ウルトラのキセキ ~One More Sunshine Story~   作:がじゃまる

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他所様のキャラを扱うって難しいですね(今更タウン)


8話 もう一人の勇者

 

深い海底にある意識を照らすように、うっすらと開いた瞼の合間から光が差し込んでくる。

 

眩しい。初めに認識したそれに続き、耳朶に触れた複数の声から人の気配を察知する。

 

「大丈夫そうだからまだよかったけど、どうしてここに連れて来る前に救急に連絡しておかなかったの?」

 

何が起こったのか。意識が暗転する直前までの出来事を呼び覚ましつつ気だるい身体を起き上げる。

その刹那に走った電撃のような痛みが、ここに至るまでの記憶を泥濘の中から引き吊り上げた。

 

「いやそれが……かなり慌ててたもんで着の身着のまま海に入ってしまい……」

 

「その……二人揃って携帯がお釈迦に……」

 

そうだ。Xioのラボから˝スパークドールズ˝を盗み出した宇宙人を追って時空を超え、その衝突の末に落下し意識を失った……ここまでは覚えている。

 

「あ! 志満姉ぇ、起きたよ!」

 

「千、歌……?」

 

だが気絶していた間のことは何もわかりやしない。

少しでも情報はないかと完全に開いた眼が最初に認識したのは、いつだかに触れた少女の顔だった。

 

「あら本当? 丈夫なのねぇ」

 

動揺のままに周りを見回せば、女子らしく飾り付けられた部屋の内装と、ベッドに寝かしつけられた自分を囲うようにしていた数名が視界に映る。

 

見知った顔触れも見受けられるその中の一人――――直前まで銀髪の少女と並び正座姿勢で説教を受けていた柄の悪い少年は……強く、翔琉の記憶に刻まれている者だった。

 

「陸……!?」

 

その名を口にした自分に彼の顔が受けられる。やはりそうだ、見紛うはずもない。

 

Aqoursリーダー高海千歌……初めに彼女の顔を認識した際は˝内浦˝にまで吹っ飛んできたものかと思ったが、それは少し誤っていたらしい。

 

だって彼は、自分達の世界の住人ではないのだから―――、

 

「おいおい久しぶり……ってほどでもないか。ともかくまた会えるとは思ってなかったぜ陸」

 

「……ぇ?」

 

(一応)先輩であり戦友でもある彼との再会に少し高揚する気分のまま声を掛けるが、当の本人の反応は想像とは随分と離れたもので。

こちらに向けて首を傾げる姿はむしろ自分のことを知らないとでもいうようだった。

 

「…あり? もしかして忘れてません……?」

 

「……かもしれん」

 

一瞬冗談でも言っているのかと思ったが、その瞳から嘘や悪気といったものは感じられない。つまり本気と書いてマジで言ってる。

 

「いやいやいや……確かに人の顔と名前覚えるの苦手とか言ってた気はするけど流石に一緒に戦った奴忘れるのは嘘だろオイ、ウチのラボチームに検査頼んでやろうか? 俺だよ天地翔琉! 前こっちの世界に来て宇宙人ぶっ飛ばしただろ」

 

「なーんで見知らぬ奴にんな心配されなきゃいかんのじゃ……てかそっちの世界だの宇宙人だの俺にそんなぶっ飛んだ経歴はねぇ」

 

「え、突然時空超えて殴り込んで来たと思ったらまたいなくなってその後宇宙人共ボッコボコにして組織ごと半壊させた生ける破天荒がお前等じゃねーの?」

 

「お前ん中でどうなってんだよ俺せめて人間させろや」

 

「実質人間じゃねーし大丈夫だろ」

 

「何も大丈夫じゃねぇんだけど!?」

 

波のような応酬の中で徐々に膨らんでいく違和感。

確かに容姿こそ同じだが、その口調や雰囲気は自分の知っている彼のものとは少し異なる。

 

「あっれー……、どうなってんだ…?」

 

まだ自分と出会う前の彼がいる時間軸に飛ばされてきた可能性もあるがまだハッキリとしたことは何も見えてないのが現状。

 

ならばもういっそ、核心から迫るべきか。

 

「˝ウルトラマンエックス˝って覚えてないか? 確か俺以外の奴とも会ったとか言ってたよな……ほら、大地とかいう」

 

「「え……」」

 

何故か視界の隅にいた野郎二人が反応を見せるが、コイツ等は別にいい。ともかくこの問いへの返答で全ての答えが出るはずだ。

 

「最近流行ってんのかぁ? どいつもこいつもウルトラマンだの怪獣だの……」

 

˝エックス˝自体は知らずとも、˝ウルトラマン˝という存在そのものは知り得ているような口ぶり。だがその中に緊張感は見受けられない。

そして彼の左腕に銀色の輝きがないことからもう、決まったようなものか。

 

「おい未来、その辺お前の専門じゃねぇの? エックスってウルトラマン知ってっか?」

 

「いやそもそも放送されたのはウルトラマンだけ……って、そうじゃなくてだな」

 

「……」

 

巡った思考の先で結論を弾き出した瞬間。

意識の他にあった少年の一人に手を取られ、そのまま部屋の外へと連れられようとする。

 

「……ちょっとついてきて。陸さんも」

 

自分よりも小柄な、どちらかと言えば愛嬌が勝る彼。

 

真剣味を帯びたその表情の奥からは、何やら自分と似た波動を感じるようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何話してんだアイツ等」

 

言われるがまま春馬に外へ連れ出され数分。

当の春馬は少し離れた場所であの翔琉とかいう野郎と何か話し込んでいる。わざわざ人を外にまで引き摺り出しておいてどういう了見なのだろうか。

 

「しっかし何なんだアイツ……ウルトラマンだのなんだの。お前と仲良くできるんじゃねーの?」

 

「…あはは、どうだろうな……」

 

揶揄い気味に真横へ声を流せば微妙な顔で返される。

ここ数日奇妙なこと続きだ。春馬に翔琉……思えば未来がおかしなことを言い始めた辺りからだったか。

 

「……お前、なんか隠してる?」

 

そんなことを考える折、どこかよそよそしい彼に目線を向けた。

陸の弄りが気に障ったかとも考えたが、未来が自分に向けているのはそれ以外の何かだと幼馴染としての勘が告げている。

 

「…別に何でもないよ」

 

「何年の付き合いだと思ってんだ。今更見抜けねぇ俺じゃねぇぞ」

 

昔から未来が˝なんでもない˝と口にする時は、決まって何かある時なのを陸は知っている。

 

春馬との絡みも含めここ最近の彼がどこか普段と違うのは薄々察してはいたが、今の反応を見て確信に変わった。

 

そして恐らくだが、あの天地翔琉の存在が彼にまた変化を齎している。

 

「最近散々ウルトラマンとか言ってる気がすっけど、それと関係あんのか?」

 

「……お前俺に対してだけは察しいいよな…」

 

呆れるように溜息をつきながら、未来が降参の意を示す。

隠すことをやめたからか、その瞳には劣情がハッキリと映るようだった。

 

「……なんかよくわかんねーけどそっちも決着ついたってことでいいのか?」

 

そんな未来が何か続けようとしたその時、話を終えたらしい翔琉の声が間に入る。

タイミング考えろやと視線だけで抗議の意を示すが、本人は察することすらなく己の話へと移ろうとする。一遍シメてやろうかコイツ。

 

「状況は大体春馬だっけ?に聞いてわかったわ。やっぱ俺別の宇宙に飛ばされてたんだな」

 

そしてのっけからまた意味のわからないことを言い始める。さっきはこっちの頭を心配してきたがお前こそが病院に行けと強く思った。

 

「んでお前は俺の知ってる陸とはまた別次元の陸、と……ったくややこしいのは勘弁だっての」

 

「勘弁はこっちの台詞だわ。訳わからん妄言に付き合わされる俺の身にもなりやがれ」

 

「すみません陸さん。もう少しだけ怒らずに聞いてください……大事なことなんです」

 

一ミリもこちらに話を理解させる気のない彼に苛立ち身を乗り出しかけたところを春馬に諫められる。

 

翔琉同様怪しいことに変わりはないのだが、少なからず悪い奴でないことはここ数日の付き合いの中でわかっている。そんな彼に真っ直ぐな目を向けられれば従ってしまうというものだ。

 

「まず結論から言ってしまうと、俺と翔琉くんはこの世界の住民じゃありません。経緯と形は違うけど、俺達はある脅威に対抗するためにこの世界に呼ばれたみたいです………ウルトラマンとして」

 

「またそれかよ……揃いも揃って何なんだお前等。んなこと言われても信じられる訳―――」

 

『信じるも何もないだろ。現に俺がここにいるんだからな』

 

「うおぉッ!?」

 

異論の言葉を遮るように眼前に現れた小人に思わず状態を逸らす。

 

手のひらに乗る程度の透けた身体を陸の目線の高さにまで浮遊させるその存在が人間……いやそもそもこの地球上に存在しないものであるのは明らかだった。

 

赤と銀の肌に、それを防護するように肩から胸元に掛かるプロテクター、特徴的な二本角。そして何より目を引くのは胸に灯る蒼い輝き。

 

それは確かにかつて未来に教えられた˝ヒーロー˝の姿と重なる。

 

「は? え? マジで本物? なんか知ってるのと随分違う気がするけどマジモンのウルトラマン!?」

 

『だからそうだって言ってるだ……おいやめろ触ろうとすんな』

 

そのウルトラマンと思しき存在に手を伸ばしてみるも半透明の身体が示すように触れることができない。まるで幽霊かのようだ。

 

「ごめんタイガ……せっかく出てきてもらったのに悪いけど話進みそうにないから戻ってもらっていい?」

 

『なんなんだこの扱い……』

 

タイガ。そう呼ばれた彼が若干不本意そうながらも溶け込むようにして春馬の身体の中へ消えてゆく。

 

「とりあえず……俺達がウルトラマン、っていうのはわかってもらえました? 厳密には一体化してるって言うのが正しいんですけど」

 

「あー……まあ、なんか現実味は薄いけど何となく合点はいったわ。最近の未来のこととか」

 

正直まだあのタイガとかいう小人が本物のウルトラマンなのかどうか信じられた訳ではないが、それもここ数日の未来と照らし合わせれば何となく理解できる。

 

どういった経緯で未来と春馬が出会ったのかは知らないが、春馬がウルトラマンと考えればあの頓珍漢に思えた行動や発言の数々も腑に落ちる。

 

「…んで、そのウルトラマン達が俺に何の用で?」

 

「まあ、どっちかと言うとそれが本題なんだけどな」

 

「さっきも言いましたよね? この世界に迫ってるある脅威に対抗するために呼ばれたって」

 

本物のウルトラマンと言うだけで十分驚きだが、彼等の物言いからして恐らく本題はこちら。

こうしてわざわざ接触まで試みてきたのだ。ただの自己紹介一つで終わるはずがない。

 

「こっちの世界に召喚される少し前に、女の子に出会ったんです。その子が言うには、危機を退けるために勇者達を目覚めさせてって」

 

『その勇者ってのがお前等かも……って話だ』

 

身構えていれば、春馬の言葉を継ぐ形でタイガがそれを告げてくる。隣で未来が唾をのむ音が聞こえた。

 

伝わってくる重い雰囲気はそれが真実であるかのように思わせてくるが……にわかには信じ難い話だ。

 

「何度も疑うようで悪いけど、流石にそれはねぇだろ。お前等がウルトラマンだとしても、俺と未来はただの一般人だぞ」

 

「この世界では……だけどな」

 

反論する陸に次に返したのは翔琉だった。

 

「俺もさっきこう言ったよな、俺の知ってる陸とはまた別次元の陸って。この意味わかるか?」

 

「……別の世界にも俺がいるってことか?」

 

「そうそう。まあその陸も俺とは別の世界の奴なんだけど……んで、その世界でお前は俺達と同じようにウルトラマンとして戦ってたんだよ」

 

随分と軽いノリでとんでもないことを言ってのけられる。

別の世界などと言ってしまえばもはや何でもアリな気がしてならないが、少なくとも陸以外は既にそれを事実として受け止めているらしい。

 

『そして俺達の世界で未来は過去にウルトラマンとして世界を救った英雄……もしあの少女の言う勇者達ってのがこの世界に存在するなら、別世界でウルトラマンとして戦ってるお前等だと考えるのが妥当……って訳だ。筋は通ってるだろ?』

 

「まあそれはそうなんだけどよ……」

 

「ちなみにお前が一体化してたウルトラマンこんな奴な」

 

またも軽いノリで翔琉が取り出した一枚のカード。

 

˝ULTIMATE ZERO˝と記されたそれには、頭部に二本の刃を備える白銀の鎧を纏った巨人の姿が描かれている。

 

「目付きわっる……ホントにウルトラマンかよ……」

 

差し出されるままカードを手に取った、その瞬間だった。

 

「ッッ………!?」

 

前触れもなく突如頭の中に響いた激痛。

割れるようなその痛みは、まるで記憶の奥底から呼び覚ましたかのように様々な像を脳裏に映す。

 

「陸……?」

 

未来達の顔や声を塗りつぶすように流れていく景色。

 

汗臭い日々に血染めの定め……その先で瞬いた輝かしい景色。

 

 

――――「『俺達に……限界はねぇッ!!」』

 

 

そして存在しないはずの˝相棒˝と重ねた、誓いの声。

 

経験も記憶にもないそれらが流れ去って行くのは文字通り瞬く間だったか、次に未来達を認識した時には頭痛も含めそれらは煙のように消え去っていた。

 

ただ一つ、陸の中に強烈な何かを刻み込んだまま。

 

「……お前、何しやがった?」

 

「え? 別に何もやってないけど……」

 

「陸…、何か見たのか?」

 

純粋に陸を心配する心と、それとはまた違うものを孕んだ未来に対し一瞬考え、首を横に振った。

 

「……何でもねぇよ。これ、なんかウルトラマンの力が込められてるとかそんな代物なんだろ? 一般人の俺が触れたから拒絶反応か何か起こしたんじゃねーの?」

 

まだ微かに残る余韻を振り払うように翔琉へカードを返却すると、そのまま彼等へ背を向ける。

 

「つー訳だからその勇者様とやらは他を当たってくれ。お前等がウルトラマンだってのは信じるけど、こっちの話は俺にゃ無理だわ」

 

「え……」

 

「ちょ……待てよ陸! 話聞いてなかったのか? この世界が危ないって言ってんだぞ」

 

旅館の中へ戻ろうとしたところを未来に引き留められる。再度その方を向けば寸刻前と打って変わった鬼気迫る顔がそこにあった。

 

「…なあ未来、お前がウルトラマンに憧れてきてたのは知ってるし、春馬の話を聞いて高揚するのもわかるぜ? けど、それはあくまで別の世界の俺達の話だ。何の力もないこの世界の俺達がどうやってその脅威とやらに立ち向かうんだよ」

 

「それは……」

 

「別にお前がどうしようが止めやしねぇよ。けどそんな確証も何もない希望に縋るくらいだったら、初めから春馬達˝本物˝のウルトラマンに任せた方がいいに決まってる。できること以上の背伸びしたところで何も実りやしねぇだろ」

 

払うまでもなく、そう言っているうちに未来の手は肩を離れていた。

その瞬間に見えた彼の表情から逃げるように背を向け、最後に言い残す。

 

「流石にもう帰るわ。翔琉……だっけ? 聞く分じゃ宿無しだろうしウチ泊ってけよ。お前の知ってる俺の話に興味はあるからな」

 

流れるように曜を呼び、彼女が腰を下ろした自転車に跨っては空を見上げる。

見慣れたはずのその夜空は、何故だかいつもよりくすんで見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も言い返せなかった。

 

元々自分より少し遠くにいるように感じていたアイツがまた遠くに行ったような気がして。

そんなアイツから放たれた現実の一言が何より痛くて、高揚していた自分が馬鹿らしくなってくる。

 

『言われてみれば……そうなのかもな』

 

陸に曜、そして翔琉の去って行った夜道の暗がりを眺めながら、春馬の中でタイガが零す。

 

『確かに俺達の世界では英雄でも、こっちの世界ではただの人間だ。何もできないとまで言わないが、それでもやれることなんて限られてる。元々俺達だけで何とかすべき問題だったのかもな』

 

「そうなのかな……俺は―――」

 

「…いいよ、春馬」

 

何か言いたげな春馬の声を伝えんとしてたことを考えもせず遮る。

別方向へ向けたままの顔は見せなかった。見せたくなかった。

 

「俺等も戻ろうぜ。もう結構遅くなっちまったしな」

 

平静を取り繕い、帰路を進む。

数日の間に見ていた夢が覚めたかのような重みは、足取りのみならず心の中までも浸透していくようだった。

 

 




という訳で改めまして、山形りんごをたべるんごさんの「RAINBOW X STORY」から天地翔琉くんの参戦です
これで全員出揃った訳ですが、5人それぞれ微妙にタイプが違うのでキャラを理解しつつ書き分けるのが結構大変です……()

とまあ、そんな翔琉君の登場により陸も別世界では自分がウルトラマンであることを知った訳ですが、何故か悪い方向に転がってしまったようで……

かなりゆっくりですが着々と話は進んでいますよ
それでは次回でぃ!
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