ウルトラのキセキ ~One More Sunshine Story~   作:がじゃまる

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ちょっとしたお知らせなのですが、各作品のオリキャラ達が色んな質問に答える座談会……的な話をおまけとして投稿しようと考えてます。

ある程度他の作家様方と「こんな質問させたろぜwww」的な話はしているのですが、活動報告の方で読者様方の質問も募集しておりますのでもしよければ何かコメント頂けると嬉しいです


9話 眩しいもの

「つー訳だ。今配ってるプリントにある通り、めんどくせーことに漁港祭は他の学校と連携して教職員で見まわることになった」

 

教卓に突っ伏したまま気だるそうに説明を読み上げる教師の声。

その内容に対し周囲の席から上がる反感の声も含め、ただただ意識の外へと流れてゆく。

 

「まあお前等も高校生だ。多少ハメ外そうが不純異性交遊しようが別にいいたぁ思うんだがな、決まっちまったモンは仕方ねぇ。お前等何か問題起こして俺に面倒掛けたら内申点はないと思えー」

 

換気に開けた窓枠から侵攻してくる熱気や蝉の合唱も今となっては気になりもしない。

針で突かれたように、心に生じた小さな穴。その穴に何もかもが吸い込まれてしまったかのようだ。

 

「未来」

 

心地よい夢から目覚めた時の感覚と似ている。

まだ起きたくない。もう少し浸っていたい。続きが見たい。奥底から沸き上がってくる願望。

 

だがその感覚も夢と同じだ。眠りから覚まされるように、繰り返し背後から掛かった声がようやく現実へ引き戻してくれる。

 

「ちょっと未来、聞いてる?」

 

「…あ、あぁ、ごめん。どうした?」

 

「プリント、回ってきてるわよ」

 

真後ろの席に腰掛ける少女に指摘され、ようやく二枚の紙束が自分に差し出されていることに気が付く。

前席の生徒に謝りながら受け取ったそれを後方の彼女へと手渡すと、同時にその蒼い瞳が向けられる。

 

「どうしたのよ、今日ずっとぼーっとしてるわよ」

 

「……別に何でもないよ」

 

「ホント嘘ついてる時わかりやすいわね……」

 

揶揄うように悪戯な笑みが咲いた。

一年時に知り合って以降妙に絡んでくる彼女―――七星(ななほし)ステラ。曜曰く気に入られてるらしいが……未来にはいまいち理解できないものだった。

 

「まあ別に言及はしないけど……それより未来、週末って空いてるかしら?」

 

「週末……って、漁港祭の日か?」

 

「そ、ちょっと周ってみたいんだけど一人で行くのもアレだし付き合ってくれない?」

 

そんな彼女からの申し出もまた妙なものだった。

その雰囲気の通り一匹狼気質な部分はあるが別に友達がいない訳ではないはずだ。それなのにわざわざ未来を誘うとなると何か含みを感じてしまう。

 

「なんで俺なんだ? 一緒に周るなら千歌達の方が……」

 

「どうせアンタも千歌達と周るのはわかってるのよ。だったら誰に聞こうが変わらないわ」

 

「…なるほど」

 

遅れて口にされた理由を聞いて納得。そう言えばステラも千歌のお気に入りの一人だったか。

 

「ステラなら千歌達も大歓迎だと思うよ。千歌達以外にも何人かついてくると思うけどいいか?」

 

「構わないわ。梨子の弟と、静真の不良っぽい幼馴染でしょ? めんどくさいのに声かけられなさそうでよさそうじゃない」

 

如何にも自信あり気といった得意顔の後ろで深い青の髪がたなびく。

まあ実際ステラは美人といって差し支えない容姿をしているし、不埒な輩に声を掛けられたことだってあるのだろう。

 

尤もその中身を知ったら裸足で逃げ出すとは思うが。

 

「……何ニヤニヤしてんのよ。気持ち悪い」

 

「別にそんな顔してねぇよ……」

 

そうは言いつつ確かに緩みつつあった表情筋を引き締め直す。こんな奴とは言えやはり慣れた面と話すのは気が解れるものだ。

 

そうだ。元々漁港祭には全力で取り組むつもりでいたんだ。今は一旦ウルトラマンのことを忘れ楽しむことに専念しようじゃないか。

 

「おいコラ七星―、デートのお誘いは結構だがまだHR中だ。余所でやれー」

 

「なっ……、別にそんなんじゃ……!!」

 

教室全体に悪意を振り撒いた教師に触発され周囲から上がる野次や黄色い声。

それらに真っ赤な顔で反論するステラと共に気恥ずかしさを覚えつつ、未来達は高校生活二度目の夏休みへと突入した。

 

「あ、日々ノお前は進路表出すまで居残りな」

 

訂正、未来の夏だけはもう少し先になりそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「反応なしか……あの野郎もこの辺に落っこちてきてると思ってたんだがなぁ……」

 

太陽から照りつける光と熱がじわじわと身体に染み入る。

幸いデバイザーに記録されていたあの宇宙人の生体反応を元に居場所を突き止められないかと探索していたものの……このままでは見つけ出す前にこっちが熱中症で力尽きそうだ。

 

「翔琉君の言う蝙蝠みたいな宇宙人があの女の子が言ってた脅威ってことでいいのかな?」

 

「別にそんな強そうな奴にも見えなかったけどな……まあウルトラマンのいない世界じゃどいつが来ようと変わらねぇか」

 

探索の同行を名乗り出た春馬から聞いた話で分かったことは三つ。

 

一つはこの世界はウルトラマン、そしてスクールアイドルが物語の中にしか存在しない世界。

次に別の世界ではウルトラマンやスクールアイドルとして活動している人物達が一ヶ所に集中している。

 

 

そして最後に、詳しくは彼も把握していないようだがとある危機がこの世界に迫っている……ということだ。

 

『お前は俺等と違って自力でこの世界に来た……ってことでいいんだよな?』

 

「まああの宇宙人追ってたらなんやかんやこの世界に来てたって感じだけど、お前等は違うんだったな」

 

半ば殴り込みに近い形でこの世界に来た自分と違い、春馬とタイガはとある少女の導きによってこの世界に来た……とのこと。

その際に彼等に託した言葉の真意も気になるが、今は彼女についてだ。

 

「…そういや、野郎のいた場所に女もいたような……」

 

「え……?」

 

こちらの光刃と奴の光弾が衝突する寸前。ほんの刹那だったが、あの縞瑪瑙の空間に存在する少女の姿が確認できた。

それが春馬の言う少女と同一人物なのかを確かめる術はないが、この特異な状況から鑑みるに何かしらの関係があるようにも思える。

 

「そ、その人ってどんな感じだった……?」

 

「丁度俺等と同じ年頃に見えたってのと……あと浮いてた」

 

『アバウト過ぎんだろ……けど、俺達の世界に現れたあの少女とも一致するな』

 

「…てこたぁそいつもグルってことか?」

 

その推論に至ったのはタイガも同様のようで、姿は見えずとも声音から警戒の色が伺える。

判断材料となるものが乏しい現状ではそう考えておくのが妥当な気もするが……反論する者がここに一人。

 

「…俺にはそう見えなかったけどな」

 

「いや、一応警戒するに越したことはないだろって話なんだが……まだわかんないことだらけなんだしさ」

 

「だからだよ……わからないからこそ、一方的に決めつけたくないんだ」

 

あくまで仮定の話だと捕捉はするが、それでも春馬の瞳に映る意志に揺らぎは伺えなかっった。

何かと重ね合わせるような、それでいてどこか悲痛も含む底の知れない目。少なくとも今の翔琉には踏み入れることのできない領域の中にいるように思える。

 

「どんな行動をとるにも、そうするまでに至った理由がある。だからまずは自分がどう思ったかを大事にして、ちゃんと理解したい」

 

ふと、以前Xioのメンバーから掛けられた言葉が思い起こされる。

人類に危害を与えうる存在である怪獣との共存。今でこそそれも悪くはないと思ってはいるが、具体的にどうだとかは考えてもみてなかったか。

 

「どうするか判断するのは、その後だって遅くはないでしょ?」

 

自分達が人々を守るために戦っているように、怪獣にだって暴れたりする理由がある。その中には非難するにできないものだってあるだろうし、それを理解せずに手を下すことは理不尽に思える。

 

ふとしたことから一つの理想となった怪獣との共存。

春馬の考えはもしかすると、その理想に近づくための一歩なのかもしれない。

 

「……わかったよ。一応そう言うことにしといてやる」

 

そう言えば、世界線こそ違えどそうあればいいななどと思ったのもこの地だったか。

今回の相手は怪獣ではないが……それに反するような行動はできまい。

 

「とりあえず戻ろっか。そろそろ未来さん達帰ってくる時間だし、千歌さんにも練習見てほしいって言われてるから」

 

「おお、だったら俺の専門分野じゃん。早く行こうぜ」

 

『なんだ? お前の世界にもスクールアイドルあるのかよ』

 

タイガの一言から発展した新たな話題を交わしながら元来た道に引き返し始める。

 

 

 

「……なんで」

 

その傍ら、木々の影の中に潜む少女が零した声が風に消えてゆくのを、気付くこともないまま。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

吹き飛ばしたものと思っていた重苦しい感覚が再来するのを全身で感じ取りながら、今日何度目かもわからない溜息をつく。

補講等でまだ数日は学校にいるからそれまでには絶対に出せと念を押されて解放されたが、もう本格的に時間がないのは明白だろう。

 

「……」

 

傾いた夕陽の色に染まる進路調査票。相も変わらず指名以外の記入個所は悉く空欄のままだった。

 

未来は陸のように定まった夢も無ければ、遥のような才能がある訳でもない、何もない普通怪獣。

 

それ自体は決して珍しいことでもないはずなのに、用紙の大半を占める空白はまるで今の未来を表しているかのようで少し嫌になる。

 

「……ん?」

 

そんな気分のまま自宅のすぐ前まで差し掛かった時、連続して耳朶に触れたタッ、タッ、と地面を蹴るような音。

何かと思いそちらに視線を流せば、見慣れたみかん髪の少女が音楽を口ずさみながらステップを刻んでいるのが見えた。

 

「あ、未来君おかえりー!」

 

向こうも未来に気付いたのか、こちらを見るや否や駆けてくる千歌。

瞬間瞬間に舞う輝きの粒はこの暑さによるものだけじゃない。きっと何時間もそこで練習していた証拠だ。

 

「まだ練習してたのか…?」

 

「いやぁ~、なんか私だけ上手くできないところがあって……曜ちゃん達が帰った後も練習してたんだぁ」

 

そう言ってそのパートと思しき振り付けを披露してくれる。

まだ少したどたどしさはあるものの、まだ何も決まってなかった少し前の状況から見れば著しい進歩だろう。

 

「…凄いな、上手くなってる」

 

「ほんとぉ!? えへへ……春馬君だけじゃなくて翔琉君にもアドバイス貰って練習した甲斐あったよ」

 

照れながらも確かな自信を伺わせるその笑顔。

 

眩しい。

彼女に対して、初めてそう思った。

 

「あ、それでね! 梨子ちゃんが作曲してくれるって言ってくれたんだ! やっぱり東京にいた時ピアノやってたんだって!」

 

同時に襲い掛かってくる、置いていかれるような孤独感。

 

普通怪獣。そんな風に自虐する千歌にシンパシーを感じ始めたのはいつからだったか。

自分と同じく己に自信を持てない人がいる。始めは単なる共感に過ぎなかったそれも、年を重ね将来のことを意識するようになるうちに身勝手な安心感へと変わっていた。

 

だからこそ一つの目標を通し前に進みつつある千歌が、凄く、遠く感じるのかもしれない。

 

「漁港祭までに絶対完成させる―って、今春馬君と頑張ってるよ……って、未来君、どうかした?」

 

「ぇ……」

 

千歌に言われ、はっと知らぬうちに険しくなっていた表情を解く。

 

「…()()()()()()。ちょっと汗かきすぎてて心配になっただけだよ」

 

「心配ありがとー、でももう終わるとこだったから大丈夫だよ」

 

「…そっか」

 

咄嗟に出た言葉から始まった短い会話も終え、未来はまた自宅の戸に手を掛ける。

早くこの場から去りたい。生じたそんな気持ち故か、開こうとする玄関戸はいつになく重く感じた。

 

「あ、未来君!」

 

それでも開いたドアの奥へ向かおうとした瞬間、千歌に呼び止められる。

再び向けた視線の先で、彼女は太陽のような笑みを咲かせると―――、

 

「漁港祭での舞台、私頑張るからしっかり見ててね!」

 

「…うん。楽しみにしてる」

 

それが本心から出た言葉かどうかも最早わからない。

 

ウルトラマンにスクールアイドル……憧れたものは同じ空想の産物であることに変わりはないのに、どうしてこんなに差が生まれてしまうのだろう。

 

どうして、こう自分ばかり置いていかれるような気分になるのだろう。

 

「ッ……」

 

鍵を閉めると同時に階段を登り、自室へ駆け込む。

比較的簡素な部屋の中では幼い頃に集めた光の巨人の人形などが目を引く。

 

それらを視界に入れまいと机に座り込んだ未来はそこに進路調査票を広げると、突き動かされるようにいくつかの大学名を書き殴った。

 

「俺は……」

 

猛烈な脱力感と共に制服のままベッドへ寝転ぶ。

夏休みを阻む課題から解放されたというのにも関わらず、身体も心も、全く軽くなった気分はしなかった。

 

 




冒頭の彼女は漁港祭のパートで少しだけ登場してもらう予定でしたが各作者様からのお強い要望を受け先行登場させてしまいました

そんな彼女と漁港祭を周る約束を交わしある程度前を向いたように思えた未来君ですが……
悩みを忘れた気になれててもちょっとしたことですぐまた引き戻されるってのは思春期にありがちな思考だと思ってます(だよね?)

追記として先日「RAINBOW X STORY」にてメビライブコラボが行われていましたが、今作における翔琉君はその話の前の時間軸の彼です。前回解説し忘れたので一応。

それでは次回で
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