の背中を少々委縮しながら進む。

とある行事に向けて友人達と集まりがあるから春馬にもついてきて欲しい、という未来の頼みが故だった。

 

『…元の世界に戻る方法、探さなくていいのか?』

 

(うん……今は、この人達といるべきだと思うんだ)

 

この世界と春馬の元いた世界とでどの程度時間の流れに差があるのかはわからないが、戻った際の心配はしなくていいという確信が何故だかあった。

 

今はこの世界に留まり、迫る危機を退ける……それが自分がここに飛ばされてきた理由なのならば果たしたい。

 

きっと˝あの人˝だって、こうするだろうから。

 

「……どうかしたか?」

 

「あぁ、いや……」

 

意図せず流してしまった視線の先で未来と目が合ってしまう。

胸の内で抱いていたことが思わず口から出かけたが、その直前で飲み込んだ。

 

『……なんつーか、思ってたより落ち着いてるよなお前。もっと興奮するもんかと思ってたぞ』

 

「ちょっとタイガ、失礼だよ」

 

「いいよいいよ、気にしないから」

 

結局タイガが代弁してしまったことによって無駄に終わることになるが、受け答える未来には何か含みがあるように思えた。

 

「…落ち着いてる訳じゃないよ。実際、内心じゃ凄く興奮してるし混乱もしてる……でも、だからといって蔑ろにしていい訳じゃないだろ?」

 

「え…?」

 

「約束したんだよ。夢とか、やりたいことができたら全力で応援するって。アイツにとっては、今がその時かもしれないからさ。……だから、昨日春馬が言ってたあの話、少し待ってもらってもいいか?」

 

少しだけ頬に朱を差しながら向けられた真っ直ぐな瞳。

それをされるとNOとは言えないのが性なのは自分自身が一番わかっている。

 

「…それが、˝スクールアイドル˝……なんですか?」

 

「うん……バカみたいな話だとは思ったけどさ」

 

この世界において未来はウルトラマンでも何でもない一介の高校生。迫る危機を退けなければいけないとは言え、そのために彼の生活や日常を蔑ろにする気は元よりなかったが……一つ、何かに動かされるように問う。

 

そんな春馬に、俺が言えたことでもないけど、などと笑いながら未来は答えた。

 

「だからできる範囲でいいから、春馬の力、借りてもいいかな? 注文多くて悪いとは思うけど……」

 

「悪いだなんてそんなことないです! 手伝います! むしろ手伝わせてください!」

 

食い気味にその手を取って応じた。

 

昨夜未来との話の中で、この世界ではスクールアイドルすらもテレビの中の架空の存在であることを知った。

 

同時に春馬が元いた世界ではスクールアイドル達の手伝いをしていることを伝えたことで未来から協力を依頼されたのだが……そういうことならば貸す力は惜しむまい。

 

「それでその子っていうのは……?」

 

「ああ、ここの娘なんだけど……」

 

「おぉ? なんか騒がしいねー?」

 

未来の家から徒歩数分もない距離にあった昔ながらの情緒を感じさせる旅館。

その正面口から顔を見せたみかん色の髪を揺らす少女を視認した途端、あれだけ燃え盛っていた思考と心が真っ白になる。

 

「って、未来君。その子誰……?」

 

「俺の親戚。追風春馬って言うんだけど―――」

 

全てが動き始めた日……いや、再び動き出したあの日、自分は二つの運命的な出会いをした。

 

その一つがタイガとの出会い。彼との出会いがあったから今自分が˝追風春馬˝としてここにいると言っても過言ではない。

 

そしてもう一つは―――、

 

「で、コイツが幼馴染の高海千歌。話に出したのもコイ……って、春馬?」

 

あの日幼馴染と見上げた巨大モニターの中で瞬いていた輝き。

その輝きに触れスクールアイドルに触れた。その中で出会った人達と色があった。

 

その出会いをくれたのがスクールアイドルグループ˝Aqours˝―――今目の前にいるのがそのリーダーであった高海千歌であると理解した頭は、またも驚愕の叫びを全身から上げさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおッッ!!!」

 

「うえぇ!? なになにいきなり!?」

 

「ちょ……未来君? なんなのこの人!?」

 

「あはは……」

 

曜に梨子、とんでもなく興奮した様子で彼女達の手を取っては上下に振る春馬を前に苦笑いする。

 

何でも春馬の世界において千歌曜梨子の三人は彼がスクールアイドルに興味を持つきっかけになったグループのメンバー……とのこと。本当にどうなっているのだろうか向こうの世界は。

 

「何言ってるのタイガ! これが興奮せずにいられる!?」

 

「ちょっ…ちょっ……! ちょっとこっち来い春馬」

 

タイガにも諫められているのか、遂には周りには認知されていない体内の相棒と語らい始めた彼を慌てて曜達から引き剥がす。遠巻きから殺気を送ってくる野郎二人の視線が痛かった。

 

「落ち着けって、さっきも言ったけど春馬の世界の千歌達とは別人だから、別人!」

 

周りには聞かれぬよう耳打ちで繰り返し言い聞かせる。この説明をするのも何度目だろうか。

 

ともあれここらで一度落ち着かせないと春馬に振り回されているだけで一日が終わってしまう。

もうあまり時間もないのだ。早くしないと春馬を連れてきた意味がなくなる。

 

「興奮するのもわかるけど今は頼むよ、レクチャーしてればアイツ等とも話せるだろ」

 

「…そ、そうでした……! ついつい……」

 

「ん? なんかやんのか追風」

 

「ああ、うん。実は春馬、ダンス部……みたいなののマネージャーやってるらしくてさ。それでちょっと千歌達の演舞の練習手伝ってもらおうと思って」

 

昨夜春馬との話の中でそちらの世界ではスクールアイドルやラブライブすらも実在することや、彼が自身の学校で˝スクールアイドル同好会˝なるものに属していることを知った。

 

そこで実際のスクールアイドルのすぐ近くにいる春馬なら、千歌達の手助けができるのではと協力を頼んだ次第だ。

 

「へぇー……、どこの学校だよ」

 

「あ、えっと、東京の虹ヶ―――」

 

「東京ッ!?」

 

まだ陸が怖いのか、若干縮こまりながら答えた春馬の声を更に大きな声が遮った。

 

「東京ってあの東京!? 東にある都の!?」

 

「何の説明にもなってねぇぞ」

 

「陸ちゃんは黙ってて! すごい……そんなところの人が手伝ってくれるなんて奇跡だよ!」

 

奇跡のスケールが小さくないか、と喉まで出かけたが陸同様何か言われそうなので黙っておく。

まあでも実際、春馬がここにいることは奇跡のようなものなのだが。

 

「…てか、桜内兄妹も確か東京からこっち来てたろ。なあ遥」

 

「…まあ、そうですね」

 

「そう言えば理由聞いたことなかったっけ。梨子ちゃん達はどうしてこっちに引っ越してきたの?」

 

陸と曜に続き未来も桜内兄妹に視線を向ける。

千歌ほどではないが未来にも東京への憧れのようなものはある。そんな場所からわざわざこの二人が越してきた理由は確かに気になった。

 

「……」

 

「……遥?」

 

「お、お父さんの転勤! だから家族皆でこっちに引っ越してきたの!」

 

が、直後に顔を見せた別なものにその興味は掻き消される。

 

梨子の返答に千歌と曜はへぇー、だの勿体ない、だのそれぞれリアクションを見せるが、一瞬遥に影が差したのを見逃していなかった陸と共に顔を見合わせる。

 

「こっちでは何かされてたんですか? 梨子さんならピア―――――」

 

「あーもうそっちはいいから追風。とりあえず具体的にコイツ等が何すりゃいいか教えてやってくれ」

 

「そうそう、さっきも言ったけどあんまり時間ないんだ」

 

一先ずこの話題は避けた方がいいと判断し、慣れたコンビネーションで春馬の言葉を遮っては元の話題へと戻す。

 

「あ、えーっと……、俺自身が歌って踊ってる訳じゃないのでハッキリとしたことは言えないんですけど、俺のいるところでは皆、何を表現したいとか、何を伝えたいとか、そういうテーマを決めるところから始めてました」

 

「テーマかぁ…」

 

「はい! 私はμ‘sみたいな感じにしたい!」

 

「それがふわふわしすぎてるから困ってるんでしょ……」

 

「あはは……。まあそれでテーマが決まったら、その後は曲とか歌詞、衣装を決めて……」

 

「曲……」

 

「そう言えば、曲って誰が用意するの?」

 

不意に浮上した曜の疑問に答える声はなかった。

全ては私が決める!と言わんばかりだった千歌すらもこの時ばかりは動きを止め、誰かが答えてくれるその瞬間を待っていた。

 

「……そこも決まってなかったんだな」

 

「すまん……千歌が理想並べるばっかで具体的にどうするかを全く言ってなかったもんでな……」

 

てっきり未来が顔を出していない間にそれくらいは決まってるものかと思ってたが、まさかここまでだったとは。

千歌の無計画さは昔から知っているつもりでいたが……事態は思ったよりも深刻らしい。

 

「どうすんだよこれ。当日袋叩きにされんぞ」

 

「…とりあえずそこ決めるところから始めようか」

 

「じゃあ私が衣装作るであります! ちょっと憧れてたんだこういうの!」

 

「だったら私が歌詞書くよ! μ‘sのスノハレみたいなの作るんだー!」

 

殆どノリと勢いではあるが着々と役割が決まってゆく。

そして最後に残った役職は、自然と最後に残った彼女へと割り振られ……、

 

「という訳で梨子ちゃん作曲よろしく!」

 

「ちょっと! 二人ができないこと私に押し付けてきただけじゃない!」

 

「えーでも……、確か梨子ちゃんの部屋にピアノ置いてあったよね? てっきりこっち来る前は音楽やってたものかと思ってたんだけど……」

 

「っ……」

 

弟の次は姉か。

無理矢理すぎる千歌の采配に口を尖らせていた梨子だったが、そのことが指摘された瞬間に押し黙ってしまう。

 

「……だったら、俺が曲作りましょうか?」

 

「え?」

 

不穏な臭いが漂い始めた空気を変えたのは春馬の一言だった。

流石に今度はその異変に気が付いたのか、留めていたものを絞り出したかのようなそれを逃すまいと未来は口を動かした。

 

「えっと、お願いしていいのか?」

 

「簡単なのしか作れませんけどそれでいいなら……。梨子さん、ピアノお持ちならお借りしてもいいですか?」

 

「え、えぇ。構わないけれど……」

 

「ありがとうございます!」

 

取り急ぎ、不安定さが否めないまま築かれてゆく基盤。

一抹の不穏さと不安を孕みながら、滅茶苦茶な挑戦は次の段階に進もうとしていた。

 

 




元々見せ場として予定してた部分に至る直前で分けたから区切りの悪さが否めねぇ……()
グッダグダですがシナリオ自体に変更はないので大丈夫です、多分

未来が平行世界ではウルトラマンであることを知る一方、最初に影を見せたのは桜内兄妹……?
かなりゆったりですが着々と話は進んでいっていますよ

それでは次回で~
今度こそ水曜更新守ります()
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